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第五章

第212話 焼いてみましょう

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「おはようございます、ダンジョンに潜りに来たのですが、昨日ギルドカードとダンジョンカードを返してもらうの忘れてました。なので返してもらえませんか?」

 朝起きてから気が付いたのですが、そうなのです。完全に忘れていました。ダンジョンカードだけならまだしも、ギルドカードすら返してもらっていませんでした。

「え? あなたお名前は?」

「僕はライで、こっちはテラで、こっちはアミーです。昨日新ダンジョン見つけた時に渡したままです。他の書類とかはもらったのですが」

「あっ! そうです! 昨日の子達よね、ちょっと待ってて下さいね、ギルドマスター、Sランクのお三方がギルドカードとダンジョンカードを取りに来ましたよー」

 受け付けのお姉さんは奥にいた、ギルドマスターさんを呼んでくれました。僕達の方を見たギルドマスターさんは、机の引き出しからたぶん僕達のカードを出して、こっちに向かってきてくれます。

「おはよう。すまなかった、スコップの事で頭がいっぱいで、昨日渡すのをすっかり忘れていてな。はい」

「ありがとうございます。僕達も完全に忘れていましたから。僕達はダンジョンに行こうと思ってますが、もう大丈夫ですか?」

「ああ。朝一番に公開した。今日はもう何パーティーかすでに採取依頼を請けてもぐってるぞ。まあ君達は攻略を目指すんだろうから、頑張ってくれ。もし、良さそうな物があればまた教えてもらえると助かる」

「はい。色々採取してきますね。では行ってきます」

 訓練所に行き、奥の階段から降りて一階層へ。

「じゃあ、三階層に行っちゃいましょう。転移!」

 パッ

「まだ流石にここまでは誰も来てないようですね。それじゃあロックバイパーとニンニクを採取しながら進みましょう。でも今日は全部は採っちゃ駄目ですよ」

「そうね。後から来る人に残しておいてあげなきゃね。だったら次の階層にまっすぐ進んで、そこに出てきたり、あるものだけ採取すれば良いじゃない。えっと、方向はあっちね」

「うん。それじゃあ行きましょう」

 それからまっすぐ次の階層へ進み、また同じように次の階層へ。

「ウインドカッター! よいしょ!」

 木の上の方にある、葉っぱの付け根にあった木の実をウインドカッターで切り取り、落ちてきた物を受け取ります。

「大きいのじゃ! なんじゃその木の実は」

「ヤシの実ね。中に美味しいジュースが入ってるわよ」

「おおー! それは良いですね。ちょうどお昼ごはんの時間ですからさっきのキングクラブとこれを食べちゃいましょう」

 朝に三階層から攻略開始して、今は二十一階層。

 二十一階層はなんと海で、この先には船がないと行けないという事で、僕達は海賊船を浮かべ、海の真ん中にある小さな島にやって来たところです。

 そこに上陸して火を起こし、お昼ごはんの用意です。

「しかし色々な食材が採れて、魔物もそう強いものがおらず、良いダンジョンじゃな」

「うん。ここまでの魔物は食べれるのばかりでしたし、採取できる食べ物も沢山ありました。でもみんなが来れるのはしばらく二十階層までですね、この海を渡らないといけませんし、海の魔物は大きな船には大したことありませんが、小舟だとひっくり返されますよ」

「それに、風がないから魔道具の船にしなきゃ、ライみたいに帆へ風を当て続けられなきゃ進めもしないわよ」

 パン

「ぬ! 栗が弾けたか? 切れ目を入れたのじゃが足りんかったかの?」

「みたいだね、でも弾けるまで焼けたなら、そろそろ食べれそうだよ」

 フライパンに切れ目を入れた栗を沢山詰めて、弾けて飛んでいかないように蓋をして焚き火に入れてあったのです。フライパンを焚き火から取り出し蓋を開けると、一つだけ弾けてますが他の栗は良い感じに焼けているようです。

「ふおー、良い感じではないか! 冷めるのを待たねばならんのが難儀じゃな。キングクラブの方もそろそろ焼きあがるのではないのか?」

「ちょっと待ってね、んん神眼~、まだまだよ、殻がすごく分厚いから中に中々火が通らないのね、ライ、焼けるまでまだまだかかるから、ヤシの実ジュースを飲んでみましょう」

 ヤシの実を収納から出して、ナイフで殻を斬りましょう。

「しっ!」

 左手で持ったまま、サクっと上の方を斬ると、中にはたぷたぷ透明なジュースが入っていました。三つカップを出して注ぎ入れ、前に教えてもらった魔法で冷やしておきます。

 二人に渡して、一口飲むと――!

「美味しいような、なんだか微妙な味だね?」

「そうね、まあ海で、塩水しか無い時にこれがあると助かるから良いのだけど、ライなら普通に水も出せるし、収納に果物も沢山入ってるから必要無いかもね」

「うむ。なれれば美味しいのかも知れぬが、好んで飲もうとは思わんのう。まあこんな事もあるじゃろうて、どれ、栗は······うむ、触れる熱さになったのじゃ、どれどれ······はぐっ――! これは甘いのじゃ!」

「そうなの? 一つもらうわね······はぐはぐっ! 良いわね、ほくほくだし、これは当たりよ」

「うん。今度マシューにこれでお菓子も作ってもらいましょう! ······で、あなたは何者?」

 ずっといたのは分かっていたのですが、岩影に隠れてずっとこちらを見ていたので放っておいたのです。でも栗を食べ出したら、岩影からそろそろと出てきたので声をかけました。
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