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beautiful moon。
しおりを挟む美月は小学5年の途中から
学校に行かなくなった。
原因は
アイツの言葉
『お前んち、変なの』
ただそれだけ。
でも
美月にとって『それだけ』では
なかった。
小さい頃から
『イクにはママがいるのに
どうして僕にはママがいないんだろう?』
美月は寂しくなるといつも
俺の部屋に泊まりにきて
泣きながら俺に抱きついてきた。
同じ歳の俺が理由を知るわけもなく
『美月にはヨシ兄とミナ兄がいるじゃん。』
そう言いながら抱きしめて
頭を撫でてやるしか出来なかった。
美月は友達に言われて
自分が思っていた疑問を確信して
しまったのだろう。
美月が殻に閉じ籠るのは
自分自身への嫌悪感だったに違いない。
駿くんが
美月の殻を少し破ってくれた。
ヒトと関わるコトに怯える美月に
『ミキ』という
武装を施した。
いつもと違う自分を手に入れた美月は
少しずつ自己主張出来るようになった。
自宅から遠く同じ小学校から誰も進学しない
男子校に進んだ美月は
必要最低限の事は話せるようになっていた。
中学入学を機に
駿くんが
バンドやろうって言い出した。
駿くんは美容全般のトータルスタイリストをやっているから忙しい。
でも
美月が少しでも
『自分らしく』いられるようにと
誘ってくれた。
俺らのバンドは
美月のバンド。
『月の綺麗な夜に産まれたんだよ』
一度だけヨシ兄から聞いた事がある。
俺らのバンドは
美月のバンド。
『b-moon』だ。
一曲目はアカペラで歌い上げた。
いつ聴いても
ミキの声は
どこまでも透き通って
どこまでも伸びやかで
唄に込める気持ちが強い。
力強くも
甘くも切なくも
ステージの上のミキは
何でも出来る。
二曲目のバラードを歌い上げ
ラストの曲は
『この曲だけはいつでもどんな時でも
郁弥のためだけに歌うよ。』って
美月が言ってくれた曲だった。
Baby, you're all that I want
When you're lyin' here in my arms
I'm findin'it hard to belive
we're in heaven……
大きな拍手
ミキへの声援
いつも
ステージを降りる時していた
キスが出来なかった。
ミキの哀しそうな瞳にキスを落とした。
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