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第四章
第154話 胡椒を手に入れました
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「せい!」
僕の身長より大きくなった胡椒。投げた拍子にバラバラに分かれ、池に向けて飛んで行くのですが、一つひとつが軽いので遠くまで飛ばず地面に――。
「風さんお願いします! ほいっと!」
――接地した胡椒もありましたが大多数を風に乗せ上空へ。そして等間隔になるように広げながら飛ばします。
「その調子よ! って、ああー! この子は蔓だから巻き付く物が必要なの! お願いライ!」
「任せて! 土いじりなら!」
僕は瞬時にしゃがみ込み、地面に手を添えると――。
「沢山の木でいきますよ! ほいっと!」
――にょき、にょきにょきっと地面から魔力を込め過ぎかな? 直径十センチくらいの木の形をした蔦が絡ませやすそうな高さ三メートルくらいの石の林ができました。
数百本の石でできた葉っぱの無い木、その一つひとつに根っ子の伸びた胡椒を引っ付けていきます。
「おお! 石の木に触れたら巻き付いて!」
「良いわよライ! よし、あなた達ぐんぐん伸びるのよ!」
「よーしっ! 魔力もオマケしてあげます! ぐるぐるぅー、ほいっと!」
周りに充満している魔力を集め、全ての胡椒の蔓に補充していきます。
根が伸び、蔓が伸びて、どんどん成長していき、茶色の石の木が緑色に染まって、プツプツの房状の実が付き始め、僕達が立っている十メートルくらい先から緑の胡椒林が完成しました。
「ありがとうライ、完璧よ! ちゅっ」
「えへへ。ちゅっ。これだけあれば沢山胡椒が取れるかな?」
「いや、これだけだとサーバルの領地にも行き渡らないが、この街の分としては十分な量になるだろうな」
僕の後ろから父さんがそんな事を。
「ぬふふふ。お義父様、そこは問題無いわ。この子達は収穫してもすぐに次の実をつけるだけの魔力を込めたから、取り放題よ。それに普通なら十年もすれば枯れるんだけど、この子は三倍は長生き。それに最初のこの子は少し食べないで種として残しておけばまた同じ様に育つからずっと作り続けられるの」
「ほう。サーバル伯爵領に新たな産業ができるのか、だが、寒さは大丈夫なのか? この辺りは雪も年に数回積もるのだが」
今度はお義父さんが、そうですね、雪遊びは良くやりましたし、そのお陰で氷魔法も覚えましたからね。
「ええ。この辺りの植生を見てこの辺りの気候に合うように頑張ってもらったからそこも心配ないわね」
「くくくっ、のう剣聖よ、王都にも安く入れてくれるであろうな? 働き手はライがこの先もどんどん連れてくるであろうし、土地だけのサーバル領とは最早誰も嫌味が言えなくなるぞ? どうだ、南の森を開拓して海に繋げれば今度は塩を手にできるぞ?」
あっ! そうでした! 南の大きな森を抜ければ海があるって言ってましたね。僕が貰う予定の東の森とも繋がっていますから今度こっそりと。
(良い考えね、教国を終わらせたらやってしまいましょう)
(くふふふ。こうなったら見付からないように海側から開拓して驚かせましょう)
「あはは······ 王様、それは流石に時間と労力が膨大になります。まずはエルフ達の街で農業とこれまでの酪農を広めながら土地を開拓。その後になりますから早くとも、孫の孫が成せるかどうかですよ」
その時王様が僕をチラリと見たので思わず目をそらしてしまいました。
「くくくっ、まあ楽しみにしておこう。なあ剣聖。ライも楽しみであろう?」
「う、うん。父さん頑張ってね、あは、あは、あはは······」
うっ、なぜか一緒に転移して来てしまった、バラクーダ辺境伯、タシンサ男爵、それに捕まえたばかりの運び屋の方達まで、王様達と一緒になぜかジト目、それでいて呆れ顔なのはなぜでしょうかね······。
「よし、ではせっかく戻ってきたのだが、帝国に一度戻らねばな。はぁ、せっかくの休暇が潰れてしまうぞ、なぁ宰相」
「はぁ、しかたありませんね、後日ですが日を改めて休日を取れるよう予定を組み直させていただきます」
「おい! 本当にその小僧は何者だ! それに喋るその小さい女はなんなのだ! この人数を転させて顔色一つひとつ変えん! いくら賢者の息子とは言え、どれだけの魔力を持っていると言うのだ!」
「バラクーダ辺境伯さん。僕は普通ですよ、それにテラは僕のお嫁さんです。魔力はそこらじゅうにありますから元々の魔力でしたら母さんの方が多いですよ?」
「うふふ。そうね、ライより私の方がまだ魔力量は上ね、バラクーダ辺境伯、貴方には分からないでしょうがね。それよりライ、テラちゃんとちゅってしてたけど、テラちゃんのご両親にはちゃんとご挨拶したの? できれば私もしたいのだけど」
「そうだな。ライ、もし会える時があったなら呼んでくれ、こう言うのはきちんと挨拶しておかないとな。プシュケのご両親にはこの前してきたしなぁ」
「そうね、パパとママに会わせたいわね」
「魔力はそう言うならそうなのだろうが、それでは説明が付かんから聞いておるのだ! それでは質問の答えになってないではないかぁー!」
バラクーダ辺境伯さんの叫びは胡椒の林に溶け込み消えていきました。
僕の身長より大きくなった胡椒。投げた拍子にバラバラに分かれ、池に向けて飛んで行くのですが、一つひとつが軽いので遠くまで飛ばず地面に――。
「風さんお願いします! ほいっと!」
――接地した胡椒もありましたが大多数を風に乗せ上空へ。そして等間隔になるように広げながら飛ばします。
「その調子よ! って、ああー! この子は蔓だから巻き付く物が必要なの! お願いライ!」
「任せて! 土いじりなら!」
僕は瞬時にしゃがみ込み、地面に手を添えると――。
「沢山の木でいきますよ! ほいっと!」
――にょき、にょきにょきっと地面から魔力を込め過ぎかな? 直径十センチくらいの木の形をした蔦が絡ませやすそうな高さ三メートルくらいの石の林ができました。
数百本の石でできた葉っぱの無い木、その一つひとつに根っ子の伸びた胡椒を引っ付けていきます。
「おお! 石の木に触れたら巻き付いて!」
「良いわよライ! よし、あなた達ぐんぐん伸びるのよ!」
「よーしっ! 魔力もオマケしてあげます! ぐるぐるぅー、ほいっと!」
周りに充満している魔力を集め、全ての胡椒の蔓に補充していきます。
根が伸び、蔓が伸びて、どんどん成長していき、茶色の石の木が緑色に染まって、プツプツの房状の実が付き始め、僕達が立っている十メートルくらい先から緑の胡椒林が完成しました。
「ありがとうライ、完璧よ! ちゅっ」
「えへへ。ちゅっ。これだけあれば沢山胡椒が取れるかな?」
「いや、これだけだとサーバルの領地にも行き渡らないが、この街の分としては十分な量になるだろうな」
僕の後ろから父さんがそんな事を。
「ぬふふふ。お義父様、そこは問題無いわ。この子達は収穫してもすぐに次の実をつけるだけの魔力を込めたから、取り放題よ。それに普通なら十年もすれば枯れるんだけど、この子は三倍は長生き。それに最初のこの子は少し食べないで種として残しておけばまた同じ様に育つからずっと作り続けられるの」
「ほう。サーバル伯爵領に新たな産業ができるのか、だが、寒さは大丈夫なのか? この辺りは雪も年に数回積もるのだが」
今度はお義父さんが、そうですね、雪遊びは良くやりましたし、そのお陰で氷魔法も覚えましたからね。
「ええ。この辺りの植生を見てこの辺りの気候に合うように頑張ってもらったからそこも心配ないわね」
「くくくっ、のう剣聖よ、王都にも安く入れてくれるであろうな? 働き手はライがこの先もどんどん連れてくるであろうし、土地だけのサーバル領とは最早誰も嫌味が言えなくなるぞ? どうだ、南の森を開拓して海に繋げれば今度は塩を手にできるぞ?」
あっ! そうでした! 南の大きな森を抜ければ海があるって言ってましたね。僕が貰う予定の東の森とも繋がっていますから今度こっそりと。
(良い考えね、教国を終わらせたらやってしまいましょう)
(くふふふ。こうなったら見付からないように海側から開拓して驚かせましょう)
「あはは······ 王様、それは流石に時間と労力が膨大になります。まずはエルフ達の街で農業とこれまでの酪農を広めながら土地を開拓。その後になりますから早くとも、孫の孫が成せるかどうかですよ」
その時王様が僕をチラリと見たので思わず目をそらしてしまいました。
「くくくっ、まあ楽しみにしておこう。なあ剣聖。ライも楽しみであろう?」
「う、うん。父さん頑張ってね、あは、あは、あはは······」
うっ、なぜか一緒に転移して来てしまった、バラクーダ辺境伯、タシンサ男爵、それに捕まえたばかりの運び屋の方達まで、王様達と一緒になぜかジト目、それでいて呆れ顔なのはなぜでしょうかね······。
「よし、ではせっかく戻ってきたのだが、帝国に一度戻らねばな。はぁ、せっかくの休暇が潰れてしまうぞ、なぁ宰相」
「はぁ、しかたありませんね、後日ですが日を改めて休日を取れるよう予定を組み直させていただきます」
「おい! 本当にその小僧は何者だ! それに喋るその小さい女はなんなのだ! この人数を転させて顔色一つひとつ変えん! いくら賢者の息子とは言え、どれだけの魔力を持っていると言うのだ!」
「バラクーダ辺境伯さん。僕は普通ですよ、それにテラは僕のお嫁さんです。魔力はそこらじゅうにありますから元々の魔力でしたら母さんの方が多いですよ?」
「うふふ。そうね、ライより私の方がまだ魔力量は上ね、バラクーダ辺境伯、貴方には分からないでしょうがね。それよりライ、テラちゃんとちゅってしてたけど、テラちゃんのご両親にはちゃんとご挨拶したの? できれば私もしたいのだけど」
「そうだな。ライ、もし会える時があったなら呼んでくれ、こう言うのはきちんと挨拶しておかないとな。プシュケのご両親にはこの前してきたしなぁ」
「そうね、パパとママに会わせたいわね」
「魔力はそう言うならそうなのだろうが、それでは説明が付かんから聞いておるのだ! それでは質問の答えになってないではないかぁー!」
バラクーダ辺境伯さんの叫びは胡椒の林に溶け込み消えていきました。
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