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第二章

第51話 お引っ越しのために転移の練習しましょう

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「あらっ。トロルはウインドニードルでは倒せないみたいですね。じゃあウインドアロー!」

 トロルは防御力が高いみたいでニードルでは少し刺さるだけで突き抜けません。

 なのでウインドアローに変えて撃ったのですが。

「あれ? これでも駄目みたいですね?」

 ウインドアローもニードルよりは刺さりましたがトロルの体を少し揺らすだけで終わりました。

「ライ。トロルは風属性の耐性を持っているのよ。風属性以外なら何でも効くはずよ」

「そうなんだ。じゃあウォーターニードル!」

 プシュン

 ズズン

「おお! 簡単に突き抜けましたよ! ありがとうテラ」

「任せなさい! ほらほら倒しながら収納していきなさい。ムルムルは辺りの血を綺麗にしてきてね」

 ぷるぷる

「ちょっと待って! 先に転移の練習しなきゃ駄目だから。とりあえず倒したのは収納!」

「そうだったわね。二回くらいやってみて良ければそれで練習は完了ね」

「本当にこんなに沢山できるのでしょうか?」

「ぬふふふ。やってやるのですよ。じゃあまずはぐるぐる~、一回目~、ほいっと!」

 パッ

 見つけてあった場所に少し全体を集めるイメージで転移。

 一度目は成功です。

「うんうん。特に問題は無さそうですね♪ 重ならないようにもちろんできていますし」

「へぇ。やるじゃない。じゃあ二回目ね」

「いっくよー! 転移!」

 パッ

「と~うちゃ~く! 成功です♪」

「うんうん。見事だわライ」

「ライすっごいですよ! 完璧ですね♪」

 ぷるぷる

「ありがとう♪ じゃあ倒していくね~、ほいっと!」

「そうしましょう。ムルムル、あなたの力を見せ付けてあげなさい!」

 僕がウインドニードルを大量に作り飛ばして倒していくと、ムルムルはテラを肩に残して僕達の足元にみにょ~んと降りてどんどん広がって行きます。

 広がった状態でゴブリン達に覆い被さり吸収しながら周りをぐるぐる渦巻き状に移動してどんどん吸収していってるようです。

 僕も負けていられませんね。ムルムルに当たらないように全ての魔物を倒し収納してから気づいたのですが······あれ? 収納の限界が見えてきませんね?

「ねえテラ。僕の収納って後どれくらい余裕があるか分かったりしない?」

「ん? そうね······今収納した分だけでも相当容量を使ってるはずだしね。良いわ見てあげる。んん~神眼! へっ? 嘘っ!」

「どうしたの? もしかして満タンになっちゃった?」

 テラは僕の顔をまじまじと見つめてきます。

 見つめ返してあげましょう♪

 うんうん。テラって本当に可愛いよね。寝る時に着てくれる腹巻きに髪の毛が入っているのも可愛いし、朝起きてすぐは髪の毛に腹巻きで付いた寝癖ができていたりしますし。くふふ。

「無限収納よ······」

「無限収納? ······無限収納! 異世界スキルの定番無限収納ですか! ひゃっほ~い♪」

きゃあ!なんと!

「あ、ごめんごめん」

 僕が飛び上がった拍子に落ちそうになったテラを優しく支え、驚いて頭にしがみついたプシュケの頭を手を伸ばしてなでなでしながら謝りました。

「ビックリするじゃない! 私が肩にいる事を忘れないでよね!」

「もうライったら私も背負子に乗っているのを忘れないで下さい!」

「あはは。本当にごめんね。ところでテラ、無限収納って本当に?」

「ええ。王都にいた時はまだ普通の収納だったわ。でも今はスキル名が無限収納よ。スキルのランクアップは本来中々できる事ではないわ。だからライ、おめでとう♪」

「ほへぇ! よく分かりませんがおめでとう♪」

「ありがとう二人とも♪ じゃあ一度収納の中をからにして町を収納するつもりでしたがそのまま収納しちゃえますね!」

え?え!

 二人ともこいつなに言ってんだ? って顔で、テラは耳たぶを掴んだまま。プシュケは後ろから態々わざわざ僕の顔を覗き込みながらです。

「ライ。あなたそんな事考えていたの? 私は転移でごっそり移動させるんだと思っていたわ」

「私もです」

「だって、個別に収納しておけばサーバル男爵領に行った時に家を置く時色々調整できるでしょ?」

 僕の言葉を聴いて二人は、え? って顔で見てきます。

「もしかしたら今のままでは置けなくて、最悪壊れちゃうかも知れないじゃないですか」

「ライ。あなたそれ一人でやるつもり? 全て三人家族としても千もの家を一つひとつ現場を見ながら調整するの?」

「うん。二日くらいでできるかなって思ってるよ? ダメ? 地均じならしは得意だよ? 土いじりで沢山やったし······」

「······それもそうね。全く同じ地形なはずはないものね」

「はい。言われて初めて気付きましたがその通りですね······」

「でしょ~。だから初めは王都で王様に魔物を買って貰うつもりでしたが手間がはぶけましたね♪」

 その後もまだまだ沢山倒さなくてはいけなかったので思ったより時間はかかりましたが全てを倒し終わり、ムルムルのお掃除が終わるまで待って町に戻りました。

 町に戻るとぞろぞろと畑から苗や収穫した作物を荷台に乗せたエルフさん達がどんどん門をくぐり入っていきますし、空の荷台を引きまだ外に向かう人達もいました。

 町に入ると皆さんここに来た時より笑顔が多く雰囲気も活気があるように思います。

 屋台で美味しそうな串焼きがあり買おうとしたのですが。

「ごめんね。ここでそのお金は使えないのよ。物々交換になっちゃうの」

「あっ、そうなのですね······じゃあオークで良いですか?」

「うんうん♪ それなら大丈夫ね。どれくらいの大きさあるかな? 五十センチ」

 ドスン

 お話の途中でしたが、先にオークを出しておきましょう。

 あれ? お話が止まりましたね?

 見ると串焼き屋台のお姉さんはオークを見ながら呆けていました。

「あの、これでは駄目ですか?」

「い、いえいえ駄目なんてものじゃありません······オーク皮が出てくると思っていたのですが、丸々一匹出てくるなんて······」

 丸々一匹を出した事で驚かせてしまったようです。

「どうしましょう。こんなに沢山引き取っても」

「では串焼き四本いただければ良いので魔狼の毛皮でも良いですか?」

「うふふ。ごめんなさいね。魔狼なら全然大丈夫よ」

 交換で沢山の串焼きと交換して町長さんの家に戻り、いつでも引っ越しできる事を伝えました。

「ほんとうですか! でしたらこうしてはいられません! すぐに皆に知らせなければ! 失礼します!」

 僕達の話を聞聞き、そう言って夕ごはんも途中なのに席を立ち部屋から走り出て行きました。

「あはは······これは明日からとかあり得ますね」

「町長さんのあの慌てよう。フォークを持ったまま行っちゃいましたよ。うふふ」

「じゃあ私達は早く食べて明日に備えて寝ないといけないわね」

 そうして僕達は夕ごはんもそこそこで出ていった町長を見送った後夕ごはんを食べ終え、少し早いですが寝ることにしました。


「ん? なんだか騒がしいですね?」

「ライ。たぶん待ちきれなくて集まりだしてるんじゃない?」

 まだ寝てからそれほど経っていないと思うのですが、外の方からざわざわとした気配を感じとる事ができ目が覚めました。

「うん。範囲を広げてみたけど特に変わった気配は無いように思うけど······」

「一応私が見て見るわ。んん神眼~。ん? ライ。この方向歩いて二日か三日くらいのところにハイエルフがいるわね。ん~と六人ね」

 テラが指差す方向にぐるぐると魔力を広げていくと······いますね。

「移動はしていないようですから夜営でしょうかね? 六人だとプシュケの父さん母さんではないでしょうがきぜつさせちゃおうか?」

「そうね。朝起きた時にしましょう。夜はどうせ動かないでしょ放っといて寝て朝気絶させれば良いわよ」

「そだね。じゃあ寝直しましょう。おやすみテラ」

「おやすみライ」

 そして隣のプシュケのシーツをかけ直して、もう一度寝ることにしました。


 翌朝。

「あふぁぁ。あっそうだ。夜のハイエルフは~え?もうそこまで来てるじゃん!」



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