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第一章
第69話 気まずい一時
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「な、なあケント、ダンジョンとはどういう事だ?」
「ん? ここにあんだろ?」
ん? なんだ? 三人とも変な顔してっけど、俺、変な事言ったんか?
「あっ、もしかして秘密なんか? すまねえな、駄目なら諦めっからよ、それにダンジョンの事は誰にも言わねえって約束するぞ」
お茶をまた一口飲んで、テーブルに戻した。
向かいの三人は、王様が公爵様に耳打ちをして、王妃様はまだ固まったままだ。
普通なら聴こえるわけねえと思うよなぁ、でも覚醒しっぱなしだから聴こえてんだがよ……。
『おい! なぜケントが知っているのだコバルト! 近衛騎士団での調査が済むまで口外禁止だぞ!』
耳打ちで叫ぶって器用だな王様、ってか、口外禁止か……聞いちゃだめだったな。
『兄さん、私が言う訳ないだろ!』
なんだよ公爵様も小声で叫べんだな、って事は王妃様もか?
今度は公爵様が王様に耳打ちした後、何度も顔を見合せ、横目で俺を見てくる。
んだよ、三人ともチラチラ見てくんのなんか俺が悪いんか?
言わねえようにすっからそんな見んなよ……。
睨み返して……やるのは駄目だな。
はぁ、しゃあねえ、ここのダンジョンは駄目みたいだから、ダンジョンの街に行くまでお預けだ。
そして一分くらいはシーンとした部屋の中で、なんとも座り心地の悪い時間をすごしたが、王妃様の声は聞こえてこないまま、公爵様がハッとした顔になりまた小声で話し始めた。
『もしや……だが知っているのは王族と近衛騎士達だけだ、そんな事をする者達はいないはずだが――』
(ふう、この『悪魔に魅いられた花嫁』なんだけど中々の面白いわね、主人公は悪魔と人間が結婚して産まれた子なんだけど、その国の王子様に理不尽な婚約破棄を迫られちゃうのよ短剣で首を刺されて――)
待て待て! その王子ヤバ過ぎだろ! 婚約破棄どころか殺しに来てるじゃねえか!
あっ……じゃなくてアンラ、面白かったのは良いけどよ、公爵の話を聞き逃してしまったじゃねえか……はぁ、感想なら後で聞いてやっからもう少し大人しくしててくれよな。
アンラはうんうんと頷き、読み終えたのか本を閉じてソファーから立ち上がり、持っていた本を棚に戻しに行った。
そして、戻した本の隣を引き抜き戻ってきた。
膝の上に置いた本を見ると『悪魔に魅いられた花嫁Ⅱ』か、続き物なんだな……ちと気になるし、後でどんなだったか聞くことに……っ!。
俺はまた、アンラに集中していた事に気が付き、公爵様の小声に耳を集中させる。
『――でしょう? ですのでそこに入ってもらえばよろしいのではなくて?』
おお、王妃様も話し出してたじゃねえか。
さらに集中して聴いてると。
『ふむ、あちらはまだ公開してはいないが、近日公開予定だったよな』
『兄さん、それなら公開を早めますか? 入口に詰所を作り、ギルド員を派遣する手配はしなければならないが』
『そうだな、そこの整備を進めていく方が良いだろう』
ん? 他にもダンジョンがありそうな言い方だな……そっちでも良いぞ、たぶん有名どころのダンジョン街はここから少し離れてっしよ。
(ん~、こっそり入っちゃえば? 場所はそこの窓から出れば見えそうだし、夜中なら見つからないんじゃない?)
おっ! それ良いな! 今夜――。
『駄目です! ケントまでそんな考えとは! 私は許しませんよ!』
俺とアンラはクロセルに怒られ、肩をおとしていると、公爵様が話しかけてきた。
「ケント、言ってたダンジョンの事だが、ある事は認めるが……」
王様に向いていた体を正面に戻し、じっと俺と目を合わせ腕組みをしている。
「そうだな、まだ公開できる段階ではないのだ、城の中で見付かったダンジョンであるし、不特定多数が城内に入れるわけにはいかない」
「その通りだな」
「もし、公開できる段階になったとしても、冒険者達には入城を許可はできないという事は理解できるよな?」
「ああ、そりゃな、王様が住んでっとこに、うじゃうじゃ冒険者が来た日にゃ暗殺者も入り放題になっちまうぜ」
テーブルから冷めただろうお茶を、三人が揃って手に取り、口に運んだんだが、冷めてた渋くなってたようで、三人ともしかめっ面になった。
すると王妃様は、すくっと立ち上がり、テーブルの端に置いてあったポットを手に取り、なにやら呪文を唱えている。
(加熱ね、お茶を温め直しているみたいよ)
その温めたお茶をみんなの分入れ直してまずは一口。
一息ついて、公爵様の話が続く。
「それから、城にあるダンジョンだが、近衛騎士団がある程度まで攻略して安全を確認するまでは誰も入れるわけにはいかない……でだ、なぜダンジョンがあると分かったのか聞かせてもらいたい」
『内緒……では通りませんね、大きな魔力を感じたと言って下さい、それから勘です、それしかないですね』
か、勘かよ……ま、まあそうだな、しゃあねえよな。
俺は背筋を伸ばして座り直し、一呼吸してから話し始めた。
「魔力が感じられただけだぞ、デカいから、半分はダンジョンだったら良いなって勘だな」
「勘……か、それなら何も言えんな、それより魔力を感じたと、ふむ……分かった、では――」
なんとか誤魔化せたとホッとした瞬間に、扉が勢いよくバタンと開いて騎士が部屋に入ってきた。
後ろからも三人の騎士を引き連れてきたんだが、王様に公爵様がいる部屋に入る勢いじゃあねえよな。
「父上! ダンジョンが――っ! くっ、客人!」
「ん? ここにあんだろ?」
ん? なんだ? 三人とも変な顔してっけど、俺、変な事言ったんか?
「あっ、もしかして秘密なんか? すまねえな、駄目なら諦めっからよ、それにダンジョンの事は誰にも言わねえって約束するぞ」
お茶をまた一口飲んで、テーブルに戻した。
向かいの三人は、王様が公爵様に耳打ちをして、王妃様はまだ固まったままだ。
普通なら聴こえるわけねえと思うよなぁ、でも覚醒しっぱなしだから聴こえてんだがよ……。
『おい! なぜケントが知っているのだコバルト! 近衛騎士団での調査が済むまで口外禁止だぞ!』
耳打ちで叫ぶって器用だな王様、ってか、口外禁止か……聞いちゃだめだったな。
『兄さん、私が言う訳ないだろ!』
なんだよ公爵様も小声で叫べんだな、って事は王妃様もか?
今度は公爵様が王様に耳打ちした後、何度も顔を見合せ、横目で俺を見てくる。
んだよ、三人ともチラチラ見てくんのなんか俺が悪いんか?
言わねえようにすっからそんな見んなよ……。
睨み返して……やるのは駄目だな。
はぁ、しゃあねえ、ここのダンジョンは駄目みたいだから、ダンジョンの街に行くまでお預けだ。
そして一分くらいはシーンとした部屋の中で、なんとも座り心地の悪い時間をすごしたが、王妃様の声は聞こえてこないまま、公爵様がハッとした顔になりまた小声で話し始めた。
『もしや……だが知っているのは王族と近衛騎士達だけだ、そんな事をする者達はいないはずだが――』
(ふう、この『悪魔に魅いられた花嫁』なんだけど中々の面白いわね、主人公は悪魔と人間が結婚して産まれた子なんだけど、その国の王子様に理不尽な婚約破棄を迫られちゃうのよ短剣で首を刺されて――)
待て待て! その王子ヤバ過ぎだろ! 婚約破棄どころか殺しに来てるじゃねえか!
あっ……じゃなくてアンラ、面白かったのは良いけどよ、公爵の話を聞き逃してしまったじゃねえか……はぁ、感想なら後で聞いてやっからもう少し大人しくしててくれよな。
アンラはうんうんと頷き、読み終えたのか本を閉じてソファーから立ち上がり、持っていた本を棚に戻しに行った。
そして、戻した本の隣を引き抜き戻ってきた。
膝の上に置いた本を見ると『悪魔に魅いられた花嫁Ⅱ』か、続き物なんだな……ちと気になるし、後でどんなだったか聞くことに……っ!。
俺はまた、アンラに集中していた事に気が付き、公爵様の小声に耳を集中させる。
『――でしょう? ですのでそこに入ってもらえばよろしいのではなくて?』
おお、王妃様も話し出してたじゃねえか。
さらに集中して聴いてると。
『ふむ、あちらはまだ公開してはいないが、近日公開予定だったよな』
『兄さん、それなら公開を早めますか? 入口に詰所を作り、ギルド員を派遣する手配はしなければならないが』
『そうだな、そこの整備を進めていく方が良いだろう』
ん? 他にもダンジョンがありそうな言い方だな……そっちでも良いぞ、たぶん有名どころのダンジョン街はここから少し離れてっしよ。
(ん~、こっそり入っちゃえば? 場所はそこの窓から出れば見えそうだし、夜中なら見つからないんじゃない?)
おっ! それ良いな! 今夜――。
『駄目です! ケントまでそんな考えとは! 私は許しませんよ!』
俺とアンラはクロセルに怒られ、肩をおとしていると、公爵様が話しかけてきた。
「ケント、言ってたダンジョンの事だが、ある事は認めるが……」
王様に向いていた体を正面に戻し、じっと俺と目を合わせ腕組みをしている。
「そうだな、まだ公開できる段階ではないのだ、城の中で見付かったダンジョンであるし、不特定多数が城内に入れるわけにはいかない」
「その通りだな」
「もし、公開できる段階になったとしても、冒険者達には入城を許可はできないという事は理解できるよな?」
「ああ、そりゃな、王様が住んでっとこに、うじゃうじゃ冒険者が来た日にゃ暗殺者も入り放題になっちまうぜ」
テーブルから冷めただろうお茶を、三人が揃って手に取り、口に運んだんだが、冷めてた渋くなってたようで、三人ともしかめっ面になった。
すると王妃様は、すくっと立ち上がり、テーブルの端に置いてあったポットを手に取り、なにやら呪文を唱えている。
(加熱ね、お茶を温め直しているみたいよ)
その温めたお茶をみんなの分入れ直してまずは一口。
一息ついて、公爵様の話が続く。
「それから、城にあるダンジョンだが、近衛騎士団がある程度まで攻略して安全を確認するまでは誰も入れるわけにはいかない……でだ、なぜダンジョンがあると分かったのか聞かせてもらいたい」
『内緒……では通りませんね、大きな魔力を感じたと言って下さい、それから勘です、それしかないですね』
か、勘かよ……ま、まあそうだな、しゃあねえよな。
俺は背筋を伸ばして座り直し、一呼吸してから話し始めた。
「魔力が感じられただけだぞ、デカいから、半分はダンジョンだったら良いなって勘だな」
「勘……か、それなら何も言えんな、それより魔力を感じたと、ふむ……分かった、では――」
なんとか誤魔化せたとホッとした瞬間に、扉が勢いよくバタンと開いて騎士が部屋に入ってきた。
後ろからも三人の騎士を引き連れてきたんだが、王様に公爵様がいる部屋に入る勢いじゃあねえよな。
「父上! ダンジョンが――っ! くっ、客人!」
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