【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

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第五章

第197話 峠で人助け

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「ぐるぐる~、ほいっと!」

 ズンと馬車の下から土を柱のようにして下から押し上げ、車輪の外れ、壁に寄りかかっていた馬車を水平にしました。

「おお! これは素晴らしい! 助かりましたぞ! 全部荷物を下ろして修理せねばと思っておりました」

「いえいえ。これなら取り付けはすぐできそうですね」

「はい。ありがとうございます。すぐに直してしまいますね」

 峠を登り初めて一つ目の休憩所を過ぎ、止まらず進んでいると、岩壁にもたれ掛かって斜めになっている馬車を見付けました。

 そこは、馬車が一台やっと通れる場所で、歩きの方は良いのですが、馬車はもちろん追い抜くことも、向こうから通り抜ける事もできなくて、渋滞が起きていたのです。

 なので僕は、手助けをしているところです。

「鉄鋼石ね、あんなの下ろしていたら、ここで泊まりになっていたでしょうね」

「そうじゃな、このような水場もない場所で夜営なんぞすれば、馬達が可哀想じゃ。のうライ、この切り立った崖を広げられるかの? そうじゃな、馬車の倍の高さまで壁をえぐり、その石や大岩を使い、上に屋根をつけるのじゃが、半円形にすればさらに強度が増すぞ?」

「ん~、トンネルですね、固そうな岩ですからやってみましょうか、この狭いところが五十メートルほどですから」

 僕はテラをお姫様抱っこから下ろして、しゃがみこみ。背負子に乗るアミーの足が地面に付くのを感じながら地面に手をつき、イメージしていきます。

 そうですね、馬車が三台並んで通れるくらいにして、高さはアミーの提案通りに。

 天井はアーチにすれば良いんだよね、あっ! そうです、歩行者用の歩く場所も一段上げて、両側に、ここも三人が並んで通れるようにしちゃいましょう!

 やっちゃいますよ~! ぐるぐる~。

「ふむ。魔力の使い方が上手いのう」

「私も初めて見た時驚いたわ。凄く滑らかに、そして滞りなく回し続けているのよ、古代魔法が使われなくなって、長いけど、使っていた時でもライほど上手い使い手はほとんどいなかったわ」

「私と同等、いや、まだ若さゆえ、遊びがあるが、先が楽しみじゃな。······おい、この魔力の多さはなんじゃ? ライの持つ魔力がぐんぐん増えて行くぞ!? これは······膨大な量の魔力ではないか!」

「くふふふ。驚きでしょ? あなたにできる? 魔王と呼ばれる『魔法王』のあなたに」

「ぬぬぬ、あっ、なるほどのう、くくく、やり方が分かったところで私には無理じゃな。今はの」

「あんな発想私にも無かったもの。それにライは私の神力も操るし、ただの魔力を神力にする事も容易くやってしまうのよ、ほんと呆れるくらいだわ」

「なんと、神力をか、ふむそれは是非私も体得したいものじゃな」

 後ろでテラとアミーが楽しそうにお話ししていますが、こっちも良い感じに魔力が集まりました。

 沢山のオークとゴブリンだと思いますけど、この先の一か所に沢山集まっていたので、全部いただきましたからね、立派な物ができそうです。でも、スタンピードでも起こりそうな数ですから、後でやっつけておきましょう。

「じゃあ準備ができましたよ~、ぐるぐる~、ほいっと!」

 ゴゴゴと地響きをさせながら、両脇にある岩壁が形を変え、左右にどんどん広がっていきながら、その両側、高さは十五メートルほどのところから岩が付き出してきて、ちょうど真ん中でくっつき、どんどん分厚くなっていきます。

 そうだ! フランスだったかな? バリじゃなくてパリ! パリのシャンデリア? まあ良いや、凱旋門はお祖母さんに見せてもらいました、綺麗な彫刻······アクーパーラとヒュドラも良いですね、ゴブリン村長やそうだ、御神樹も彫っちゃいましょう!

「あっ、ライったらまた悪ふざけを、でも、これは良いわね、アクーパーラとヒュドラ、それに御神樹を真ん中にして支えているように見えるわ」

「ほう。これは中々。じゃがなぜゴブリンや角ウサギ、こっちはハサミエビかの? おおー! ナインテールまでおるぞ! 中々の力作じゃが。······待っておる者達が驚いておるな······」

「いつもの事よ、ライ、終わったら、その魔力を集めていたところのやっつけるのでしょ?」

「ちょっとスタンピードが起きそうなくらいは集まっていましたからね。っと。うんうん完成です♪」

「あの君、君があれをやったのかい?」

 馬車の車軸を取り換えているおじさんが聞いてきました。

「はい。あっ、終わったみたいですね、馬車を下ろしますね、ぐるぐる~、ほいっと! はい終わりましたよ」

 そ~っと柱を縮めるようにして馬車を下ろして完了です。

「じゃあテラ。お姫様抱っこするよ、ほいっと!」

 テラをひょいっと抱っこして、首にてを回してくれたので。

「じゃあおじさん。僕達は行きますね」

 走り出すと後ろから『え?』とか『お礼を!』とかいってましたが、まあ良いですよね。

 せっかく作ったトンネルですから一番乗りで、通りたいですからね。

 五十メートルですからすぐに終わっちゃいますけど、トンネルの向こうの方も、急にできたトンネルで驚き、止まっていてくれたので、一番乗りができました。

 少しゆっくり目に走っていましたが、ここからは速度をあげて魔物がいる方に、向きを変え、森に入ります。

「枝を伝っていきますから舌を噛まないように気を付けて下さいね、ほいっと!」

(ねえライ、おかしいわよ、魔物が気絶している奥に、えっと、五十人はいないけど、人間もいるわ)

(そうなのですか? 固まっていましたから、みんな気絶させちゃいましたよ? あっ、もしかして、スタンピードが起こりそうだったから、監視に来ていたのかも知れませんね、もしそうなら、怒られちゃいます)

(そうね、称号にも何もないからその可能性は高いわ、どうしようかしら)

(ならば、魔物はやっつけて、収納してしまえば良かろう。みんなで居眠りして、その間に消えたと思ってくれるじゃろ)

((なるほどです!ないない))

(······あなた達ね、そんなの······まあ良いわ、ライそれでやっちゃいなさい)

(うん。あっ、森が開けますね、やりやすいところで助かりました。ではやっちゃいますよ! ウインドニードル!)

 まずは見える限りのゴブリンの集まりから。

 シュシュシュと数百数千とウインドニードルを飛ばして倒し、ゴブリンの集まりがほぼいなくなったその奥に、まるで追いかけていたようにオーク達が気絶してたおれています。

 そしてオークの次は······。
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