上 下
5 / 241
第一章

第5話 旅の同行者

しおりを挟む
「ふ~ん、ライは死んじゃってこっちに転生したけれど記憶が残っているのね」

 テラはスライムさんの上に乗っかり、僕の話を聴いています。

 ドラゴンライダーならカッコいいと思いますがスライムライダー······うぷぷ。

「何? 何か可笑しい事あった?」

「違うよ、テラがスライムさんに乗っているのが可愛いって思っていたのと、スライムさんも乗られるのが満更でもなさそうだからね」

「そ、そお、私可愛いの、そんな事言われたの初めてよ、良いわ! ライはこれからどうするの? 私が付いていってあげるから心配要らないわよ! それとあなたはそうね、命名! “ムルムル” ! 私の騎獣としてつかえる事を許してあげるわ!」

 えぇ~、テラが一緒に来るの! って何者なの!? スライムさんに名前付けちゃったよ!

「テラ、僕の旅に付いてくるの? 友達のフィーアの様子を見に行ってその後は予定無しだよ?」

 フィーアは、お母さんに付いて一緒に元々住んでいた隣町に帰って学校に通うそうです。

 僕は通わないかって、もちろん! だって習うのは算数だけなんだもん。字は覚えちゃったし、魔法も独学で覚えてしまいましたから、友達は欲しいから通いたい気持ちも少しありましたが、授業が耐えられそうにありませんよ、あはは。

「そうなの? ってフィーアってライの彼女?」

 おっと聞いちゃいますか! もちろん違いますよ、フラれちゃってます······。

 だって、吸血鬼としか結婚したくないそうです。そう、フィーアも乳母のカリーアさんも吸血鬼で旦那様は真祖で食堂を営んでいます、真祖なのに······。

 昔、お父さんと、お母さんとパーティーを組んでいたそうですよ、そのお蔭で乳母の仕事を受けてくれたそうです。

 フィーアも、僕のお母さんにおっぱいを二回貰っていたそうです、フィーアは噛むからと苦笑いをしていたそうですが、あはは。

 おっと考え事をまたしてしまっていましたね。

「フラれちゃってます、あはは」

「ふ~ん、まあ、頑張んなさい、その内に良い子も見付かるわ! ・・・たぶん······」

 そこは断言してよテラ! 小さい声が聞こえてますよ!

「はぁぁ、そうだね、頑張るよ、あははははは」

 乾いた笑い声が出ちゃいましたよ、さて食べ終わったお皿にはえっと、ムルムルだね、ムルムルをテラが乗ったまま乗せるとみるみる内にお皿が綺麗になって行きます。

「ムルムルその調子よ、いっぱい食べて大きくなるのよ」

「あははは、ムルムルは普通のスライムだからあまり大きくならないかな」

 今は手のひらサイズだから大きくなっても倍くらいまででしょうね、だからテラには丁度良いサイズなのです。

「そうなの? 仕方無いわね、私が鍛えてあげるわ、私の騎獣なのですから」

 お皿の上のムルムルの上で仁王立ちのテラ、ムルムルはプルプル震えて喜んでいるのかな、くふふ。

「よし日課の時間です! 焚き火があるから今日は火からやるぞ、ぐるぐる~ほいっと!」

 焚き火から分かれた火をぐるぐる回すところから始めます。

 今日は観客が居ますから少しばかり調子に乗っちゃいますよ~。

 始めは蚊取り線香で~♪ 次はぐるぐる回して竜巻だあ~♪ 最後は大技、ファイアードラゴンおいで下さい~♪

 パチパチパチパチ

「すご~い! ライは大魔法使いね、呪文を唱えない魔法は遥か昔にすたれちゃったのよ! 良く覚えたわね!」

「え? 魔法って呪文があるの!」

「え?」

「え?」

「ライは誰に魔法を習ったの? もしかして、遥か昔に亡くなった魔法使いの幽霊?」

「ど、独学であります!」

 なぜか、上官に返事をする兵隊さんの様な返事をして敬礼までしてしまいました。

「はあっ! 独学ですって!」

「う、うん、産まれた時から一人で修行だよ······えっと、なにか駄目だったかな?」

「駄目な事は無いわ、逆よ、呪文を使わないと発動しないのは、魔力の操作が出来ていないからよ、呪文のせいで威力は下がるし、余計な魔力は使うし良いところがないのよ」

「それじゃあ、呪文を使わない魔法はなぜ廃れたの、少ない魔力で威力も強い、良い事だらけですよ?」

「発動に、目に見えて発動するのに数年は成果が見えないの、呪文なら魔力があり、素質があれば誰でもすぐに魔法が使えるの」

「そ、そうなの? 僕は産まれて三か月くらいで風は吹いてくれたよ? それにウインドニードルで窓の外にあった木の葉っぱ揺らせたのは半年くらいかかったよ?」

「は? 嘘でしょ? 微風そよかぜ吹かせるだけで数年かかる筈なのよ! ヒョロヒョロの攻撃魔法撃つなら五年は必要なのよ! ライあなたおかしいわよ!」

 ゼハーゼハーとテラは肩で息をしながらムルムルの上で僕を指差しています······えぇ~頑張ったね、とか言ってくれないと泣いちゃいますよ。

「あっ、フィーアはそれくらいかな? でももっと早かったよね? ビシバシゴブリンさんを倒していましたから」

「その子もおかしいわよ!」

「あはは、ま、まあ、今は普通に使えるから良いよね?」

「はぁぁ、そうね、古代魔法と呼ばれる魔法使いが二人もいるのですから喜ばしい事よね」

 兄さん達も使い出している事は、しばらく内緒にしておきましょう。

「あははは、そろそろ寝るよ、テラとムルムルも一緒にテントで寝る?」

「もちろんよ、さあ行くわよ、さっさとお皿を片付けて私達を運びなさいね」

 そこは僕が運ぶんだね、ムルムルをテラを乗せたままって逆ですよ! テラをムルムルに乗せたまま持ち上げお皿はほいっと! 収納、手のひらにムルムルの感触が気持ちいいですね。よし、焚き火は大きな木を加えておけば明け方まで持つかな?

「これが僕のテントだよ、一人用だけどテラとムルムルなら余裕だよね」

「そうね、良いんじゃない、あ、そうだお花は戻しておかなきゃね」

 そう言うとムルムルから飛び降り、テントの入り口に行くと、“すぽっ” と花を頭から引き抜き外にぽいっと投げてしまった。

 えぇぇぇぇぇぇ~! 抜けたぁぁぁ~!

 それ抜けるものだったのぉ~!


 バタバタしたものの、旅の初日だったからなのか、深い眠りについてしまいました。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...