【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

いな@

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第一章

第32話 捕縛完了

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「ライリール様! 申し訳ありません!」

 駆け付けた隊長さんは物凄い勢いで、跪き、頭を下げます。

「え? え? た、隊長さんどうしたのですか! 頭をあげて下さい! 立ち上がって下さい!」

 隊長さんは何度目かのお願いで立ち上がってくれました。

「えっと、どうしたのですか?」

「実は······」

 隊長さんの話だと、地下から運び出した盗賊、暗殺ギルドの者達を表の馬車に詰め込み、両ギルド、この国でのグランドマスター(モイヒェルメルダー伯爵夫妻)と、人数が多いため、オリに入れていた商人の屋敷にいたギルドマスター二人とサブマスター三人を特別車両、頑丈で、外から見えない様になっている僕が乗って寝ていた馬車に乗せ変えたそうです。

 僕はツノガエルで作った全天候対応の黒いローブを布団のかわりに被っていたので気付かれなかったようです(物凄く暖かい)。

 全ての者を馬車に乗せた後、資料などを集めている間に、両ギルド員と思われる者達が表の見張りを眠り薬で眠らせ、馬車を捕まえた全てのギルド員ごと奪われたと言うことです。

 人攫いの奴達と同じような手口ですね。

 でも、殺しではなく、眠らせるだけで済ませたのは、無駄な時間を省くためだと思われるそうですが、数名が馬車に寝ているところを引かれ、それでも骨折ですんだそうですが、······悲痛な表情でなげいている事がありありとうかがえます。

「じゃあ、怪我した方もいらっしゃいますが、あの場、商人街とスラム以外にいた者達も捕まえられたのですから良かったですよね?」

「はい、それは良かったのですが、ライリール様は眠り薬を吸い込まなかったのですか?」

 ん?

「いえ、吸い込んだでしょうね。でも睡眠薬は僕には効かなかっただけですよ。前に人攫いにあった時も······あれ? 僕って、人攫いに二回も攫われたのですね······あ、あは、あははは······」

 騎士さんは哀れむような顔をしましたがその後、グランドマスター達を別の馬車に乗せかえると言ったのですが、僕が出ておきますよ。

 そして門番さんの詰所にお邪魔して、僕はまだまだ日が昇らない時間でしたので寝させて貰うことにしました。

 そう言えば、ぐるぐるで気配を感知してませんでしたしね······いっぱい騎士さんがいましたから······。



 僕が次に目が覚めたのは、お城のベッドの上でした。

 誰かが運んで下さったのですね、あはは。······また、全然気付きませんでしたねそれにムルムルとテラも······僕の胸の上にいます。

 そ~っと持ち上げ起き上がると部屋の全貌が良く見えます。隣にもベッドがある二人部屋のようですが誰もいません。

 窓の外はまだ低い位置のようで、部屋の中に日の光が沢山射し込んでいます。

「ライ、このドタバタも終わりそうだし、今後の事なんだけど」

 テラが起きたようです。まだムルムルの上で上半身を起こして、ハンカチの布団はまだ半分くらいまで掛かったままです。

 ムルムルも起きたのか、魔石を回し始めました。くふふ。

 そうだ、今度テラ用の腹巻きを作りましょう♪ トレント柄が良いかな? おっと、今後の事だね。

「うん、海に行ってみたいかな。東の森を抜けるのが一番近いかなって思ってるけど、テラはどこか行きたい場所あるの?」

 テラはなぜか驚いたような顔をしています。

「ぷっ! あははははは♪ 良いわよ♪ 魔物だらけの森を抜けて海が見たいからって! あははははは♪」

 魔石を回すムルムルの上でお腹を抱えて、じたばたしながら笑うテラ······良いじゃん!

「あひぃ~、あ~、笑わせて貰ったわ♪ 行きましょう♪ 私もちょっとあの森に行きたかったから」

「うん♪ テラが付いてきてくれるかちょっと心配だったんだ、何か用事があるなら手伝うからね♪ ムルムルも一緒に来てくれる?」

「あったり前じゃない♪ ムルムルは私の騎獣なんだもの!」

 ぷるぷる

 うんうん、ムルムルも来てくれるみたいです。

「くふふっ♪ 楽しみだね、よし! お腹空いたけど、ムルムル、何食べる?」

 ぷるぷる

「ふんふん、オークが良いそうよ」

 ぷっぷるぷる

「ゴブリン?」

 ぷるぷる

「なっ! 何よ! ムルムルはゴブリンが良いの! オークで良いじゃない!」

 ······ぷるぷる

「あはは、オークとゴブリン二匹食べれるよね? ほいっと!」

 ズズン

 僕はオークとゴブリンを床が汚れないように、ツノガエルで作ったシートを床に敷き、二匹を出して、ムルムルを上に乗せてあげました。

「ムルムル、下のツノガエルシートは食べないでね♪」

 ぷるぷる

 いつも通り、みにょ~んと伸び広がって、二匹を包み込み、あっという間に消えてしまいました。

「うんうん、ムルムルって凄いよね。自分の何倍もある物をあっという間に食べれて、大きさは変わらないんだもの、ムルムルが、収納を持っているって言われても、疑わずに納得しちゃうよ」

「そうね、そこがスライムの不思議なところでもあるわ。その辺にいるスライムより知能は高そうだから良いわね♪ 本当に古代魔法が使えるスライムになれるかも知れないわ! 頑張るのよムルムル!」

 ぷるぷる

 ムルムルの朝ごはんが終わってすぐにメイドさんがやって来て、僕も朝ごはんがいただけるようです。

 食堂は、昨日夕食会があった場所で、美味しくいただきました。

「ライ、父さん達は公爵領に寄ってから領地に帰るが、お前はどうするんだ?」

 この場には、王様、ティパパ、フィーアパパ、カリーアお義母さん、父さん母さん、シー兄さん、アース兄さん、マリグノさん、ラクシュミーさん、そしてティとフィーアが揃い、テーブルの花を頭に抜き差ししているテラの事は見ないようにして、僕の返答を待っています。

 僕は今朝、決まったことを言うだけです。

「僕は、東に行きます。そして東の森を抜けて海を見に行こうと思っています」

 それを聞いたみんなは、少し呆れたような顔をしました。

 良いじゃん! 海だよ! 青くて、しょっぱいらしいんだよ!

「そうなのですね、私も付いて行きたいのですが、学院に行かねばならないので······」

「そんなに寂しそうな顔をしないでね。ちゃんと帰ってきますから」

 ティは笑顔になり頷いてくれました。

「あはは、やっぱりね。ライは昔から色んな所に行きたがってたもんね~」

「何でも経験してみたいからね」

 あきれ顔のフィーア。

「そうか、魔物には、いや、魔物気を付けるんだぞライ」

「あはは、そうですね父さん、この短期間で二回も人攫いに合いましたからね」

「ふははは♪ そのお陰でシャクティは救われたのだからな。だが昨晩も二度目の人攫いの後にも騎士達に部屋に運ばれても気付かないと、心配しておったぞ」

「ちょっ! お義父さん、そ、それちょっとは気にしているのですから! でもティと出逢えたのは僕の中でも凄く良かった事です♪」

「ふふふ。ではライよ、すぐに旅立つのか?」

「はい♪ 王様」

「ならば、ライが捕まえた奴らの刑執行を見て行くが良い。その場でお主の事も発表する事に」

「ええ~、見ていくのは良いですけど~」

 王様に被せるように声が出てしまいました。

「なんだ? 王子とその学友を救い、王都の盗賊ギルドと暗殺ギルドを壊滅させたのだぞ。それもモイヒェルメルダー伯爵が絡んでいようとはな······ここだけの話だが、奴は偽金に絡んでいた」

「おお! ではそちらも解決の糸口を掴んだのですね! でも、気ままな旅がしたいのです。だから有名になっちゃうと動き辛くなりそうで」

 またみんなが呆れたような顔を······。

 だって前世で読んでいた小説にも書いてあったような気がしますし!

「ふむ。それは一理あるな。······分かった今はこの胸にしまっておこう。叙爵で文句を言うであろう貴族を黙らせるためにな、ふははは♪」

 そして、王都の盗賊ギルド、暗殺ギルドのギルドマスター及び、サブマスター。

 そして王子になりすましていた、クションの処刑が、明日、王都の街壁の外に作られた大罪人を公開処刑する場で、執り行われる事になりました。

 もちろんグランドマスターも処刑となるのですが、貴族のため秘密裏に全ての情報を吐かせ、精査した後に処刑をやるらしいです。

 フィーア達が公爵領に帰り、ちゃんと元気に行ってきますと挨拶もしましたよ。

 ティや兄さん達にも挨拶をして来ました。

 そして処刑が決まった今日の夜、処刑者が既に処刑場の舞台に繋がれ、篝火に照らされています。

 そして近隣の街から集まる者達を、お昼寝をして僕は街壁の上から気配を探っていました。

 相当広く範囲を広げたまま、探ると集まりが百人は超え、二百人近くになりました。

 薄いお月さまは夜を照らすには薄すぎて、時間もお月さまが中天ちゅうてんを既に越えています。

 そろそろお昼寝したのに、目がしばしばしてきて、まだ全部集まらないのかなあと思っていると、動き出しました。

「動き出しましたよ! まだ後続も来ているようですので、引き付けるだけ引き付けてからやっちゃいますので、騎士の皆さんはロープと荷台の用意をお願いします!」

「「はっ!はっ!」」

 小さく鋭く返事をしてくれた騎士さん、衛兵さん達。

 僕の立っている真下の大門前に待機して、大通りに音も立てないようにして静かに待機しています。

 後、五十メートルほどのところまで近付いてきた者達は、篝火にはまだ照らされておらず、普通の人にはまだ確認は出来てません。

「後、五十メートルです! 後続も、そろそろ打ち止めですから、先頭の人が篝火に照らされたところで気絶させて行きます!」

 そしてその時が訪れました。
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