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第四章
第147話 潜入ですよ!
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「すぐに行きますか? 僕も、帝都に向けてその手紙を届けながら進んでいる最中ですので、早い方が良いのですが」
「ええ。今すぐ行きましょう。シッ!」
そう言うと、短く強く息を吐くと収納から防具と刀を出し一瞬で装備してしまいました。
おお。ギルドマスターのお姉さんも刀を使うのですね。それに父さんからもらった刀と良く似ています。
「ん? この刀ですか? これは剣聖様が冒険者時代にお使いになっていた刀と同じ物です。現役時代に回ったとされるダンジョンを隈無く探し回り、やっと見付けたものなのですよ、それ以来これを使い続けています」
僕も父さんからもらった刀を出して、見比べると、多少の傷はあり、別物だと分かるのですが、ダンジョンで産出される物としては同じ物だと分かりました。
「そ、それは! も、もしかして、剣聖様がお使いになっていた物?」
「はい。父さんから旅立ちの際にいただきました。今は別の刀を使っていますが、大切なものです。持ってみますか?」
「よ、良いのですか!? ぜひ!」
僕がお姉さんに刀を預けると、手紙の時と同様に丁寧に受け取り、じっくり眺め、ちょっと匂いを嗅いだり。あはは、臭くはないと思いますよ。
「少しだけ抜いても良いですか? あっ、ここでは駄目ですね、こんなところで抜いてしまうと怒られちゃいますし、応接室で――」
「ギルドマスター! 行くなら早く行け! 今ならバラクーダ辺境伯も出立したとは聞いてない、捕まえるなら一緒に捕まえるんだな」
「ぐぬっ。そ、そうね、後でじっくり見させてもらえば良いだけじゃない。じ、じゃあ名残惜しいけど返しておくね」
「はい。では案内よろしくお願いしますね」
そしてお姉さんの後をついてギルドから出ると、街の中心部に向かいます。ここは向こうの帝都に向かう門にお屋敷があるのですね。
そう思っていたのですが、街の中心部は貴族街のような大きなお屋敷が沢山あり、その中の大きなお屋敷前で止まりました。
「あの、ここなのですか?」
「ええ。本来なら帝都側に抜ける門近くにあるべきです、でもタシンサはこのように守るではなく守られる形で屋敷を構えているのですよ。何度も屋敷を移すよう言ったのですが、タシンサは一向に言うことを聞かないのです」
「ええ~。駄目ですよそれ、領主や管理監はその街の守りの要ですよ、守られる側ではいけませんよ!」
「はぁ、俺もそう思うのだがな。で、何か用事かギルドマスター。今はバラクーダ辺境伯様がいらっしゃるから取り次ぎは厳しいと思うが」
僕達の話を聞いていた四人いる門番さんの一人がはなしかけてきました。
なるほどです。二人とも一度に捕まえられそうですね。
「それは都合が良いです。そのお二方にお話がありましたから、緊急の用件です、お取り次ぎをお願いできますか? お二方ともに廃爵もあり得る話ですので、お早めにお知らせしたく」
「なんだと! それは一大事ではないですか! 少々お待ちを」
門番さんは門に併設の詰め所に入るともう一人新たに人を連れ出てきたと思ったら、奥に見えているお屋敷の方に走っていきました。
(中々上手い具合に真実を隠しながら嘘は付いていないわ、頭が良いと言うのは本当のようね)
(はい。僕なら普通に言っちゃってましたよ、二人を捕まえに来たって)
(それはそれでどうかと思うけれど、ライらしいわね。ところでお姉さんが何かうずうずしてるわよ、刀を見たいんだろうけど、門前で抜くのも駄目よね)
「お姉さんが刀を見たいのは分かりますが、ここでも抜刀は駄目ですよ?」
「うぅ、そうですよね~、でも門番が良いと言えば!」
「おほんっ! ギルドマスター、流石にここでの抜刀は控えて下さい。捕まえられませんが、捕まえる行動にはでなければいけませんから、お願いしますね」
「だって~」
「それで前もあったじゃないですか、刀を持つ方の物を見せてもらうために、抜刀して衛兵に怒られてたでしょう。ほらほら取り次ぎをしに行った者が帰ってきますから、我慢ですよ」
あはは、前にもやっていたのですか。僕も気を付けませんとね、気付かず悪いことをしちゃうかも知れませんし。おっ、門番さんが言った通り戻ってきました。思ったより早く取り次ぎができたようです。
「ギルドマスター、入ってくれ、お会いするそうだ」
「ありがとう。場所は執務室かな?」
「ああ。そこでバラクーダ辺境伯様と旦那様がおられる」
「じゃあ場所は分かりますから案内は良いですよ、お仕事に戻って下さい」
「そうだな、頼めるか? 後、辺境伯様もいらっしゃるからな、お待たせしないように早めに頼む」
「ええ。すぐ済みますから」
そうして僕達は門をくぐり石畳をまっすぐ進みます。
「どんな作戦で行きますか? 気絶させて良いなら、すぐできますが」
「ん? 当て身でもするの? そうね、奴隷の魔道具は持って来てないけど、連れていってからの方が面倒じゃないし、良いかもね、じゃあ私が挨拶して少し話をするから隙を見てお願いできる?」
「はい。それに奴隷の魔道具はっと、ありますね。少しだけ持ってますから大丈夫です。護衛はいらっしゃるのですよね、たぶん。足りるかな」
「そんなの人払いするから大丈夫よ。任せておいて! よし、こんにちはー、お邪魔しまーす」
そう言って、正面の大扉の片方を開け、潜入ですよ!
「ええ。今すぐ行きましょう。シッ!」
そう言うと、短く強く息を吐くと収納から防具と刀を出し一瞬で装備してしまいました。
おお。ギルドマスターのお姉さんも刀を使うのですね。それに父さんからもらった刀と良く似ています。
「ん? この刀ですか? これは剣聖様が冒険者時代にお使いになっていた刀と同じ物です。現役時代に回ったとされるダンジョンを隈無く探し回り、やっと見付けたものなのですよ、それ以来これを使い続けています」
僕も父さんからもらった刀を出して、見比べると、多少の傷はあり、別物だと分かるのですが、ダンジョンで産出される物としては同じ物だと分かりました。
「そ、それは! も、もしかして、剣聖様がお使いになっていた物?」
「はい。父さんから旅立ちの際にいただきました。今は別の刀を使っていますが、大切なものです。持ってみますか?」
「よ、良いのですか!? ぜひ!」
僕がお姉さんに刀を預けると、手紙の時と同様に丁寧に受け取り、じっくり眺め、ちょっと匂いを嗅いだり。あはは、臭くはないと思いますよ。
「少しだけ抜いても良いですか? あっ、ここでは駄目ですね、こんなところで抜いてしまうと怒られちゃいますし、応接室で――」
「ギルドマスター! 行くなら早く行け! 今ならバラクーダ辺境伯も出立したとは聞いてない、捕まえるなら一緒に捕まえるんだな」
「ぐぬっ。そ、そうね、後でじっくり見させてもらえば良いだけじゃない。じ、じゃあ名残惜しいけど返しておくね」
「はい。では案内よろしくお願いしますね」
そしてお姉さんの後をついてギルドから出ると、街の中心部に向かいます。ここは向こうの帝都に向かう門にお屋敷があるのですね。
そう思っていたのですが、街の中心部は貴族街のような大きなお屋敷が沢山あり、その中の大きなお屋敷前で止まりました。
「あの、ここなのですか?」
「ええ。本来なら帝都側に抜ける門近くにあるべきです、でもタシンサはこのように守るではなく守られる形で屋敷を構えているのですよ。何度も屋敷を移すよう言ったのですが、タシンサは一向に言うことを聞かないのです」
「ええ~。駄目ですよそれ、領主や管理監はその街の守りの要ですよ、守られる側ではいけませんよ!」
「はぁ、俺もそう思うのだがな。で、何か用事かギルドマスター。今はバラクーダ辺境伯様がいらっしゃるから取り次ぎは厳しいと思うが」
僕達の話を聞いていた四人いる門番さんの一人がはなしかけてきました。
なるほどです。二人とも一度に捕まえられそうですね。
「それは都合が良いです。そのお二方にお話がありましたから、緊急の用件です、お取り次ぎをお願いできますか? お二方ともに廃爵もあり得る話ですので、お早めにお知らせしたく」
「なんだと! それは一大事ではないですか! 少々お待ちを」
門番さんは門に併設の詰め所に入るともう一人新たに人を連れ出てきたと思ったら、奥に見えているお屋敷の方に走っていきました。
(中々上手い具合に真実を隠しながら嘘は付いていないわ、頭が良いと言うのは本当のようね)
(はい。僕なら普通に言っちゃってましたよ、二人を捕まえに来たって)
(それはそれでどうかと思うけれど、ライらしいわね。ところでお姉さんが何かうずうずしてるわよ、刀を見たいんだろうけど、門前で抜くのも駄目よね)
「お姉さんが刀を見たいのは分かりますが、ここでも抜刀は駄目ですよ?」
「うぅ、そうですよね~、でも門番が良いと言えば!」
「おほんっ! ギルドマスター、流石にここでの抜刀は控えて下さい。捕まえられませんが、捕まえる行動にはでなければいけませんから、お願いしますね」
「だって~」
「それで前もあったじゃないですか、刀を持つ方の物を見せてもらうために、抜刀して衛兵に怒られてたでしょう。ほらほら取り次ぎをしに行った者が帰ってきますから、我慢ですよ」
あはは、前にもやっていたのですか。僕も気を付けませんとね、気付かず悪いことをしちゃうかも知れませんし。おっ、門番さんが言った通り戻ってきました。思ったより早く取り次ぎができたようです。
「ギルドマスター、入ってくれ、お会いするそうだ」
「ありがとう。場所は執務室かな?」
「ああ。そこでバラクーダ辺境伯様と旦那様がおられる」
「じゃあ場所は分かりますから案内は良いですよ、お仕事に戻って下さい」
「そうだな、頼めるか? 後、辺境伯様もいらっしゃるからな、お待たせしないように早めに頼む」
「ええ。すぐ済みますから」
そうして僕達は門をくぐり石畳をまっすぐ進みます。
「どんな作戦で行きますか? 気絶させて良いなら、すぐできますが」
「ん? 当て身でもするの? そうね、奴隷の魔道具は持って来てないけど、連れていってからの方が面倒じゃないし、良いかもね、じゃあ私が挨拶して少し話をするから隙を見てお願いできる?」
「はい。それに奴隷の魔道具はっと、ありますね。少しだけ持ってますから大丈夫です。護衛はいらっしゃるのですよね、たぶん。足りるかな」
「そんなの人払いするから大丈夫よ。任せておいて! よし、こんにちはー、お邪魔しまーす」
そう言って、正面の大扉の片方を開け、潜入ですよ!
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