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第四章

第120話 しっぽをもらいましたよ

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「もう真上にきますよ! 一旦お屋敷に転――」

(待たれよ。危害は加えん)

「え?」

 転移の寸前で止められましたよ! くくっ、凄い魔力です! こんなところにドラゴン! それに見えないようにする結界でしょうか、僕達以外ドラゴンに気付いていませんよ!

 こうなったらぐるぐるでこの結界壊して、できるかどうか分かりませんがテラだけでもお屋敷に! ぐるぐるー、ほいっと! 全開で回れー!

(ふむ。私を前にして、気を失わずにその目を向けられるなど久しぶりだな)

「あなたもなぜこんなところにいるのよ! タケミナカタ!」

(これはこれはテラ様。私はただの散歩でございます。ここに私の存在に気付いた者がおりましたので。くくくっ。結界を破ろうと······。これは私の事も時間があれば倒せそうですな。それにテラ様の旦那様の様ですね、では一つお祝いの品でも)

 あれ? このドラゴンさんもお知り合い? テラ様って言ってるし······。

「ライ。ぐるぐるはもう良いわよ、普段は水の底にいる水龍だけど、飛ぶのが好きな変わり者だから」

「う、うん。はぁ。良かったよ、テラだけでも結界に穴開けて転移させて逃げてもらおうとしたけど、この結界中々壊せませんよ」

「そりゃそうよ。タケミナカタは私が結界の使い方を教えたんだからそう簡単には壊せないわよ」

(いやいやテラ様。後数秒テラ様の言葉が遅ければ破れていましたね。古代魔法ですか、久しぶりに見ましたよ。おいネメシス、私の尻尾の先から一本毛を抜いてくれ)

「え~。私今色々と封じられてるから飛べないの。タケミナカタが尻尾の先を下ろしてきてくれれば引っこ抜きますよ」

 あら。ネメシスさんもお知り合いなのですね?

 タケミナカタさんは。恐竜のようなドラゴンさんではなくて、ヘビさんのような体をしています。ネメシスさんに言われて素直に尻尾の先をスルスルと上空から下ろしてきました。

 ふ~ん。この魔力の流し方が飛ぶ魔法のかな? えっと、こんな感じでしょうか?

「ライそれは真似しようとしても、龍の中でも龍神特有の――嘘······。できちゃってるし!」

 おお。十センチほどは浮けましたね。おっととこれは練習しないと飛び回るのは難しそうですね。

「ぬぬぬ。そ、そうなんだ、でもこの魔力の流し方は難しいから練習するね♪ 上手くなったらお空を散歩できますよ。テラとムルムルも一緒にね」

「くふふふ。ライあなた無茶苦茶だけどとんでもない事をやってるのよそれ。そのまま頑張りなさい。楽しみにしてるわよ」

「せーの、えい!」

 プチプチブッチンッ。

(痛っ! ネメシス何本抜いてるのだ! 一本と言っただろ! 何一抱ひとかかえ抜いてるんだ馬鹿者! まったく一房も抜きやがってハゲたら恨むぞ。ほれテラ様の婿殿に渡してくれ、成り行きだがそれだけの本数があれば龍神の加護でも特別強い物がつくだろうランクも上がるかも知れんぞ。後はそうだな防具にも使える)

「はいはい。えっと、テラ様が呼んでるし、ライ君ね。はいどうぞ、タケミナカタから婚約祝いのプレゼントですよ」

 ネメシスさんは。両手に抱えるほどで長さも軽く二十メートルはあるタケミナカタさんの尻尾の毛を渡してきました。

 こんなに沢山抜いちゃ痛かったでしょうね。ネメシスさんから受け取ると、これはなんともふわふわもふもふですよこれは!

「ありがとうございます。大切にしますね」

(うむ。収納に入れておけばその内体に馴染んで半年ほどで吸収するであろうな。ではテラ様、ライ殿、ネメシス、私は散歩に戻ります)

「じゃあねタケミナカタ」

「ありがとうございます。タケミナカタさん」

「あっ! タケミナカタ、私をスクルドがいるところまで乗せてって頂戴。今度良いお酒あげるから。ほいっと!」

 ネメシスさんはそう言うと、どこから出したのかお皿に僕が作っていたシチューをよそい、タケミナカタさんの尻尾からスルスルと足と片手で器用に上っていってしまいました。

「じゃあね~。私からのプレゼントはまた今度渡すからー!」

(はぁ。仕方がないか、では行くぞ!)

 そう言った瞬間。消えたように一瞬で見えなくなり、索敵の範囲からも消えちゃいました。

 すると上空からヒラヒラと舞いながら何かが落ちてきました。

「ライ。あれを拾っておきなさい、龍神の鱗よ。ガルだったかしら? あのエルダードワーフに渡せば良い防具が出きる筈よ」

「うん。まだ一月も経っていませんからまだ潜って戻ってないでしょうね。だからしばらく後に覗きに行く事にするよ」

 そして、しっぽの毛は集めてくると、僕のテントを軽く超えて小山のようになりました。あはは。本当にハゲでなきゃ良いのですが。それと大きいのに物凄く軽い鱗を収納して、半分に減ったシチューを食べ、テラが言うには結界は朝まで持つ筈だから安心して寝ちゃいましょうって事で、ゆっくり寝る事にしました。

 なんだか旅の再開初日はバタバタと色々と起こりすぎたので、少し疲れていたようです。テントで横になるとすぐに寝てしまいました。

 翌朝。

「ふぁぁ。明るくなってますね、本当にぐっすり寝ちゃいましたよ」

 胸の上に直接寝てるテラと僕が起きたのに気が付いたムルムル。

 みによ~んと体を伸ばしてテラの下に入り込んで、ぽよんっと元に戻るとムルムルベッドに早変わり。

「くふふふ。ムルムルありがとう。よし、起きて、今日はこの峠を超えて、帝国に入っちゃいましょうね」

 ムルムルごとテラを抱えながら起き上がり、テントを出て収納し、消えそうな焚き火にたきぎを加えてお湯を沸かします。

 早い人達はもう出発した後のようで、残りの馬車も、三台が今動き出すところでした。

「寝過ぎちゃったかな? でもまだテントは残っていますから、最後ではなさそうですね」

 そして、簡単に朝ごはんをすませ、少し準備運動して走り出しました。

 雲行きが怪しいので、早めに登り終えたいですね、そうすれば山頂には小さいですが、バラマンディ侯爵領最後の町がある筈です。

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