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第五章

第192話 捕まっちゃいました

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「チッ、揃いも揃って偽装したギルドカードを持つとは! 衛兵を呼べ! 囲いを崩すな! 絶対逃がすんじゃないぞ! いくら子供とは言え許されることではない!」

「そうだな、だが、後から来た子達のギルドカードって隣の大陸仕様だな、まあ偽装は罪だが、衛兵が来れば判断できるだろ? ってかここのギルドでもできるんだから先に本物か偽物か調べた方が良いんじゃないか?」

「それもそうだよな? 向こうの大陸で、新しくSランクになったのはスライムを連れた子供······スライムを? 連れた? 子供?」

 まわりの方がそう言うと、肩に乗るムルムルと、僕を交互に見て『おい、まさか』『嘘だろ?』とか言ってますけど、こちらの大陸にも噂が届いていたのですね。

「なっ、そ、それは俺も聞いた事があるが······まさかこの大陸に来ている······のか?」

「はい。先日来させてもらいました。『スライム使い』とも呼ばれているライと言います。ですからこちらの子も――」

「衛兵を連れてきたぞ! 道を開けてくれ!」

 くふふ。衛兵さんが来ちゃいましたね、さあ調べてもらって開放してもらいましょう。

 と思っていたのですが······。

「ところで魔王はいつ起きたの? まだまだ起きそうになかったのに」

「それがじゃな、家の四隅に置いてあった環境安定の魔道具がなぜか机の上に乗せてあっての、暑くて起きてしもうたのじゃ」

「ああ~、それは悪かったわね、たぶん掃除した時に寄せてしまったのね」

「お皿なんかはちゃんと棚に戻したのですが、それは全然気が付きませんでした。ごめんなさい」

 僕達は今、衛兵さんの詰所にある牢屋の中です。

 あの時駆け付けた衛兵さんはギルドカードを通す魔道具を持っていなかったので、詰所まで同行をと言われましたから、素直についてきたのです。

 ですけど、今考えれば冒険者ギルドにあったはずなので、こんな事にはなるのも防げたと思うのですが。

 そして詰所に来て、魔道具にギルドカードを通したのですが、反応しなかったのですよね~。テラが見てくれたのですが、故障していたようです。

『やはり偽物か! 大人しくついてきたからもしかして本物かと思っていたが、おい! 牢屋に放り込んでおけ!』

『衛兵さん、その魔道具壊れているわよ、壊れていない物でもう一度調べなさい』

『何を言っておる! この魔道具は先日取りかえたばかりの物だ、壊れているわけがない』

 と聞く耳もたず、三人のギルドカードを机の引き出しに投げ入れたので、こっそり収納しておこうと思いましたけど、一応魔力は覚えていますから、いつでも取り返せるように、見張っています。

 なんにせよ、そんなこんなで僕達は牢屋に入れられ、捕まっているわけです。

「なるほどのう。じゃが困ったの、ギルドでお金を出して、食材や調味料を買いに来ただけなのじゃが」

「そうね、私達もこの街は通りすぎるだけのつもりだったんだけど、ライの武器と防具が取られたままだから、そのまま出ていく訳にもいかないし」

「武器はすぐにでも取り返せるのですけどね、防具は魔力を付与してませんからどこにあるか分かりませんね。まあ着替え用の物があるので困らないと言えばそうですけど」

「お、おい。お前達すぐにでも出て行けそうな事を言ってるが、この牢は無理だぞ? 専用の鍵がなければ開く事はないぞ、それに武器も防具もここと同じ鍵の掛かる部屋に保管されているはずだ、だから取り返そうと思っても無理だからな」

「ん~、でも僕達は別に罪を犯していませんから、いつまでもここにいるのもおかしな事なので、早く魔道具を違うものに変えてギルドカードを確めてもらった方が良いですよ?」

 牢の見張りの方が喋りかけてきましたので、そう返事をすると。

「いやいや、あの魔道具はここの管理監様が、先日寄付してくれたものだ、使うのは今回が初めてだが······」

「古いものは残っていないのですか?」

「いや、ほら。この壁にくっ付けてあるだろ、これは取り外さないと駄目だから近い内には交換するぞ」

 へえ。まあそうですよね、捕まえて、一旦ここに放り込んでから取り調べする事もあるのですから。

「では、その魔道具で、一度試してみませんか?」

(テラ、もしかしたらここの管理監さんは悪い人かもしれませんね)

(それも考えられるけど、たまたまあれが壊れていたかのどちらかね)

(なるほどのう)

「ぬぬっ、それもそうだな、ギルドカードは主任の机だよな、お前達は大人しくしていろよ、良いな」

 そう言うと見張りのおじさんは階段を駆け足で上っていきました。

「テラ、あの壁の物は壊れてないよね?」

「ちょっと待ってね、んん神眼~、問題ないわね」

「ふむ、ならばその魔道具で見てもらえれば万事解決じゃな」

「うん。あっ、ギルドカードが、動き出しましたね······もう下りてきますよ」

 タタタタと軽い足取りで、見張りのおじさんと。ダダダダと少し重い足音が聞こえ、僕を捕まえたおじさんも一緒に走り下りてきました。

「よし、大人しく待っていたようだな。主任。ではお願いします」

「はぁ、こんな事をしても偽物が本物に変わるわけ無いだろうに。ではまずはライの物だな」

 そう言って魔道具に通すと。

「なっ! 本物のギルドカードだと! つ、次はテラの物! くっ、本物! 最後のアミーは······ほ、本物だ······」

 そして僕達は無罪放免となるはずが······。
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