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第三章
第71話 キングとクイーン
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「馬車が街道の端ですけど停まってますね」
街道を歩く僕達の目線の先には馬車が一台停まっていました。でも人の気配がしませんし、何なのでしょうか。
「誰も近くには居ませんが、馬さんは居ますね、何かトラブルでもあったのでしょうか」
馬車に近付くと、馬さん達が嘶き暴れだしました。
「え? どうしたの馬さん!」
馬さんは、街道脇の木に手綱をくくりつけられ、馬車から外してももらえず、足元の糞が長時間この状態が続いていたことを表しています。
「嘘っ! いつからこんな事になってるの! すぐに外してあげるから暴れないで!」
「任せるにゃ! みにゃあぎにゃあぐるぐるにゃあ~」
リントがとととっと馬の前に走り寄り、猫語かなにかで馬さんに向かって喋ると馬さんは暴れるのを止め大人しくなってくれました。
「リント凄いですありがとう! まずはお水とお塩ですよ! 馬具外しますから少しだけ待ってくださいね!」
「神眼! んー、あった! ライ三百メートルくらい行ったところに泉があるわ! 方向はあっちよ! プシュケも馬銜外してあげて!」
「はい! 踏み台は、あった! よいしょっと」
プシュケは馬車の後ろから踏み台を探して持ってきました。僕は馬さんのお腹の下でベルトを外し、プシュケは馬達の間に踏み台を置いて馬銜を外しています。体が自由になったので木にくくりつけられていた二頭の手綱をほどきました。
「馬車をこのまま置いておけないから収納しちゃうよ! 収納! プシュケは馬さんに乗れる!?」
「うん! 任せて、でも収納された踏み台が無いと」
「任せて、転移!」
パッ
「わおっ! あわわわ、いきなり乗ってごめんね、大丈夫だからね」
転移で馬さんに乗せ、驚いた馬さんをなだめています。
驚かせてごめんなさい、でもなるべく急いであげないとね。僕もポンポンと叩いて合図してから飛び乗り手綱を操ります。
「リントはプシュケと一緒にお願いね、転移」
パッ
「任せるにゃ! プシュケ行くにゃよ! あっちにゃ! ちゃんと水の匂いがするにゃよ!」
馬さん達も水の匂いがあるのを分かっているのかテラが教えてくれた方向に走り出しました。
見えてきたそこは岩がゴロゴロある場所で、くぼんだ大きな一枚岩の割れ目からこんこんと湧き出す水によって直径十五メートルほどの泉がありました。
「ふう、凄い勢いで飲んでるね。よし、次はお塩に飼い葉ですよね、馬車に乗ってるかな、ほいっと!」
馬さん達から降りて、ズンッ、と馬車を出し箱形の荷台を調べましょう。飼い葉は馬車の後ろに縛り付けてありましたので荷台の中を調べます。
「ん~、鍵はかかってませんね、お邪魔しま~す」
「うっ、酷い匂いね、でも仕方ないわね急ぎましょう。んん~。あったわ、ライそこの棚に岩塩が入った箱、そうそれ」
「よいしょ。じゃあまだお水を飲んでるはずだから飼い葉を用意するね」
「ん~、ライここ見て、このロープ誰かを縛っていたようね」
耳たぶをクイクイ引っ張るテラが指差す方を見ると、壁に繋がれたロープが五組、床に散らばったロープも五組、それと食料を食い漁ったと思われる蓋を開けられた木箱の中に残っている食べ物にはどれも齧った跡があります。
「ん~、誰かを捕まえて、運んでいる最中に逃げられ追いかけてるのかな? 近くには誰も気配はありませんでしたけれど」
「まだ追いかけてる可能性はあるわね。まあ次の町まで歩くとまる一日くらいよね、そこに馬車を運んで衛兵に任せるのが良いかも。馬達は残しておけないもの」
「うん。そうするよ、このまま街道脇で待たせるのはあまりにも可哀想だからね」
飼い葉を一抱えとたぶん馬用の大きな木でできたお皿がありましたので、それを持って馬さんの近くに置いておきます。もちろん岩塩も一緒にです。
喉の渇きはおさまったようで、飼い葉の方にやって来て食べ始めましたのでブラシを取り出しブラッシングをしてあげるととても気持ち良さそうです。
「そうだリント、馬さんに何があったのか聞く事ってできる?」
「そんなの簡単にゃよ、もう聞いてあるにゃ。前の馬車から甘い匂いがしてみんな寝ちゃったそうにゃ。だからよく分からにゃいよ」
「それって! テラ、人攫いの手口に似てるよね!」
「そうね、ライ早めに次の街に行きましょう。確か人攫いを続けながらラビリンス王国に向かっていたわよね、それならなるべく止まらず走れば追い付くかも」
「言ってた人攫いですね。私も賛成です!」
「よく分からにゃいけど悪者を追いかけて、やっつけるのにゃ?」
リントの言葉に僕、テラ、プシュケは頷き、ムルムルは突起をのばしゆらゆら。
「じゃあリントも手伝うにゃよ! キングとクイーンもご主人が心配って言ってるしにゃ」
「キングとクイーン? もしかして馬さんの名前?」
「そうにゃよ。真っ黒がキング、茶色がクイーンにゃ両方雌にゃよ」
「女の子にキングって付けたのご主人様! 男の子の名前だよ!」
「私もそう思います、あった時は文句を言ってやります!」
その日はこの泉の横でテントを張り、夜営としました。
翌朝街道に戻り、キングに僕とテラ、ムルムル。クイーンにプシュケとリントが乗り込み街を早足で進みます。
お昼前には街に到着しましたので、馬車と馬さんを預けるかどうか話し合い、預ける事にしたのですが。
「キングとクイーンは一緒に追いかけたいそうにゃよ。一緒じゃダメかにゃ?」
「良いのかな? でもそうか、人攫いから助け出せたとしても、この街に帰ってくるまでキングとクイーンは寂しいもんね」
「そうね、連れていきなさいよ。それからねえライ、鞍とか鐙、鞍下なんかの馬具は無いの? キング達もあった方が私達を乗せやすいしあなた達も乗りやすいと思うわよ」
「あっ、たぶんあると思う。え~っとこれかな違いますね······あ、ありました! どこかで見たような記憶があったので、よし付けてしまいましょう♪」
「はぁぁ。待つにゃ、まずは休憩させてあげるにゃ、朝から一回休憩しただけにゃよ」
リントはやれやれってため息をつきながらそう言ってきてそうだと思い出しました。
「そうだね、よし少し早いですがお昼ごはんを兼ねて休憩にしましょう」
僕達は門から街には入らないで街を回り込むような街道を、ほんの少しだけ進み、お昼休憩にすることにしました。
早く追い付きたい気持ちで無理をさせてしまうところでしね。キングとクイーンに泉で汲んできた水と、岩塩、飼い葉を用意して、僕達用に火をおこし、お湯を湧かしながらお昼ごはんを食べ始めようとしたところに街の門から武器を持った人達がこちらに向かって走ってくるのが見えました。
「何かあったのでしょうか?」
街道を歩く僕達の目線の先には馬車が一台停まっていました。でも人の気配がしませんし、何なのでしょうか。
「誰も近くには居ませんが、馬さんは居ますね、何かトラブルでもあったのでしょうか」
馬車に近付くと、馬さん達が嘶き暴れだしました。
「え? どうしたの馬さん!」
馬さんは、街道脇の木に手綱をくくりつけられ、馬車から外してももらえず、足元の糞が長時間この状態が続いていたことを表しています。
「嘘っ! いつからこんな事になってるの! すぐに外してあげるから暴れないで!」
「任せるにゃ! みにゃあぎにゃあぐるぐるにゃあ~」
リントがとととっと馬の前に走り寄り、猫語かなにかで馬さんに向かって喋ると馬さんは暴れるのを止め大人しくなってくれました。
「リント凄いですありがとう! まずはお水とお塩ですよ! 馬具外しますから少しだけ待ってくださいね!」
「神眼! んー、あった! ライ三百メートルくらい行ったところに泉があるわ! 方向はあっちよ! プシュケも馬銜外してあげて!」
「はい! 踏み台は、あった! よいしょっと」
プシュケは馬車の後ろから踏み台を探して持ってきました。僕は馬さんのお腹の下でベルトを外し、プシュケは馬達の間に踏み台を置いて馬銜を外しています。体が自由になったので木にくくりつけられていた二頭の手綱をほどきました。
「馬車をこのまま置いておけないから収納しちゃうよ! 収納! プシュケは馬さんに乗れる!?」
「うん! 任せて、でも収納された踏み台が無いと」
「任せて、転移!」
パッ
「わおっ! あわわわ、いきなり乗ってごめんね、大丈夫だからね」
転移で馬さんに乗せ、驚いた馬さんをなだめています。
驚かせてごめんなさい、でもなるべく急いであげないとね。僕もポンポンと叩いて合図してから飛び乗り手綱を操ります。
「リントはプシュケと一緒にお願いね、転移」
パッ
「任せるにゃ! プシュケ行くにゃよ! あっちにゃ! ちゃんと水の匂いがするにゃよ!」
馬さん達も水の匂いがあるのを分かっているのかテラが教えてくれた方向に走り出しました。
見えてきたそこは岩がゴロゴロある場所で、くぼんだ大きな一枚岩の割れ目からこんこんと湧き出す水によって直径十五メートルほどの泉がありました。
「ふう、凄い勢いで飲んでるね。よし、次はお塩に飼い葉ですよね、馬車に乗ってるかな、ほいっと!」
馬さん達から降りて、ズンッ、と馬車を出し箱形の荷台を調べましょう。飼い葉は馬車の後ろに縛り付けてありましたので荷台の中を調べます。
「ん~、鍵はかかってませんね、お邪魔しま~す」
「うっ、酷い匂いね、でも仕方ないわね急ぎましょう。んん~。あったわ、ライそこの棚に岩塩が入った箱、そうそれ」
「よいしょ。じゃあまだお水を飲んでるはずだから飼い葉を用意するね」
「ん~、ライここ見て、このロープ誰かを縛っていたようね」
耳たぶをクイクイ引っ張るテラが指差す方を見ると、壁に繋がれたロープが五組、床に散らばったロープも五組、それと食料を食い漁ったと思われる蓋を開けられた木箱の中に残っている食べ物にはどれも齧った跡があります。
「ん~、誰かを捕まえて、運んでいる最中に逃げられ追いかけてるのかな? 近くには誰も気配はありませんでしたけれど」
「まだ追いかけてる可能性はあるわね。まあ次の町まで歩くとまる一日くらいよね、そこに馬車を運んで衛兵に任せるのが良いかも。馬達は残しておけないもの」
「うん。そうするよ、このまま街道脇で待たせるのはあまりにも可哀想だからね」
飼い葉を一抱えとたぶん馬用の大きな木でできたお皿がありましたので、それを持って馬さんの近くに置いておきます。もちろん岩塩も一緒にです。
喉の渇きはおさまったようで、飼い葉の方にやって来て食べ始めましたのでブラシを取り出しブラッシングをしてあげるととても気持ち良さそうです。
「そうだリント、馬さんに何があったのか聞く事ってできる?」
「そんなの簡単にゃよ、もう聞いてあるにゃ。前の馬車から甘い匂いがしてみんな寝ちゃったそうにゃ。だからよく分からにゃいよ」
「それって! テラ、人攫いの手口に似てるよね!」
「そうね、ライ早めに次の街に行きましょう。確か人攫いを続けながらラビリンス王国に向かっていたわよね、それならなるべく止まらず走れば追い付くかも」
「言ってた人攫いですね。私も賛成です!」
「よく分からにゃいけど悪者を追いかけて、やっつけるのにゃ?」
リントの言葉に僕、テラ、プシュケは頷き、ムルムルは突起をのばしゆらゆら。
「じゃあリントも手伝うにゃよ! キングとクイーンもご主人が心配って言ってるしにゃ」
「キングとクイーン? もしかして馬さんの名前?」
「そうにゃよ。真っ黒がキング、茶色がクイーンにゃ両方雌にゃよ」
「女の子にキングって付けたのご主人様! 男の子の名前だよ!」
「私もそう思います、あった時は文句を言ってやります!」
その日はこの泉の横でテントを張り、夜営としました。
翌朝街道に戻り、キングに僕とテラ、ムルムル。クイーンにプシュケとリントが乗り込み街を早足で進みます。
お昼前には街に到着しましたので、馬車と馬さんを預けるかどうか話し合い、預ける事にしたのですが。
「キングとクイーンは一緒に追いかけたいそうにゃよ。一緒じゃダメかにゃ?」
「良いのかな? でもそうか、人攫いから助け出せたとしても、この街に帰ってくるまでキングとクイーンは寂しいもんね」
「そうね、連れていきなさいよ。それからねえライ、鞍とか鐙、鞍下なんかの馬具は無いの? キング達もあった方が私達を乗せやすいしあなた達も乗りやすいと思うわよ」
「あっ、たぶんあると思う。え~っとこれかな違いますね······あ、ありました! どこかで見たような記憶があったので、よし付けてしまいましょう♪」
「はぁぁ。待つにゃ、まずは休憩させてあげるにゃ、朝から一回休憩しただけにゃよ」
リントはやれやれってため息をつきながらそう言ってきてそうだと思い出しました。
「そうだね、よし少し早いですがお昼ごはんを兼ねて休憩にしましょう」
僕達は門から街には入らないで街を回り込むような街道を、ほんの少しだけ進み、お昼休憩にすることにしました。
早く追い付きたい気持ちで無理をさせてしまうところでしね。キングとクイーンに泉で汲んできた水と、岩塩、飼い葉を用意して、僕達用に火をおこし、お湯を湧かしながらお昼ごはんを食べ始めようとしたところに街の門から武器を持った人達がこちらに向かって走ってくるのが見えました。
「何かあったのでしょうか?」
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