上 下
54 / 241
第二章

第54話 お引っ越しです ③

しおりを挟む
「よし成功だ············なっ! こ、ここは!」

 僕達も一緒に転移して、村の近くの木の枝に僕達。そして村の入り口前の六人。

「おい! なぜ村に戻ってるのだ!」

「まさか転移先を間違えたのか?」

「そんな······俺は確かに昨日の夜営地をイメージして目標にしたんだ······」

「なにをやってるんだ! 手ぶらで帰ってきてどうする! さっさと夜営地に戻るぞ!」

「無理だ! 魔力が足りない! あの町の近くからここまで飛んで気絶してないのは不思議だが今は良い。だが今からもう一度戻るのは魔力が足りない! 絶対無理だ!」

 ぐるぐるで魔力を補充すれば出来るのにね♪ あっ、一人木が変わっている事に気がついたようです。

 僕が育てた木を指差しながら少しぷるぷる震えています。

「なあ······おまえ達、俺には御神樹様が違う木になってるように見えるんだが······」

「何を馬鹿な事を言ってる! 今はそれどころ······嘘だろ」

「くふふふ。驚いていますね。この六人はあの騒動の前に村を出発したようですね」

 ある程度離れていますので大きな声を出さなければ大丈夫です。

「そうね。それでどうする中の様子も見ておくなら、御神樹様に転移すれば村全体を見る事ができそうよ」

「僕は別に良いかな。プシュケは?」

「私も特別見たいとは。あっ! 私の家も持っていけますよね? それを頼めますか?」

「そうだね、プシュケの父さん母さんもサーバル男爵領に向かっていますもんね♪ よしそれなら御神樹さんの枝にお邪魔して、収納しちゃいましょう♪ 転移!」

 パッ

 僕は目視で確認。そして一番下の枝に転移しました。

「みんな集まってるね? あの日からずっとここにいるわけ無いはずだけどなにをしてるのかな? ひとつの家族っぽいのをを取り囲んでるみたいだけど」

「あら、赤ちゃんがいるわ」

 大人の男女が二人ずつと赤ちゃんが抱っこされて舞台の上で取り囲まれています。

「囲まれているのは村長ですね。それから村長の奥さんと、息子夫婦ですから、あの子が産まれそうだった赤ちゃんみたいですね」

「ふ~ん。でもあの赤ちゃんって周りの大人より魔力が凄く多いよね? まあプシュケよりは全然少ないけれど。ねえテラはどう思う?」

んん神眼~。くふっ、あははははは♪ 追い出した家族と同じ運命をたどりそうよ」

 テラは耳たぶを掴んで身を乗り出しながら下を覗き見て笑っています。

どういう事?どういう事?

「あの赤ちゃんもエンシェントエルフよ。こんなに短い期間でエンシェントエルフが産まれるなんて······何か起ころうとしてるの?」

 おお。プシュケと同じエンシェントエルフちゃんなんだね。

「産まれたばかりなのに可哀想ね。周りの雰囲気に怯えているわよあの子」

 その様ですね。少し具合が悪そうな気がします。

「ライ。プシュケの家を収納して、気に食わないけどあの子の家族ごと連れて行きましょう。ついでにプシュケのご両親の居場所は探れる? まだ森からは出れてないと思うんだけど」

「ちょっと待ってね。家はあれだったよね、収納! そうだ、じゃあ連れてくなら村長の家は?」

「······そうですよね。赤ちゃんは可哀想ですよね······じゃあ家族はいた方が良いですから。よし、赤ちゃんのためだよね。ライ、家はあの一番大きな家です」

「ごめんね。色々気持ちは複雑だけど、赤ちゃんのためにここは我慢してあげて。収納!」

 悔しそうな顔をしたプシュケをなでなでしながら村長の家を収納し、次はプシュケのご両親を探します。

 下では村長の家がいきなり無くなったため騒ぎだしていますが、今はプシュケの両親が向かった方に魔力を広げ、気配を探します。

 すると沢山の魔物に取り囲まれた中にいて、今にも魔力が無くなりそうな二人を見付けました。

「あわわ! これはいけません! まとめて行きますよ! 転移!」

 パッ

 僕達と村長家族をまとめて、二人の元に転移しました。

「あわわ! 怪我してます! 血だらけですよ! 大丈夫ですか! 全開でいきます! 回復!」

「私を庇ったの! お願い助けてあげて!」

 アレスさんが奥さんのディオネさんを庇って腕に深い傷を負ったようです。

 それを治すため、取り囲む魔狼達からぐるぐる魔力を集め回復させていきます。

「魔狼がこんなに。ライ、大物がいるかもしれないわよ! んん~神眼! いた! ガルムね。フェンリルじゃなくて良かったわ。フェンリルなら神殺しをなした奴が遥か昔に居たそうだし」

「ガルムか。なら大丈夫です沢山やっつけたことありますからね。それよりアレスさん怪我は大丈夫ですか?」

「あ、ああありがとう。もう大丈夫だ」

「おい! ここはどこだ! なぜアレス達がいるのだ!」

 あ、そうでした。慌てていてサーバル男爵領に行く時に連れて行く予定が、今一緒に連れてきてしまったのでしたね。

「あ~、あのですね、少し待ってもらっても良いですよね? 先に魔狼達をやっつけちゃいますから。ウインドニードル!」

 取り囲む五十匹ほどの魔狼に向けてウインドニードルを浮かべます。

「いきますよ。ほいっと!」

 シュッ

 魔力切れ寸前の魔狼達には避けることもできず、その眉間を貫いていきます。

「それとガルムさんは~、数キロ先に集まっていますね。と言うよりガルムの方が多いですよ? 倍近く? まあぐるぐるでやっつけちゃいますから関係無いですが」

 取り囲んでいた魔狼を倒し収納。

 アレスさんの怪我も治りましたが少し血が出すぎたのでしょうね、まだ立ち上がる事はできなさそうです。

 魔力の方は魔狼にいただいたものがあったので補充はしておきましたが、体力的に無理ですね。

「おい、ガルムの群れと聞こえたが」

 村長が聞いてきた時にはもうガルム達は魔力がなくなり次々と気絶していってます。

「はい。ここにいた魔狼より沢山いますよ。よしよし全部気絶しましたね。じゃあ放っておくのもなんですから倒しちゃいましょう。転移!」

 パッ

 転移した先は崖があり、周りは木々も無く開けた場所でした。

「へえ。こんな場所もあるんだ。住みかにするには良さそうです。おっと見とれている場合ではないですね。よしやっつけちゃいますよ! ウインドニードル!」

 シュッ

 動く事もないガルムは抵抗などできないまま眉間にウインドニードルが刺さり、次の瞬間収納して消えていきます。

 数は沢山でしたが、すぐに最後の一匹を倒し収納しました。

「よしよし。討伐完了ですね♪」

「まさか······長年我が村を襲いに来て倒しきれなかったガルムの群れをこうも簡単に倒すなんて······」

「村を襲ってたのですかこのガルム達は。そうですね、距離的にはそこそこ遠い気もしますが、ガルムが走れば半日もかからないでしょうね、この距離だと」

「君は何者だ? 転移を時間を置くこと無く何度も使え、風魔法も尋常でない数を撃てる。それにどちらの魔法も詠唱すらせぬまま。少なくとも私達ハイエルフにもできない事だぞ」

 僕は旅に出るまで詠唱すらどんなものか知りませんでしたよ。

「あら。その昔、一番最後まで使えていたエルフの一族がそんな事も忘れてしまうほど時は流れた証拠ね。ライが使っているのは古代魔法よ」

 テラは前にチラッと教えてくれた事を村長さん達に教えてあげるようです。

「古代魔法? くだらん。古い言い伝えにある発現させるまで早くて数ヶ月、駄目な奴は数年発動しない時間がかかるだけの使えん魔法の事ではないか」

「くふふふ。そうね、時間はかかるわね。そのせいですたれちゃったのだけど。エンシェントエルフのあの子でさえ使えないままだしね」

「ぬ? エンシェントエルフ! そうだ孫とそこのプシュケもそのエンシェントエルフなのだ! ハイエルフが至高のエルフ族にとってそれ以外が、それも私の子孫で産まれるとは」

 村長さんは女の人が抱く赤ちゃんを悔しそうな、辛そうな顔で見ています。

「あははははは♪ ハイエルフの上よ。上位の存在よエンシェントエルフは。ハイエルフが王様だとすると、エンシェントエルフはそれをたばねる皇帝でしょうね♪」

「「何だと!え!」」

 皆同時に声をあげ驚いていますね。

「まあ。今はそれより村長さん達の事だけど村に残るの? 今の事を話したとして信じるとは思えないんだけど」

「ぐぬ。魔力の多さで信じる者は······少ないが······いや信じる者はいないか。はぁぁ、確かにその通りだ。転移の時にはすでに長老達の一声で村長を下ろされたからな。戻ってもこの子には穏やかに過ごさせてやる事はできんだろうな。そうか、プシュケ、それにアレス、ディオネ。すまなかった。私はプシュケの魔力の多さに嫉妬していたのかもしれないな」

 そうして三人の方を一人ずつ見てから深く頭を下げ謝りました。

「すまなかった」

「村長······」

「ライ、こんな感じで良いんじゃないの?」

「そうだね。じゃあ皆さん。今後住んでもらう場所に行こうと思いますので、そこではエルフ、ハイエルフ、エンシェントエルフに上下は付けずに平等でお願いしますね。良いですか?」

 村長家族にプシュケ家族。みんなが顔を見合わせた後、首を縦に振りなんとかなるようです。

 そして、サーバル男爵領に転移しました。

 そしてそこで待っていたものは······。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...