上 下
188 / 241
第五章

第188話 賢者の弟子に

しおりを挟む
 外に出るとルミナ達がバーベキュー用の鉄板で、大量にお肉を焼いているのですが、集まっている人も沢山なので、追い付いてませんね。

「ほらね。ライ、コンロってもう無かった? 後十個くらいあっても良いわよね、この人数だと」

「はい、それにスープか何かあった方が良いかもしれませんね」

「ん~、もうお義父様の領地に送っても良いけど······マシュー達には良い迷惑だと思うけどね」

 うん。ですがこの人数は僕達だけでは到底無理な気がします。

「思いきって、お屋敷に連れて行っちゃいましょうか。驚かせてしまいそうですけど」

「そうね、この肉と魚に集中している内が良いかもね、あっそうだ」

(一応。んん神眼~! やっぱり何人も入り込んでるわよね、良い、私が言うヤツは悪者よ、気絶させて、孤児院に運んでもらいなさい。そうすれば後でやりやすいでしょ?)

(うん。お願いね)

 それから僕はルミナのところにお肉を追加して、テラの言う通り人混みの中を歩き、次々と指差す悪者を気絶させて、孤児院に運んでもらいます。

(あそこの五人で終わりね、やっちゃって、もうカヤッツに送っちゃいましょう。三十人くらいでしょ?)

(そうだね、ぐるぐる~、ほいっと! ん~と、魔道具は持ってなさそうだね)

(そうね、スラムで生活しているくらいだからそんな余裕もないのかもね)

 そして先に悪者はカヤッツに送って、焼き上がるのを並んで待ってる人達と一緒にお屋敷の庭に転移しました。

 パッ

「気配がしたと思ったらまた······」

 僕の後ろからマリーアの声が······。

「た、ただいまマリーア。えっと、色々とお仕事を探していたりしてる方達と、孤児の子達を連れてきたんだけど、マシューって忙しいかな? 後、アマンダも呼んで欲しいんだけど」

「バーベキューですか? 見たところスープか何かあった方が良さそうな方もいらっしゃいますし、パンもですね」

「う、うん。ごめんねマリーア」

「はい。それに仕事ですか、そちらも各村や街にも手配しておきます、ではマシュー達からお呼びいたしますね」

 そう言ってマリーアはお屋敷に向かって歩き出すと、転移で消えました······。

「ねえ! マリーアが転移で消えたわよ! って言うより、ここに来たのも転移で来たわよね!?」

「う、うん。いつの間に覚えたんだろうね······」

 するとマシューやメイドさん達が次々と転移で現れ、バーベキューコンロを収納から出し、料理を始めました。

「では、ライ坊っちゃんは、旅にお戻りになって構いませんので、······お土産楽しみにしてますね♪」

 ······また背後に現れた、笑顔のマリーアに驚きましたが。

「ライ。良いらしいから戻りましょうか······」

「うん。なんだかみんな凄く魔法が上手くなってるよね······なにがあったのか分かりませんが、好意に甘えて旅に戻りましょう。転移!」

 パッ

「あっ、この港町の管理をする人がいなくなっちゃいましたけど、どうしましょう。カヤッツに資料ももらい忘れてしまいましたね」

 人気ひとけの無くなったスラムに戻ってきたのですが、忘れ物ですね。

「そうね、······あっ、ライ、その子背負ったままじゃない!」

「あっ! あはは······、完全に忘れてましたね、ちょうど良いですし、カヤッツのところに行きましょうか」

「ふぁ~、あれ? ここどこ?」

「あっ、起きたんだね、良かった、今おろすから、よいしょ」

 僕は女の子の体を固定していたロープを外して、足がつくようにしゃがみこんであげました。

「あっ、ありがとう、よいしょ、あっ、あなた私の火傷を治してくれたお兄さんよね?」

「はい。たぶんどこにも怪我は残ってないはずですよ。髪の毛は生えてくるまで我慢してもらわないといけませんが」

「そうね、女の子だから可哀想だけど、それは仕方ないわね、その帽子はしばらくかぶっていても良いからね」

「ありがとうございます。ところで、ここはスラムでしょうか?」

「そうですよ、ところで、いつあんなに火傷しちゃったの? あ、そうです。僕は冒険者のライで、こっちがテラ、そして肩の上がムルムルだよ」

「テラよ、ムルムルは私の騎獣なの凄く強いのよ」

「は、はぁ、私はノルン。火傷は何者かに、恐らくですが、バアル・ゼ・ブル侯爵の腹心グラシャ・ラ・ボラス男爵の仕業だと思うのですが、攫われた後、山小屋に閉じ込められ、そこで山小屋に火をつけられたのです」

「山ですか、ノルン、この辺りは平原続きで相当遠いところにしか山が無いのですが」

 この港町から相当遠くに行かないと山がありませんし、どういう事なのでしょうか?

(テラ、ノルンって転移が使えるの?)

(そういう事ね、んん神眼~、お義母様と同じ賢者の称号があるわね、たぶん命の危機に、覚醒したって所じゃない?)

(そうなんだ)

(だって、それ以外の魔法系は生活魔法しかないもの、変な称号もないし、お義母様に紹介すれば、将来強くなるかもね、まだ八歳だし、それでもメイドのスキルがあるからマリーアにも······紹介すれば良いかもね)

(おおー! 将来有望なんだね! マ、マリーアですね、仕方ありません、頼んでみましょう)

 ノルンに聞けば、バアル侯爵さんのところで下働きの、メイド見習いとして、働いていたそうで、そこでグラシャ男爵に目を付けられて、嫌な事をされそうになった時、手を叩いてしまったそうです。

「その時はなんとか逃げて、そこのお仕事も辞めたのですが、冒険者として街中の依頼をしていた時見付かって捕まり、その後はあの状態でした」

「分かりました。では、家で見習いとして働きませんか?」

「え? も、もしかして、貴族の?」

「そうですね、まあ行ってからにしましょうか、転移!」

 パッ

 困惑しているノルンを連れて、またお屋敷に戻り、マリーアと母さんにお願いすることにしました。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

白雪姫の継母の夫に転生したっぽいんだが妻も娘も好きすぎるんで、愛しい家族を守るためにハッピーエンドを目指します

めぐめぐ
ファンタジー
※完結保証※ エクペリオン王国の国王レオンは、頭を打った拍子に前世の記憶――自分が井上拓真という人間であり、女神の八つ当たりで死んだ詫びとして、今世では王族として生まれ、さらにチート能力を一つ授けて貰う約束をして転生したこと――を思い出した。 同時に、可愛すぎる娘が【白雪姫】と呼ばれていること、冷え切った関係である後妻が、夜な夜な鏡に【世界で一番美しい人間】を問うている噂があることから、この世界が白雪姫の世界ではないかと気付いたレオンは、愛する家族を守るために、破滅に突き進む妻を救うため、まずは元凶である魔法の鏡をぶっ壊すことを決意する。 しかし元凶である鏡から、レオン自身が魔法の鏡に成りすまし、妻が破滅しないように助言すればいいのでは? と提案され、鏡越しに対峙した妻は、 「あぁ……陛下……今日も素敵過ぎます……」 彼の知る姿とはかけ離れていた―― 妻は何故破滅を目指すのか。 その謎を解き明かし、愛する家族とのハッピーエンドと、ラブラブな夫婦関係を目指す夫のお話。 何か色々と設定を入れまくった、混ぜるな危険恋愛ファンタジー ※勢いだけで進んでます! 頭からっぽでお楽しみください。 ※あくまで白雪姫っぽい世界観ですので、「本来の白雪姫は~」というツッコミは心の中で。

処理中です...