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第二章

第60話 海賊がやって来ましたよ

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「船は近付いてきているのに届かないわね?」

 テラが言う通り船はどんどん近付いてきているのですが魔法はだいたい同じところに落ちています。

「なんだろうね? もしかして僕達があのお宝を持ってるかも知れないから当てられない? でも逃げられても困るから威嚇しているだけ?」

「私は難しい事は分かりませんが、どうせライがぐるぐるしちゃうんだから、当たらなければ良いかなって思っています」

 プシュケは僕の事を信用してくれているようです。

「あら。魔法はもうおしまいかしら? ライはまだぐるぐるしてないのにね」

「止まりましたね? まあ後五十メートルくらいですし、逃げなられないと思ったのかも知れませんね。じゃあそろそろぐるぐるしてギリギリ気絶しないところで止めておきましょう。ほいっと!」

 そうこうしている内に船は停泊して、いかりを下ろして小舟も下ろし始めました。

 小舟に乗り込む人達を見ると、うん。これは海賊だろうね。

「はわわっ、既に剣を手に持ってますよ! やる気満々です!」

 中には頭上で振り回している人もいますし。

「くふふふ。すぐに気絶させられるのにあんなにニヤニヤした顔をしているわ♪ 今やれば小舟なのに立っているし、海に落ちるんじゃない? くふふふ」

「あはは♪ それは可哀想だよ流石に。せめて小舟で底が付いて止まってからにします。それか先に小舟だけ収納しましょうか?」

「くふふふ。それならおっきい方をすればもっと面白い事になるわよ♪」

 テラがそんな事を言うのでやっちゃおうかなって思ったのですが。

んん神眼~。あらぁ~駄目ね。海賊じゃない人達が船底の方に沢山いるわね。たぶんオールを出してこぐ時に働く人達ね。人攫いでもしてきたのかしら?」

「犯罪奴隷の人達じゃないの?」

「違うわね。ライにも分かるでしょ、奴隷の魔道具があの船には無いって事が」

 ん~、確かにありませんね。

 ならその人達はちゃんと解放してあげないとですね。

「ライ、もう波打ち際につきますよ! ほらほら!」

 プシュケの声で小舟の方に目を戻すと、まさに船底が海底に乗り上げたところでした。

「オラ! 俺達の魔法でひびっちまったガキどもを捕まえた奴には銀貨三枚だ! 稼ぎやがれ!」

「「クソ! どけよ!俺の獲物だ!」」

 我先にと太ももまである深さの海に飛び降りる海賊達。

「じゃあ~、ぐるぐる~、ほいっと!」

 浅瀬に飛び降り、こちらに向かってきましたが、脛の辺りまでしか深さがないところに来た海賊達から次々と気絶させていきます。

「なっ! お前ら何転けてんだよ! 邪魔だ邪魔!」

「おいおい。踏んでしまったじゃねえかおい。くははは!」

 十五人ほどいた一隻目の人達は波打ち際で重なりあいながら気絶しました。

「なんだありゃ! お頭達が全員ぶっ倒れてッぞ! 下の奴ら海の中じゃねえか! 助けろお前達!」

「へい! 副船長! 野郎共ガキは後回しだ! 行け!」

「「お頭が下にいるぞ!任せな!」」

 二隻目の海賊達は、一隻目の人達を助けるようです。

「じゃあ、後で海から引き上げるの面倒だから浜に上がったところをやっちゃうね」

 僕達は浜から三十メートルくらいの浜辺と森の間にある草が生えて波が来ないだろうって所にいますからまだまだ距離があります。

 そして一人ひとり引きずりながら浜辺に上がったので、ぐるぐるっとしちゃいました。

「よし! ここなら良いだろう。ガキどもを······」

 ドサッ

「何やってるんすか副船長、コイツらの真似で······」

 ドサッドサッ

 次々とまた折り重なるように全員が気絶して倒れてしまいました。

「よし。小舟の人達は全員倒せたね♪ プシュケはここで待っててね。僕はあの船に残ってる人をやっつけてくるから」

「はい♪ 頑張ってきて下さいね」

「うん。じゃあテラは向こうに着いたら誰が海賊か教えてね♪」

「任せて! さあ~、行っちゃえー!」

「おー! 転移!」

 パッ

 海賊船に到着した僕達は、甲板で魔力切れで座り込んでる海賊達を少しぐるぐるして気絶させ、それを見て駆けつけてくる海賊達も同じ様に気絶させていきます。

「ん~、打ち止めかな?」

「まだね。中にあと五人いるわよ。甲板より上の者達はこの十五人で終わりね。ライ邪魔だから浜辺に飛ばしておいたら?」

「それは良い考えです♪ じゃ~、転移!」

 甲板で倒れていた海賊達を浜辺に転移させました。

「うんうん。それで良いわ! さあ船内に行くわよ!」

「おー!」

 船内に入るといきなり三人いました!

「なっ! 誰だお前!」

 お酒の瓶を片手に持った赤いお顔のヒゲモジャさんが三人。

「んん? お頭達が捕まえに行ったガキ達じゃねえのか?」

「ケケケ。なんだよ可哀想になぁ。お頭のヤツが好きそうなガキだぜまったくよ」

 ん~、好きそうならお友達になって下さいって言ってくれれば少しは考えたかも知れませんが。

 まあ、海賊さんとは友達にはなりませんけれどね~。

「あ~、たぶんライの考えている「好き」とはちがうと思うの。まあ良いわ、さっさと終わらせましょう」

 なんだかもやもやする言い方ですが、まあ良いでしょう。

「うん。じゃあ皆さんはおねんねして下さいね~、ぐるぐる~」

「げふぅ。な~に言ってんだガキぃ~······」

 トサッ

 テーブルに手をついて立ち上がりかけていたので、テーブルに突っ伏して寝てしまったようになっちゃいました。

「おいおい、飲みすぎたか? しゃあねえなぁ~おれが······」

 トサッ

「お前もかよ。はぁぁ······」

 トサッ

「うんうん。順調ね♪ ライ、そこにあるの宝箱よね! くふふふ。んん神眼~♪ 違うじゃない! なんで腐った食べ物を宝箱みたいな物に入れてるのよ! ばかじゃないの!」

 テラ、残念だったね。

「テラ、まだ船の中に入ったばかりでしょ。あと二人やっつけてから探したら絶対あるよ♪」

「そ、そうね。私としたことが、取り乱してしまったわ。ありがとうライ、次はその梯子から降りるみたいね。待ち伏せはいなさそうだからさっさとやっつけて、おたからさがしよ!」

「うん♪」

 その前に、船倉の中の人達を助けてからですけど、今は言わないでおきましょうかね♪

「じゃあ行くよ。ほいっと!」

 僕は梯子を使わずに下に飛び降り、さらに下に下りる梯子へ向かいました。

「一応気を付けてね」

「うん。この下に皆さんいるみたいですから」

 そうして気配では梯子の近くには誰もいませんので、思いきって飛び下りる事にしました。

 そこには、鎖に繋がれた五十人くらいの人がボロボロの服を着て座り込んでいる姿と、小さなテーブルでお酒を飲んでいる最後の二人がこちらを見て驚いた顔をしています。

 ん~、近いですしぐるぐるしながら倒しましょうか。

「チッ! カキがどうやって入ってきやがった! おい! 挟み撃ちだ!」

「何ガキ一人にそんなにあせってんだ?」

「このガキの魔力がヤバいんだよ! 俺それだけは分かるんだ! 上の魔法使える奴らなんか足元にも及ばねえくらいの魔力を持ってんだよ!」

「マジか! なら上の奴らは······」

 ドサッ

「おい! てめえガキ! なにしやがった!」

「あのですね、実は」

「ライ。説明なんかしなくて良いわよ。ほらほら早くやっつけてお宝探しよ!」

「そうだね♪ じゃあおじさん覚悟してね。おじさん中々魔力が多そうだからちょっと痛いですよ~っ!」

 収納から朝の貝殻を取り出し眉間、鼻、目を閉じたので目を。

 貝殻をつぶてに見立ててぶつけてあげます。

「が! 痛っ! ぐおっ! 目がぁっ!」

 そして顔を押さえている間に近付いて刀を出して振りかぶり、お腹に!

 ドスッ

「ぐえっ!」

 二メートル近い背の高さの海賊は、お腹の痛みからくの字になって頭が下がってきました。

「じゃあおねんねしていて下さいね♪ ほいっと!」

 ガッ

 ドサッ

 頭に一撃を加え、倒しました。

「良くやったわライ! さあ!」

「その前にこの人達を助けようね♪」

「あ!」

 やっぱり忘れていたようです。
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