上 下
218 / 241
第五章

第218話 祝福されましたよ

しおりを挟む
「ふぁ~、朝ですね。あっ、テラが大きく戻っています。ちゅ」

 テラは大きくなって、左脇にくっついて寝ています。アミーは反対側でやっぱり僕のお腹を枕にして、シトリーはアミーのお腹の上です。

 夜と同じように浮遊で浮かせて、寝台から抜け出しました。

 キッチンでお湯を沸かし、お茶の用意と、目玉焼きに腸詰めを焼いておきます。

 パンも軽く焼いて、収納しておきました。

 少しして、みんなも起きて来ましたので朝ごはんを食べました。

 そして僕達は持ち運びハウスをしまい、ダンジョン攻略の報告をしに行かないといけませんので、今回のダンジョン攻略はここまでにします。

「皆さん色々とありがとうございます。えと、その、また遊びに来て下さいね」

「うん。もちろんだよシトリー。また遊びに来るから心配しないでね」

「そうよ、転移で来ればすぐだもの。それにガープの事だってライに任せておけば、すぐにやっつけておくから――」

「っ! ああー! 忘れてました! シトリー、ガープは昨晩やっつけましたよ! それにちゃんと悪いの抜いて、お義父さんに引き渡したのでこれからは心配しなくて大丈夫です」

 シトリーは、目をこれでもかと見開き、驚いているようです。

「え? 私達が寝ている間に倒しちゃったの? それにパパったらまた私の事を覗いてたって事ね! ママに言ってお仕事増やしてもらわなきゃ!」

「テラ、今回はちゃんとお仕事していたみたいですよ。だって、僕がテラの真似をして、裂け目を開けてから来てましたし」

 寝てるところを覗いたのは内緒にしておきましょうね。

 ん? テラがシトリーと同じように固まっちゃいました。

「ふむ。あの悪戯好きのガープをのう。ヤバそうになったらすぐに逃げるあやつをか。ライ凄いの」

「え? え? それじゃあもうダンジョンを荒らしに来たり、妖精の国に行ったりしないって事ですか?」

「うん。良い子になりましたからね。安心して良いですよ」

「や、や、やったぁぁー! これでやっと妖精の国も、私のダンジョンも心配事から解放されますよー! ライありがとうー!」

 シトリーは僕の顔に飛び付いてきて――!

「妖精の加護をあげちゃいます! ほんのちょっと運が良くなるだけですけど、本当にありがとう! むむむむー!」

 シトリーが僕のおでこに手を添えて、何か暖かいものが流れ込んできました。

「ふむ。妖精の加護をのう。中々授かることはないぞ? 良かったのうライ」

「そうなのですね、ありがとうシトリー」

 そこでやっとテラが動き出しました。

「ラ、ライ。あなたあれを開けたの?」

「前にテラがやっていたのを思い出しながらですよ? 難しくて、凄く魔力が要りましたけど、大人の人が通れるほどは開いて、ガープを押し込もうとしたのですが、そこでお義父さんが来てくれましたよ」

(どういう事なの? あれはそう簡単な事ではないわよ······んん神眼~! あっ! くふふふ。そうなのね、ライったら流石だわ)

 なにかテラは納得したような顔で、うんうんと、頷いていますけど、まあ嬉しそうですから良いですよね。

 その後も凄く機嫌が良いままで、僕達はシトリーに見送られ、ダンジョンを出ました。

 そして訓練所に転移で戻った僕達は今、冒険者ギルドの受け付けに並んでいます。

「だいぶ混んでますね? やっぱり新しいダンジョンが見付かったからかな?」

「そうじゃない? それに採取できるものが増えたのだから、それだけ依頼も出てくるだろうし、請ける人も沢山いるわよ」

「そうじゃな。特に一階層は冒険者見習いでも十分請ける事も可能じゃし、これからもっと増えるじゃろな」

 そんなお話をしていると、三十分ほどで僕達の番になり、空いたお姉さんの所に。

「おはようございます。ダンジョン攻略で報告に来ました。ダンジョンカードとギルドカードです」

「はいおはようございます。預かりますね――ひっ! S! しょ、少々お待ち下さい。すぐに処理いたします!」

 そう言うとお姉さんは凄い勢いでギルドカードとダンジョンカードを魔道具に通し、魔道具をじっと見て、通したダンジョンカードを見て、また魔道具。何度か繰り返してカタカタと震えだしましたから、これは来ますね♪

 あっ、口を開き始めましたよ!

(本当な好きねライ。まあ私も嫌いじゃ無いけどね)

「えぇぇぇぇぇぇー!」

 来ましたぁぁー!

 ざわざわと騒がしい朝のギルドがお姉さんの声で視線が集まり、誰一人声を出す者がいなくなりました。

 そこに奥からギルドマスターさんが一人で近付いてきます。

「どうした? なにか問題でもあったか?」

「ギルドマスター! これを、先日発見されたダンジョンが!」

「ダンジョンがどうした。······へ? ダンジョンが······完全攻略だとぉぉぉぉー!」

 ギルドマスターが叫んで、何があったのか分かった冒険者達は、口々に――!

「あんな子供が完全攻略だと!?」

「あっ! あの肩のスライム! ねえあれって『スライム使い』なんじゃないの!?」

「俺、聞いたことあるぞ! 間違いない。ってかおめでとう!」

その祝いの言葉の後は『おめでとう』と拍手、歓声がギルドを包みました。

 騒がしくなったギルド内ですが。

「そうなのです、何度も見て確認しましたが、カードにも、魔道具にもそう出ています!」

 こっちは真剣な顔でお話が続いています。

「って、君達か! 新ダンジョン発見したのは二日前だぞ!」

「あっ、おぼえていてくれたのですか。その通りですね。昨日の朝からもぐってました」

「なんて事だ。君達、おめでとう」

「おめでとうございます」

 ギルドマスターさんと受け付けのお姉さんが僕達にお祝いの言葉をくれたのですが······。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...