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第五章
第195話 魔王アミーと杖
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「では主任さんに見張りのおじさんも、僕達は行きますね」
「そっちの元衛兵長はしっかり働くのじゃぞ」
二人は、うん。と頷き、元衛兵長は下を向いたままですが、力無く頷きました。
さて、衛兵さんの詰所を出て、見張りのおじさんに教えてもらった、あの美味しいお菓子屋さんへ、三人で向かいましょう。
おじさんに描いてもらった地図を頼りに、大通りを進んでいます。
ふと思い出しましたので、ちょっと聞いてみましょう。
「アミーさんの魔法の杖ですが、魔力が内封されてませんよね? どんな効果があるのですか?」
「ん? これか? これはこの街に入る前に拾ったのじゃ、中々良いじゃろ? ここの節での曲がり具合とか、魔法の杖っぽい。前に持っていたのは寝ている間に薪として使ってしもうたからのう。あれはひねくれた枝で、結構気に入っていたのじゃが、勿体ない事をしたものじゃて」
「えっと、じゃあ」
「ただの枝よ。私が始めて魔王とあった時は、二股の杖を持っていたわよ」
なるほどです。それがないと駄目なんじゃなくて、たまたま気に入った物が魔法の杖っぽいだけだったのですね。
「うむ、あれはまだ大事に持っておるぞ、二股の片方が折れてしまったので紐で縛ってはあるのじゃが、大切にしまってあるのじゃ」
「ふ~ん。じゃあ今度良さげな枝を見付けたらアミーさんに贈り物をするね。······あっ! そうです! これはどうかな?」
僕はゴブリンのこん棒、細い棒ですが、根っこの近くですからくねくねと曲がっていて、叩くと痛そうな物の中でも、僕も気に入ってる物を一本出してみると。
「な、なんと! 歪に曲がりくねりひねり、それでいて持ち手の部分は太くなく細くもない! す、すまぬが持たせてもらえんかの?」
すごく眼がキラキラして、可愛い顔をしながらゴブリンのこん棒に目が釘付けです。
僕はアミーさんに差しだし。
「どうぞ、中々格好いいでしょ♪」
「はぁ、あなた達のその感性は、······ちょっとは分かるけど、そこまでの事じゃないでしょうに」
「なにを言うておるテラ様! ふぉぉぉー! ほどよい重さがあり、手に吸い付くようじゃ、うむ、それにこの先の曲がりくねり方がなんとも良いのじゃ!」
「でしょ! それは一番のお気に入りなんだけど、アミーさんにお詫びの品じゃあなんなので、贈り物として差し上げます」
それを聞いたアミーさんは、驚いた顔をして、喜びの顔になり、杖と、僕の顔を見比べ、ぷるぷる震えだしました。
そして。
「よし、決めたぞ! ライは辺境伯なのじゃろ? ならばこの杖をいただくのじゃから、お主の領地経営の手助けをしてやるのじゃ! なに、こう見えて、掃除、洗濯、飯も中々の腕なのじゃ、健康管理まで任せるが良い! それに永く生きておるでな知識はそこそこあると思うのじゃ!」
「あら魔王。掃除、洗濯、料理に健康管理? その言い方、ライのお嫁さんにでもなるの? 構わないけど、私と後四人······リントとムルムルも入れたら八番目だけど」
「ふむ。お嫁さんとな? そうじゃな、結婚という事か、初めてじゃが私にできる物なのかの?」
「良いんじゃない? そのかわり他の奥さん達にあなたの魔法を教えて上げてね。中々の逸材ばかりよ?」
「ふむ。構わんぞ。ではこれからよろしくの」
「え? あの、イシェとよく似た感じなんだけど、アミーさんは僕の事好きなの?」
「ああ、魔王、奥さんになるにはライの事が好き、大好きじゃないと駄目なの。そこはどうなの?」
テラは顔を赤くして、そう言ってくれました。
「テラ、僕はテラの事、大好きだよ」
「うむ。良いのじゃ。テラ様が好いとる殿方なのじゃろ? それにこのような贈り物をくれる者を嫌いなはず無かろう。私は年寄りじゃが問題ようじゃしライ殿、いや、ライ。末永く頼むのじゃ。私の事はアミーと呼び捨てで頼むぞ」
「あはは······僕の気持ちは······まあアミーさ、アミーは金色の綺麗な髪の毛で、金の瞳も綺麗だし、とっても可愛いと思うよ。まだ好きとかはどうか分からないけど、よろしくね」
「はわわわ。き、綺麗で可愛いとな! そ、そんな事は今まで生きてきて初めて言われたのじゃ」
アミーはゴブリンのこん棒から杖になった物を持ちながらほっぺに手を添えくねくねして、可愛いですね。と、するならみんなと、父さんや母さんにも紹介······は、また今度で良いですよね。
「くふふ。魔道師団は魔王で決まりね、イシェが宰相もしてくれるから、後は騎士団長ね。剣聖でもいないかしら?」
キョロキョロ下を見て探しているテラですけど、剣聖さんは中々落ちてませんからね。
そんなテラの手を引きながら、あっ、アミーもこっちの手を繋ぐのですね。
三人仲良く大通りを進んで、目的のお菓子屋さんに到着しました。
そして中に入ろうとして、止められてしまいました。
「失礼ですが、このお店は貴族様のみのお店となっております。申し訳ありませんが」
「はい。これで良いでしょうか?」
冒険者のギルドカードと、辺境伯の紋章入りのナイフを取り出し、見せてあげました。
「拝見いたしますねっ! Sランクですと! おっと、これは失礼を、それにこれは······少々お待ち下さいませ」
執事さんと言われても、そうなのだろうと思ってしまうほど、整えられた服装のおじさんがそう言うと、懐から手帳を取り出し、僕の紋章を調べているようです。
「大変お待たせいたしました。辺境伯様、どうぞ。店内を案内させていただきます」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
そこへ、貴族の馬車が止まりました。やって来たのは······。
「そっちの元衛兵長はしっかり働くのじゃぞ」
二人は、うん。と頷き、元衛兵長は下を向いたままですが、力無く頷きました。
さて、衛兵さんの詰所を出て、見張りのおじさんに教えてもらった、あの美味しいお菓子屋さんへ、三人で向かいましょう。
おじさんに描いてもらった地図を頼りに、大通りを進んでいます。
ふと思い出しましたので、ちょっと聞いてみましょう。
「アミーさんの魔法の杖ですが、魔力が内封されてませんよね? どんな効果があるのですか?」
「ん? これか? これはこの街に入る前に拾ったのじゃ、中々良いじゃろ? ここの節での曲がり具合とか、魔法の杖っぽい。前に持っていたのは寝ている間に薪として使ってしもうたからのう。あれはひねくれた枝で、結構気に入っていたのじゃが、勿体ない事をしたものじゃて」
「えっと、じゃあ」
「ただの枝よ。私が始めて魔王とあった時は、二股の杖を持っていたわよ」
なるほどです。それがないと駄目なんじゃなくて、たまたま気に入った物が魔法の杖っぽいだけだったのですね。
「うむ、あれはまだ大事に持っておるぞ、二股の片方が折れてしまったので紐で縛ってはあるのじゃが、大切にしまってあるのじゃ」
「ふ~ん。じゃあ今度良さげな枝を見付けたらアミーさんに贈り物をするね。······あっ! そうです! これはどうかな?」
僕はゴブリンのこん棒、細い棒ですが、根っこの近くですからくねくねと曲がっていて、叩くと痛そうな物の中でも、僕も気に入ってる物を一本出してみると。
「な、なんと! 歪に曲がりくねりひねり、それでいて持ち手の部分は太くなく細くもない! す、すまぬが持たせてもらえんかの?」
すごく眼がキラキラして、可愛い顔をしながらゴブリンのこん棒に目が釘付けです。
僕はアミーさんに差しだし。
「どうぞ、中々格好いいでしょ♪」
「はぁ、あなた達のその感性は、······ちょっとは分かるけど、そこまでの事じゃないでしょうに」
「なにを言うておるテラ様! ふぉぉぉー! ほどよい重さがあり、手に吸い付くようじゃ、うむ、それにこの先の曲がりくねり方がなんとも良いのじゃ!」
「でしょ! それは一番のお気に入りなんだけど、アミーさんにお詫びの品じゃあなんなので、贈り物として差し上げます」
それを聞いたアミーさんは、驚いた顔をして、喜びの顔になり、杖と、僕の顔を見比べ、ぷるぷる震えだしました。
そして。
「よし、決めたぞ! ライは辺境伯なのじゃろ? ならばこの杖をいただくのじゃから、お主の領地経営の手助けをしてやるのじゃ! なに、こう見えて、掃除、洗濯、飯も中々の腕なのじゃ、健康管理まで任せるが良い! それに永く生きておるでな知識はそこそこあると思うのじゃ!」
「あら魔王。掃除、洗濯、料理に健康管理? その言い方、ライのお嫁さんにでもなるの? 構わないけど、私と後四人······リントとムルムルも入れたら八番目だけど」
「ふむ。お嫁さんとな? そうじゃな、結婚という事か、初めてじゃが私にできる物なのかの?」
「良いんじゃない? そのかわり他の奥さん達にあなたの魔法を教えて上げてね。中々の逸材ばかりよ?」
「ふむ。構わんぞ。ではこれからよろしくの」
「え? あの、イシェとよく似た感じなんだけど、アミーさんは僕の事好きなの?」
「ああ、魔王、奥さんになるにはライの事が好き、大好きじゃないと駄目なの。そこはどうなの?」
テラは顔を赤くして、そう言ってくれました。
「テラ、僕はテラの事、大好きだよ」
「うむ。良いのじゃ。テラ様が好いとる殿方なのじゃろ? それにこのような贈り物をくれる者を嫌いなはず無かろう。私は年寄りじゃが問題ようじゃしライ殿、いや、ライ。末永く頼むのじゃ。私の事はアミーと呼び捨てで頼むぞ」
「あはは······僕の気持ちは······まあアミーさ、アミーは金色の綺麗な髪の毛で、金の瞳も綺麗だし、とっても可愛いと思うよ。まだ好きとかはどうか分からないけど、よろしくね」
「はわわわ。き、綺麗で可愛いとな! そ、そんな事は今まで生きてきて初めて言われたのじゃ」
アミーはゴブリンのこん棒から杖になった物を持ちながらほっぺに手を添えくねくねして、可愛いですね。と、するならみんなと、父さんや母さんにも紹介······は、また今度で良いですよね。
「くふふ。魔道師団は魔王で決まりね、イシェが宰相もしてくれるから、後は騎士団長ね。剣聖でもいないかしら?」
キョロキョロ下を見て探しているテラですけど、剣聖さんは中々落ちてませんからね。
そんなテラの手を引きながら、あっ、アミーもこっちの手を繋ぐのですね。
三人仲良く大通りを進んで、目的のお菓子屋さんに到着しました。
そして中に入ろうとして、止められてしまいました。
「失礼ですが、このお店は貴族様のみのお店となっております。申し訳ありませんが」
「はい。これで良いでしょうか?」
冒険者のギルドカードと、辺境伯の紋章入りのナイフを取り出し、見せてあげました。
「拝見いたしますねっ! Sランクですと! おっと、これは失礼を、それにこれは······少々お待ち下さいませ」
執事さんと言われても、そうなのだろうと思ってしまうほど、整えられた服装のおじさんがそう言うと、懐から手帳を取り出し、僕の紋章を調べているようです。
「大変お待たせいたしました。辺境伯様、どうぞ。店内を案内させていただきます」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
そこへ、貴族の馬車が止まりました。やって来たのは······。
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