【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

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第三章

第72話 ご主人様の行方

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「何でしょうね? あっ、後ろから馬さんに乗った方も出てきましたよ」

 ムルムルにオーク二匹とゴブリンを一匹あげるといつも通り包み込んで消化して、キングとクイーンは飼い葉をあげるとムシャムシャ食べ、僕達はシチューを口にしながらその様子を眺めていました。

「そうね。みんな険しい顔をしてるしこの先に魔物でも出たのかしら? ところでライ、明日か明後日なんだけどこの実がそろそろ良さそうなの、どこか良い場所を探そうと思っていたけど、サーバル男爵領でどこか良い場所知らない?」

 僕はそれを聞いてテラの頭の上に乗ってる物。ハイエルフの村で見つけた果実を見ながら考えます。

「ん~、また大きくなるよね?」

「なるわね。あの子よりも大きくなりそうよ、だからできれば広い土地が良いわ」

 あの御神樹様より大きくなるのか、だとすれば、サーバル男爵領の真ん中、お屋敷の近くが良いかな。

「僕がゴブリン村と、オーク村を潰した森はどうかな? 東の森の半分以下くらいかな? それでもそこそこ大きな森だよ。そこならお屋敷からも近いし町からも見える。ならそこまでの道なんか作ってピクニックとか」

「やはりそうだ! この馬達は『闘う商人』様のキングとクイーンだ!」

 ん? 闘う商人さん? あっ! キングとクイーンのご主人さんでしょうか!

「あの、この馬の持ち主、ご主人さんを知っているのですか?」

「おう、坊主はどこでこの馬を手に入れたんだ? 二十日前くらいに到着予定だったのだが全然到着しなくてな」

 なんと、そんな前だったのですか。

 東の森から出てプシュケを背負子に乗せて僕が走ったのは帝国とラビリンス王国への分かれ道、十日以上かかるのを半日で走りましたからね。それからキング達がいたあそこまではプシュケを降ろして一日半、そして今日。

「あのですね、キングとクイーンのご主人さんはたぶん人攫いにあっています。昨日、一昨日くらいに複数台の馬車を連ねた団体は通りませんでしたか?」

「何だと! まさかAランク冒険者なんだぞ! そう簡単にはやられるはずはない!」

 なんですと! Aランク冒険者だったのですかキングとクイーンのご主人って! でもそれならおじさん達が信じられないのも仕方ありませんね。

「あのですね、今回の人攫い達は眠り薬を使いますからね、寝ている間に捕まってしまいますよ。それで団体は?」

 これを聞いておけばいつ通ったか分かります。

「眠り薬! 最近噂が絶えない人攫いが使っているとされる手口か! そ、それなら捕まるのも無理はないのか。おっと団体の馬車か······そうだな、七台の団体は一昨日、二日前に通ったぞ。街の中には数人だけ入り、酒と食料を買って、昨日の早朝に出発していったぞ」

「それです! テラ、プシュケ、差は一日半です、走れば夕方までには追い付けるはず!」

「そうね、プシュケはここでキング達をお世話しながら待っていなさい、ちゃっちゃとやっつけて戻ってくるわ!」

「おじさん達にお願いが、ここに戻ってきますので、街道脇にテントを張っても良いですか?」

「それは良いが、一日半なら明日の朝にはラビリンス王国の国境までもうすぐだ、昼には越えてしまうぞ」

 ん~、そうなのですか。まあラビリンス王国に入っちゃっても助けに行きますが、面倒ではあるもんね。んと、方向は······気配を街道の先へひろげていきます。するとそこには沢山人がいますね、それが国境だとすればもう少し手前の······いた。

「ライ、見つけたようね。それなら走ることもないでしょうね、プシュケ達も連れていけば良いじゃない。ほらキング達がそわそわしてるわよ」

 うん。僕達の話を理解しているようで、咥えた飼い葉を食べるのも忘れこちらを見ています。

「じゃあ一緒に行っちゃいますか。おじさん、僕達はその闘う商人さんを助けに行ってきますね、プシュケ、ご飯はまた後でね」

「はい。後で美味しく食べましょう」

「待て待て待て待て! 子供達がそんな事を出きるはずがないし追い付くだと、そのキングとクイーンは騎馬ではないから長くは走れるが早くはないのだぞ!」

「大丈夫です。夕方には戻ってきますので。よしじゃあ行くよ、転移!」

 パッ

 また何かおじさん達に言われるより、早くキング達のご主人さんを助けたかったので、転移しちゃいました。

「ライ、この前方にはいないわよ?」

「ぬふふ。少し先に出ました。ほんの二百メートルほど先ですが」

「なんだ、そうなの? 後ろね。んん神眼~。うんうん正解よ、闘う商人の称号を持った人がいるわね。それから子供が三人と冒険者が後二人あわせて六人よ」

「ん~、その五人が馬車に縛られていた人達でしょうね。何をしたのでしょうか」

「それは後、人攫いは十六人よ、ほらほら見えてきたわ」

 街道が曲がりくねっているので、街道脇の林に隠れていた馬車が姿を見せました。

 一、二······七台。台数もおじさん達が言ってたのと同じです。ではまとめて魔力を発散させて気絶ギリギリで止めておきましょうかね。

「よし、ぐるぐる~。じゃあ僕達はここで休憩しているふりをしましょう。そうすれば僕達は馬さん二頭と子供が二人に見えるはずですし」

「はぁぁ、ライ、まあそうすれば止まってくれるかも知れないね。じゃあそうね、火でも起こしてお湯を沸かすくらいの演技は必要ね、ほらほらライ、プシュケも焚き火の準備をなさい」

うん!は~い

 そして馬車が僕達まで後百五十メートル先くらいになったところで、薪を数本出して火をつけ、鍋に水を張りました。

 ついでですが、キング達のご飯も再開です。

「くふふふ。キング達も分かってくれてますね、僕の作戦を」

「リントが教えてあげたにゃよ。だいたい作戦は分かってたけどにゃ」

「やるじゃないリント。ほらほらプシュケも腰を下ろして休憩よ」

 馬車は百メートルほど手前から徐々に速度を落とし、近付いてきます。

「もう少しで魔力も無くなりますね、魔力回復の魔道具は持ってないようだし」

「そのようね。一応言っておくけど油断はしないでね」

「うん。ありがとうテラ」

「うわっ、も、もう少しで!」

(もう少しで口づけしちゃうところだったじゃない! 落ち着け落ち着け落ち着くのよ私! もうライったら急にこっちを振り向かないでよ! ああ~ダメダメ今は救出の事を考えるのよ私!)

 テラはなぜかまた真っ赤になって、ムルムルを摘まんで引っ張り出しました。

 可愛いですね♪ ちゅ

「なっ$@? ラ&! %£¤¢µ!!!」

 さて、もう馬車も止まります。みんなが怪我なんてしないように集中しましょう。



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