90 / 241
第三章
第90話 入国早々良いの見つけました
しおりを挟む
二百メートルほど向こうに川があって、そこを目指して歩いています。
「ねえライ、何でこんなに端まで遠いの? もしかして昔はここも川だった?」
「たぶん違うよ、国境だからかな。ここは川があって分かりやすい国境だけれど、陸続きの所はこうして間に緩衝地帯を作っておくのが普通なんだ。後は、国境が一つの街になっていて、その中ではお互い戦いをしないと国と国とで約束されてるんだよ」
「ふ~ん。あっ、川って思ったより大きくないね? 向こうまで十メートルくらい?」
橋までたどり着いた時僕もそう思いました。
「すぐにゃ、あっという間にゃ」
「そうだね。でもお魚が結構沢山泳いでいますよ! ほら、キラキラ光ってます」
よく見ると、川上や川下で、魚を取ってる人達がいました。
橋を渡りきり、少し先に見える門に向けて人の流れに乗っていきますと門近くに屋台が出て、冒険者風の方達や、歩きの商人風の方達が立ち寄り何か片手に食べているみたいです。
屋台を横目に門をくぐるのですが、昨日の通行証を見せると簡単に通り抜ける事ができちゃいました。
そして二十メートルほどのトンネルを抜けると――。
「ラビリンス王国に到着! 北に向かうんだからダンジョンで有名な場所を通るし少し寄っていこうよ。リント、少し寄り道だけど良いかな?」
「良いにゃ。別にしばらくみんなといても問題無いにゃよ。ダンジョンにゃらリントが大暴れしてやるにゃ! 魔物なんか余裕でやっつけるにゃ!」
良かった、みんなで少しでも長くいられると楽しいしね♪
そのまま歩き続け、ラビリンス王国側の小さい国境の街を出て、ダンジョンの街方面に進みます。
お昼になると人の波も無くなり、僕達が進む方角はほとんど馬車だったので、今は周りに魔物くらいしかいません。
「ねえライ。どうして周りの魔物はやっつけないの?」
「ん? この子達は襲ってくる気配じゃないからね♪ なんだか歩いて通る人が珍しいのかな?」
「そうなの? 私は魔物がいる事も分かりませんでしたよ」
「毛玉達にゃね、ほぼ無害の魔物にゃよ。魔石があるだけの。夏に寄ってこられると暑くて仕方にゃいだけにゃ。冬はどんどん来いにゃ」
「だから――ん!」
毛玉達のずっと奥に物凄く沢山の反応があります。
「テラ、この方向に沢山の反応があるんだけど何かな?」
森を指差しテラに神眼で見てもらうようお願いします。
「任せて。んん~。あら珍しいわね、鉱石でも取れるのかしらドワーフ、それに一人エルダードワーフがいるわね五千歳よ」
「おお! それは会ってみたいですね、少し道草良いかな?」
みんなはうんうんと頷いてくれましたので背負子を出して高速移動を開始します。
転移をしないのは手玉達を見ながら行こうと思ったからです。
森に入るとわらわらといますね♪ 本当に毛玉に目が付いて、短い二本足でちょこちょこ歩いてます。
「か、可愛いですー! 沢山いますよー!」
「来るにゃ! 夏は暑いから寄るにゃよ! 来るにゃら冬に来ると良いにゃ!」
プシュケは手を伸ばし、リントは尻尾で追い払うように振り回しています。
「プシュケ、手玉は熱いお風呂くらいの体温だからリントが正解ね。夏には近くにいて欲しくないわ」
「ほへ~。リントが来るなって言うのが分かります」
「もう夏の毛玉は十分にゃ」
「あはは。よし、一応進行方向の魔物は倒しながら行くから頭を狙ってね。よし、行ってみよー!」
足元に近寄ってきていた毛玉さん達を踏まないように飛び上がり枝の上に。そこからは枝から枝に飛び移りながらドワーフさん達の元へまっすぐ進みます。
途中ゴブリンさんや、魔狼さん達の小さな集団をやっつけながら進み、一時間ほど行くと一気に森が開拓され鍛冶をやっているのか金槌を打ち下ろす音がそこかしこから響き渡り、いくつもの建物から煙が上がっていました。
「おーい。またダンジョンから魔物が出たぞー」
「なんだー。また出やがったか、今度はなんだー」
「オークだー。また肉だー」
んと、ダンジョンがあるのが分かりましたが、魔物がダンジョンから出てくるなんて、スタンピードの前触れですけど······あっ、拳骨で一撃ですか。
「中々やるわね、さすがドワーフ。肉弾戦なら一番の力持ちなだけあるわ」
「うんうん。オークですが素手で殴り倒す人なんて初めて見ました、でもダンジョンが心配ですね。みんな、様子を見に行きましょうか」
「ライ、その前にちゃんとダンジョンに入って良いか聞くのよ」
「うん」
僕は木の枝から飛び下り、簡単な柵しかない村へ向かいます。所々に畑もあって、お野菜も少しはあるみたいです。
「ん? なんじゃお主ら森を迷ってここに抜けてきたのか? 街道なら残念じゃが逆だぞ」
「いえ。こちらに人の気配がしましたから、覗きにきました。おじさん達はここで鉄を造ってるのですか?」
門のところに立っていたおじさんは、もじゃもじゃの髭を撫で付けながら僕達の事を見定めているようです。
「ああ。ここのダンジョンは鉄が出るからな、だが森の奥過ぎて誰も来ん。だが儂らには良い場所なんじゃが、最近はちょこちょこと魔物が出て来おる。初めはゴブリンじゃったが昨日ありからオークが混じり出したな」
(ライ。この人がエルダードワーフよ)
うん。一番魔力が多いですからね。倍以上ありますよ。
「あの、僕達は冒険者なので、少しダンジョンの調査をしても良いですか?」
「ん? 構わんぞ、できれば鉄があれば取ってきて欲しいくらいだが無理にとは言わん。じゃが、気を付けるんじゃぞ、五階層くらいまでならオークくらいしかおらんが、それを超えるとソルジャーやリーダーが出だす。儂らでも十八階層より下には行ったことがないのでな」
「分かりました。では少し覗いて来ますね」
そして僕達は、ダンジョン街に行く前にダンジョンを経験できるみたいです。
「ねえライ、何でこんなに端まで遠いの? もしかして昔はここも川だった?」
「たぶん違うよ、国境だからかな。ここは川があって分かりやすい国境だけれど、陸続きの所はこうして間に緩衝地帯を作っておくのが普通なんだ。後は、国境が一つの街になっていて、その中ではお互い戦いをしないと国と国とで約束されてるんだよ」
「ふ~ん。あっ、川って思ったより大きくないね? 向こうまで十メートルくらい?」
橋までたどり着いた時僕もそう思いました。
「すぐにゃ、あっという間にゃ」
「そうだね。でもお魚が結構沢山泳いでいますよ! ほら、キラキラ光ってます」
よく見ると、川上や川下で、魚を取ってる人達がいました。
橋を渡りきり、少し先に見える門に向けて人の流れに乗っていきますと門近くに屋台が出て、冒険者風の方達や、歩きの商人風の方達が立ち寄り何か片手に食べているみたいです。
屋台を横目に門をくぐるのですが、昨日の通行証を見せると簡単に通り抜ける事ができちゃいました。
そして二十メートルほどのトンネルを抜けると――。
「ラビリンス王国に到着! 北に向かうんだからダンジョンで有名な場所を通るし少し寄っていこうよ。リント、少し寄り道だけど良いかな?」
「良いにゃ。別にしばらくみんなといても問題無いにゃよ。ダンジョンにゃらリントが大暴れしてやるにゃ! 魔物なんか余裕でやっつけるにゃ!」
良かった、みんなで少しでも長くいられると楽しいしね♪
そのまま歩き続け、ラビリンス王国側の小さい国境の街を出て、ダンジョンの街方面に進みます。
お昼になると人の波も無くなり、僕達が進む方角はほとんど馬車だったので、今は周りに魔物くらいしかいません。
「ねえライ。どうして周りの魔物はやっつけないの?」
「ん? この子達は襲ってくる気配じゃないからね♪ なんだか歩いて通る人が珍しいのかな?」
「そうなの? 私は魔物がいる事も分かりませんでしたよ」
「毛玉達にゃね、ほぼ無害の魔物にゃよ。魔石があるだけの。夏に寄ってこられると暑くて仕方にゃいだけにゃ。冬はどんどん来いにゃ」
「だから――ん!」
毛玉達のずっと奥に物凄く沢山の反応があります。
「テラ、この方向に沢山の反応があるんだけど何かな?」
森を指差しテラに神眼で見てもらうようお願いします。
「任せて。んん~。あら珍しいわね、鉱石でも取れるのかしらドワーフ、それに一人エルダードワーフがいるわね五千歳よ」
「おお! それは会ってみたいですね、少し道草良いかな?」
みんなはうんうんと頷いてくれましたので背負子を出して高速移動を開始します。
転移をしないのは手玉達を見ながら行こうと思ったからです。
森に入るとわらわらといますね♪ 本当に毛玉に目が付いて、短い二本足でちょこちょこ歩いてます。
「か、可愛いですー! 沢山いますよー!」
「来るにゃ! 夏は暑いから寄るにゃよ! 来るにゃら冬に来ると良いにゃ!」
プシュケは手を伸ばし、リントは尻尾で追い払うように振り回しています。
「プシュケ、手玉は熱いお風呂くらいの体温だからリントが正解ね。夏には近くにいて欲しくないわ」
「ほへ~。リントが来るなって言うのが分かります」
「もう夏の毛玉は十分にゃ」
「あはは。よし、一応進行方向の魔物は倒しながら行くから頭を狙ってね。よし、行ってみよー!」
足元に近寄ってきていた毛玉さん達を踏まないように飛び上がり枝の上に。そこからは枝から枝に飛び移りながらドワーフさん達の元へまっすぐ進みます。
途中ゴブリンさんや、魔狼さん達の小さな集団をやっつけながら進み、一時間ほど行くと一気に森が開拓され鍛冶をやっているのか金槌を打ち下ろす音がそこかしこから響き渡り、いくつもの建物から煙が上がっていました。
「おーい。またダンジョンから魔物が出たぞー」
「なんだー。また出やがったか、今度はなんだー」
「オークだー。また肉だー」
んと、ダンジョンがあるのが分かりましたが、魔物がダンジョンから出てくるなんて、スタンピードの前触れですけど······あっ、拳骨で一撃ですか。
「中々やるわね、さすがドワーフ。肉弾戦なら一番の力持ちなだけあるわ」
「うんうん。オークですが素手で殴り倒す人なんて初めて見ました、でもダンジョンが心配ですね。みんな、様子を見に行きましょうか」
「ライ、その前にちゃんとダンジョンに入って良いか聞くのよ」
「うん」
僕は木の枝から飛び下り、簡単な柵しかない村へ向かいます。所々に畑もあって、お野菜も少しはあるみたいです。
「ん? なんじゃお主ら森を迷ってここに抜けてきたのか? 街道なら残念じゃが逆だぞ」
「いえ。こちらに人の気配がしましたから、覗きにきました。おじさん達はここで鉄を造ってるのですか?」
門のところに立っていたおじさんは、もじゃもじゃの髭を撫で付けながら僕達の事を見定めているようです。
「ああ。ここのダンジョンは鉄が出るからな、だが森の奥過ぎて誰も来ん。だが儂らには良い場所なんじゃが、最近はちょこちょこと魔物が出て来おる。初めはゴブリンじゃったが昨日ありからオークが混じり出したな」
(ライ。この人がエルダードワーフよ)
うん。一番魔力が多いですからね。倍以上ありますよ。
「あの、僕達は冒険者なので、少しダンジョンの調査をしても良いですか?」
「ん? 構わんぞ、できれば鉄があれば取ってきて欲しいくらいだが無理にとは言わん。じゃが、気を付けるんじゃぞ、五階層くらいまでならオークくらいしかおらんが、それを超えるとソルジャーやリーダーが出だす。儂らでも十八階層より下には行ったことがないのでな」
「分かりました。では少し覗いて来ますね」
そして僕達は、ダンジョン街に行く前にダンジョンを経験できるみたいです。
0
お気に入りに追加
1,641
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる