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第三章

第74話 街への帰還

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「良かった、装備は丸々残ってました」

「俺のもだ。町で売られたかと思っていたが助かった」

 冒険者夫婦の装備は一式残っていたようです。たぶんラビリンス王国に行った後にうるつもりだったのかもしれませんね。

 でも、戦う商人さんの方はと言うと、人攫い達と商人さんの馬車を出して見てもらっています。装備は人攫い達の馬車に全てあったようですが自身の馬車を見て、難しい顔をしています。

「何か無くなっていますか? 僕達飼い葉は使いましたよ?」

 戦う商人さんは振り向き、御者台の座席のしたにある収納の中を指差して言いました。

「捕まえた五人がまた私の魔法の革袋を盗んで行ったようです。はぁぁ、盗賊は何度も罪を繰り返すそうですからね、困ったものです」

「それはお気の毒でしたね」

「しかも帝国に行くとか言っていました。私は違いましたが適当に誤魔化して捕まえたのですが、奴隷の腕輪もたぶん外されているでしょうね、ここに入れてあった物が全て無くなっていますから」

「解除する魔道具は国からの許可が無いと持てませんよね? 商人さんはって、自己紹介まだでしたね。僕はライです」

「くくっ、そう言えばそうでしたね、プシュケちゃん達がそう呼んでいましたし、私も戦う商人と呼ばれ慣れていますので全然違和感がありませんでした。んんっ、私は戦う商人ことギル・ガ・メッシュと申します」

「え? メッシュ子爵様! こ、これは大変なご無礼を!」

 僕はその場から少し下がり跪き、もう一度挨拶をやり直します。

「サーバル男爵家三男、ライリール・ドライ・サーバルです。メッシュ子爵様、不敬の数々どうかお許し下さい」

「何と! サーバル男爵家の! 剣聖である師匠の息子さんですか! 確か赤ちゃんが二人でしたので、私が家を継ぐための修行から戻った後に産まれたのがあなたなのですね。ライリール君大丈夫ですよ。シーリール君とアースリール君には可愛いお手てで何度も叩かれましたから」

 何と! ここにも父さんのお弟子さんが! それに兄さん達と会ったことまであるなんて!

「いやはや世間は狭いですね」

「はい。しかしその盗賊は行方が心配ですね、帝国ですか······でも」

 馬車を見つけた場所と、帝国への分かれ道までにそんな五人組は見なかったのですが、もしかすると······

 皆は自身の持ち物を確認後装備をして、いつでも移動可能な状態になりました。

 まずは街に戻ってからですかね。

「皆さん用意ができたようなので街に移動しますね」

 皆さん頷いてくれたので戻りましょう。

 戦う商人ギルさんの馬車以外を収容し、たぶんおまちかねの街に転移で戻ることにしました。


「到着です、皆さんはこの街で大丈夫ですよね?」

 到着すると、門から『帰ってきたぞ!』と声が聞こえた。聞こえたと思ったら今度はぞろぞろと転移で助けに向かう時以上の方が門から出てきます。

「あはは。ギルさん大人気ですね♪」

「いやはや。ここの鍛冶屋と契約をして、二か月に一度、こちらに滞在しているだけなのですが」

 そうこう言っている内にもう馬に乗った方は到着しました。

「ギル! 心配かけおって! ここ十日ほど炉の火は消え、つちが握れんかったぞ!」

 おお! 炉と鎚がって事は! 馬から飛び降りたその姿はずんぐりむっくりだし、ドワーフさんですし、今話していた鍛冶屋さんですね。

「あはは。親方、ご心配をおかけしました。こうして無事戻ってきましたよ。このライリール君のお陰で助かりました」

 おじさんは、僕の頭の先から足の先までジィーっと見てうんうんとうなずいてます。

「ライリールと言ったな。よくこいつを助けてくれた。礼を言うぞ、ありがとう」

 深く僕に向かって頭を下げました。

「いえ。偶々たまたまですよ、キングとクイーンに会ってなければ知らずに通りすぎてラビリンス王国へ行ってましたから、褒めるのはキングとクイーンです♪」

「くははは! そうだなよしうまい飼い葉を手配してやる。ほれギルよ皆が心配してくれたのだ、挨拶に回ってこい」

「くふふ。その様ですね。また今回も一月ほど厄介になりますからね。ライ君は人攫い達はどうするのかな?」

 ん~、王都に直接だと連絡入れなきゃ駄目だし、父さんに任せましょう。

「父さんに任せようかと思います。父さんなら母さんに頼んで転移で移動も出来ますから僕が直接行くより確実ですからね」

「違いない。では私は皆に挨拶をしてくるよ」

「はい」

 皆さんの輪の中に取り込まれたギルさんは揉みくちゃにされながらも物凄く笑顔です。

「ライリール、ワシから防具を貰ってくれ」

「え? 防具を僕にですか?」

「ああ。身体の重心や動かし方からすると剣のたぐいを使っているようだが、手の豆の付き方が違う。刀を使っている者に付く豆だ。そうするとダンジョンで出た物であろうからな、良いものを使っているのだろう。ならばその鎧ならワシが今のお前に一番合った物に生まれ変わらせてやれる」

「そんなことが! 凄いですね、流石は鍛冶屋さんですね♪」

「ああ。やらせて貰えるか?」

「はい♪ それならもう一人女の子の鎧も頼めませんか?」

 リントをもふもふしているプシュケを僕の横へ呼びました。

「ふむ、身体の動かし方はどちらかと言えば狩人に近いが、エルフとなると弓と魔法だな、胸当てが良いか、杖は持っているのか?」

「いいえ、使ったこと無いですね、無いと不味いですか?」

「ふむ。いや無くとも良いが、ではそうだな、······短剣を使うと良いだろう。弓はその手の感じだと使った事が無さそうだな」

「はい。苦手で、でも短剣ならゴブリンをやっつけた事あります!」

 プシュケもやるもんですね。そう思えばフィーアも短剣は中々の腕前でしたね。

「よし、ワシの店はギルに聞くまでもないか。まあ門をくぐってすぐだ、看板にハンマーが書いてある」

「はい! 分かりました、よろしくお願いします!」

「よろしくお願いします。おじさんもギルさんのところに行きたそうですから行ってあげて下さい」

「ああ。必ず来いよ」

 ドスドスと音が聞こえそうなくらいですね。革の腰紐には大きなハンマーが二つ差してありますのであれだけでも僕と同じ体重くらいありそうです。

 あはは。ギルさん背中を叩かれむせてますね。

「今日はここで泊まるのかにゃ?」

「ん~、装備を手直しと作ってもらうなら宿で泊まろうか。お兄さん達はどうするのですか?」

「私達も宿を取るわよ。ここの街は温泉も出るから楽しみだったのよ♪」

「おお! 温泉ですか! それは楽しみです♪ みんな、行こう!」

 揉みくちゃにされてるギルさんを置いて僕達は街に向かいました。


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