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第三章

第88話 ラビリンス王国への道中

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「ヒュドラの首か、牙も揃っておるな······それもこの切り口、ライ、これは真ん中の首なのか?」

 おじさんはヒュドラの唇を持ち上げ牙の状態を見たり、皮を撫でながら切り口まで行くとそんな事を言いました。

「はい、他の首より少し大きいので使うならこの首かなって」

「ふむ。不死の首は激戦の末持ち帰る事がたまにあるが、ここまでの美品は見た事も聞いた事もない。不死の首で造った鎧は多少の傷などは何もなかったかのごとく消え去ると言う。どこぞの国の国宝になっているレベルだぞ」

 ほへぇ。勝手に直っちゃうなんて凄いですね。僕達の分も造って貰おうかな。

「ふむ。これはギルには勿体ない、王に献上するか? 私でも叙爵して貰えるかもしれんほどだな、よしライ達の鎧はもう少し体が大きくなった時に造ってやろう武器もだこのヒュドラの牙は鉄と混ぜて打てば良い物が出きるぞ」

「おおー! ではこの国を一周した後くらいですかね。楽しみにしておきます」

 その後は、皮をある程度剥いだり大きな牙を抜いたりと辺りが真っ暗になるまで作業して終わりました。
 もちろんお肉もお裾分けしておきました。

 ヒュドラの解体中にテラは胡桃くるみの種のような物を拾い頭に乗せました。『これは美味しいわよ♪ 大きく沢山実るようになって貰わないと······』と。······沢山実ると良いね。

 鍛冶屋に転移で戻りおじさんと別れて宿に戻りました。今晩の夕ごはんは食堂で食べる事に、もちろんヒュドラのお肉を提供してステーキにして貰いました。

 そして、料理が届き、食べようとしたのですが。

「おい! そこの給仕! この宿はヒュドラの肉は出してないのか! 昼間に話題になったあのヒュドラのだ!」

「お客様、今出てる物で全てでございます。偶々たまたま手に入っただけですから」

「何! どこで手に入れた! ノルマーラー男爵様がご所望なのだ、ただちにその者を連れてこい!」

 フォークとナイフで一口大に切り、口に運びながらその様子を眺めていると、助けを求めるような目で僕を見てくるのですが、ヒュドラのステーキ······物凄く美味しいです!

「ライ、美味しいのは分かったから助けて上げたら?」

「そうですよ。まだまだあるのですから少しくらいあげても大丈夫じゃないかな?」

「リントはあげたくないにゃ。あげるにゃらリントが食べるにゃ」

 二対二の引き分けですがムルムルが突起を出してヒュドラのステーキを差し、入ってきたたぶん執事さんを差しました······。

 二対三ですか、仕方ありませんね。

「あの、少しならお分けできますよ」

 執事さんは給仕さんの横で座っている僕達を見てます。上から下までじろじろですね、あはは。

「ぬ? ふむ、少年冒険者か? よし全て差し出すのだ」

「全部は嫌ですよ。ノルマーラー男爵様がお食べになる分くらいならと言う意味です」

「貴様言う事を聞きさっさと出さぬか! ノルマーラー男爵様が是非食したいともうしておるのだぞ! 逆らうなら――」

 僕は席を立ち、言葉を遮るように自己紹介です♪

「初めまして、サーバル男爵家のライリール・ドライ・サーバルと申します。ノルマーラー男爵様は父さんとも仲が良いと聞きましたので、男爵様が食べる分だけをお分けしても良いですよ」

「なっ! サササ、サーバル男爵家ののの! こ、これは大変失礼をいたしましたぁ! どうか、どうかお許し下さいませ!」

 先程まで立って見下していましたが、今は跪き、頭を下げています。

「はい。大丈夫ですよ。家名は持ったままですが、今は冒険者をしていますので。それより一人分をお渡ししますが入れ物か何かありますか?」

「はっ! 馬車に魔法の革袋がございます。すぐにお待ちいたしますので少々お待ち下さいませ」

 そう言うと物凄い早さで宿を出て、あっという間に戻ってきました。

「ここに入れて持ち帰ります」

「じゃあ切り分けたこの塊を一つ、ノルマーラー男爵様に」

 ちょうど分厚いステーキくらいの塊に沢山切りましたからその内の一つを革袋に入れました。

「ありがとうございます。この事は主のノルマーラー男爵様にお伝えしておきます。では、お待ちになっておりますので失礼を致します」

「よろしくお伝え下さいませ」

「はっ!」

 僕が席に座ると立ち上がり、宿を出ていきました。

「よし食べよう♪」

「あ、あの、ライリール様、この度は助けていただきありがとうございます」

 給仕をしていたこの宿の奥さんです。

「いえいえ、僕が出してしまったこの肉で起きた事ですから。逆に申し訳ありませんでした」

「そうにゃ。気にする事ないにゃよ」

 それはもう沢山ペコペコ頭を下げ、他のお客さんにも『皆さんお食事中申し訳ありませんでした』と、テーブルごとに周り頭を下げて、厨房に戻っていきました。

 僕達はステーキを食べ終え部屋に戻り明日の出発のため早めに寝ることにしました。

 翌朝。

 早目に宿を出て、ヒュドラを倒した場所まで転移で飛び、ラビリンス王国へと向かいます。

 しばらく歩くと前からは騎馬と馬車の集団が現れました。
 馬車は豪奢ごうしゃで、貴族の方、それも高位方の集団だと分かりましたので僕達は街道の端により、跪き頭を垂れておきます。

 そして、僕達の前に差し掛かる前に三騎の兵士さんが早駆けで僕達のもとへやって来て、話しかけてきました。

「少年達は冒険者のようだな」

「はい。その通りです」

「この街道に出たヒュドラは見たか?」

「はい。先日この先で見ました。ですが既にヒュドラはもういませんので道中はご安心ください」

「ふむ。ノルマーラー男爵の町から来たようだな、ならばヒュドラのお陰で魔物が居なくなった隙に進むとしよう。少年、情報をありがとう。君達の旅も安全であるよう祈っておく」

「はい、騎士様達もご安全に」

「うむ、ではな」

 お話をしている内に、馬車の集団も近付き前衛の騎馬が僕達の前を通りすぎていきます。

 そして馬車が通りすぎ、後衛の騎馬が通りすぎた後、僕達はやっと頭をあげ立ち上がりました。

「なんにゃ? さっきの人がまた来るにゃよ?」

「そうみたいだね? 何かききそびれたのかな?」

「少年! バラマンディ侯爵様から君達にこれを」

「バラマンディ侯爵様だったのですか! 一度お見かけしたことがあります。申し遅れました、サーバル男爵家、ライリール・ドライ・サーバルです。我が家においでになった時お菓子をいただいたのを思い出します」

「なんと! 剣聖様の、どおりで受け答えが教育されてると思っていたのです。では今回もお菓子ですがお受け取り下さい」

 可愛いく包まれたお菓子入りの籠を受け取り、代わりにとヒュドラのお肉を提供しておきました。

 バラマンディ侯爵様は食べるのも作るのも大好きでしたからね♪

 そしてその場は別れ、別々の方向に進み出したのですが、バラマンディ侯爵様達が来た方向から何やらまた集団が来そうです。

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