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第四章

第123話 山頂の温泉宿ですよ

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「ひゃっほ~い♪ 一回転宙返り最高ー!」

「くふふふ! なら今度はひねりも加えるよ~! お湯さんお願いします!」

「え!? ちょっ! ひゃぁぁぁー!」

「あっ!」

 ペチン! パク······。

 ムルムルごとテラがひねりを加えた一回転ウォータースライダーから飛び出し僕の顔に飛んできました······。

「ねえライ。······食べないでね」

ふんうんはいほう······」

「ひひゃひゃひゃ! 咥えたままひっ! 喋るなぁぁー!」

 なんだか楽しいので、しばらくそのままやり取りしてたら、怒られました······。

 商人さんに見つかった後、お風呂の一番大きな部屋を借りることができて、まずはお風呂から楽しみ。その後は夕食。

「ねえ。明日は峠の下りだから麓まで走るんでしょ?」

「うん。そのつもりだよ。間は町も村も無いですからね。国境砦の帝国側で泊まるかな。列が長ければどうなるか分からないですが」

「そうね――」

(気付いてると思うけど、覗かれてるわね)

「おおー! このオークステーキソースが凄く美味しいですよ――」

(うん。壁の所に穴が開けられてるみたいだね。後天井にも一人居ますね。その方はぐるぐるして気絶させましたし)

(くふふ。私はネズミでも気絶させているのかと思っていたわ。まあ大きいネズミね)

「じゃあごはん食べたら早めに寝るのよ」

(睡眠薬入りだから)

「うん。早起きしなくちゃね。ごちそうさまでした」

(そうなんだ! 効かないから良いけど、なんなのですかね? 称号はなにかあるの?)

(盗賊ね。壁向こうの部屋に五人よ。商人さん達はその部屋を挟んで向こう側だからそっちにも行く可能性があるわね)

 なるほどと思いながら僕は食べ終わった後、ベッドに向かいお布団に潜り込んで、テラとムルムルを胸の上へ。既に寝間着に着替えて腹巻きも装備完了ですからあっという間です。

 テラ用にハンカチを出して渡して、掛け布団を掛けました。

 枕元の魔道具で灯りを消し一応目を閉じました。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「よし、寝たようだな。天井裏の当番二人はまた寝たんじゃねえのか?」

「くくくっ。あの当番の時は寝る奴が多いよな、寝転んで数時間そのままだからよ。しかし今回はこの高級宿にくる常連客とSランク冒険者だぜ? Sランクのガキは奴隷腕輪を付けて飼えねえのか?」

「止めておけ。もし、腕輪が外れたりした日にゃ俺達は終わりだ。それよりは寝ている内に収納からお宝を出させて放っておくのが一番だぜ。そして明日の朝には何食わぬ顔で次の町に俺達は出発だ」

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

(······って言ってるわ。どう、念話は使えるようになってきた?)

(うん。これは便利だね。じゃあ仲間は全員で七人だし。商人さんの天井の人は先に気絶させて、残りは部屋に入ったところで気絶するようにぐるぐるしておくね)

 それからすぐに隣の部屋から廊下へ出る気配がしましたので待ち構えていると。

 カチャカチャと鍵を開ける音がしてきました。

 最初に僕の方へ来てくれたのは助かりましたね。

 ガチャ。鍵が開いたようです。音を立てないように戸が開き、五人の気配が部屋に入ってきて、カチャと静かな音がなり戸が閉まりましたので、気絶させましょう。ぐるぐる~。ほいっと!

 ドサッ、ドサッと五つの倒れる音が聞こえたので僕はテラとムルムルを抱えて起き上がり、天井裏の二人を。

「転移!」

 パッ

 ドサッ、ドサッ。と僕が泊まる部屋に転移させてきました。

「コイツ、このハゲた男は受け付けしていた時いたわね。品定めしていたって所かしら」

「うん。僕も見覚えがあるよ。よし、縛り上げて今夜は寝ちゃいましょう」

「くふふ。そうね、今から宿の人を叩き起こしちゃ悪いわよね。寝ちゃいましょ」

 七人のパンツだけを残し全てを収納して手足を縛って寝ることにしましょう。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 翌朝、宿の方に部屋まで来てもらい、衛兵を呼んでもらう事になりました。

 朝食を部屋で食べていると、コンコンコンと戸が叩かれました。

『お客様。衛兵を連れてきました』

 もう少し後でも良かったのですが、仕方有りませんね。僕は残りのパンに、サラダや腸詰めの焼いた物を挟んで収納してしまい。美味しかったスープも、出したお鍋に移して収納して返事をします。

「どうぞ。開いてますよ」

 戸を開け、入ってきたのは受付してくれた方と、お揃いの装備に身を固めた衛兵さんですね。

 入ってきた衛兵さんは床に転がる裸の男達を見て、顔を確認しています。

「隊長。この男『宿荒し』ですよ! 数年前から色んな街で宿の泊まり客を獲物に殺しも怪我もさせず、金品だけを盗む野郎です」

「なんだと! ふむ。確かに人相書にあった特徴はその通りだな。おい鑑定して称号を調べろ」

 髪の毛を掴んで顔の確認をしていたのに、見終わったのか髪を手放すと、ゴツッと鼻から床に落ちましたよ! 鼻血が出なければ良いのですが······。それを見て思わずテラが鼻を押さえている姿は可愛いのですがね。

「もう済んでいます。強盗、窃盗、鍵開け、そんなところですね」

「よし。間違いは無さそうだな。君。お手柄だぞよく七人を相手に。将来有望だな」

「衛兵殿。実はこのお客様は冒険者ランクがSでございます。ですからこの程度の盗賊など一撃ですよ」

 そう言ってシュッシュッと左右の握りこぶしを素早く振り、僕を見てニコリと笑いました。

「なに! 嘘ではないだろうな!」

「はい。Sランクですよ。ほら、ギルドカードに書いてあります」

 そう言って収納から出したカードを見せると衛兵さんは······。

「すぐに砦に向かって欲しい! 今あそこには――」

 砦には向かいますが、何があったのでしょうか······。



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