【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

いな@

文字の大きさ
上 下
147 / 241
第四章

第147話 潜入ですよ!

しおりを挟む
「すぐに行きますか? 僕も、帝都に向けてその手紙を届けながら進んでいる最中ですので、早い方が良いのですが」

「ええ。今すぐ行きましょう。シッ!」

 そう言うと、短く強く息を吐くと収納から防具と刀を出し一瞬で装備してしまいました。

 おお。ギルドマスターのお姉さんも刀を使うのですね。それに父さんからもらった刀と良く似ています。

「ん? この刀ですか? これは剣聖様が冒険者時代にお使いになっていた刀と同じ物です。現役時代に回ったとされるダンジョンを隈無くまなく探し回り、やっと見付けたものなのですよ、それ以来これを使い続けています」

 僕も父さんからもらった刀を出して、見比べると、多少の傷はあり、別物だと分かるのですが、ダンジョンで産出される物としては同じ物だと分かりました。

「そ、それは! も、もしかして、剣聖様がお使いになっていた物?」

「はい。父さんから旅立ちの際にいただきました。今は別の刀を使っていますが、大切なものです。持ってみますか?」

「よ、良いのですか!? ぜひ!」

 僕がお姉さんに刀を預けると、手紙の時と同様に丁寧に受け取り、じっくり眺め、ちょっと匂いを嗅いだり。あはは、臭くはないと思いますよ。

「少しだけ抜いても良いですか? あっ、ここでは駄目ですね、こんなところで抜いてしまうと怒られちゃいますし、応接室で――」

「ギルドマスター! 行くなら早く行け! 今ならバラクーダ辺境伯も出立したとは聞いてない、捕まえるなら一緒に捕まえるんだな」

「ぐぬっ。そ、そうね、後でじっくり見させてもらえば良いだけじゃない。じ、じゃあ名残惜しいけど返しておくね」

「はい。では案内よろしくお願いしますね」

 そしてお姉さんの後をついてギルドから出ると、街の中心部に向かいます。ここは向こうの帝都に向かう門にお屋敷があるのですね。

 そう思っていたのですが、街の中心部は貴族街のような大きなお屋敷が沢山あり、その中の大きなお屋敷前で止まりました。

「あの、ここなのですか?」

「ええ。本来なら帝都側に抜ける門近くにあるべきです、でもタシンサはこのように守るではなく守られる形で屋敷を構えているのですよ。何度も屋敷を移すよう言ったのですが、タシンサは一向に言うことを聞かないのです」

「ええ~。駄目ですよそれ、領主や管理監はその街の守りの要ですよ、守られる側ではいけませんよ!」

「はぁ、俺もそう思うのだがな。で、何か用事かギルドマスター。今はバラクーダ辺境伯様がいらっしゃるから取り次ぎは厳しいと思うが」

 僕達の話を聞いていた四人いる門番さんの一人がはなしかけてきました。

 なるほどです。二人とも一度に捕まえられそうですね。

「それは都合が良いです。そのお二方にお話がありましたから、緊急の用件です、お取り次ぎをお願いできますか? お二方ともに廃爵もあり得る話ですので、お早めにお知らせしたく」

「なんだと! それは一大事ではないですか! 少々お待ちを」

 門番さんは門に併設の詰め所に入るともう一人新たに人を連れ出てきたと思ったら、奥に見えているお屋敷の方に走っていきました。

(中々上手い具合に真実を隠しながら嘘は付いていないわ、頭が良いと言うのは本当のようね)

(はい。僕なら普通に言っちゃってましたよ、二人を捕まえに来たって)

(それはそれでどうかと思うけれど、ライらしいわね。ところでお姉さんが何かうずうずしてるわよ、刀を見たいんだろうけど、門前で抜くのも駄目よね)

「お姉さんが刀を見たいのは分かりますが、ここでも抜刀は駄目ですよ?」

「うぅ、そうですよね~、でも門番が良いと言えば!」

「おほんっ! ギルドマスター、流石にここでの抜刀は控えて下さい。捕まえられませんが、捕まえる行動にはでなければいけませんから、お願いしますね」

「だって~」

「それで前もあったじゃないですか、刀を持つ方の物を見せてもらうために、抜刀して衛兵に怒られてたでしょう。ほらほら取り次ぎをしに行った者が帰ってきますから、我慢ですよ」

 あはは、前にもやっていたのですか。僕も気を付けませんとね、気付かず悪いことをしちゃうかも知れませんし。おっ、門番さんが言った通り戻ってきました。思ったより早く取り次ぎができたようです。

「ギルドマスター、入ってくれ、お会いするそうだ」

「ありがとう。場所は執務室かな?」

「ああ。そこでバラクーダ辺境伯様と旦那様がおられる」

「じゃあ場所は分かりますから案内は良いですよ、お仕事に戻って下さい」

「そうだな、頼めるか? 後、辺境伯様もいらっしゃるからな、お待たせしないように早めに頼む」

「ええ。すぐ済みますから」

 そうして僕達は門をくぐり石畳をまっすぐ進みます。

「どんな作戦で行きますか? 気絶させて良いなら、すぐできますが」

「ん? 当て身でもするの? そうね、奴隷の魔道具は持って来てないけど、連れていってからの方が面倒じゃないし、良いかもね、じゃあ私が挨拶して少し話をするから隙を見てお願いできる?」

「はい。それに奴隷の魔道具はっと、ありますね。少しだけ持ってますから大丈夫です。護衛はいらっしゃるのですよね、たぶん。足りるかな」

「そんなの人払いするから大丈夫よ。任せておいて! よし、こんにちはー、お邪魔しまーす」

 そう言って、正面の大扉の片方を開け、潜入ですよ!
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

処理中です...