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第二章

第62話 海賊退治に向けて

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「坊っちゃんコイツらはいつ起きますか?」

 カヤッツが奴隷の魔道具を海賊達の偉いさん二人に付けながら聞いてきました。

「今からでも起こせますよ。魔力切れにしてあるだけですから。起こします?」

「よいしょっと、はい。それなら付け終わりましたから起こして貰えますか? すぐに私が詰問して情報を搾り取りますから」

「は~い、ほいっと!」

 魔道具を付けられた二人に魔力を流し込んで気絶から起こしてあげます。

「ありがとうございます。どうせ坊っちゃんの事だからコイツらのアジトを潰しにいくのでしょう? ゴブリン村長を倒した時みたいに」

「な、なぜそれを! 旅立った後にしか誰にも言ってませんのに!」

「ぷぷっ、私は知っていましたよ。門を出てすぐに『今日はゴブリン村長をやっつけて村を無くしちゃいましょう♪』って旅立つ少し前に言ってましたから」

 なんですとー! フィーアとのあれを聞かれていたのですね······

「あはは······その通りです。海賊の島の位置とか、人攫いの事件とも繋がりがありそうなので」

「人攫いの? あの世間を騒がせている事件ですね。分かりましたその事についてもしっかり聞いておきます。では後程お知らせに参りますので」

「はい♪ お願いしますね」

「はい。では······ふんっ!」

 パチンパチン!
 パチンパチン!

 と良い音をたてるように海賊二人の頬を往復で叩きました。とても痛そうです。

「痛っ! 何しやがる!」

「くっ! 痛っ、なんだ! 誰だてめえ!」

 やっぱり痛かったようで起きたようです♪

「よし命令だ、立って私に付いてきなさい」

 そう言うとカヤッツさんは屋敷の正面にある詰め所の方へ歩き出しました。

「何言ってやがる! んな命令なんざ聞くかボケ!」

「てめえ死にたいらしいな。分かった望み通りに······なんだこれは体が勝手に! か、お頭までだと!」

「無駄口叩くな! 大人しくして黙って付いてこい! あっ、坊っちゃん残りの奴らも人を集めて引き取りに来ますから、起きないようにしておいて下さいね♪」

「うん。大丈夫だよ♪ 後半日くらいは寝たままだから」

「ぷぷっ、分かりました部下には荷台を用意させますね♪ ではでは後程」

 そう言って笑いながらカヤッツさんは立ち去っていきました。

「ライ、カヤッツの用事は済んだようだな。済まないが王都まで転移で連れていってくれないか? ああ、帰りは良いぞ今日は向こうの屋敷にあいつが行ってるのでな」

「じゃあ、王都のお屋敷に転移させれば良いのですね♪ すぐにですか?」

「ああ、この者達から聞いた話を少しでも早く王様に伝えなければならん。カヤッツの調べた事は分かり次第伝えて貰いたいが、そうだな······王城の門番に渡しておいてくれるか?」

「分かりました。では行きますね~、転移!」

 パッ

 父さんを王都の屋敷、その庭に転移させて、僕はカヤッツさんの戻ってくるのを待つだけですので、捕らわれていた人達にお昼までの長い待ち時間を楽にして待って貰うようにしました。

 メイドさんに軽食を頼み、椅子とテーブルを用意して飲み物も用意。

「あの、ライ様。こんな事をしていただいてよろしいのですか?」

 一人父さんとお話ししていた人がおずおずと話しかけてきました。

「良いですよ♪ 皆さんは被害者なのですから。それに父さんが皆さんを元の場所に戻してくれますので少しでも疲れを癒して下さい」

 そう言うと、皆さん遠慮して手を出さなかったお茶に手を伸ばし始めました。

 場の緊張がゆるんだ頃軽食のサンドイッチが届くとそれはもう中々の勢いで食べ始め、メイドさん達がおかわりを持ってきてくれたほどです。

 相当お腹もすいていたことでしょう。

 そうして寝てるテラをよそに、プシュケのぐるぐるを補助しているとカヤッツさんがそこそこ分厚い資料を持って帰ってきました。

「坊っちゃんお待たせしました。だいたいの島の位置や数、海賊の人数に捕らわれているもの達の人数です」

「早かったですね♪ これを父さんにですね。ふ~ん、三つも島があるのですね。でも思ったより捕まっている人はいないのですね♪ 百人ちょっとならここに連れてきてからでも良さそうですし。ありがとうございます」

「いえいえ。坊っちゃんも怪我の無いように楽しんできて下さいね、ゴブリンよりは賢いですから、ぷぷっ」

「くふふふ。もちろん♪ 沢山奴隷が増えれば、この領地の開拓をして貰えますからね♪」

「まったく。坊っちゃんは普通なら危険きわまりない事も遊び半分でやってしまえるほどお強くなられましたから、私共も安心して待っていられるのです」

「ぬふふふ。頑張って修行しましたからね~。じゃあカヤッツやみんなの期待にも答えられるように王城に行ってこの資料を持って行って海賊達をやっつけてきますね♪」

「はい。行ってらっしゃいませ」

 その言葉を聴いて、プシュケも連れて王城前に転移しました。

 お城の入口前に転移したものですから門番さんは凄く驚き、少し怒られちゃいましたが、そこにティを学校に送った帰りのステファニーさんが騎士さんとの訓練のため偶々たまたまお城に来たところに出くわし、僕の身分を証明してもらいました。

 ですが、いつの間にか資料を渡すだけで良かったはずなのに、中にまで入ることになりました。

「ライ殿も一緒に訓練はいかがですか?」

「ん~とですね、この後海賊をやっつけて、そこに捕まっている人達を助けなきゃならないのでまた次の機会にお願いしますね」

「ぬ? それは本当の事なのですか? それが本当だとすれば、国の兵を動かす事態なのですが」

「あはは。大丈夫ですよ♪ 朝から五十人捕まえて、五十人救いだしてきましたから」

 ステファニーさんは、「へ?」って顔で僕を見てその場に止まってしまいました。

「あのステファニーさん? 早く父さんにこの海賊が証言した物を持って行きたいので止まらず行きましょう」

 ギギギときしむ音が聞こえてきそうな動きで首を傾け僕を見て来ますが、ステファニーさんの手を取り歩き出しました。

「ねえライ、そのお姉さん歩いているけど気を失ってない?」

「ん~、そうみたいだけど一応意識はあるみたいだね。混乱中って感じですね。まあ早く終わらせないとバーベキューに間に合いませんし、このまま行っちゃいましょう♪ たぶん前にお話しした部屋にいると思います。だって父さんの魔力がそこにありますから」

「へぇ~、そんなことも分かるんだ! よし、私もぐるぐる頑張るから手を握ってさっきのやってよ」

「良いよ。ついでにステファニーさんのもぐるぐる回復しながら回してあげましょう♪」

 そして僕が真ん中で三人手を繋ぎ廊下を歩いていると前からドレスを着た女の人が侍女さん達を連れて歩いてきました。

 たぶんティアラを付けていますので王妃様だと思います。すぐに二人の手を引き廊下の端によりステファニーさんも無理やり跪かせ三人頭を垂れました。

 プシュケはわたわたしながら僕の真似をして、ステファニーさんは頭を上げたままでしたので頭を押さえてなんとか間に合いました。

 そして僕たちの前を通りすぎるのかと思ったのに立ち止まりました。

「あら♪ あなた噂のサーバル男爵家三男、ライリール君♪ うふふ♪ お顔は見せてはくれませんの?」

「はっ! サーバル男爵家三男ライリール・ドライ・サーバルです。ライとお呼び下さい」

 顔を上げ挨拶をしました。

「うんうん♪ きちんと挨拶も出来るのね♪ 今日はどうしたのかしら?」

「はっ! 東の森の向こうにある海に出没している海賊についてと、世間を騒がせている人攫いの件で、父が先だってご報告に来ており、その追加の資料をお持ちした次第でございます」

「まあ。そうでしたのね。一人このライ君を早急にあの人の元に案内して差し上げて」

 王妃様がそう言うと、一人の侍女さんがその言葉に呼応して一歩前に出てきました。

「かしこまりました。ライ様私がご案内致します」

「はい。どうかよろしくお願いいたします」

「では、私達は参りますので良しなに頼みましたよ」

「「はっ!はっ!」」

 僕と案内してくれる侍女さんが返事をした後、スルスルと優雅に立ち去って行きました。

「では、ご案内致します」

「はい。よろしくお願いいたします」

 僕達でステファニーさんはなんとか立ち上がらせ、手を引き侍女さんの後をついて父さんと王様の待つ部屋に向かい歩き出しました。
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