上 下
128 / 241
第四章

第128話 大きくなって、ママとパパ

しおりを挟む
「おおー! これは!」

「まあ! 大きいじゃない! ライ、入るわよ、また滑るのよ! ひねりは無しでね!」

「うん。じゃあ早速入りましょう!」

 ダンジョンの攻略をしていたのですが、遅くなりましたし、砦街に戻っても宿が空いていない可能性が高いので、僕達は二十階層のジュエルゴーレムがいた部屋でお泊まりする事にしました。

 そこで、取り出したのは十階層で手に入れた持ち運びハウスです。

 早速出して中には入り、色々探し回った結果お風呂を発見したわけです。

「ひゃっほーい♪」

「渦巻き水流からの~、滑り台です! ほいっと!」

「あははははは♪ うきゃっ」

 ぽちゃん。とはしゃぎすぎたテラはムルムルから投げ出されて、湯船に落ちちゃいました!

「テラ! 大丈夫!?」

 そっとテラを掬い上げると。

「ぷはぁー。し、死ぬかと思ったわ。ムルムル、次からはお風呂で遊ぶ時も掴んでおいてくれる」

 ぷるぷる

「はぁ、良かったよ。テラが死んじゃったかと」

「あ、あのくらいでは私は大丈夫よ。ほらそろそろ一時間くらい入っているし、あがりましょう。のぼせちゃうわ」

「うん」

 お風呂からあがり、ダンジョン攻略で、疲れていたのか寝間着に着替えて腹巻きをしてお布団に入るとすごく眠くなってきました。ムルムルとテラを胸に乗せてぐるぐる魔力を集めながら、そうです、あのブラックダイヤモンドの魔力は確かこんな感じでしたよね。

 ぐるぐる魔力を集めていますがダンジョンですから魔力は沢山ありますし、これをテラに注げば、ムルムルの魔力も······ね······ほいっと······寝てしまいました。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「おい。バラマンディ侯爵の暗殺が成功したと連絡はまだ来んのか?」

「辺境伯様。少し声を落として下さいませ、今宵は商会の者達が多数集まっております。聞き耳など無いとは思いますが、ご自重下さいませ」

「そうか。だが国境のダンジョンを使い物にならなくしてから早半年、安い食料を買い漁り売り付けようとした途端バラマンディ奴め峠越えの商人に補助金なんぞ出しよった」

「ええ。私の倉庫も今回で満載でございます。この冬までになんとかしなければ不味い事になりましょう」

「今宵も大量に買い付ける予定だ、我が倉庫も後二月ふたつきで溢れるからな。よし、男爵よ、お主の分は砦に送り始めろ。ヒュドラはもしかすると失敗する可能性があったはずだ、卵持ちが途中で追い付かれるやも知れんしな。だが」

「ファイアーアントですね」

「うむ。あれはまず失敗はなかろう、今月中には結果が出る。ボロボロになったバラマンディ侯爵領に支援と称して何割か増して売り付けてやろうではないか」

 コンコンコン

『辺境伯様、男爵様。商人達の用意が整いました』

「うむ。分かった。よし、できる限り安値で買い叩くぞ。例の金でな」

「はい。資金は潤沢ですが買い叩きましょう」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「うぐっ。あれ? この子は誰?」

 僕の上で緑色の髪の女の子かな髪の毛長そうですし。ムルムルが枕にされてますが大丈夫かな?

「ムルムル大丈夫?」

 ムルムルは突起を伸ばしてゆらゆらさせていますから大丈夫そうですが。

「ねえ。君はだあ――」

 横を向いて綺麗な緑色の髪が顔にかかっていたのでそっとどけたのですが、その顔は僕のよく知る顔でした。

「テラ······」

「ん? ふぁぁ、よく寝たわね。おはようライ――ライ! あなた小さくなってるわよ! ど、どういう事なの!」

「やっぱりテラだ。大きくなったんだね」

「え? 大きく?」

 テラが僕の上にまたがるようにして上半身を上げると、テラの腹巻きが伸びきって紐のようになってお腹にちょっと食い込んでますが、千切れなくて良かったです。

 テラはすぽぽんで、ほっぺにムルムルがついていますね、あっ、ぽよんと元に戻りました。

「嘘っ、なぜ戻れるの? あれっぽっちの神力じゃ戻れるはずないのに。ねえライ私の神力をあの時みたいに増やした!?」

「ん? そう言えば寝る前にテラとムルムルに注いでいたような? ごめん、ちゃんと覚えていないです。それより服着ないと風邪引くよね、良いのあったかな······」

 僕がそう言うとテラは下を向いて体を見ています。

「あっ! き」

「き?」

「きゃー!」

 テラが大きな声で叫ぶとテラの魔力がぐあっと広がり。パシッ! と前に聞いた事のある音でまた耳がキーンとなりました。

 そしてそうだと思い出して上を見ると。そこにはずっと前に見た事がある虹色に輝く髪の毛をしたお姉さんが······。

「あらあらまあまあ。テラが裸ん坊で、あらあらあなたはあの時の雷刕らいり君ね。あなたー! テラのお婿さんよー!」

「なんだと! どこのどいつだ娘に手を出そうとする奴は! ん? その少年はこの間のエリス が神聖化した時にいた婿候補、なっ! テラが裸で少年に乗っかってるではないか! ど、どういう事だね君!」

「きゃー! パパは見ないで! ママこの大きさだと服が出せないの!」

「え? あっ! 思い出しました! 創造神様! お久しぶりです! 『健康』のお陰でこんなに元気に過ごせています! ありがとうございました! ん? ······創造神様がテラのお母さん?」

「そうよ~。あっ、それはまた今度ね~。テラ、落ち着きなさいね、確か良いのがあるはず! はい。雷刕君この指輪を嵌めてあげてね、ついでに雷刕君のもあげる~。じゃあ頑張ってね~♪ テラをよろしく~」

 ふわふわ~っと僕達のところまで降りてきて、僕の手に創造神様の髪の毛と同じ様に虹色の指輪を乗せてまたふわふわ~っと空間の裂け目に戻り、奥ではお義父さんですね、向こうを向いて『式はどこでやれば』とか『神々を集めて大丈夫な時期で』などぶつぶつ呟いています。

「じゃあね。テラをお願いね」

「はい。一緒に幸せになりますね」

 パシッ!

 大きな音がなり、裂け目が塞がり無くなりました。

 でも、裸と気付いてからのテラは、起き上がった僕の胸にぴったりと引っ付いていてますので、身動きが取れません。

 恥ずかしいのかな? じゃ僕のシーツでくるんで。

「これで恥ずかしくないかな?」

「う、うん。ありがとう。同じ大きさだとこんなに恥ずかしいものなのね。それより指輪よね嵌めちゃお、それで服が出せるみたいだし」

 そして僕は左手で持ってた指輪を一つ取り胸元を押さえてない左手を取りました。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

さよなら聖女様

やなぎ怜
ファンタジー
聖女さまは「かわいそうな死にかた」をしたので神様から「転生特典」を貰ったらしい。真偽のほどは定かではないものの、事実として聖女さまはだれからも愛される存在。私の幼馴染も、義弟も――婚約者も、みんな聖女さまを愛している。けれども私はどうしても聖女さまを愛せない。そんなわたしの本音を見透かしているのか、聖女さまは私にはとても冷淡だ。でもそんな聖女さまの態度をみんなは当たり前のものとして受け入れている。……ただひとり、聖騎士さまを除いて。 ※あっさり展開し、さくっと終わります。 ※他投稿サイトにも掲載。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

引きこもりが乙女ゲームに転生したら

おもち
ファンタジー
小中学校で信頼していた人々に裏切られ すっかり引きこもりになってしまった 女子高生マナ ある日目が覚めると大好きだった乙女ゲームの世界に転生していて⁉︎ 心機一転「こんどこそ明るい人生を!」と意気込むものの‥ 転生したキャラが思いもよらぬ人物で-- 「前世であったことに比べればなんとかなる!」前世で培った強すぎるメンタルで 男装して乙女ゲームの物語無視して突き進む これは人を信じることを諦めた少女 の突飛な行動でまわりを巻き込み愛されていく物語

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

処理中です...