【完結】無自覚最強の僕は異世界でテンプレに憧れる

いな@

文字の大きさ
30 / 241
第一章

第30話 王子様

しおりを挟む
「マリグノ! 王を殺せ! 命令だ!」

 マリグノさんを指差し命令しましたが。

「なぜ動かない? 俺の魅了が······」

「ねえ、クションさん、もう捕まえちゃうね♪ ほいっと!」

 マリグノさんを指差したまま固まってしまいましたので、魔力を一気にぐるぐるさせ、魔力欠乏に。

 ボキッ

 腕を伸ばしたまま、前に倒れたので床に腕をつき、指差していた腕から骨でも折れたのか、嫌な音が鳴り響き、ズズンとクションは気絶し倒れてしまいました。

「うわっ、大丈夫かな? えっと、王様、終わりましたが捕縛もしてしまいますか?」

「ぬう、しかし、我が息子とはいえ、何とだらしない体を、見るかげもないではない別人と見紛みまごうほどだ。今までの姿は全て偽りだったと言うことか······ライよ、すまぬが縛り上げ地下牢に幽閉だな。それと地下にいる四人の確認を頼めるか?」

「はい、地下の四人の方も一応この目で確かめてきますね。騎士さんお手伝いお願いします」

 僕が縛り上げている間に、騎士さんは応援を呼ぶのと台車を手配し、四人がかりで台車に引っ張り上げ、地下に向かいます。

 しかし階段ではさらに応援を呼び、八人で何とかくだりきり、地下牢へ。

 王族が悪さをした時に幽閉する場所があり、そこにひとまず投獄しておくそうです。

 そして、じめじめとした地下通路を進み、気配のある部屋に着きました。

 扉の食事を入れる小窓から中を覗くと、物凄く臭い匂いがして、鼻を摘まみながら目をこらすと若い男性が四人、裸の状態で、足は鎖に繋がれていました。

 ネックレスはしていないようですね。

 ん? 幻惑偽装していたクションを小さくしてガリガリさんにしたような人がいますよ?

「ねえ、テラ、あの人ってもしかして······」

「何よ、あんまり近づきたくないのだけど、んん~神眼! あちゃぁ~、王子様じゃない、騎士さん、中に本物の王子様がいるみたいよ」

 僕の首の後ろに避難していたテラがしぶしぶ肩に戻ってきて覗きながらそんな事を言いました。

 あはは、マジですか。

「何! すぐに開けるぞ! 鍵はどれだ! チィ!」

 騎士さんは沢山の鍵束から一本ずつ確かめています。

「ねえテラ、じゃあアイツは何者なの?」

「それは気になるわね······うん、アイツのところに連れていってくれる?」

 テラがそう言うので、少し通路を戻りさっきアイツを放り込んだ所まで戻ります

「えっと、ここも食事を入れるところしか無いんだね」

 少し腰をかがめ、テラも一緒に中を覗けるように。

んん~神眼! あはは、コイツの名前はクションだって、ライ、正解していたわね。はぁぁ、確かに魅了の魔法が使える様だけど、盗賊ギルドと暗殺ギルド、王都のギルドマスターの息子よ」

「あはは、それは······煽るためにわざと間違えていたのに名前あってたじゃん······それに、盗賊と暗殺ですか、その様な夫婦から産まれたのなら悪い事もやっちゃうのですね。王子様と入れ替わりなんてね、あはは」



 数分後、鍵がやっと見つかり扉を開けることが出来たのですが、あまりにも不衛生な牢内、僕は遠慮しておきたいと思ったのですが、なんとムルムルがオークの魔石を二個で綺麗にしてくれました。

「王子様! ご無事ですか!」

 騎士さん達は王子様に駆け寄り足枷も外します。

 王子様達は衰弱していて、今は喋る元気もなさそうです。

 残りの三人も、テラに見てもらった結果、学院で行方不明になっている者達だと分かりました。

 王子様達を地下牢から救いだし、地上に急ぎますが、クションを地下に下ろす数倍の早さで上れてしまったのは、この人達が痩せ細っていたからかもしれません。

 治療のため、医務室に急ぐ王子様達をおんぶする四人以外の者が王様に知らせるために先行します。

 やっと執務室がある階に到着し、王子様達をベッドに寝かせ、今夜は医務室長を中心に一晩中回復を続けるそうです。

 そして医務室に王様達、夕食会にいた全員がやってきました。

「コションが地下牢にいたとは本当か!」

 先頭は王様で、扉が凄い勢いで壁に当たり、大きな音を立てます。

「はい、王様、今はコションさんも、他の三人も衰弱していてベッドにいますから」

「ああ、す、すまん、諦めておったが、よもや奴が偽者、魔道具を使い入れ代わっていたとは······それに学友と聞いたのだが?」

 そこにシー兄さんがベッドを見て、答えます。

「間違いなさそうですね、今思えば、奴も元々学院にいた奴ですね学生ではないのですが、出入りしていた者によく似ている気がします」

 そうなのですね。

 王様はコション王子のベッドに近付き顔を見て、大きく頷く。

「少し痩せて頬が酷くこけけているが間違いない、私の息子だ」

「父さん······ご心配をお掛けしました······奴は、学院に魔道具を売りに来ていた奴は······?」

「あの、ぶくぶく太った奴は捕まえ投獄してあるから心配するな」

「あはは······良かったです。身体は汚されましたが、私は男ですので······ご心配はありません。学友達もですが、父さん······親御さんに連絡を。心配されているはずですから」

「分かった。早急に連絡を入れよう」

 王様は騎士に向かい三人の家族のもとに行き、この場に来て貰えるよう手配しました。

 騎士さんは二名一組で馬車を使い、お迎えに行くそうです。

 でも、コション王子、汚されたのはムルムルが綺麗にしたから大丈夫ですよ♪

「ライ、多分あなたは勘違いしていると思うけど、汚れているの意味が違うからね、クションの称号にはの称号があったから」

「?」

「はぁぁ、分からなければそのままで良いわ。ライはそのまま素直に育てて上げるから、私に任せておきなさいね」

 よく分かりませんが、テラが色々と教えてくれるそうです。

 そして、お腹も空いてきたのですが、ハサミエビの事を思いつつ、コション王子と王様の話は中々終わらなさそうですし、兄さん達も、三人の事を知っていたみたいで、ベッドに近付き、なにかお話をしていますし、そんな事を考えながら一時間くらい、医務室にあった水瓶の水を使いぐるぐるをティに教えて行きます。

「初めは全然動かないけれど、ある時魔力が見えてくるわよ、見えてきたらそこからはやり甲斐もあるし、私もそこからは早かったよね♪」

 フィーアも一緒に教えてくれています。

「うん、フィーアは土からだったよね、あの頃は土遊びしながらだったもんね」

「そうそう、それから水を動かせるようになって、風、火は危ないから中々近くに行けなかったものね」

「僕はマシューにお願いして内緒の修行したよ」

「まあ♪ では私はどういたしましょう、日中は学院ですので、風でしょうか?」

 ティのほっぺに人差し指を添え、首をかしげ考えています。

「うん、僕は風からだったよ。風なら何も道具は要らないしね」

 うんうんとフィーアも頷きながら同意してくれます。

「それから何をしていてもぐるぐるを続けるのが上達の秘訣よ♪ あの頃ライにしつこく言われたものね、あははは♪」

「まあ♪ フィーアが、羨ましいです、私も幼少の時にお逢いしたかったですわ」

「はぁぁ、その素直さが古代魔法を覚えるコツなのかなぁ。でも、古きものも、使えるものがなく、新たに使える者が現れたのなら嬉しいわね♪ ほらムルムルも頑張りなさいね♪」

 ぷるぷる

 肩の上でもムルムルが奮闘していますね。

 そんな時、親御さん達が到着したとメイドさんが知らせに来てくれました。

 そのお知らせメイドさんが退室して、ほんの少し後に騎士さんに先導され、医務室に六人の親御さんがやって来ましたので、僕たちは食堂に移動し、主催者のいない夕食会が始まりました。

「うん♪ ハサミエビ凄く美味しいね♪」

 それはもうプリっぷりて、料理人さんの作ったソースもあいまって、マシューの物とはまた違う美味しさです♪

「はい♪ 沢山釣り上げて正解でしたわ♪」

 上品にナイフとフォークで一口大に切り分け、ソースを絡めて口に運びます。

 この綺麗な食べ方は、流石お嬢様という事ですね♪

「うんうん♪ マシューさんのも好きだったけど、これは素晴らしい出来ね♪ 釣りたてだから、泥臭さがあるかと思ったけれど、上手く処理されているわね♪」

 流石お義父さんが料理人なだけあって、言うことが違いますね♪


 滞りなく夕食会も終わり、僕は騎士さんと一緒に商人街へ向かい、ぐるぐるをやり。

 その後に、奴隷の首輪を嵌められたクションから聞き出した、スラムにある盗賊ギルドと、暗殺ギルドに向かいます。

 商人街へ入った所で、僕は馬車の速度を落として貰い、ぐるぐるを始めました。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...