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第五章

第223話 教国との国境

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「ナガト男爵さん。門前に転移させますのでってその前に、怪我してる人がいたら治してしまいますよ? 教会で高いお代を払わないといけなくなりますから」

「そうですな。その話を聞いた後では行く気にもならないですし。怪我があるものは申告して下さい。ライ殿が回復魔法をかけてくれますよ」

「そうでした。ナガト男爵さん『回復魔法』と『手当て』の教本がありますから、一部ずつ渡しておきますね。後で写本して街に配れば結構使える方もいると思いますよ」

「おお、それに捕らえられているものは使える。と言うわけですな」

「うんうん。分かってますね。さあ並んで下さいね、順番に治していきますよ~」

 切り傷、擦り傷は簡単ですが、骨折の方と、指先を噛られちゃった方は少し時間がかかりました。なんとか綺麗に直りましたが流石に爪を生やすのには時間が一番かかりましたよ。

「いや······流石と言いましょうか、欠損まで治せるとは。教皇や聖女でも成功したと聞いたことがありませんぞ。おっと、私の兵士達を治療していただきありがとうございます」

「いえいえ。じゃあ王都前に送りますね」

「よろしくお願いします。ではまた遊びに来て下さいね。空や湖をまた飛びたいです」

「くふふふ。はい。では行きますよ! 転移!」

 パッ

「お待たせ。じゃあ旅に戻りましょう。ほいっと。アミーは背負子ね」

「うむ。たまには私もお姫様抱っこにしてもらいたいが、テラ様を差し置いてやってもらう訳にもいかんしのう」

「じゃあこうしましょうか? 私が小さくなって、ムルムルと一緒に肩に乗って、アミーがお姫様抱っこをやってもらう?」

「いや。テラ様、我慢しておくのじゃ。もし敵が来た時ドキドキして魔法が撃てる気がせんのでな」

「あらあら。アミーって恥ずかしがり屋ね。まあ良いわ、行きましょう」

「うん。じゃあ飛ぶ前にちょっとだけお姫様抱っこしちゃいましょう。ほいっと」

「きゃ! ラ、ライ、い、いきなりなんて事を! お、下ろすのじゃ、は、早う」

「くふふふ。ライ、ちゅってしてあげなさい。そしたらアミーも満足するでしょ」

「うん。ちゅ。はい、アミーまた今度ゆっくりできる時もあるから今は我慢してね」

 アミーは、ぽーっとしちゃいましたから、浮遊で浮かせて背負子に乗せて、テラをお姫様抱っこして街の上空に転移しました。

「じゃあ先に進みましょう。そうです。テラにも、ちゅ」

「も、もう。ほらほらまだまだ遠いんだから頑張りなさいよ」

 その後も、街道を辿るように飛翔です進み、夕方までに、三つの街を回って今夜はその三つ目の街で泊まることにしました。

 翌朝からもどんどん北へ飛び、馬車でも数十日かかる道のりを三日で飛び、教国の国境にたどり着き、そして入門の列に並んでいるのですが······。

「動きませんね? どうしたのでしょうか」

「そうね、このままじゃ日が暮れちゃうわよ。今日は国境の街にも入れなさそうね」

「そうじゃな。前の方でテントを張り出しておる者もおるしの」

 見ると、馬車の方も、歩きの方もテントを張り出しています。

 そして街の方から馬に乗って何やら待っている人達に向かって話をしながら来る方達がいます。

 そしてその声が僕達にも聞こえるようになってやっと進まない理由が分かりました。

「跳ね橋の故障とはね。それは進むわけ無いわ。とりあえず今日はここで泊まりね」

「うん。じゃあ持ち運びハウスでさっさと休んじゃいましょう」

 回りの方もテントを張り出したり、焚き火の用意を始めましたので僕達も街道脇に持ち運びハウスを置いて、さっさと中に入りました。

 簡単に夕ごはんを食べて外も暗くなりましたのでお風呂に入り、さあ寝ようって時に玄関の戸が叩かれました。

「誰でしょうか?」

「そうね? 知り合いとかいるわけ無いし、あれじゃない? ライの好きなやつ」

 ······っ!

「おおー! そう来ますか! くふふふ。じゃあテラとアミーはソファーでくつろいでいて下さい」

「何よ、私も仲間に入れなさいよ。ほらアミーも行くわよ」

「ん? なにか良く分からんが皆で出迎えるのじゃな」

「でも一応僕の後ろにいて下さいね」

 二人が頷いてくれましたので、三人でソファーから立ち上がり、玄関へ。

 まだ、コンコン、ドンドンと叩かれ続けていますので、慎重に声をかけてみました。

「はい。どちら様ですか?」

 すると戸を叩く音が止まり。

『すぐに戸を開けなさい! 枢機卿様がおられるのだぞ!』

 枢機卿ってことは!

「テラ、アミー。当たりですよ♪ は~い♪ 今開けますね」

 テラはいたずらっ子のかおで頷き、僕もたぶん同じような顔をしているはずですが、アミーはまだ分かってないようですね。

 鍵を開け、戸を開けると。

「ぐずぐずしおって! すぐ出てこい! この持ち運びハウスは枢機卿様が今宵使う事とする! 貴様等は即刻明け渡すのだ!」

「嫌ですが。あなた方は盗賊ですね、捕まえてあげます」

「なんだと! 無礼な! こちらの枢機卿様は教国貴族、子爵の地位でもあるのだぞ! 不敬罪で叩ききって!?」

 僕はナイフを取り出し、名乗りをあげます。

「初めまして。僕はパラジウム国王貴族、ライリール・ドライ・サーバル辺境伯当主です。それと――」

 僕達は冒険者ギルドのギルドカードを取り出し、外にいた白いローブを羽織り、偉そうにふんぞり返っているぷよぷよに太った人と、十人の護衛さんに見せてあげました。すると――。
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