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第五章

第190話 王都に向けて

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「ライ坊っちゃん、その資料にもあるのですが、渡すなら王都に行った方が良いかも知れませんね」

「そうなの? 隣町の管理監さんにでも渡そうと思っていたのですけど」

 カヤッツは苦笑いをしながら。

「いえね、隣の大陸なので、良く分からないのですが、結構な貴族の名が書かれてあったのでね、坊っちゃんが渡った国は、確かに海路で発展している国なのですが、小国、その小国の町を、その資料に書かれている貴族が大半を管理しているので、良い貴族の元に持っていくくらいなら、探すだけ無駄。最初から王都に向かった方が得策かと」

「あはは······そうですね、そんな状態なのですね、分かりました。では、王都に向かう事にしますね」

「一つ、王都手前の町にダンジョンがありますよ」

「おおー、ぬふふふ。カヤッツ、お土産期待していて下さいね」

「くくく、お手柔らかにお願いしますね」

 その後も、父さん母さんの所にマリーアが加わって、お話を続けていますので僕は港町に戻ることにしました。

「夜ですね、今日はスラムで寝ちゃいましょう」

「そうね、お風呂入りたいわね、何だかんだで潮風で髪の毛がぱしぱしよ」

「本当だ。テラのつるつるすべすべの髪の毛が好きだし、船旅で、しばらくできてませんし、久しぶりに滑り台しちゃいましょう。ほいっと!」

 スラムの孤児院前に持ち運びハウスを出して、お風呂に。

「ムルムルお願いね~」

(まかせて、おおきくなるからふたりとものってね)

「うん。ありがとうムルムル、テラおいで、ほいっと!」

「きゃっ、ライ、いきなりだとビックリするじゃない!」

「あはは、ごめんね、ふわふわっと浮遊で~、ムルムル乗るよ~、よいしょ」

 大きくなったムルムルがお風呂に浮いてますので、テラをお姫様抱っこして浮かび上がってムルムルヘ。

 ぽよんと乗せてもらったら、お湯を操作して、まずはゆっくり流れを作ります。

「もっと大きなお風呂なら良いのに、体が大きくなったら迫力にかけるのよね、私だけなら小さくもなれるけど、ライは無理だものね」

「うん。あれは魔力で同じ事ができないから僕には無理かな、どうする? テラとこうやってゆっくりですが、流れているのも好きだけど、久しぶりにやっちゃいますか?」

「ん~、ま、また今度で良いわ。今日はこうやってゆっくりで。そう言えば少し背も高くなったわよね、一年前は私と変わらなかったのに」

「ぬふふふ。僕も大きくなるのですよ。まだまだ兄さん達には追い付けませんけどね」

 今度は水を浮かべて坂を作って、大きなお風呂中を滑り台で滑りまくります。

「くふふ。こんなにゆっくりするの久しぶりねって、なにおっぱいふにふにしてるのよ! これでも少し大きくなったんだからね!」

「ムルムルもふにふにで気持ちいいけど、テラだって凄くふにふにで気持ちいいもん」

「はぁ、まあ私は良いけど、こんな事は奥さんだけにするんだからね、分かった? そうじゃない人にやっちゃったら悪い人になるから、絶対やっちゃ駄目なんだからね」

「うん。最近は少し、なんとなく分かってきたよ。よし、最後は速度上げちゃおう! テラも掴まっててね、ぐるぐる~、ほいっと!」

 最後はお風呂の天井近くまで持ち上げて、一気に坂を下って急旋回! その勢いのまま今度は持ち上げて、って事を繰り返します。

「ひゃっほーい! ライもっと早くても良いわよ!」

「いっくよー! ぐるぐるー、ほいっと!」

 一時間ほどお風呂で遊んで、最後はムルムルに汚れとか水気を食べてもらってパジャマに着替え、腹巻きをして、なんとか果物を食べ、お布団へ。

「ふぁぁ、おやすみテラ、ちゅ······」

「おやすみ。ってもう寝ちゃってるわ。よいしょ、シーツくらいはかぶらないと風邪ひいちゃうわよ。じゃあおやすみ······ちゅ」

 翌朝、僕達は次の町、王都方面に向かうため、早朝の開門を待っています

「次の町は遠くに見えてた山の麓にあるらしいんだ。間の村もちょっと覗きたいよね」

「それは良いけど王都に急がなくて良いの? 手紙を渡して管理監を派遣してもらわないと、この街がどうなるか分からないわよ?」

「そうでしたね。ん~、では今日のところは麓まで一気に飛んじゃって、山は登っても良いよね?」

「ん~、そうね、こっちの花とかも、やりたいから······そうねそこで見付けても良いか」

 少し物足りない顔をするテラは、船に乗っている間、いつもの花や木の実は乗せてませんでしたから、今は何も乗っていません。一応何か無いか、開門前の広場にある屋台を少し見学する事に。

「駄目ね、焼いたり煮たりしたものばかりだわ、何か無いかしらね」

「テラ、あの家の屋根に生えてる草は何かな? 綿毛みたいなやつ」

「あらコットン、珍しい所に生えてるわね。あれにしましょうか、あれを増やせば服飾の材料になるし、糸を作るのは足が不自由でもできるでしょ?」

「そうなんだ、じゃあ、よいしょ」

「きゃっ、だから抱っこの前に言ってよね、ビックリするじゃない。はい、掴まっておくからお願いね」

 お姫様抱っこをしたテラは僕の首に手を回し、掴まってくれたので、少し助走をして壁も使い屋根に飛び上がりました。

 それを見ていた人達が少し騒がしいですが、僕はテラを抱っこしたまま屋根を伝って、コットンがある屋根まで向かいます。

「はい。どこを採るの?」

「そのふわふわの下の茎の所を少し残して切ってくれる?」

 僕はしゃがみ込んで、テラをももの上に乗せ、ナイフで切り、コットンをテラの頭に乗せて上げました。

「うん。緑の綺麗な髪の毛にふわふわが似合っていて良い感じだよ」

「そう? ありがと、あっ、門が開きそうよ、早く行きましょう」

「うん」

 屋根から飛び下り、開かれていく門に開門を待っていた人達が群がり、我先にと先を競って出ていきます。

 さあ、張り切っていきましょう。
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