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第五章

第234話 また絡まれました? でもこれって!

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 スラムに帰ってきた僕達とアルは地下にまた持ち運びハウスを出して、晩ごはんを作って食べ始めました。

「しっかしうめえな。ライは料理人でもやってけるんじゃねえか?」

「そうですか? オークのステーキは結構自信がありましたけれど。あっ、そうです。アル。スラムの方って仕事したい人はいますか? 今、父さんの領地で沢山の人手が欲しいのですけど、仕事の無い人を探していたりします」

「え? ライ、お前貴族なんか! 俺ヤベえぞ! 不敬罪で殺られるのか!」

「くふふ。大丈夫ですよ。僕は三男ですからこうやって冒険者しているのですよ」

 アルはビクッとしていましたが、三男と聞いて肩の力を抜いたようです。

「はぁ、ビビらせんなよな。んで、仕事か? そんなもんほとんどできてねえぞ。スラムってだけで雇ってくれるところなんて無いからな。若いならほとんどが冒険者だぞ」

「小さい子でも、お年寄りでもできる事はありますので。そうそう、怪我した人でも大丈夫です。片腕の方も働いてますよ」

「マジか!」

「ライ。あれ言っておかなきゃ駄目よ。悪さした奴は駄目、悪者はお義父様の領地で働くなら奴隷になってる奴くらいね」

「ふぐふぐ、んくん。本当に美味いな。ん~、悪者は沢山いるぞ。スラムでも奥の方に行けばヤバいのがゴロゴロいるからな。まあ、言ってる奴抜きでも結構いるんじゃねえかな。はぐっ」

 アルはまたオークステーキを齧り、そう教えてくれました。

 なるほどです。それでしたら明後日の悪者退治した後に行きたい人を集めてもらいましょう。

 夕食の後、昨日と同じようにムルムルに綺麗にしてもらい、今夜もすぐに寝てしまいました。

 今朝、アルと一緒に冒険者ギルドに行き。アルは依頼を請けるため、受け付けに並んでいる時、一応僕達も何か良い依頼がないか、掲示板を眺めていると、おお! 疾風怒濤さん達が倒した地龍の素材採取、皮や牙、爪にお肉も買取りしてくれるのですね。

「あら。地龍の素材を採取って依頼があるわね。売っちゃうの? まあ地龍よりヒュドラの方が少し素材的には上だから残すなら爪と牙は残しておいても良いわね」

「そうじゃな。後は血が売れるはずじゃ。龍と名がつく魔物はどれも回復薬の素材じゃから、一リットルの血で金貨がもらえるぞ」

 回復薬になるなら、買い取ってもらうのは無しですね。

「ん~、やめて――」

「ぜひ売りたまえ。地龍を持っているという事は『疾風怒濤』の記録を塗り替えた小僧とは貴様らの事だろう」

 誰か後ろに来ていたのは分かっていましたが、いきなり話しかけられるとは思っていませんでした。

 後ろを振り向くと、白いローブを着たプクプク太ったおじさんと、五人の白い鎧を着た教会の騎士さんが立っていました。

「おはようございます。地龍は確かに持っていますが、売らない事にしましたので」

 僕が振り返って、そう答えたのですがなぜか驚いた顔で僕達を見ています。

 ですがプルプル震えだし、顔が赤くなってきました。あはは······怒っちゃいましたか。でも教会の人が朝から冒険者ギルドにやってくるのですね、もしかすると怪我人が出た時のためにここで待機しているのでしょうか?

 でも、それなら昨日の夕方疾風怒濤のおじさんを倒した時出てきますよね?

「こ、小僧! 私は売らないかと提案しているのではない! 売れと命令しているのだ!」

「ですから、自分達で何かに使おうと思っていますから売る気はないのですよ。それにこの依頼も請けていませんし、請ける予定も無いです」

「貴様! ギキム枢機卿様は売れと言っておる! 教国の貴族でもあるのだぞ! 今ならまだ不敬罪とは言わん! さっさと売るのだ!」

 今度は騎士さんの一人が一歩前に踏み出して、唾を飛ばしながら怒鳴ってきました。

「ふ、ふう。その通りだ。私は寛大だからな。次期教皇候補の私が売れと言っておるのだ。さっさとしたまえ」

「ん~。話が通じませんね。売る売らないは個人の自由ですし、今回は売りませんよ。まあ余るほど手に入れたなら売るのでその時まで待っていて下さいね」

 すると、プルプル震えるのが治まって顔も赤さが元に戻ってきていたのですが、また先ほどと同じように震えながら赤くなってきました。

(ねえ。やっつけないの? それとも襲いかかってくるのを待ってるの? とりあえずコイツはぐるぐるして良いわよ悪者だし)

(うん。やっぱりそうですか。明日まではおとなしくしておくつもりなのですが、どうしましょうかね。剣でも抜いてくれれば一気にやっちゃえるように準備だけしておきましょう)

「ギキム枢機卿。依頼の強制はしないでもらいたい。依頼を請けていたとしても、売るのは個人の自由だ」

「ギルドマスター。おはようございます」

「ああ、おはよう。今日もダンジョンにもぐるなら依頼は請けていかないか?」

「何を言っておる! 私が売れと命令しているのだ! さっさとせぬか! ギルドマスターも早くその小僧から地龍を出させるのだ!」

「ギキム枢機卿様、ここは不敬罪で捕らえましょう。この者達はありにも不敬であります。捕える許可を」

 あっ! そうです! くふふ。これは大人しく捕まってみるのも面白いかも知れませんね。盗賊に捕まるテンプレは冒険に出てすぐに経験しましたが、悪者貴族に捕まるのは中々機会がありませんし牢から脱出ができるかもしれませんね。

 そんな事を考えていると、『許可する!』の声と共に騎士の二人が僕の前に来て――。
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