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第一章
第33話 さてさて東に向かいましょう
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なぜ、こんな事になっているのかと言うと、盗賊ギルド、暗殺ギルドの者達は、僕達が商人の屋敷に乗り込んだ時には既に、二段構えで仲間の奪還を計画していたようで、ギルドマスターの屋敷とスラムが落ちた時は、一段目、睡眠薬の作戦。
二段目は、真夜中の処刑場襲撃で奪還を企てたとの事です。
計画をしていたのは、モイスチャー、違いますね。······モイヒェ、ヒェ······。伯爵夫妻がテイマーの部下を使い近隣の街に飛ばしていたそうです。
逃げれば良かったのにとも思いましたが、まさか、地下、あそこが見付かり、特別製魔法の鍵が開けられるとは思ってもいなかったそうです。
万が一、踏み込む事が出来ても、伯爵がいた一番奥部屋からは隠し扉があり、貴族街の自身の屋敷に戻れる通路もあったので、大丈夫と思っていたとの事です。
考え事をしている最中もぐるぐるを続け、舞台にギリギリまで駆け寄った者が倒れ、後続も次々と倒れていきます。
そろそろ半分くらいになったところで、後続の者が気付き出しました。
「気付かれました! 一気に行きますのでお願いします!」
「「おお!」」
今度は声を殺さず、お腹の底から出した声は、たぶん外にも聞こえたでしょう。
ギギギギ
きしむ音が鳴り響き、大門が開かれていきます。
「一番隊から三番隊まで進め!」
「「おお!」」
開き出したところから、列を崩さず走り出ていきます。
「四番隊から五番隊左翼! 六番隊から七番隊右翼! 進め!」
「「おお!」」
「「おお!」」
「八番隊から十番隊、衛兵達は、王都内を警戒!」
「「おお!」」
「「おお!」」
次々と、王都の外に展開されて行く騎士さん達。
王都内からの動きを警戒する騎士さん達と衛兵さん達。
僕は外の奴達が終わり、今度は内向きに王都に向けて、偽装の魔道具を探し当て、魔力を崩し用をなさないようにしていきます。
「五十個ほど偽装の魔道具がありました! 続けてやっちゃいますよ! ほいっと!」
門前にしか光の魔道具が無い大通りに蹄の音が鳴り響き、地鳴りを伴い近付いてきました。
そして先頭が見えた頃には、馬さんに騎乗していた者も気絶し落馬、自身で走り込んできた者もその場で崩れ落ち、屋根づたいに近付いていた者は路地を飛び越える事も出来ず落下、運が良いものは屋上部分で崩れ落ちていますので、よしよしですよね。
あっ! 屋上の人達は場所を教えないと駄目ですね······あはは。
「屋上部分に倒れている人がいますので、その人達の捕縛も頼めますか? それとも僕が行きましょうか?」
「いえ、ライリール様、場所を言っていただければ私共が捕縛して参ります」
「では、いる場所に光の玉、ライトボールを浮かべますね、ほいっと!」
ぬふふふ♪ 夜と昼間は布団に潜って練習した光の玉のデビューですよ!
シュー! といくつもの光の玉が数か所に飛んでいき、倒れた者の上で静止させておきます。
「あの光の玉の下にいますのでお願いしますね」
「分かりました。衛兵! 屋上に浮かぶ光の玉の下に倒れている者を捕縛せよ!」
「「はっ!」」
衛兵さん達は用意してあった梯子を持ち、屋根の上に浮かぶ光の玉に向かい次々と捕縛して行きます。
「後は······」
僕は出来るだけ範囲を広げ気配を探っていきます。
「······よしよし、これで終わりのようです」
「本当ですか! あははは♪ 素晴らしい事です。誰も犠牲にならず、向かってきた者を全て捕縛。ライリール様ありがとうございます」
「いえいえ♪ 僕は僕の出来る事をしただけですから。皆さんがいなければ僕一人では出来ませんでしたから♪」
そう言って、横の木箱の上にいるムルムルと爆睡中のテラを持ち上げテラが落ちないように気を付けないとですね。
「では、僕はここでテントを張って夜営しておきますから、何かあれば起こしてくださいね」
「はい。何かあれば······無いようにします。くふふ」
テラ、笑われちゃいましたよ。
「あはは。おやすみなさい」
テントを取り出し素早く張り、ごそごそと潜り込む頃には、眠気も出てきて布団を出して、潜り込んだ途端に寝てしまいました。
ガヤガヤと辺りが喧しくなり目が覚めました。
「あふあぁぁ。ん? 集まってきたのかな?」
胸の上のテラとムルムルをそ~っと持ち上げ体を起こします。
お布団を収納して、テントから出ると、街壁の下から沢山のざわめきが聞こえてきました。
テントを収納して、下を覗くと······いったいどれだけの人が集まってるの! って言いたいくらい、それこそ舞台以外の地面を埋め尽くすほどの人が集まり、その人々の間を豪奢な馬車と騎馬に乗った騎士さん達が、舞台に進んでゆくところでした。
馬車が、舞台の前で止まり、騎士さん達に警護されながら舞台に上がる王様。
そして、舞台上にもう一つ用意されていた、台の上に上ると、それまでのざわめきが止まり、静寂が訪れました。
「よく集まってくれた!」
それは、大声を張り上げていないのに、ボリュームを上げたような感じで百メートルは離れている街壁の上の僕にまで、王様の声が普通に聞こえてきました。
「今日は、この王都に蔓延っていた盗賊ギルド、暗殺ギルドの主要メンバーのギルドマスター並びにサブマスターの処刑と、私が理事をしている学院の人攫い事件の首謀者の処刑を行う!」
王様がそう言い終わった後、ざわめきが再開し、うねる波のように広がり辺りを包みます。
さてさて、見ていけって言われましたが、僕の出番は終わったようですし、こそっと東門に移動して旅立ちましょう♪
「ライ······あなた悪巧みは出来ないわね。はぁぁ、良いことよね? ムルムルもそう思うよね?」
ぷるぷる
「ライ、出発するんでしょ?」
「うん♪ だって僕の出番は終わったし、早く次のテンプレ、もとい、冒険! 海だよ♪ まだまだ朝だし今なら東行きの馬車を捕まえられるだろうしね」
「くふふふ、王様に見ていけって言われても見ていかないなんて、良いわ! 行きましょう!」
ぷるぷる
僕は街壁の上を見張りの兵士さんの後ろを通り抜け、東に向かいます。
東門のところで、階段を使い下に。
大門前に集まる中で、東の森手前まで行く馬車を見付けました。
「なんだ坊主、辺境伯領に行くのか? なら乗っていきな銀貨二枚だ」
「はい♪ 道中よろしくお願いします♪」
出門の順番を待ち、とろとろ進む馬車の上で僕は、どんなテンプレが待っているのかドキドキワクワクしながら、馬車は王都を出発して行きました。
小高い丘を登る馬車から眼下に処刑場が見えて······。
「あっ!」
「どうしたのライ?」
「呪いをクションにお返しするの忘れてました♪ 今からでも良いですよね♪」
僕は呪いを固めた漆黒の大玉を風で中に浮かべ、気配を探りクションを見付けました。
「ぬふふふ♪ 見付けましたよ~♪」
「この距離で一人の気配を見付けられるの!?」
「いっけー!」
漆黒の大玉は、風により加速しながら一直線に処刑場に飛んで行きます。
一緒に乗っていたお客さん達は驚きの顔をして、声も出ません。
そして舞台の上空で止まると、大玉のそこが抜けたように舞台に吸い込まれるように見えなくなりました。
「な! なんだこれは! 王様を守れ!」
「底が崩れだしたぞ! 離れるんだ!」
「おい! 私を一緒に逃がしてくれ! 呪いだ! 呪いが私の元に来てしまうではないか!」
「クション! 避けるのよ!」
「おい! 誰か息子を!」
「い、いやだ、いやだ! く、来るなぁぁぁぁー!」
「いやー!」
「クション!」
「うががが、ぎもぢわるい、いだい、ぐるじい、だってられないぃぃ」
「呪いだと! 皆! もっと離れよ! クションだけで内封出来るか分からんぞ!」
「あがががが」
ドサッ
「よしよし♪ ちゃんと称号に呪いって出たね♪」
「あははは······この距離で鑑定も出来ちゃうのね。んん~、ライ、隣にいたクションの両親にも呪いが掛かってるわよ。くふふふ、一人では許容範囲を超えちゃったようね」
「そうなんだ、うんうんなら後は王様達に任せておけば良いよね♪」
「あははは♪ そうね♪」
ぷるぷる
馬車は坂を登りきり、舞台も見えなくなった頃、驚いて放心していた他のお客さんにちょびっと怒られましたが、まっすぐ続く街道を、馬車は順調に進みました。
~第一章 完~
~第二章へ続く~
二段目は、真夜中の処刑場襲撃で奪還を企てたとの事です。
計画をしていたのは、モイスチャー、違いますね。······モイヒェ、ヒェ······。伯爵夫妻がテイマーの部下を使い近隣の街に飛ばしていたそうです。
逃げれば良かったのにとも思いましたが、まさか、地下、あそこが見付かり、特別製魔法の鍵が開けられるとは思ってもいなかったそうです。
万が一、踏み込む事が出来ても、伯爵がいた一番奥部屋からは隠し扉があり、貴族街の自身の屋敷に戻れる通路もあったので、大丈夫と思っていたとの事です。
考え事をしている最中もぐるぐるを続け、舞台にギリギリまで駆け寄った者が倒れ、後続も次々と倒れていきます。
そろそろ半分くらいになったところで、後続の者が気付き出しました。
「気付かれました! 一気に行きますのでお願いします!」
「「おお!」」
今度は声を殺さず、お腹の底から出した声は、たぶん外にも聞こえたでしょう。
ギギギギ
きしむ音が鳴り響き、大門が開かれていきます。
「一番隊から三番隊まで進め!」
「「おお!」」
開き出したところから、列を崩さず走り出ていきます。
「四番隊から五番隊左翼! 六番隊から七番隊右翼! 進め!」
「「おお!」」
「「おお!」」
「八番隊から十番隊、衛兵達は、王都内を警戒!」
「「おお!」」
「「おお!」」
次々と、王都の外に展開されて行く騎士さん達。
王都内からの動きを警戒する騎士さん達と衛兵さん達。
僕は外の奴達が終わり、今度は内向きに王都に向けて、偽装の魔道具を探し当て、魔力を崩し用をなさないようにしていきます。
「五十個ほど偽装の魔道具がありました! 続けてやっちゃいますよ! ほいっと!」
門前にしか光の魔道具が無い大通りに蹄の音が鳴り響き、地鳴りを伴い近付いてきました。
そして先頭が見えた頃には、馬さんに騎乗していた者も気絶し落馬、自身で走り込んできた者もその場で崩れ落ち、屋根づたいに近付いていた者は路地を飛び越える事も出来ず落下、運が良いものは屋上部分で崩れ落ちていますので、よしよしですよね。
あっ! 屋上の人達は場所を教えないと駄目ですね······あはは。
「屋上部分に倒れている人がいますので、その人達の捕縛も頼めますか? それとも僕が行きましょうか?」
「いえ、ライリール様、場所を言っていただければ私共が捕縛して参ります」
「では、いる場所に光の玉、ライトボールを浮かべますね、ほいっと!」
ぬふふふ♪ 夜と昼間は布団に潜って練習した光の玉のデビューですよ!
シュー! といくつもの光の玉が数か所に飛んでいき、倒れた者の上で静止させておきます。
「あの光の玉の下にいますのでお願いしますね」
「分かりました。衛兵! 屋上に浮かぶ光の玉の下に倒れている者を捕縛せよ!」
「「はっ!」」
衛兵さん達は用意してあった梯子を持ち、屋根の上に浮かぶ光の玉に向かい次々と捕縛して行きます。
「後は······」
僕は出来るだけ範囲を広げ気配を探っていきます。
「······よしよし、これで終わりのようです」
「本当ですか! あははは♪ 素晴らしい事です。誰も犠牲にならず、向かってきた者を全て捕縛。ライリール様ありがとうございます」
「いえいえ♪ 僕は僕の出来る事をしただけですから。皆さんがいなければ僕一人では出来ませんでしたから♪」
そう言って、横の木箱の上にいるムルムルと爆睡中のテラを持ち上げテラが落ちないように気を付けないとですね。
「では、僕はここでテントを張って夜営しておきますから、何かあれば起こしてくださいね」
「はい。何かあれば······無いようにします。くふふ」
テラ、笑われちゃいましたよ。
「あはは。おやすみなさい」
テントを取り出し素早く張り、ごそごそと潜り込む頃には、眠気も出てきて布団を出して、潜り込んだ途端に寝てしまいました。
ガヤガヤと辺りが喧しくなり目が覚めました。
「あふあぁぁ。ん? 集まってきたのかな?」
胸の上のテラとムルムルをそ~っと持ち上げ体を起こします。
お布団を収納して、テントから出ると、街壁の下から沢山のざわめきが聞こえてきました。
テントを収納して、下を覗くと······いったいどれだけの人が集まってるの! って言いたいくらい、それこそ舞台以外の地面を埋め尽くすほどの人が集まり、その人々の間を豪奢な馬車と騎馬に乗った騎士さん達が、舞台に進んでゆくところでした。
馬車が、舞台の前で止まり、騎士さん達に警護されながら舞台に上がる王様。
そして、舞台上にもう一つ用意されていた、台の上に上ると、それまでのざわめきが止まり、静寂が訪れました。
「よく集まってくれた!」
それは、大声を張り上げていないのに、ボリュームを上げたような感じで百メートルは離れている街壁の上の僕にまで、王様の声が普通に聞こえてきました。
「今日は、この王都に蔓延っていた盗賊ギルド、暗殺ギルドの主要メンバーのギルドマスター並びにサブマスターの処刑と、私が理事をしている学院の人攫い事件の首謀者の処刑を行う!」
王様がそう言い終わった後、ざわめきが再開し、うねる波のように広がり辺りを包みます。
さてさて、見ていけって言われましたが、僕の出番は終わったようですし、こそっと東門に移動して旅立ちましょう♪
「ライ······あなた悪巧みは出来ないわね。はぁぁ、良いことよね? ムルムルもそう思うよね?」
ぷるぷる
「ライ、出発するんでしょ?」
「うん♪ だって僕の出番は終わったし、早く次のテンプレ、もとい、冒険! 海だよ♪ まだまだ朝だし今なら東行きの馬車を捕まえられるだろうしね」
「くふふふ、王様に見ていけって言われても見ていかないなんて、良いわ! 行きましょう!」
ぷるぷる
僕は街壁の上を見張りの兵士さんの後ろを通り抜け、東に向かいます。
東門のところで、階段を使い下に。
大門前に集まる中で、東の森手前まで行く馬車を見付けました。
「なんだ坊主、辺境伯領に行くのか? なら乗っていきな銀貨二枚だ」
「はい♪ 道中よろしくお願いします♪」
出門の順番を待ち、とろとろ進む馬車の上で僕は、どんなテンプレが待っているのかドキドキワクワクしながら、馬車は王都を出発して行きました。
小高い丘を登る馬車から眼下に処刑場が見えて······。
「あっ!」
「どうしたのライ?」
「呪いをクションにお返しするの忘れてました♪ 今からでも良いですよね♪」
僕は呪いを固めた漆黒の大玉を風で中に浮かべ、気配を探りクションを見付けました。
「ぬふふふ♪ 見付けましたよ~♪」
「この距離で一人の気配を見付けられるの!?」
「いっけー!」
漆黒の大玉は、風により加速しながら一直線に処刑場に飛んで行きます。
一緒に乗っていたお客さん達は驚きの顔をして、声も出ません。
そして舞台の上空で止まると、大玉のそこが抜けたように舞台に吸い込まれるように見えなくなりました。
「な! なんだこれは! 王様を守れ!」
「底が崩れだしたぞ! 離れるんだ!」
「おい! 私を一緒に逃がしてくれ! 呪いだ! 呪いが私の元に来てしまうではないか!」
「クション! 避けるのよ!」
「おい! 誰か息子を!」
「い、いやだ、いやだ! く、来るなぁぁぁぁー!」
「いやー!」
「クション!」
「うががが、ぎもぢわるい、いだい、ぐるじい、だってられないぃぃ」
「呪いだと! 皆! もっと離れよ! クションだけで内封出来るか分からんぞ!」
「あがががが」
ドサッ
「よしよし♪ ちゃんと称号に呪いって出たね♪」
「あははは······この距離で鑑定も出来ちゃうのね。んん~、ライ、隣にいたクションの両親にも呪いが掛かってるわよ。くふふふ、一人では許容範囲を超えちゃったようね」
「そうなんだ、うんうんなら後は王様達に任せておけば良いよね♪」
「あははは♪ そうね♪」
ぷるぷる
馬車は坂を登りきり、舞台も見えなくなった頃、驚いて放心していた他のお客さんにちょびっと怒られましたが、まっすぐ続く街道を、馬車は順調に進みました。
~第一章 完~
~第二章へ続く~
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