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第五章
第227話 好敵手かも知れませんね
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「凄い人出ですね。お祭りのようです」
「ほんとね。あっ、ライ、その石畳の隙間から生えてる子にするわ。こんな隙間に生えるなんてこの子ったら。よいしょ。うん、やっぱり元気はないみたいね」
「なんの花じゃ? 見た事ないのう」
「はい。僕も見た事ないですね。でも紫色でしょうか、小さくて可愛いお花です」
テラはしゃがみこんでスポっとその紫色の花を抜くと頭に『えい!』と刺して、うんうんと頷いてます。
「これはスターチスって花よ。こんな人通りも多いしよく踏まれずに咲いたわねって。まあ今度どこか良い場所に植えてあげましょう」
「ここに来る途中の山とか草原でも良いかもしれませんね。お屋敷でもその色の花は見た事ありませんから、母さんが喜ぶかもです」
「そうね。これはドライフラワーにしても色褪せないから部屋の飾りにするのも良いわよ」
「ふむ。おっ、あそこが冒険者ギルドのようじゃな。昼間に中々賑わっとるようじゃが何かあったのかの?」
門から入って、大通りを少し行ったところにあった凄く大きな冒険者ギルド。アミーの言う通り、人の出入りも多いみたいです。
早速僕達も冒険者ギルドに入って依頼を受けようと受け付けに並んだのですが、面白い声が聞こえてきました。
「聞いたか? ダンジョン攻略で凄いヤツが出たらしいぞ」
「おお。なんでも十五年ぶりに記録更新したらしいな」
「そのパーティーが持ち帰った地龍の素材が競売かけられるらしい。それも教皇を初めとする枢機卿達も参加するって話だ。史上最高額の取引になるのは間違いないだろうな」
「かぁー、黒貨に届くんじゃないかってヤツだろ? 龍の血で造る薬はなんでも不治の病でも治してしまうってよ。俺も欲しいぜ」
「俺もな。手に入ったらこの頭に塗るぜ。ハゲがヤバいんだよ······こんなのじゃ彼女もできねぇ」
あはは······若そうですが、頭のてっぺんがツルツルしちゃってますね。確かにお顔は中々格好いいですのに。あれなら全部ツルツルにした方が格好いいのにと思っちゃいます。
でも、ダンジョンの最高記録更新ですか。くふふふ。それは挑戦したいですね。
そんな噂話を聴きながら長い列を作っているのは、やはりダンジョンの依頼を請ける方が近隣の街から集まってきたからのようです。
列は、十人もいる受け付けさんのお陰でどんどん進み、僕達の番になりました。
「こんにちは。ダンジョンカードをもらいたいのですが」
「はい。すぐに用意しますね。三人パーティーですか、ギルドカードを出してくれますか」
「はい。それと、何階層が最高記録なのですか?」
僕達はギルドカードを出しながら受け付けのお兄さんに聞いてみたのですが。
「預かりますね、最高記録は五十一階層ですよ。五十階層に地龍が出たそうです。えっと、君達は······え? Sランク······え? えぇぇぇぇー! さ、三人ともSランクじゃないですか! しょ、少々お待ち下さいませ! す、すぐにご用意いたしますです!」
くふふふ。『えぇぇぇぇー!』いただきました。まわりの人達も『マジかよ!』『あんな子供達が!?』『Sランクパーティーが二組もこの教都にいるってのかよ!』とか、ちょっとした騒ぎになっちゃいましたね。
ですが、記録を塗り替えた方達もSランクのパーティーですか。それは好敵手ですね。負けませんよ。
「お待たせいたしました。ダンジョンカード登録完了です。ギルドカードもお返しします」
「ありがとうございます。場所はどこになりますか?」
「はい。大通りを大教会に向かっていただくと、すぐに広場がありまして、そこにあります。教会の騎士団が入口を管理していますので、すぐに分かると思います」
「教会が管理しているダンジョンなのですね。分かりました、早速ちょっと覗きに行ってきますね」
「はい。お気を付けて」
ギルドカードとダンジョンカードを受け取り、ギルドを出ようとすると、僕達の進む方向が、ザザっとみんなが避けてくれて道ができちゃいました。
「お前達がSランク? ガキじゃねえか。こんなガキがSランクなら俺でもなれそうだな」
「ん? こんにちは。そうですね、物凄く頑張れば皆さんでもなれると思いますよ」
ちょうど出口をくぐろうとした時に、ガキって言われましたけど、僕とそう変わらない子が声をかけてきました。
「俺は今日登録したところだがすぐに追い付いてやるぜ」
「おお! これからですね、頑張って下さい」
「おう。そうだ、ダンジョン行くんだろ? 俺も薬草採取依頼を請けたからよ、一緒に行こうぜ。ちょっと話も聞きたいんだ」
「良いですよ。では行きましょう」
冒険者ギルドを出て、大通りを進みながらお話ししていると。
「――そうです。このスコップだと簡単に土が掘れますから根っこまで簡単に採取できるのですよ」
「おお! スゲーな! 俺は引き抜きゃ良いと思っていたぜ! ありがとうなライ。Sランクのお前が何年も薬草採取とゴブリン、オークかよ。俺も頑張らないとな」
この子はアルと言って、今年十歳になったところだそうです。この街の生まれで、出た事もないそうですが、将来はこの大陸を旅して回りたいって夢があるそうです。
「アルも少しずつやっていけばなれますよ。あっ、あれかな入口」
「そうだぜ。あそこで出入りの人数を数えてるんだ、銅貨五枚の入場料をはらって入るんだ。俺はタダだけどな。見習いだからよ」
「入場料を取られるダンジョンは初めてですね」
そしてそのままギルドカードを出してダンジョンに入っていくアルの後に続いて、大銅貨一枚と銅貨五を枚支払い、僕達もダンジョンに入りました。
「ほんとね。あっ、ライ、その石畳の隙間から生えてる子にするわ。こんな隙間に生えるなんてこの子ったら。よいしょ。うん、やっぱり元気はないみたいね」
「なんの花じゃ? 見た事ないのう」
「はい。僕も見た事ないですね。でも紫色でしょうか、小さくて可愛いお花です」
テラはしゃがみこんでスポっとその紫色の花を抜くと頭に『えい!』と刺して、うんうんと頷いてます。
「これはスターチスって花よ。こんな人通りも多いしよく踏まれずに咲いたわねって。まあ今度どこか良い場所に植えてあげましょう」
「ここに来る途中の山とか草原でも良いかもしれませんね。お屋敷でもその色の花は見た事ありませんから、母さんが喜ぶかもです」
「そうね。これはドライフラワーにしても色褪せないから部屋の飾りにするのも良いわよ」
「ふむ。おっ、あそこが冒険者ギルドのようじゃな。昼間に中々賑わっとるようじゃが何かあったのかの?」
門から入って、大通りを少し行ったところにあった凄く大きな冒険者ギルド。アミーの言う通り、人の出入りも多いみたいです。
早速僕達も冒険者ギルドに入って依頼を受けようと受け付けに並んだのですが、面白い声が聞こえてきました。
「聞いたか? ダンジョン攻略で凄いヤツが出たらしいぞ」
「おお。なんでも十五年ぶりに記録更新したらしいな」
「そのパーティーが持ち帰った地龍の素材が競売かけられるらしい。それも教皇を初めとする枢機卿達も参加するって話だ。史上最高額の取引になるのは間違いないだろうな」
「かぁー、黒貨に届くんじゃないかってヤツだろ? 龍の血で造る薬はなんでも不治の病でも治してしまうってよ。俺も欲しいぜ」
「俺もな。手に入ったらこの頭に塗るぜ。ハゲがヤバいんだよ······こんなのじゃ彼女もできねぇ」
あはは······若そうですが、頭のてっぺんがツルツルしちゃってますね。確かにお顔は中々格好いいですのに。あれなら全部ツルツルにした方が格好いいのにと思っちゃいます。
でも、ダンジョンの最高記録更新ですか。くふふふ。それは挑戦したいですね。
そんな噂話を聴きながら長い列を作っているのは、やはりダンジョンの依頼を請ける方が近隣の街から集まってきたからのようです。
列は、十人もいる受け付けさんのお陰でどんどん進み、僕達の番になりました。
「こんにちは。ダンジョンカードをもらいたいのですが」
「はい。すぐに用意しますね。三人パーティーですか、ギルドカードを出してくれますか」
「はい。それと、何階層が最高記録なのですか?」
僕達はギルドカードを出しながら受け付けのお兄さんに聞いてみたのですが。
「預かりますね、最高記録は五十一階層ですよ。五十階層に地龍が出たそうです。えっと、君達は······え? Sランク······え? えぇぇぇぇー! さ、三人ともSランクじゃないですか! しょ、少々お待ち下さいませ! す、すぐにご用意いたしますです!」
くふふふ。『えぇぇぇぇー!』いただきました。まわりの人達も『マジかよ!』『あんな子供達が!?』『Sランクパーティーが二組もこの教都にいるってのかよ!』とか、ちょっとした騒ぎになっちゃいましたね。
ですが、記録を塗り替えた方達もSランクのパーティーですか。それは好敵手ですね。負けませんよ。
「お待たせいたしました。ダンジョンカード登録完了です。ギルドカードもお返しします」
「ありがとうございます。場所はどこになりますか?」
「はい。大通りを大教会に向かっていただくと、すぐに広場がありまして、そこにあります。教会の騎士団が入口を管理していますので、すぐに分かると思います」
「教会が管理しているダンジョンなのですね。分かりました、早速ちょっと覗きに行ってきますね」
「はい。お気を付けて」
ギルドカードとダンジョンカードを受け取り、ギルドを出ようとすると、僕達の進む方向が、ザザっとみんなが避けてくれて道ができちゃいました。
「お前達がSランク? ガキじゃねえか。こんなガキがSランクなら俺でもなれそうだな」
「ん? こんにちは。そうですね、物凄く頑張れば皆さんでもなれると思いますよ」
ちょうど出口をくぐろうとした時に、ガキって言われましたけど、僕とそう変わらない子が声をかけてきました。
「俺は今日登録したところだがすぐに追い付いてやるぜ」
「おお! これからですね、頑張って下さい」
「おう。そうだ、ダンジョン行くんだろ? 俺も薬草採取依頼を請けたからよ、一緒に行こうぜ。ちょっと話も聞きたいんだ」
「良いですよ。では行きましょう」
冒険者ギルドを出て、大通りを進みながらお話ししていると。
「――そうです。このスコップだと簡単に土が掘れますから根っこまで簡単に採取できるのですよ」
「おお! スゲーな! 俺は引き抜きゃ良いと思っていたぜ! ありがとうなライ。Sランクのお前が何年も薬草採取とゴブリン、オークかよ。俺も頑張らないとな」
この子はアルと言って、今年十歳になったところだそうです。この街の生まれで、出た事もないそうですが、将来はこの大陸を旅して回りたいって夢があるそうです。
「アルも少しずつやっていけばなれますよ。あっ、あれかな入口」
「そうだぜ。あそこで出入りの人数を数えてるんだ、銅貨五枚の入場料をはらって入るんだ。俺はタダだけどな。見習いだからよ」
「入場料を取られるダンジョンは初めてですね」
そしてそのままギルドカードを出してダンジョンに入っていくアルの後に続いて、大銅貨一枚と銅貨五を枚支払い、僕達もダンジョンに入りました。
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