【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

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第四章

第148話 捕まえますよ?

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 扉を開け中に入ると、そこにはメイドさんが待っていてくれました。

「待っていてくれたんだ。案内してくれるの?」

「はい。お連れするようお聞きしてます。では書斎にご案内いたします」

「ありがとう。よろしくね」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 メイドさんに付いて行き、ホールのいくつかある扉の一つに向かい、開けるとそこは廊下が結構遠くまで続き、いくつもの扉が見えました。

 ホールもそうでしたが、金ピカの装飾品が並べられていて、お金持ちって感じですね。

 どんどん廊下を進み、突き当たりを曲がるとこれまで以上に金ピカに装飾された扉がありました。

 メイドさんは三回、コンコンコンと扉を叩くと中から『誰だ』と声が聞こえてきました。

「お客様をお連れしました」

 メイドさんがそう言うと、『入れ』と声が聞こえ、扉が勝手に開きました。

 メイドさんに続いて中に入る僕達を豪奢ごうしゃなソファーに座ったままの二人が、頭の先から足よ先まで見てきました。

 それに、部屋にいるのはソファーに座る二人と扉を開けてくれたメイドさんだけでした。

 ですが。

(テラ、天井からと左右の壁の向こうにいっぱいいるね)

(ちょっと待ってね、んん神眼~、そいつらも一緒に気絶させておけば良いわよ。魔道具も持ってるの分かるでしょ、それも忘れずにね。それと、こいつら教国よ。よく辺境伯や男爵なんてなれたわね、帝国も、色んな国を合併してできたからかも知れないわ、言わばこれって反乱みたいなもので、皇帝は知らないのかも知れないわね)

(そうなんだ。ぐるぐるして部屋の人以外は気絶と収納しちゃうね。ぐるぐる~、ほいっと!)

「よし、お前達は呼ぶまで下がっておれ」

「はい。失礼いたします」

 少し隣の部屋からドサッと聞こえましたが、扉を閉めるカチャの音と同時でしたからたぶん大丈夫でしょう。

 さて、僕達四人だけになりましたし、魔力はギリギリまで発散させておきましょうね。それに回復の魔道具は二人とも胸の位置ですからネックレスかな?

(そうよ、それさえ取っておけば後は気絶してからで良いわよ、少しは話をするみたいだし)

(うん。ではでは、収納! 準備完了です)

「こないだぶりですね、タシンサ男爵と王都で合った以来ね、バラクーダ辺境伯」

「そんな事は良い、我々が廃爵の危険があると聞いたが、どういう事だ? アールマティ嬢。アフラ侯爵からの情報かね?」

「いえいえ。父は関係ありませんわよ」

 え? アフラ侯爵? 侯爵様がお父さんなの? それなのに冒険者でSランクにまでなったの? 駄目です気になりますが、今は準備が終わったとお知らせするのが先ですね。

 僕はアールマティさんの服の裾をつんつんと引っ張ると、こちらを見ましたので、頷いておきます。

 アールマティさんも小さく頷き、話を進めるようです。

「バラクーダ辺境伯。タシンサ男爵。そうですわね······ヒュドラ······ファイアーアント······国境砦のダンジョンに設置された魔道具······なにか思いあたる事はない?」

 最初のヒュドラの時はピクリと眉を動かし、ファイアーアントで膝の上の手を握りしめ、国境砦の所で肩が小さく跳ねました。

「タシンサ男爵、なにか心当たりはあるかね?」

「さて。バラクーダ辺境伯様、私にはなんの事だか見当も付きませんです」

「ふ~ん。バラマンディ侯爵の暗殺······支援と偽り最近かき集めていた食料を高値で売り捌く······侯爵のいない間にバラマンディ侯爵領に攻め入り領地を取る計画は?」

 そこまで言った時、顔を青くしましたが、すぐに赤く染まりました。ですがちらりと左右の部屋と天井に向かって目配せでしょうか、各場所を見た後、バラクーダ辺境伯は落ち着きを取り戻したようです。

「中々面白いお話ですが、それが私達にどう関係してくるのかね」

「そ、そうだぞ、まったく侯爵令嬢でSランク冒険者と言うから通してもらったが、これはアフラ侯爵に抗議の書簡を送らねばなるまい」

「あら、そうですか? おかしいですわね、隣国のとある方からお手紙をいただいて、捕まえた方から聞き出したそうですが、それでも記憶に無いと? 先日この街から出ていった兵士が隣国内で捕まったのにですか? ヒュドラの九本首が倒されてすぐにですよ? その後のファイアーアントも巣ごと全滅させた後に、スタンピードを起こそうとしていた主導者もつかまっていますけど? ダンジョンの魔道具を設置するため同行した者も捕まって、色々とお話してくれたそうですが?」

 アールマティさんはここぞとばかりに手紙に書いてあった事を、二人の目を見てぶつけて行きます。

 最後までその言葉を聞き、今度は真っ赤なままで、怒りの表情を隠しもしなくなりました。

(ねえライ、もう腕輪を付けちゃえば? たぶん次は人を呼ぶんだし、その時来なくて一瞬止まるし、その時に付けて、さっさと吐かせちちゃいましょ)

(うん。僕もやるならそこかなって思ってたよ。だって二人ともぶよぶよで重そうですから運んでもらうの悪いでしょ? 自分で歩いて牢屋に入ってもらえば良いよね)

(そうよ。ほら動くわよ)

「くくくくっ。くははははは!」

「くふふふ。あははははは!」

 二人は笑い始め、テーブルに合ったワインを手に取り、不適な顔でこう言いました。

「もう良い、殺れ!」

「はぁ~、こうなっては仕方ありませんね、殺ってしまいなさい!」

 バラクーダ辺境伯は右に向かって、タシンサ男爵は左に向かって、そう言い放ちましたが、物音一つせず、反応が帰ってこない二人はお互い顔を見合わせました。

 今ですね。

 僕は一気に二人に近付き腕輪を嵌めようとしたのですが――。
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