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第四章

第158話 ちょっとだけ船の旅に出航です

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「ねえライ!」

(そこの露店を見て! ニンニクよ! それも、滅多にないくらい良いものよ!)

(ん? 大きいですね、珍しいの? それにどうして念話?)

(物凄く珍しいわ、普通のニンニクが、ごくまれにしか変化しないんだけど、物凄く美味しい物よ! 次はこれにするわ。頑張れば毎回同じ様に育ってくれるから、良いと思わない? 念話なのはこんな事言ったら高くするかもしれないでしょ、今なら小さいニンニクとも同じ値段だし!)

(くふふ。テラは良い奥さんになるね、うん。じゃあいくつか買おうか、どの子が良いかな?)

 テラは真っ赤な顔になりましたが、大きなニンニクの籠から三個選んで、銅貨三枚で購入しました。

「毎度あり。こいつはなんでか大きく育ったんでな、まあ、たまたまだろうが、こっちの物と同じ種類だ。デカイから味はどうか知らんが美味いはずだぞ、俺は丸ごと焼いて食うのが一番だからな、こいつは大きすぎてまだ食ってない。後は肉と一緒に焼いても美味いぞ」

「そうなのですね、楽しみです。ありがとうございました」

 そして、立ち上がり、手紙を届ける最後の町の冒険者ギルドも終わりましたし、船でイシェの領地に向かうため船着き場に向かいます。

「ライ、それの一欠片だけちょうだい」

 僕はテラの前まで三つの、父さんの手くらいあるニンニクを持ち上げました。

「ん~、そうね、この真ん中の、えっと、これ! ライこの子をバラしてくれない」

「了解。一欠片で良いんだね、よいしょっと」

 二つは収納して、残したニンニクを見て、テラが『これよ』とパンパン叩いた部分を小分けにしていきます。

 パリパリと外のかたい皮を剥き、お目当ての欠片を一つ、ポロっと取り外すとテラに手渡しました。

「ありがとライ。うんうん、中々の重さね、あの御神樹の実と変わらないわ、よいしょ」

 そう言うと、綺麗な緑色の髪の毛の上に、でんっと乗せ、満足そうな顔です。

 可愛いので、ちゅっとしておきました。

「こ、こら、ライ、人のいる大通りでなんて事するのよ、そう言うのは二人きりの時にするものなのよ」

「くふふ。だって可愛かったんだもん、あっ、船着き場だよ、いつ出るのか聞かなきゃ」

 真っ赤になりながら、耳たぶをきゅっと握るテラ。

 僕は足を早め、船着き場に到着しました。

 船着き場は、岸から桟橋が沖に伸びていて、手前は小さな船が沢山あり、沖側に大きめの船が三せき繋留けいりゅうされています。

 桟橋のあるところに行くと、一人魚釣りをしているおじいさんがいましたので、聞いてみることにしました。

「こんにちは。一つお聞きしても良いですか?」

「なんじゃ? えらく言葉遣いの丁寧な冒険者じゃな、良いぞ、見ての通り今日はまったく釣れんから暇じゃしな」

「ありがとうございます。対岸のアフロディーテ公爵領に行きたいのですが、船はありますか?」

「ふむ。それならほれ、桟橋の先にいる奴に聞けば分かるじゃろう。まだ昼前じゃから、これからの便があるやも知れん、急いだ方が良いぞ」

 見ると確かに桟橋の先で、立っている方が何人かいますね。

「分かりました。ありがとうございます。沢山釣れると良いですね、では」

 そう言って僕は桟橋を進み大きな船がある方へ。

「中々大きい船ですね、海賊船くらいありますから五十人は乗れそうですね」

「そうね、三隻とも既にそれくらいの人数が乗ってるから急いだ方が良さそうね、ほら急ぎましょ」

「うん。すいませーん!」

 僕は軽めに走りながら声を出しました。すると三人いた人達が僕の方を向いたので、足を早め、進んで分かったおじさん達の所に到着しました。

「どうした坊主、客にでも用事か? それなら急ぐと良い、アフロディーテ公爵領にはもうすぐ出発だからな」

 おお、ちょうど良かったみたいですね、三人いた内の一人のおじさんは、何か名簿のようなものを見ながら答えてくれました。

「いえ。僕もアフロディーテ公爵領に向かいたいので、乗せてもらいたいのですが、まだ乗れますか?」

「おお、客だったか、そうだな、人数的には一番沖の船ならまだ余裕があるぞ、身分証を見せてもらうのと銀貨一枚だ」

 おおー! ここでも驚かせる事ができそうですね。

(くふふ。ライ、それ好きねほら、やっちゃいなさい)

(うん、えっと、銀貨がテラのも入れて二枚と、ギルドカードだね)

 僕は素早く出して、先に銀貨を渡し、ギルドカードをおじさん達に見せました。

「ん? 二人分?」

「はい。僕とテラの分です。そしてこれが二人のギルドカードです」

「なんと、その肩の嬢ちゃんも冒険者······へ? え?」

「なんだ、どうしたんだ、何を見て······は?」

「ん~、何! え、え、え、Sランク!」

 ぬふふふ。

「ふ、二人ともだぞ! こんな子供と肩乗り嬢ちゃんがSランク!」

 くふふふ。

「あっ! ス、スライム! 例のスライム使いだぞ! 噂が流れてきただろ!」

「はい。そう呼ばれています」

「「Sランクが来たぁー!本物だぁぁぁぁー!」」

(くふふ。良かったわね、驚いてくれたし)

(うん。あっ、船の上からも声で気付いて覗かれてますね、くふふふ)

「あ、あの、ど、どうぞお乗り下さいませ、先ほど言った一番沖の船です。甲板の上ならどこでも大丈夫ですので、はい」

「ありがとうございます。ではアフロディーテ公爵領までよろしくお願いしますね」

 僕はギルドカードをしまい、奥の船に取り付けられていた階段を上り、乗り込みました。

 甲板には固定された椅子があって、数十人もの方が座ったり、船縁に立っていたりと本当にここはどこにいても良さそうです。

「一番先に行ってみましょう」

 そしてこの船の一番前に行き、特等席を確保しました。

 そこから湖の先を眺めたり、水面を覗き込むと、凄くキラキラして僕の顔が映るくらい綺麗でした。

 すると桟橋にいた人の一人が階段を上がってきて、階段をくくりつけていたロープを外しています。

「出航ですね」

「そのようね。じゃあ船旅を楽しんじゃいましょう」
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