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第四章
第159話 前世で見た物
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魔石の魔力を燃料にして進む船は、するすると桟橋から離れ、軽快に水面を滑るように加速していきました。約六時間の船旅です。
「あっ、お魚が見えますよ! ······大きいですね」
「ライ! ケートスよ! 魚じゃないわ、あんなのにぶつかられでもしたら船が持たないわよ!」
「え? 魔物なの!?」
「違うわ、このまま深いところを泳いでくれたらいいのだけど、最悪気絶······は駄目よね、息ができなくなっちゃうし、困ったわ」
ん~、困りましたね、お魚じゃないなら息継ぎをしに上がるでしょうし、なんとか横に······あっ。
(ケートスさ~ん、聞こえますか~、すいませんが船には当たらないようにしてもらえませんか~、当たると船が沈んじゃいますから~)
「ライ、呼びかけるのは良いけ――」
(······けーとす······すこしはなれて)
「ムルムルまで、仕方ないわね」
(ケートス、私はテラ、この船に乗ってるからぶつからないでね)
するとケートスは横向きになり、チラっとこちらを見たような気がして、そのままスゥーっと僕たちが乗る船から遠ざかり、一度水面に浮上したと思ったら――。
ブシューと頭のところ辺りから水を吹き出し、その後潜って見えなくなりました。
「挨拶してくれたみたいですね」
「ええ。今のは私が見た事ある中でも、凄く大きい子だったわね、この船の三倍はあったわよ」
すると、何も知らなかった乗客や船員達が、水を吹き出した音で気付いたのか、僕たちのいる船縁に寄ってきて、もう見えなくなったケートスを探しているみたいです。
「ケートスが出たのか? デカイ奴だとぶつかればこの船でもヤバいだろうな」
「凄かったですよ。この船の三倍くらい大きかったですから見てビックリしました」
「かぁー、それなら見えなくなってくれて助かったな、そんなデカさなら船がバラバラになるぜ」
「僕もそう思いました。よく出るのですか?」
「いんや。珍しいぞ、でもな、小型の奴が群れで近くを泳いでるのは見物だぜ、たまに水面から飛び上がる奴もいるからな、俺は長く乗っているから何度も見た事あるが、相当運が良くなくちゃ見れねえぞ、客だったらな。かははは」
そう言って、船員さんは仕事に戻っていきました。
その後は何も起こらず、快調に船は進み、夕方、アフロディーテ公爵領に到着し、船を降りてまずは宿屋を探さないとです。
桟橋を歩き、陸地につく手前で入門の手続きをするみたいです。みんな並んでいましたので、最後尾に並びました。
ほとんどが手荷物だけですから手続きも簡単なようで、進みは悪くありません。
二十分ほどで僕の番になり、ギルドカードの出番です♪ くふふ。
「では次。身分証を見せてくれるか」
「はい。ギルドカードです」
僕はテラの分も一緒に出し、手続きをしてくれるおじさんに見せました。
「ふむっ! S! Sランクだと! それにこの名は! ライ様にテラ様! き、聞いた通りのお子様で、肩にはスライムと小さな女性、間違いない! さ、ささ、お通り下さいませ! その後はこのま大通りをまっすぐ行ってもらえればアフロディーテ公爵様の城がありますので、そちらにと聞いております!」
あっ、イシェの方が早くついたみたいですね。まっすぐですね分かりました。
「ありがとうございます。ではそちらに向かいますね」
「はっ! おい! 誰か馬車をお出ししろ! 公爵様の旦那様になられる方だ! 歩かせる訳には――」
「お気遣い無く。お城は見えてますから。それに夕方ですけど、町も見ていきたいので。では、お仕事頑張って下さい」
そう言って歩き出すと、おじさんの声が聞こえた方達は僕が進む方向にいたのに、左右に分かれ、道ができてしまいました。
「あはは······そんなにしてもらわなくても、ねぇ」
「ほらほら、ゆっくりしてるとみんな動けないじゃない、さっさと街に入っちゃえば、こんなの無くなるわよ」
「そうだね、よし、イシェも待っているだろうし、ちょっとだけ街を見て、お城に行きましょう」
僕は人垣の間を通り、桟橋を抜け、地面を踏みしめ大通りを進みます。
たぶん1キロは離れているのに、ぴょこんと町並みの屋根の上から頭を出して見えるお城。そこに向かって歩いていると、良い匂いが漂ってきました。
そこは広場になっていて、屋台が何軒も建ち並ぶ場所でした。色んな屋台をちらちらと覗いていると、小さな十センチほどのお魚を串に刺して焼いている屋台がありましたので、一本買って食べながら歩き、露店なども地面に敷かれた布に色んな物が置かれ売られています。
え? あれって、確かスマートフォン? 僕は持っていませんでしたが、前世の父さんや母さんが持っていたのを覚えています。
そんな物がこんなところにあるなんて······。
「あの、この四角い板はおいくらですか? あまり見た事の無いものですね」
「あん? おお、それか、すまほとか言う魔道具だったらしいんだが、この前教国から来た奴らの一人が売っていったぞ。動かなくなったらしいがな、だがツルツルで綺麗だろ? よく見りゃ顔も映るし鏡代わりには多少使えるってもんだ。そうだな銅貨五枚で良いぞ」
ん~、使い方も分かりませんし、電源はもう入らないのですよね、まあ、銅貨五枚ですから手に入れておきましょうか。
「そうですね、綺麗ですから買っておきます。えっと、銅貨······三······五枚、はい」
「ありがとよ、そうだな、一緒に置いていったこれも付けてやろう。変な箱から紐が伸びてるだけだが、そいつをぐるぐる巻きにして、あったんだ、もしかしたら、二つで一つの魔道具だったのかもな」
「では遠慮無く。ありがとうございます」
そして、スマートフォンとその充電器ですよね、コンセントもありませんから役立たずですが収納に放り込み、お城に向けて歩き出そうとして、一つ聞いておく事にしました。
「あの、その方はどこに向かったとか分かりませんか?」
「ん? そう言や、この街のダンジョンを調べに行くとか言ってたな、三日ほど前だな。なんだ知り合いか?」
「いえ。ありがとうございます。変わった物なので、もし会えたらどんな物だったのか聞いてみたかっただけですから」
「確かにな、そりゃ俺も知りてえくらいだぜ。そうだ! 確かシラトリと呼ばれていた女の子だな」
「情報ありがとうございます。では」
「おう。何の魔道具か分かったら教えてくれよ」
「はい」
女の方で、白鳥さんですか······それにダンジョンがあるのですね!
「ライ、まずはイシェの所でしょ?」
「うん。でもダンジョンですよ。少し楽しみができました」
そうして暗くなり始めた大通りをすこし足を早めてお城に向かいました。
「あっ、お魚が見えますよ! ······大きいですね」
「ライ! ケートスよ! 魚じゃないわ、あんなのにぶつかられでもしたら船が持たないわよ!」
「え? 魔物なの!?」
「違うわ、このまま深いところを泳いでくれたらいいのだけど、最悪気絶······は駄目よね、息ができなくなっちゃうし、困ったわ」
ん~、困りましたね、お魚じゃないなら息継ぎをしに上がるでしょうし、なんとか横に······あっ。
(ケートスさ~ん、聞こえますか~、すいませんが船には当たらないようにしてもらえませんか~、当たると船が沈んじゃいますから~)
「ライ、呼びかけるのは良いけ――」
(······けーとす······すこしはなれて)
「ムルムルまで、仕方ないわね」
(ケートス、私はテラ、この船に乗ってるからぶつからないでね)
するとケートスは横向きになり、チラっとこちらを見たような気がして、そのままスゥーっと僕たちが乗る船から遠ざかり、一度水面に浮上したと思ったら――。
ブシューと頭のところ辺りから水を吹き出し、その後潜って見えなくなりました。
「挨拶してくれたみたいですね」
「ええ。今のは私が見た事ある中でも、凄く大きい子だったわね、この船の三倍はあったわよ」
すると、何も知らなかった乗客や船員達が、水を吹き出した音で気付いたのか、僕たちのいる船縁に寄ってきて、もう見えなくなったケートスを探しているみたいです。
「ケートスが出たのか? デカイ奴だとぶつかればこの船でもヤバいだろうな」
「凄かったですよ。この船の三倍くらい大きかったですから見てビックリしました」
「かぁー、それなら見えなくなってくれて助かったな、そんなデカさなら船がバラバラになるぜ」
「僕もそう思いました。よく出るのですか?」
「いんや。珍しいぞ、でもな、小型の奴が群れで近くを泳いでるのは見物だぜ、たまに水面から飛び上がる奴もいるからな、俺は長く乗っているから何度も見た事あるが、相当運が良くなくちゃ見れねえぞ、客だったらな。かははは」
そう言って、船員さんは仕事に戻っていきました。
その後は何も起こらず、快調に船は進み、夕方、アフロディーテ公爵領に到着し、船を降りてまずは宿屋を探さないとです。
桟橋を歩き、陸地につく手前で入門の手続きをするみたいです。みんな並んでいましたので、最後尾に並びました。
ほとんどが手荷物だけですから手続きも簡単なようで、進みは悪くありません。
二十分ほどで僕の番になり、ギルドカードの出番です♪ くふふ。
「では次。身分証を見せてくれるか」
「はい。ギルドカードです」
僕はテラの分も一緒に出し、手続きをしてくれるおじさんに見せました。
「ふむっ! S! Sランクだと! それにこの名は! ライ様にテラ様! き、聞いた通りのお子様で、肩にはスライムと小さな女性、間違いない! さ、ささ、お通り下さいませ! その後はこのま大通りをまっすぐ行ってもらえればアフロディーテ公爵様の城がありますので、そちらにと聞いております!」
あっ、イシェの方が早くついたみたいですね。まっすぐですね分かりました。
「ありがとうございます。ではそちらに向かいますね」
「はっ! おい! 誰か馬車をお出ししろ! 公爵様の旦那様になられる方だ! 歩かせる訳には――」
「お気遣い無く。お城は見えてますから。それに夕方ですけど、町も見ていきたいので。では、お仕事頑張って下さい」
そう言って歩き出すと、おじさんの声が聞こえた方達は僕が進む方向にいたのに、左右に分かれ、道ができてしまいました。
「あはは······そんなにしてもらわなくても、ねぇ」
「ほらほら、ゆっくりしてるとみんな動けないじゃない、さっさと街に入っちゃえば、こんなの無くなるわよ」
「そうだね、よし、イシェも待っているだろうし、ちょっとだけ街を見て、お城に行きましょう」
僕は人垣の間を通り、桟橋を抜け、地面を踏みしめ大通りを進みます。
たぶん1キロは離れているのに、ぴょこんと町並みの屋根の上から頭を出して見えるお城。そこに向かって歩いていると、良い匂いが漂ってきました。
そこは広場になっていて、屋台が何軒も建ち並ぶ場所でした。色んな屋台をちらちらと覗いていると、小さな十センチほどのお魚を串に刺して焼いている屋台がありましたので、一本買って食べながら歩き、露店なども地面に敷かれた布に色んな物が置かれ売られています。
え? あれって、確かスマートフォン? 僕は持っていませんでしたが、前世の父さんや母さんが持っていたのを覚えています。
そんな物がこんなところにあるなんて······。
「あの、この四角い板はおいくらですか? あまり見た事の無いものですね」
「あん? おお、それか、すまほとか言う魔道具だったらしいんだが、この前教国から来た奴らの一人が売っていったぞ。動かなくなったらしいがな、だがツルツルで綺麗だろ? よく見りゃ顔も映るし鏡代わりには多少使えるってもんだ。そうだな銅貨五枚で良いぞ」
ん~、使い方も分かりませんし、電源はもう入らないのですよね、まあ、銅貨五枚ですから手に入れておきましょうか。
「そうですね、綺麗ですから買っておきます。えっと、銅貨······三······五枚、はい」
「ありがとよ、そうだな、一緒に置いていったこれも付けてやろう。変な箱から紐が伸びてるだけだが、そいつをぐるぐる巻きにして、あったんだ、もしかしたら、二つで一つの魔道具だったのかもな」
「では遠慮無く。ありがとうございます」
そして、スマートフォンとその充電器ですよね、コンセントもありませんから役立たずですが収納に放り込み、お城に向けて歩き出そうとして、一つ聞いておく事にしました。
「あの、その方はどこに向かったとか分かりませんか?」
「ん? そう言や、この街のダンジョンを調べに行くとか言ってたな、三日ほど前だな。なんだ知り合いか?」
「いえ。ありがとうございます。変わった物なので、もし会えたらどんな物だったのか聞いてみたかっただけですから」
「確かにな、そりゃ俺も知りてえくらいだぜ。そうだ! 確かシラトリと呼ばれていた女の子だな」
「情報ありがとうございます。では」
「おう。何の魔道具か分かったら教えてくれよ」
「はい」
女の方で、白鳥さんですか······それにダンジョンがあるのですね!
「ライ、まずはイシェの所でしょ?」
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