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第三章

第90話 入国早々良いの見つけました

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 二百メートルほど向こうに川があって、そこを目指して歩いています。

「ねえライ、何でこんなに端まで遠いの? もしかして昔はここも川だった?」

「たぶん違うよ、国境だからかな。ここは川があって分かりやすい国境だけれど、陸続きの所はこうして間に緩衝地帯を作っておくのが普通なんだ。後は、国境が一つの街になっていて、その中ではお互い戦いをしないと国と国とで約束されてるんだよ」

「ふ~ん。あっ、川って思ったより大きくないね? 向こうまで十メートルくらい?」

 橋までたどり着いた時僕もそう思いました。

「すぐにゃ、あっという間にゃ」

「そうだね。でもお魚が結構沢山泳いでいますよ! ほら、キラキラ光ってます」

 よく見ると、川上や川下で、魚を取ってる人達がいました。

 橋を渡りきり、少し先に見える門に向けて人の流れに乗っていきますと門近くに屋台が出て、冒険者風の方達や、歩きの商人風の方達が立ち寄り何か片手に食べているみたいです。

 屋台を横目に門をくぐるのですが、昨日の通行証を見せると簡単に通り抜ける事ができちゃいました。

 そして二十メートルほどのトンネルを抜けると――。

「ラビリンス王国に到着! 北に向かうんだからダンジョンで有名な場所を通るし少し寄っていこうよ。リント、少し寄り道だけど良いかな?」

「良いにゃ。別にしばらくみんなといても問題無いにゃよ。ダンジョンにゃらリントが大暴れしてやるにゃ! 魔物なんか余裕でやっつけるにゃ!」

 良かった、みんなで少しでも長くいられると楽しいしね♪

 そのまま歩き続け、ラビリンス王国側の小さい国境の街を出て、ダンジョンの街方面に進みます。
 お昼になると人の波も無くなり、僕達が進む方角はほとんど馬車だったので、今は周りに魔物くらいしかいません。

「ねえライ。どうして周りの魔物はやっつけないの?」

「ん? この子達は襲ってくる気配じゃないからね♪ なんだか歩いて通る人が珍しいのかな?」

「そうなの? 私は魔物がいる事も分かりませんでしたよ」

「毛玉達にゃね、ほぼ無害の魔物にゃよ。魔石があるだけの。夏に寄ってこられると暑くて仕方にゃいだけにゃ。冬はどんどん来いにゃ」

「だから――ん!」

 毛玉達のずっと奥に物凄く沢山の反応があります。

「テラ、この方向に沢山の反応があるんだけど何かな?」

 森を指差しテラに神眼で見てもらうようお願いします。

「任せて。んん神眼~。あら珍しいわね、鉱石でも取れるのかしらドワーフ、それに一人エルダードワーフがいるわね五千歳よ」

「おお! それは会ってみたいですね、少し道草良いかな?」

 みんなはうんうんと頷いてくれましたので背負子を出して高速移動を開始します。

 転移をしないのは手玉達を見ながら行こうと思ったからです。

 森に入るとわらわらといますね♪ 本当に毛玉に目が付いて、短い二本足でちょこちょこ歩いてます。

「か、可愛いですー! 沢山いますよー!」

「来るにゃ! 夏は暑いから寄るにゃよ! 来るにゃら冬に来ると良いにゃ!」

 プシュケは手を伸ばし、リントは尻尾で追い払うように振り回しています。

「プシュケ、手玉は熱いお風呂くらいの体温だからリントが正解ね。夏には近くにいて欲しくないわ」

「ほへ~。リントが来るなって言うのが分かります」

「もう夏の毛玉は十分にゃ」

「あはは。よし、一応進行方向の魔物は倒しながら行くから頭を狙ってね。よし、行ってみよー!」

 足元に近寄ってきていた毛玉さん達を踏まないように飛び上がり枝の上に。そこからは枝から枝に飛び移りながらドワーフさん達の元へまっすぐ進みます。

 途中ゴブリンさんや、魔狼さん達の小さな集団をやっつけながら進み、一時間ほど行くと一気に森が開拓され鍛冶をやっているのか金槌を打ち下ろす音がそこかしこから響き渡り、いくつもの建物から煙が上がっていました。

「おーい。またダンジョンから魔物が出たぞー」

「なんだー。また出やがったか、今度はなんだー」

「オークだー。また肉だー」

 んと、ダンジョンがあるのが分かりましたが、魔物がダンジョンから出てくるなんて、スタンピードの前触れですけど······あっ、拳骨で一撃ですか。

「中々やるわね、さすがドワーフ。肉弾戦なら一番の力持ちなだけあるわ」

「うんうん。オークですが素手で殴り倒す人なんて初めて見ました、でもダンジョンが心配ですね。みんな、様子を見に行きましょうか」

「ライ、その前にちゃんとダンジョンに入って良いか聞くのよ」

「うん」

 僕は木の枝から飛び下り、簡単な柵しかない村へ向かいます。所々に畑もあって、お野菜も少しはあるみたいです。

「ん? なんじゃお主ら森を迷ってここに抜けてきたのか? 街道なら残念じゃが逆だぞ」

「いえ。こちらに人の気配がしましたから、覗きにきました。おじさん達はここで鉄を造ってるのですか?」

 門のところに立っていたおじさんは、もじゃもじゃの髭を撫で付けながら僕達の事を見定めているようです。

「ああ。ここのダンジョンは鉄が出るからな、だが森の奥過ぎて誰も来ん。だがわしらには良い場所なんじゃが、最近はちょこちょこと魔物が出て来おる。初めはゴブリンじゃったが昨日ありからオークが混じり出したな」

(ライ。この人がエルダードワーフよ)

 うん。一番魔力が多いですからね。倍以上ありますよ。

「あの、僕達は冒険者なので、少しダンジョンの調査をしても良いですか?」

「ん? 構わんぞ、できれば鉄があれば取ってきて欲しいくらいだが無理にとは言わん。じゃが、気を付けるんじゃぞ、五階層くらいまでならオークくらいしかおらんが、それを超えるとソルジャーやリーダーが出だす。儂らでも十八階層より下には行ったことがないのでな」

「分かりました。では少し覗いて来ますね」

 そして僕達は、ダンジョン街に行く前にダンジョンを経験できるみたいです。






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