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第五章
第182話 精霊の子供達
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「ライ、浜で貝は焼かないの? 言われた南門に向かってるみたいだけど」
「まだ少し早いので、冒険者ギルドを先に見ておくつもりです。それに見知らぬ大陸にまで来たのですから、くふふ。何か楽しい事が起こりそうでしょ?」
「くふふ。本当にその『てんぷれ』ってやつ好きよね、まあ、分からないでもないけど、向こうでも何度もしたけどまだやり足りないのね」
「はい。ずっと憧れていた事ですからね~。おっと」
「ごめんよ~」
「ほら前を見てないからよ」
僕にぶつかって、走り去る子の背中を見て。
「くふふ。早速ですね~。テラ、行きますよっと」
「きゃっ、い、いきなり、な、な、にゃにを!」
僕は、テラをお姫様抱っこすると、大通りに面した家の屋根に飛び上がり、走り去った子を追いかけます。
「ね、ねえ、どうしたのよ! きゃっ」
「あんまり喋ると舌を噛んじゃいますから念話で」
(あのね、さっきの子――あっ、角を曲がりましたね、逃がしませんよっ、ほっ、はっと)
(ね、ねえ、どういう事なの!?)
(あのね、あの子お金の代わりに鉄の端切れを入れたお財布を盗っていったんだ、
僕と変わらない子がだよ? あんな事を何でするのかなって思ってね、冒険者なら街のお仕事も沢山あると思いましたから、何かあるのかなって)
そして角を曲がった子を見つけたのですが、まだ先に進むみたいです。
(なるほどね、あっ、また曲がるわよ)
(上から見ると、向かっているのはスラムでしょうか?)
でも、曲がったところで止まったようです。
真上に僕達も到着して様子をうかがうと、キョロキョロまわりを見てから路地裏の壁をコンコンと叩きました。
(あそこに隠し扉があるのね、ほら開くわよ)
「つけられてねえよな?」
「そんなもんされるわけねえだろ! 妹の薬を早くくれよ! ほら、港から来たヤツからかっぱらってきたんだ、何が入ってるか知らねえが、中身は何でも良いんだろ!」
「ああ。金だろうが、なんだろうが構わねえ、向こうの品ってだけで高値が付くからなぁ。この前なんか割れたカップが銀貨に化けやがった、くはははっ、よし、それを渡しな、薬はこれだ」
「おう、じゃあな!」
小さな袋と、僕の鉄の端切れが入った革袋が交換されて、盗んだ子は走り去っていきます。
(場所は覚えておいて、先にあの子の方を観察してみましょう。行きますよ)
(そうね、薬がどうとか言ってたけど、渡されたのは、ただの草をすり潰して丸めただけのものよ。もし、本当に病気なら治る事はないわね)
屋根を伝いながら追いかけると、やはりスラムのようです。
その中の、所々崩れた石造りの建物に入っていくのが見えましたので、その屋根に飛び移り、崩れたところから中を覗くと。
「みんなただいま! 薬を買ってきたよ! 集まって」
「おねえちゃんおかえりー」
「おかえりー、おねえちゃんだー」
そこにいたのは、フィーアみたいに真っ白な髪の毛に、目の色は紫なので吸血鬼ではないようですが、五人の小さな子がいました。
「ほら、みんな口の中に唾をためるんだよ、そうしたら飲みやすいからな」
「またあのにがいののむの~」
「そうだぞ、みんなが大きくなるにはこれが必要だって言ってたからな」
(ねえ、そんな事で大きくなるのかな?)
(無理ね、そんな薬······無いことはないけど、ちょっと待ってね。んん~、あらまあ。どうしようかしら、あの子達精霊と人との間に生まれた子達ね、どちらかと言えば、プシュケに近いわ、寿命がほぼ無いわよ、歳はあの子が十一歳で、残りの子が十歳、でも、五歳くらいにしか見えないから心配してるのね)
(そうなのですね、ってそうです!)
((アマンダさんですよ!))
(はぁ、まあ良いんじゃない? ほら苦いの口に放り込む前に出ていかなきゃ)
(だね。ほいっと!)
崩れた屋根の穴から飛び降りて、着地。
テラをそっと地面に下ろして、ちゅっておまけです。
テラは赤くなり、みんなは驚いて口を開いていましたから、マシュー特性の、ハチミツ飴を六人の口に放り込んであげました。
すると。
「「あまーい!」」
「嘘っ、甘い、じゃなくてあんたさっきの、あっ!」
くふふ。白状しちゃいましたね~。
「大丈夫ですよ、あれは鉄の端切れが入れてあっただけですから問題ありません。それより君達、美味しいごはんが食べれて、お勉強もできる所があるんだけど、もちろん友達もいっぱいいるところですけど、行きませんか?」
「おいしいの~?」
「お勉強? 数字は数えられるよ~」
「お友達と遊びたい!」
「おい! そんなところあるはず無いじゃないか! デタラメを妹達に教えんな! そ、その、盗った事は謝るよ、ごめん。でもこの子達にはこの薬がないと――」
「それ偽物よ。ただの草をすり潰して丸めただけのね、なんの意味もないわ。ライ、この五人にそうね、こんな魔力にして放り込んであげれば良いわよ」
そう言うとテラは手のひらの上で、テラのじゃなくて、また少し違った魔力にして、浮かべてくれました。
「ふむふむ。これが精霊さんの魔力なのですね、それじゃあやっちゃいますよ~、ぐるぐる~」
「「きれー!」」
「えっ? あなた達これが見えるの!?」
何か言ってますけど、とりあえずこの街からと、海の生き物からも少しずつ魔力をいただきましょうかね~。
おっ、それにこの街の方は魔力が多い方が沢山いますね、それに凄く多い方もいますから、そんな方達からはもう少しもらって。
「行きますよ~、ほいっと!」
「くふふっ。また沢山集めたわね、そうそうその魔力よ、まあ見えるのは精霊の力ってことかしらね」
五人を一人ひとり余裕で魔力で包み、そーっと中に注ぎ込んでいきました。
すると、姿形は変わりませんが、注ぎ込んだ魔力をそのまま自分の物にしたように、自然に自分の中で回し始めました。
「完璧よ! これでこの子達は力の使い方を覚えれば強くなれるわね」
「へ? え? 何今の?」
あれ? お姉さんもみえてるのかな?
「まだ少し早いので、冒険者ギルドを先に見ておくつもりです。それに見知らぬ大陸にまで来たのですから、くふふ。何か楽しい事が起こりそうでしょ?」
「くふふ。本当にその『てんぷれ』ってやつ好きよね、まあ、分からないでもないけど、向こうでも何度もしたけどまだやり足りないのね」
「はい。ずっと憧れていた事ですからね~。おっと」
「ごめんよ~」
「ほら前を見てないからよ」
僕にぶつかって、走り去る子の背中を見て。
「くふふ。早速ですね~。テラ、行きますよっと」
「きゃっ、い、いきなり、な、な、にゃにを!」
僕は、テラをお姫様抱っこすると、大通りに面した家の屋根に飛び上がり、走り去った子を追いかけます。
「ね、ねえ、どうしたのよ! きゃっ」
「あんまり喋ると舌を噛んじゃいますから念話で」
(あのね、さっきの子――あっ、角を曲がりましたね、逃がしませんよっ、ほっ、はっと)
(ね、ねえ、どういう事なの!?)
(あのね、あの子お金の代わりに鉄の端切れを入れたお財布を盗っていったんだ、
僕と変わらない子がだよ? あんな事を何でするのかなって思ってね、冒険者なら街のお仕事も沢山あると思いましたから、何かあるのかなって)
そして角を曲がった子を見つけたのですが、まだ先に進むみたいです。
(なるほどね、あっ、また曲がるわよ)
(上から見ると、向かっているのはスラムでしょうか?)
でも、曲がったところで止まったようです。
真上に僕達も到着して様子をうかがうと、キョロキョロまわりを見てから路地裏の壁をコンコンと叩きました。
(あそこに隠し扉があるのね、ほら開くわよ)
「つけられてねえよな?」
「そんなもんされるわけねえだろ! 妹の薬を早くくれよ! ほら、港から来たヤツからかっぱらってきたんだ、何が入ってるか知らねえが、中身は何でも良いんだろ!」
「ああ。金だろうが、なんだろうが構わねえ、向こうの品ってだけで高値が付くからなぁ。この前なんか割れたカップが銀貨に化けやがった、くはははっ、よし、それを渡しな、薬はこれだ」
「おう、じゃあな!」
小さな袋と、僕の鉄の端切れが入った革袋が交換されて、盗んだ子は走り去っていきます。
(場所は覚えておいて、先にあの子の方を観察してみましょう。行きますよ)
(そうね、薬がどうとか言ってたけど、渡されたのは、ただの草をすり潰して丸めただけのものよ。もし、本当に病気なら治る事はないわね)
屋根を伝いながら追いかけると、やはりスラムのようです。
その中の、所々崩れた石造りの建物に入っていくのが見えましたので、その屋根に飛び移り、崩れたところから中を覗くと。
「みんなただいま! 薬を買ってきたよ! 集まって」
「おねえちゃんおかえりー」
「おかえりー、おねえちゃんだー」
そこにいたのは、フィーアみたいに真っ白な髪の毛に、目の色は紫なので吸血鬼ではないようですが、五人の小さな子がいました。
「ほら、みんな口の中に唾をためるんだよ、そうしたら飲みやすいからな」
「またあのにがいののむの~」
「そうだぞ、みんなが大きくなるにはこれが必要だって言ってたからな」
(ねえ、そんな事で大きくなるのかな?)
(無理ね、そんな薬······無いことはないけど、ちょっと待ってね。んん~、あらまあ。どうしようかしら、あの子達精霊と人との間に生まれた子達ね、どちらかと言えば、プシュケに近いわ、寿命がほぼ無いわよ、歳はあの子が十一歳で、残りの子が十歳、でも、五歳くらいにしか見えないから心配してるのね)
(そうなのですね、ってそうです!)
((アマンダさんですよ!))
(はぁ、まあ良いんじゃない? ほら苦いの口に放り込む前に出ていかなきゃ)
(だね。ほいっと!)
崩れた屋根の穴から飛び降りて、着地。
テラをそっと地面に下ろして、ちゅっておまけです。
テラは赤くなり、みんなは驚いて口を開いていましたから、マシュー特性の、ハチミツ飴を六人の口に放り込んであげました。
すると。
「「あまーい!」」
「嘘っ、甘い、じゃなくてあんたさっきの、あっ!」
くふふ。白状しちゃいましたね~。
「大丈夫ですよ、あれは鉄の端切れが入れてあっただけですから問題ありません。それより君達、美味しいごはんが食べれて、お勉強もできる所があるんだけど、もちろん友達もいっぱいいるところですけど、行きませんか?」
「おいしいの~?」
「お勉強? 数字は数えられるよ~」
「お友達と遊びたい!」
「おい! そんなところあるはず無いじゃないか! デタラメを妹達に教えんな! そ、その、盗った事は謝るよ、ごめん。でもこの子達にはこの薬がないと――」
「それ偽物よ。ただの草をすり潰して丸めただけのね、なんの意味もないわ。ライ、この五人にそうね、こんな魔力にして放り込んであげれば良いわよ」
そう言うとテラは手のひらの上で、テラのじゃなくて、また少し違った魔力にして、浮かべてくれました。
「ふむふむ。これが精霊さんの魔力なのですね、それじゃあやっちゃいますよ~、ぐるぐる~」
「「きれー!」」
「えっ? あなた達これが見えるの!?」
何か言ってますけど、とりあえずこの街からと、海の生き物からも少しずつ魔力をいただきましょうかね~。
おっ、それにこの街の方は魔力が多い方が沢山いますね、それに凄く多い方もいますから、そんな方達からはもう少しもらって。
「行きますよ~、ほいっと!」
「くふふっ。また沢山集めたわね、そうそうその魔力よ、まあ見えるのは精霊の力ってことかしらね」
五人を一人ひとり余裕で魔力で包み、そーっと中に注ぎ込んでいきました。
すると、姿形は変わりませんが、注ぎ込んだ魔力をそのまま自分の物にしたように、自然に自分の中で回し始めました。
「完璧よ! これでこの子達は力の使い方を覚えれば強くなれるわね」
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