158 / 241
第四章
第158話 ちょっとだけ船の旅に出航です
しおりを挟む
「ねえライ!」
(そこの露店を見て! ニンニクよ! それも、滅多にないくらい良いものよ!)
(ん? 大きいですね、珍しいの? それにどうして念話?)
(物凄く珍しいわ、普通のニンニクが、ごく稀にしか変化しないんだけど、物凄く美味しい物よ! 次はこれにするわ。頑張れば毎回同じ様に育ってくれるから、良いと思わない? 念話なのはこんな事言ったら高くするかもしれないでしょ、今なら小さいニンニクとも同じ値段だし!)
(くふふ。テラは良い奥さんになるね、うん。じゃあいくつか買おうか、どの子が良いかな?)
テラは真っ赤な顔になりましたが、大きなニンニクの籠から三個選んで、銅貨三枚で購入しました。
「毎度あり。こいつはなんでか大きく育ったんでな、まあ、たまたまだろうが、こっちの物と同じ種類だ。デカイから味はどうか知らんが美味いはずだぞ、俺は丸ごと焼いて食うのが一番だからな、こいつは大きすぎてまだ食ってない。後は肉と一緒に焼いても美味いぞ」
「そうなのですね、楽しみです。ありがとうございました」
そして、立ち上がり、手紙を届ける最後の町の冒険者ギルドも終わりましたし、船でイシェの領地に向かうため船着き場に向かいます。
「ライ、それの一欠片だけちょうだい」
僕はテラの前まで三つの、父さんの手くらいあるニンニクを持ち上げました。
「ん~、そうね、この真ん中の、えっと、これ! ライこの子をバラしてくれない」
「了解。一欠片で良いんだね、よいしょっと」
二つは収納して、残したニンニクを見て、テラが『これよ』とパンパン叩いた部分を小分けにしていきます。
パリパリと外のかたい皮を剥き、お目当ての欠片を一つ、ポロっと取り外すとテラに手渡しました。
「ありがとライ。うんうん、中々の重さね、あの御神樹の実と変わらないわ、よいしょ」
そう言うと、綺麗な緑色の髪の毛の上に、でんっと乗せ、満足そうな顔です。
可愛いので、ちゅっとしておきました。
「こ、こら、ライ、人のいる大通りでなんて事するのよ、そう言うのは二人きりの時にするものなのよ」
「くふふ。だって可愛かったんだもん、あっ、船着き場だよ、いつ出るのか聞かなきゃ」
真っ赤になりながら、耳たぶをきゅっと握るテラ。
僕は足を早め、船着き場に到着しました。
船着き場は、岸から桟橋が沖に伸びていて、手前は小さな船が沢山あり、沖側に大きめの船が三隻繋留されています。
桟橋のあるところに行くと、一人魚釣りをしているおじいさんがいましたので、聞いてみることにしました。
「こんにちは。一つお聞きしても良いですか?」
「なんじゃ? えらく言葉遣いの丁寧な冒険者じゃな、良いぞ、見ての通り今日はまったく釣れんから暇じゃしな」
「ありがとうございます。対岸のアフロディーテ公爵領に行きたいのですが、船はありますか?」
「ふむ。それならほれ、桟橋の先にいる奴に聞けば分かるじゃろう。まだ昼前じゃから、これからの便があるやも知れん、急いだ方が良いぞ」
見ると確かに桟橋の先で、立っている方が何人かいますね。
「分かりました。ありがとうございます。沢山釣れると良いですね、では」
そう言って僕は桟橋を進み大きな船がある方へ。
「中々大きい船ですね、海賊船くらいありますから五十人は乗れそうですね」
「そうね、三隻とも既にそれくらいの人数が乗ってるから急いだ方が良さそうね、ほら急ぎましょ」
「うん。すいませーん!」
僕は軽めに走りながら声を出しました。すると三人いた人達が僕の方を向いたので、足を早め、進んで分かったおじさん達の所に到着しました。
「どうした坊主、客にでも用事か? それなら急ぐと良い、アフロディーテ公爵領にはもうすぐ出発だからな」
おお、ちょうど良かったみたいですね、三人いた内の一人のおじさんは、何か名簿のようなものを見ながら答えてくれました。
「いえ。僕もアフロディーテ公爵領に向かいたいので、乗せてもらいたいのですが、まだ乗れますか?」
「おお、客だったか、そうだな、人数的には一番沖の船ならまだ余裕があるぞ、身分証を見せてもらうのと銀貨一枚だ」
おおー! ここでも驚かせる事ができそうですね。
(くふふ。ライ、それ好きねほら、やっちゃいなさい)
(うん、えっと、銀貨がテラのも入れて二枚と、ギルドカードだね)
僕は素早く出して、先に銀貨を渡し、ギルドカードをおじさん達に見せました。
「ん? 二人分?」
「はい。僕とテラの分です。そしてこれが二人のギルドカードです」
「なんと、その肩の嬢ちゃんも冒険者······へ? え?」
「なんだ、どうしたんだ、何を見て······は?」
「ん~、何! え、え、え、Sランク!」
ぬふふふ。
「ふ、二人ともだぞ! こんな子供と肩乗り嬢ちゃんがSランク!」
くふふふ。
「あっ! ス、スライム! 例のスライム使いだぞ! 噂が流れてきただろ!」
「はい。そう呼ばれています」
「「Sランクが来たぁー!」」
(くふふ。良かったわね、驚いてくれたし)
(うん。あっ、船の上からも声で気付いて覗かれてますね、くふふふ)
「あ、あの、ど、どうぞお乗り下さいませ、先ほど言った一番沖の船です。甲板の上ならどこでも大丈夫ですので、はい」
「ありがとうございます。ではアフロディーテ公爵領までよろしくお願いしますね」
僕はギルドカードをしまい、奥の船に取り付けられていた階段を上り、乗り込みました。
甲板には固定された椅子があって、数十人もの方が座ったり、船縁に立っていたりと本当にここはどこにいても良さそうです。
「一番先に行ってみましょう」
そしてこの船の一番前に行き、特等席を確保しました。
そこから湖の先を眺めたり、水面を覗き込むと、凄くキラキラして僕の顔が映るくらい綺麗でした。
すると桟橋にいた人の一人が階段を上がってきて、階段をくくりつけていたロープを外しています。
「出航ですね」
「そのようね。じゃあ船旅を楽しんじゃいましょう」
(そこの露店を見て! ニンニクよ! それも、滅多にないくらい良いものよ!)
(ん? 大きいですね、珍しいの? それにどうして念話?)
(物凄く珍しいわ、普通のニンニクが、ごく稀にしか変化しないんだけど、物凄く美味しい物よ! 次はこれにするわ。頑張れば毎回同じ様に育ってくれるから、良いと思わない? 念話なのはこんな事言ったら高くするかもしれないでしょ、今なら小さいニンニクとも同じ値段だし!)
(くふふ。テラは良い奥さんになるね、うん。じゃあいくつか買おうか、どの子が良いかな?)
テラは真っ赤な顔になりましたが、大きなニンニクの籠から三個選んで、銅貨三枚で購入しました。
「毎度あり。こいつはなんでか大きく育ったんでな、まあ、たまたまだろうが、こっちの物と同じ種類だ。デカイから味はどうか知らんが美味いはずだぞ、俺は丸ごと焼いて食うのが一番だからな、こいつは大きすぎてまだ食ってない。後は肉と一緒に焼いても美味いぞ」
「そうなのですね、楽しみです。ありがとうございました」
そして、立ち上がり、手紙を届ける最後の町の冒険者ギルドも終わりましたし、船でイシェの領地に向かうため船着き場に向かいます。
「ライ、それの一欠片だけちょうだい」
僕はテラの前まで三つの、父さんの手くらいあるニンニクを持ち上げました。
「ん~、そうね、この真ん中の、えっと、これ! ライこの子をバラしてくれない」
「了解。一欠片で良いんだね、よいしょっと」
二つは収納して、残したニンニクを見て、テラが『これよ』とパンパン叩いた部分を小分けにしていきます。
パリパリと外のかたい皮を剥き、お目当ての欠片を一つ、ポロっと取り外すとテラに手渡しました。
「ありがとライ。うんうん、中々の重さね、あの御神樹の実と変わらないわ、よいしょ」
そう言うと、綺麗な緑色の髪の毛の上に、でんっと乗せ、満足そうな顔です。
可愛いので、ちゅっとしておきました。
「こ、こら、ライ、人のいる大通りでなんて事するのよ、そう言うのは二人きりの時にするものなのよ」
「くふふ。だって可愛かったんだもん、あっ、船着き場だよ、いつ出るのか聞かなきゃ」
真っ赤になりながら、耳たぶをきゅっと握るテラ。
僕は足を早め、船着き場に到着しました。
船着き場は、岸から桟橋が沖に伸びていて、手前は小さな船が沢山あり、沖側に大きめの船が三隻繋留されています。
桟橋のあるところに行くと、一人魚釣りをしているおじいさんがいましたので、聞いてみることにしました。
「こんにちは。一つお聞きしても良いですか?」
「なんじゃ? えらく言葉遣いの丁寧な冒険者じゃな、良いぞ、見ての通り今日はまったく釣れんから暇じゃしな」
「ありがとうございます。対岸のアフロディーテ公爵領に行きたいのですが、船はありますか?」
「ふむ。それならほれ、桟橋の先にいる奴に聞けば分かるじゃろう。まだ昼前じゃから、これからの便があるやも知れん、急いだ方が良いぞ」
見ると確かに桟橋の先で、立っている方が何人かいますね。
「分かりました。ありがとうございます。沢山釣れると良いですね、では」
そう言って僕は桟橋を進み大きな船がある方へ。
「中々大きい船ですね、海賊船くらいありますから五十人は乗れそうですね」
「そうね、三隻とも既にそれくらいの人数が乗ってるから急いだ方が良さそうね、ほら急ぎましょ」
「うん。すいませーん!」
僕は軽めに走りながら声を出しました。すると三人いた人達が僕の方を向いたので、足を早め、進んで分かったおじさん達の所に到着しました。
「どうした坊主、客にでも用事か? それなら急ぐと良い、アフロディーテ公爵領にはもうすぐ出発だからな」
おお、ちょうど良かったみたいですね、三人いた内の一人のおじさんは、何か名簿のようなものを見ながら答えてくれました。
「いえ。僕もアフロディーテ公爵領に向かいたいので、乗せてもらいたいのですが、まだ乗れますか?」
「おお、客だったか、そうだな、人数的には一番沖の船ならまだ余裕があるぞ、身分証を見せてもらうのと銀貨一枚だ」
おおー! ここでも驚かせる事ができそうですね。
(くふふ。ライ、それ好きねほら、やっちゃいなさい)
(うん、えっと、銀貨がテラのも入れて二枚と、ギルドカードだね)
僕は素早く出して、先に銀貨を渡し、ギルドカードをおじさん達に見せました。
「ん? 二人分?」
「はい。僕とテラの分です。そしてこれが二人のギルドカードです」
「なんと、その肩の嬢ちゃんも冒険者······へ? え?」
「なんだ、どうしたんだ、何を見て······は?」
「ん~、何! え、え、え、Sランク!」
ぬふふふ。
「ふ、二人ともだぞ! こんな子供と肩乗り嬢ちゃんがSランク!」
くふふふ。
「あっ! ス、スライム! 例のスライム使いだぞ! 噂が流れてきただろ!」
「はい。そう呼ばれています」
「「Sランクが来たぁー!」」
(くふふ。良かったわね、驚いてくれたし)
(うん。あっ、船の上からも声で気付いて覗かれてますね、くふふふ)
「あ、あの、ど、どうぞお乗り下さいませ、先ほど言った一番沖の船です。甲板の上ならどこでも大丈夫ですので、はい」
「ありがとうございます。ではアフロディーテ公爵領までよろしくお願いしますね」
僕はギルドカードをしまい、奥の船に取り付けられていた階段を上り、乗り込みました。
甲板には固定された椅子があって、数十人もの方が座ったり、船縁に立っていたりと本当にここはどこにいても良さそうです。
「一番先に行ってみましょう」
そしてこの船の一番前に行き、特等席を確保しました。
そこから湖の先を眺めたり、水面を覗き込むと、凄くキラキラして僕の顔が映るくらい綺麗でした。
すると桟橋にいた人の一人が階段を上がってきて、階段をくくりつけていたロープを外しています。
「出航ですね」
「そのようね。じゃあ船旅を楽しんじゃいましょう」
0
お気に入りに追加
1,638
あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる