初恋

あんず

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ミナの話し。

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「僕、いつも独りなんだ。

ヨシも知っているだろう?

親の顔、いつだろう最後に見たの…。



ウチ、綺麗でしょ?

当たり前なんだ。
2人共ウチに帰ろうとしないんだから。」


ミナは淋しそうな顔をしている。
俺は黙って話しを聞くしか出来ない。



「保育園の頃はいつも3人で川の字になって寝ていた気がする。

ある日、聞いたんだ。
父さんの寝言…



『ゴメン。すまない。お前だけ。』って何度も何度も言って涙を流していた。


僕は父さんが可哀想に思った記憶がある。
そんな風に思っていたら
僕の反対側にいる母さんが



『もうやめて。そうやって私を悪者にしないでよ。私たちが邪魔なんでしょ?』そう言って泣きじゃくっていた。




でも父さんを起こすワケでなくて……
父さんの寝言に対して
母さんが泣いているみたいだった。



そんなコトがあったけど
僕は小さくて
眠たくて
そんなコトがあったかも?くらいしか覚えていなかっんだ。」


ミナの瞳には泪が溜まっていて
今にも溢れ出しそうだ。



『綺麗』



ミナが淋しくて辛そうなのに
ミナの瞳に魅了され
吸い込まれそうな自分がいた。





「後から分かったけど、
そのやりとりは日常だったと思う。


小学校に入学する機会で 
僕は個室を与えられた。
単純に何だかちょっぴり大人になった気分で嬉しかった。




でも
父さんと
母さんの
部屋も別々になった。




入学して少しした頃、
僕は明け方トイレに起きた。

その後何だか自分の部屋に戻りたくなくて
……父さんのベッドに潜り込んだ。

父さんにしがみついて
ウトウトし始めたトコで

またあの寝言が聞こえた。


『ゴメン。すまない。』


何度も何度も許しを乞う父さん。

辛そうで

可哀想で

僕と同じ色のクセのある髪を

僕は撫でていた。



そしたら




隣りの母さんの部屋から
大きな声がした。

僕はビクリと身を固まらせた。


『私が悪いの?
何で私を責めるの?
私たちが邪魔なんでしょ?』

何か壁に向かって投げつけている。



さすがに父さんも起きた。

僕のコトをしっかり抱きしめてくれた。

僕は怖くて

でも嬉しくて

父さんにしっかりしがみついていた。



少しして
信じられないコトバが聞こえてきたんだ。」




ミナは僕の胸に頭を擦り付けて
震えている。


僕はミナの父さんがそうしたように


しっかりとミナを



抱きしめた。









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