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第五章
第191話 峠の街に、懐かしい人が
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「ねえライ、飛んでいくの?」
「うん。麓までね、お姫様抱っこするよ?」
門を出て、今度はちゃんと断ってから、テラを抱っこしました。
「じゃあ行くね、浮遊!」
すーっと浮かび上がる僕達を見て、僕達の後から門を出て来た人達が『う、浮き上がったぞ!』『な、なんだそれ!』とか言ってますが、だいたい百メートルほど浮かび上がり、山の麓に向けて。
「じゃあ、行くよ、捕まっててね、飛翔!」
最初はすーっと滑るように飛び出して、少しずつ速度を上げていきます。
「じゃあ結界張るわよ。結界!」
「ありがとう。じゃあ速度をぐっと上げるね、ぐるぐる~、ほいっと!」
シュン! って音がなるくらい早く飛び、あっという間に一つ目の村、二つ目、三つ目の村を通りすぎ、少しずつ速度を落として街道の先に峠に続く麓の街が見えてきました。
まだ朝も早い時間ですから、門から出ていく馬車や、歩きの方達の邪魔にならないように、街道の端の方にある木の横に着地して、テラを下ろし、門へ向かいます。
「ど、どこから現れた!」
「え? 空を飛んできましたよ? あ、驚かせてしまい、申し訳ありません」
冒険者パーティーの一人が、僕の下りてきた所を見てしまったようです。
なるべく見られないように、木の陰に下りたのですが、駄目だったみたいですね。
「い、いや。そ、そうか、木に上っていたんだな、驚かせやがって」
「ははは······。それでは失礼しますね、テラ、行こう」
「お兄さん、ごめんなさいね、よく言い聞かせておくから」
そう言って僕達は門に向かい歩き始め、そして、やっぱり、遠くからだとちゃんと僕達が空から下りてきたのが見えていたようです。じろじろと見ては来ますが止まる事はなく、街道を進んでいきました。
「あまり人が見てる所で飛んだりするの、止めておいた方が良いかもね、こっちの大陸ならそこそこいると思っていたんだけど、数は少ないのは変わり無さそうね」
「うん。森の中から飛んで、森の中に下りるとかした方が良いかもですね」
「それなら多少はマシかも、後は私が小さくなっておいて、一人で飛んいるように見えて、歩いて森から出る時は大きくなって二人でとかね」
「なるほどです。久しぶりにテラを肩に乗せるのも良いかもしれませんしね、ムルムルに乗って」
(いつでもいいよ、のってね)
「ありがとうムルムル。まあ今は門をくぐって、峠に向かいましょう」
入門する者はほとんどいなくて、すぐに僕達の番がやって来ました。
「身分証を」
「はい。二人分です。それからこのスライムは従魔のムルムルです」
「ほう。従魔を······へ? エ、Sランク? お二人とも?」
ん~、残念『えぇぇぇぇー!』がありませんでした。
「はい。大丈夫ですよね?」
「はっ! どうぞお通り下さい!」
「ありがとう、あっ、冒険者ギルドはどの辺りですか? もしかしたら峠側かな?」
「はっ! その通りであります! 大通りをまっすぐ進めば、門前の広場にございますです!」
「分かりました、では行きますね」
ギルドカードをしまい、テラの手を握って、門を抜け、大通りを進みます。
「残念だったわね、いつもの『えぇぇぇぇー!』が聞けなくて。本当にライって好きよね、冒険者ギルドにも、絡まれたくて行くだけなのに」
「でも、テンプレですから、何度でも経験したいですし、小さい歳でしかできませんから今の内に沢山経験したいじゃないですか」
大通りを露店や屋台を見ながら進み、一時間ほどかけて進み、門が見えてきました。
広場に入り、見付けた冒険者ギルドは、なぜか入口に人集りができていました。
「なんでしょうかね? 何かあったのでしょうか」
「気配はどうなの? スタンピードとか起きる前兆みたいな物は無いのよね?」
ん~、いつも、結構広く気配は探っていますが、そんな感じはありませんし。
「スタンピードは無いですね」
「まあ、行ってみれば良いわ、行きましょう」
広場をまっすぐ冒険者ギルドに向かうと声が聞こえてきました。
「じゃから違うと言うとろうが! このギルドカードは私が昔ちゃんと発行してもらったものじゃ! 偽造でも、拾った物でもないのじゃ!」
「どこかで聞いたことのある声ね」
「知り合いなの? なんだかギルドカードの問題みたいですね、捕まると重罪だから助けて上げないと。ちょっとすいませーん、通してくださーい」
僕は人垣をこじ開け囲いの中に入っていきます。
「これ、返すのじゃ、それは私の――」
「あっ! あなたなんでこんな所にいるのよ! ってか起きたの!?」
「ぬ?」
囲いを抜けた所にいたのは白くて長い髪の毛の、真っ赤な目をした女の子で、どこかで見た事あるような······?
「······おお! テラ様ではないか、おっと、今はそれどころではないのじゃ! これ、ギルドカードを返すのじゃ! それがないと依頼を請けられんじゃろうが!」
「はぁ、そこのお兄さん、ギルドカードを返して上げなさい。たぶんSランクだから偽物だと思っているんでしょ? この子は本当にSランクよ」
「なんだ? そんな訳ねえ! こんなクソチビのガキがなれるもんじゃないんだよ! 関係ない奴は引っ込んでろ、クソガキ!」
「おじさん、僕のテラにクソガキだと言いましたね。あなたは悪者ですか!? やっつけて上げましょうか!」
「んだとテメエ! 俺様はこの街一番のBランクに一番近いと言われ・て・る?」
僕は、テラと二人分のギルドカード出して見せて上げました。
おじさんは、僕が出したギルドカードを見て止まりました。その隙に僕は女の子のギルドカードをちょっと飛び上がって取り返し、女の子に差し出しました。
「こんにちは。ライって言います。これ取り返しましたからどうぞ」
「うむ。かたじけない。して、ライ殿とテラ様はどの様な関係なのじゃ?」
「僕の事はライって呼び捨てで良いですよ。それからテラは僕のお嫁さんになってくれるんだよ」
「なんと! 本当なのか! それはそれはテラ様おめでとうございます。しかし、見たところライ様は普通の人······にしてはちいとおかしいが」
「まあね。そうだ、家は気に入った? あれはライが作ったんだからね、それから木は私とライが。池は私が作ったのよ」
「なんと! それは――」
「三人も偽装しているだと!」
おお! あの時の魔王さんでしたか! おっと、それよりおじさん、······そう来ましたか······。
「うん。麓までね、お姫様抱っこするよ?」
門を出て、今度はちゃんと断ってから、テラを抱っこしました。
「じゃあ行くね、浮遊!」
すーっと浮かび上がる僕達を見て、僕達の後から門を出て来た人達が『う、浮き上がったぞ!』『な、なんだそれ!』とか言ってますが、だいたい百メートルほど浮かび上がり、山の麓に向けて。
「じゃあ、行くよ、捕まっててね、飛翔!」
最初はすーっと滑るように飛び出して、少しずつ速度を上げていきます。
「じゃあ結界張るわよ。結界!」
「ありがとう。じゃあ速度をぐっと上げるね、ぐるぐる~、ほいっと!」
シュン! って音がなるくらい早く飛び、あっという間に一つ目の村、二つ目、三つ目の村を通りすぎ、少しずつ速度を落として街道の先に峠に続く麓の街が見えてきました。
まだ朝も早い時間ですから、門から出ていく馬車や、歩きの方達の邪魔にならないように、街道の端の方にある木の横に着地して、テラを下ろし、門へ向かいます。
「ど、どこから現れた!」
「え? 空を飛んできましたよ? あ、驚かせてしまい、申し訳ありません」
冒険者パーティーの一人が、僕の下りてきた所を見てしまったようです。
なるべく見られないように、木の陰に下りたのですが、駄目だったみたいですね。
「い、いや。そ、そうか、木に上っていたんだな、驚かせやがって」
「ははは······。それでは失礼しますね、テラ、行こう」
「お兄さん、ごめんなさいね、よく言い聞かせておくから」
そう言って僕達は門に向かい歩き始め、そして、やっぱり、遠くからだとちゃんと僕達が空から下りてきたのが見えていたようです。じろじろと見ては来ますが止まる事はなく、街道を進んでいきました。
「あまり人が見てる所で飛んだりするの、止めておいた方が良いかもね、こっちの大陸ならそこそこいると思っていたんだけど、数は少ないのは変わり無さそうね」
「うん。森の中から飛んで、森の中に下りるとかした方が良いかもですね」
「それなら多少はマシかも、後は私が小さくなっておいて、一人で飛んいるように見えて、歩いて森から出る時は大きくなって二人でとかね」
「なるほどです。久しぶりにテラを肩に乗せるのも良いかもしれませんしね、ムルムルに乗って」
(いつでもいいよ、のってね)
「ありがとうムルムル。まあ今は門をくぐって、峠に向かいましょう」
入門する者はほとんどいなくて、すぐに僕達の番がやって来ました。
「身分証を」
「はい。二人分です。それからこのスライムは従魔のムルムルです」
「ほう。従魔を······へ? エ、Sランク? お二人とも?」
ん~、残念『えぇぇぇぇー!』がありませんでした。
「はい。大丈夫ですよね?」
「はっ! どうぞお通り下さい!」
「ありがとう、あっ、冒険者ギルドはどの辺りですか? もしかしたら峠側かな?」
「はっ! その通りであります! 大通りをまっすぐ進めば、門前の広場にございますです!」
「分かりました、では行きますね」
ギルドカードをしまい、テラの手を握って、門を抜け、大通りを進みます。
「残念だったわね、いつもの『えぇぇぇぇー!』が聞けなくて。本当にライって好きよね、冒険者ギルドにも、絡まれたくて行くだけなのに」
「でも、テンプレですから、何度でも経験したいですし、小さい歳でしかできませんから今の内に沢山経験したいじゃないですか」
大通りを露店や屋台を見ながら進み、一時間ほどかけて進み、門が見えてきました。
広場に入り、見付けた冒険者ギルドは、なぜか入口に人集りができていました。
「なんでしょうかね? 何かあったのでしょうか」
「気配はどうなの? スタンピードとか起きる前兆みたいな物は無いのよね?」
ん~、いつも、結構広く気配は探っていますが、そんな感じはありませんし。
「スタンピードは無いですね」
「まあ、行ってみれば良いわ、行きましょう」
広場をまっすぐ冒険者ギルドに向かうと声が聞こえてきました。
「じゃから違うと言うとろうが! このギルドカードは私が昔ちゃんと発行してもらったものじゃ! 偽造でも、拾った物でもないのじゃ!」
「どこかで聞いたことのある声ね」
「知り合いなの? なんだかギルドカードの問題みたいですね、捕まると重罪だから助けて上げないと。ちょっとすいませーん、通してくださーい」
僕は人垣をこじ開け囲いの中に入っていきます。
「これ、返すのじゃ、それは私の――」
「あっ! あなたなんでこんな所にいるのよ! ってか起きたの!?」
「ぬ?」
囲いを抜けた所にいたのは白くて長い髪の毛の、真っ赤な目をした女の子で、どこかで見た事あるような······?
「······おお! テラ様ではないか、おっと、今はそれどころではないのじゃ! これ、ギルドカードを返すのじゃ! それがないと依頼を請けられんじゃろうが!」
「はぁ、そこのお兄さん、ギルドカードを返して上げなさい。たぶんSランクだから偽物だと思っているんでしょ? この子は本当にSランクよ」
「なんだ? そんな訳ねえ! こんなクソチビのガキがなれるもんじゃないんだよ! 関係ない奴は引っ込んでろ、クソガキ!」
「おじさん、僕のテラにクソガキだと言いましたね。あなたは悪者ですか!? やっつけて上げましょうか!」
「んだとテメエ! 俺様はこの街一番のBランクに一番近いと言われ・て・る?」
僕は、テラと二人分のギルドカード出して見せて上げました。
おじさんは、僕が出したギルドカードを見て止まりました。その隙に僕は女の子のギルドカードをちょっと飛び上がって取り返し、女の子に差し出しました。
「こんにちは。ライって言います。これ取り返しましたからどうぞ」
「うむ。かたじけない。して、ライ殿とテラ様はどの様な関係なのじゃ?」
「僕の事はライって呼び捨てで良いですよ。それからテラは僕のお嫁さんになってくれるんだよ」
「なんと! 本当なのか! それはそれはテラ様おめでとうございます。しかし、見たところライ様は普通の人······にしてはちいとおかしいが」
「まあね。そうだ、家は気に入った? あれはライが作ったんだからね、それから木は私とライが。池は私が作ったのよ」
「なんと! それは――」
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