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第五章
第230話 地下室を作っちゃいましょう
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「ではでは地下室を作っちゃいます!」
「あっ、なるほど。アル、アル家はこの一部屋だけなのよね?」
「そうだぞ。中々良いんだぜ、雨漏りもしねえからな」
「ライ。地下室を作る時に出る土で、この部屋も補強してあげたら? 本当なら二階も作れたら良いんだけど、余り目立つと別の厄介事が起きそうだから止めておきなさいね」
「うん。外観はそのままにするつもりだよ。出入口もそのままにしておくね。じゃあ、やっちゃいます」
興味津々で、わくわくした顔のアルを今は放っておいて、僕はしゃがみ込み、地面に手を付くと、土いじり開始です。
「ん~と、二十メートルくらい深さがあれば良いかな。ぐるぐる~、ほいっと!」
ボコっと寝台用の木箱とは反対側の壁際に穴が開き、どんどん階段を下に向けて作っていきます。
だいたい二十メートルほど地下まで下りた後は持ち運びハウスがゆっくり置ける広さの空間を作り、あっという間に地下室は完成です。
後は上の部屋の内側をガチガチに固めて石より頑丈にした壁と天井を作って、光の魔道具も取り付けておきました。
「ほへぇー! ライお前の魔法すげえな! これなら絶対雨漏りもしねえぞ!」
「後は水の出る魔道具も置いてっと。こうおけば水汲みもしなくてすみますよ」
「おおー! 良いのか! 共同の井戸まで結構遠いからよ、助かるぜ。階段も気になるけど······表の奴ら大丈夫か? ざわざわしてるから結構集まってるみたいだぞ」
アルの言う通り、外には二十人ほどの気配がしています。騒ぎだして余り時間は経っていませんが、ここから出る姿を見られるのは駄目ですし、転移で外に出るしかないですね。
「アル。あのSランクのお兄さん達が暴れちゃうとここに住む皆さんが怪我しちゃいますから、出ていきましょうか。バレないように。テラ、アミーも手伝ってね」
「そうね。大切な開拓民達だものね」
「テラ様、それはまだ決まっておらんのじゃがな」
「まあ、俺が言えばおさまるかも知れねえが、ここの出入口が見付かるとなぁ」
「それは大丈夫ですよ。まあ、やっちゃいますね。アルは声を出さないようにお願いしますね。転移!」
パッ
僕達はちょうど真上、屋根の上に転移で移動しました。
アルは口を押さえてなんとか声を出さないようにできたみたいです。
「お前ら何なんだよ! 俺達はガキを四人探してるだけだ! 怪我したくなかったらさっさと教えな!」
僕達は声のする方へ移動すると。
「知らねえなぁ。あんたら冒険者だろ? ここには冒険者もいるが、そんないきり立って探している野郎に、スラムの仲間を売るような奴はいないぞ」
「あの~。お兄さん達、探してるのって僕達の事ですか?」
集まってきていたスラムの方達は手に木の棒とか、フライパンとか色んなものを持って、取り囲んでいましたから、これはもう隠れているとみんなが危ないと思い、声を出しました。
スラムの人達と、Sランクのお兄さん達は、屋根の上から覗く僕達四人を見上げ、あの冒険者ギルドで殴りかかってきたお兄さんが怒鳴り付けてきました。
「お前ら! そんなところに上っていやがったか! 下りてこい! 俺達を馬鹿にした事を後悔させてやる!」
「じゃあ、みんなはここで待っていてね。話を付けて来るから」
そう言って僕はぴょんと屋根から飛び下りて、お兄さん達の前に着地しました。
「良い度胸だ! ふん!」
いきなり殴ろうとするのですね! 伸びてきた拳をしゃがんで地面に手をつきながら躱し、さらに踏み込んでこようとした足の爪先を、土魔法で動かないようにしてあげました。
「なに! 避けたか! まだだ! これでもくらっ! がぁ!」
すり足で前に出そうとした足がビクとも動かず、バランスを崩しました。
「しっ!」
足が動かなかったので、動き出していた上半身だけ前に出て、くの字になったところを今度は僕が立ち上がり、前に踏み込んで、お腹を蹴ってあげました。
「ピギャ!」
あっ······流石Sランクです。お腹を蹴るつもりが僕の蹴りに反応したまでは早かったのですが、狙いのところから動いて、お兄さんのおちんちんを蹴ってしまいました。
「あわわ! 大丈夫ですか!」
「··················」
「だ、大丈夫じゃないみたいですね。お腹を蹴ろうと思っていたのですが、流石Sランクです。あそこから動いてくるとは思わなかったので、狙いが外れてしまいました。ごめんなさい」
お兄さんは、うつ伏せで、お尻を上げたままの格好でピクピクして返事もできないようです。
「リーダーがやられたぞ、嘘だろ? 何者だよ」
「あっ、えっと『疾風怒濤』の皆さんあのですね、僕もSランクなので、そうおかしな事ではありませんよ」
そう言ってギルドカードを見せてあげました。
「マ、マジかよ! 俺達はSランクパーティーで、個人はリーダー以外Sランクじゃねえんだぞ······それなのにこんな子供がSランク······」
「はい。ですから僕が勝ってもおかしくはないのです。お兄さん達もSランクパーティーなのですから、横入りとか本当に止めた方がいいですよ」
「おい、やべえぞ、俺達だけじゃやられるだけだ」
「リーダーも油断してっからやられるんだ、仕方ねえ、リーダー連れてここは引くぞ」
「く、くそ! 覚えてやがれ!」
おお! ちょっと気の毒なことをしちゃいましたが、お説教もできましたし、『覚えてやがれ』も聞けました。そう言った『疾風怒濤』の皆さんは、ピクピクして呻いてるリーダーさんを背負い、足早にその場を去っていきました。
「あっ、なるほど。アル、アル家はこの一部屋だけなのよね?」
「そうだぞ。中々良いんだぜ、雨漏りもしねえからな」
「ライ。地下室を作る時に出る土で、この部屋も補強してあげたら? 本当なら二階も作れたら良いんだけど、余り目立つと別の厄介事が起きそうだから止めておきなさいね」
「うん。外観はそのままにするつもりだよ。出入口もそのままにしておくね。じゃあ、やっちゃいます」
興味津々で、わくわくした顔のアルを今は放っておいて、僕はしゃがみ込み、地面に手を付くと、土いじり開始です。
「ん~と、二十メートルくらい深さがあれば良いかな。ぐるぐる~、ほいっと!」
ボコっと寝台用の木箱とは反対側の壁際に穴が開き、どんどん階段を下に向けて作っていきます。
だいたい二十メートルほど地下まで下りた後は持ち運びハウスがゆっくり置ける広さの空間を作り、あっという間に地下室は完成です。
後は上の部屋の内側をガチガチに固めて石より頑丈にした壁と天井を作って、光の魔道具も取り付けておきました。
「ほへぇー! ライお前の魔法すげえな! これなら絶対雨漏りもしねえぞ!」
「後は水の出る魔道具も置いてっと。こうおけば水汲みもしなくてすみますよ」
「おおー! 良いのか! 共同の井戸まで結構遠いからよ、助かるぜ。階段も気になるけど······表の奴ら大丈夫か? ざわざわしてるから結構集まってるみたいだぞ」
アルの言う通り、外には二十人ほどの気配がしています。騒ぎだして余り時間は経っていませんが、ここから出る姿を見られるのは駄目ですし、転移で外に出るしかないですね。
「アル。あのSランクのお兄さん達が暴れちゃうとここに住む皆さんが怪我しちゃいますから、出ていきましょうか。バレないように。テラ、アミーも手伝ってね」
「そうね。大切な開拓民達だものね」
「テラ様、それはまだ決まっておらんのじゃがな」
「まあ、俺が言えばおさまるかも知れねえが、ここの出入口が見付かるとなぁ」
「それは大丈夫ですよ。まあ、やっちゃいますね。アルは声を出さないようにお願いしますね。転移!」
パッ
僕達はちょうど真上、屋根の上に転移で移動しました。
アルは口を押さえてなんとか声を出さないようにできたみたいです。
「お前ら何なんだよ! 俺達はガキを四人探してるだけだ! 怪我したくなかったらさっさと教えな!」
僕達は声のする方へ移動すると。
「知らねえなぁ。あんたら冒険者だろ? ここには冒険者もいるが、そんないきり立って探している野郎に、スラムの仲間を売るような奴はいないぞ」
「あの~。お兄さん達、探してるのって僕達の事ですか?」
集まってきていたスラムの方達は手に木の棒とか、フライパンとか色んなものを持って、取り囲んでいましたから、これはもう隠れているとみんなが危ないと思い、声を出しました。
スラムの人達と、Sランクのお兄さん達は、屋根の上から覗く僕達四人を見上げ、あの冒険者ギルドで殴りかかってきたお兄さんが怒鳴り付けてきました。
「お前ら! そんなところに上っていやがったか! 下りてこい! 俺達を馬鹿にした事を後悔させてやる!」
「じゃあ、みんなはここで待っていてね。話を付けて来るから」
そう言って僕はぴょんと屋根から飛び下りて、お兄さん達の前に着地しました。
「良い度胸だ! ふん!」
いきなり殴ろうとするのですね! 伸びてきた拳をしゃがんで地面に手をつきながら躱し、さらに踏み込んでこようとした足の爪先を、土魔法で動かないようにしてあげました。
「なに! 避けたか! まだだ! これでもくらっ! がぁ!」
すり足で前に出そうとした足がビクとも動かず、バランスを崩しました。
「しっ!」
足が動かなかったので、動き出していた上半身だけ前に出て、くの字になったところを今度は僕が立ち上がり、前に踏み込んで、お腹を蹴ってあげました。
「ピギャ!」
あっ······流石Sランクです。お腹を蹴るつもりが僕の蹴りに反応したまでは早かったのですが、狙いのところから動いて、お兄さんのおちんちんを蹴ってしまいました。
「あわわ! 大丈夫ですか!」
「··················」
「だ、大丈夫じゃないみたいですね。お腹を蹴ろうと思っていたのですが、流石Sランクです。あそこから動いてくるとは思わなかったので、狙いが外れてしまいました。ごめんなさい」
お兄さんは、うつ伏せで、お尻を上げたままの格好でピクピクして返事もできないようです。
「リーダーがやられたぞ、嘘だろ? 何者だよ」
「あっ、えっと『疾風怒濤』の皆さんあのですね、僕もSランクなので、そうおかしな事ではありませんよ」
そう言ってギルドカードを見せてあげました。
「マ、マジかよ! 俺達はSランクパーティーで、個人はリーダー以外Sランクじゃねえんだぞ······それなのにこんな子供がSランク······」
「はい。ですから僕が勝ってもおかしくはないのです。お兄さん達もSランクパーティーなのですから、横入りとか本当に止めた方がいいですよ」
「おい、やべえぞ、俺達だけじゃやられるだけだ」
「リーダーも油断してっからやられるんだ、仕方ねえ、リーダー連れてここは引くぞ」
「く、くそ! 覚えてやがれ!」
おお! ちょっと気の毒なことをしちゃいましたが、お説教もできましたし、『覚えてやがれ』も聞けました。そう言った『疾風怒濤』の皆さんは、ピクピクして呻いてるリーダーさんを背負い、足早にその場を去っていきました。
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