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第一章
第48話 連れ去られたプリム
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「ケント!」
「お帰りケント」
馬車のまま村に入り、中央広場に馬車を止めた時、商人の馬車を待っていた村人の中にいたアシアとエリスが手を振りながら声をかけてきた。
「おう、ただいま! ちと待っててくれよ、」
二人に手を振り替えして馬車の荷台から飛び下り、馬車の車輪を止める手伝いをした後、カルパのおっさんに依頼完了のサインをもらいに行く。
一緒に請けた兄ちゃんパーティーも集まっていて、サインをもらっている。
兄ちゃん達は帰りも護衛をするようだが俺はここまでの依頼だ。
「おお、ケント君、無事到着しましたね、片道でしたから……よしっと、これで完了です」
俺から依頼書を受け取ってすぐにサインをしてくれた。
まあ、これの依頼の報酬をもらうのは冒険者ギルドがある街に行かねえともらえないからなぁ、またリチウムなり別の街に行かねえと駄目なんだが、どうすっかな。
そんな事を考えてると、笑顔のカルパからサイン入りの依頼書を渡される。
手に取った依頼書を見ると、護衛依頼の達成感がじわじわと胸に込み上げてきた。
「へへっ、初の護衛依頼達成だぜ」
隣から俺の袖を掴みながら覗き込んできたプリムも依頼書を見る。
「おお~達成ですね、色々とありましたが……あまり役に立ってない?」
「んなことねえぞ、それにあれもあるだろ?」
依頼書をくるくると巻いて広がらないように紐で結びクロセルに収納しておいてもらう。
少し考えてから、俺の言った意味に気付いたようで『むむむむ、あれだ!』とか言いながら袖を引っ張ってきた。
「途中の夜営地にあった薬草残してありましたよね! ……ケントさん、あれはどうするのですか?」
それだ。色々な薬草や依頼に出るような果物、きのこなんかを採取してクロセルに収納してもらってたもんな。
「ん? プリムちゃん、そう言えば採取していましたね、よろしければ買い取りますが」
カルパのおっさんは、プリムの言葉に反応して俺からプリムに視線を移し『ギルドより高く買い取っても良いですよ』と小声で。
「だがよ、それだと依頼達成にならねえだろ?」
薬草なら依頼を請けておかなくても、買い取で、数があれば依頼達成になるからな。
「それもそうですね、Eランクから上がろうとすれば、私に売ってしまうと無駄骨になってしまいますね」
「そうでした、残念ですけど冒険者ギルドに持っていきますね」
カルパはすんなりと諦め『ではまた機会があれば』と露店を開く準備に取り掛かった。
俺達はカルパのおっさんと兄ちゃん達に別れを告げて、アシア達のところに向かう。
「そうだプリムに俺の友達を紹介するぜ」
「言ってましたアシアちゃんにエリスちゃんですね、あの手を振ってた子達ですよね」
「おう、そうだぜ」
見慣れた村人達は、商隊が荷を広げるのを少し遠巻きに待っている中、俺達の方しか見てねえ二人に近付く。
「アシア、エリス、ただいま、元気そうで何よりだ」
目の前で止まり……。
ん? 二人とも笑顔なんだが、なんかおかしいな……引きってるんか?
それに俺じゃなくてプリムの方を見てるような気もするし――っ!
「プ、プリムでふっ! あわわ! 噛んじゃいました! プリムです!」
プリムは元気いっぱい二人に挨拶をすると、ブオンと音が聞こえそうな勢いで頭を下げる。
「ケントさんと冒険者のパーティーを組ませてもらっています」
「「っ!」」
くくくっ、村へ入る前に言っておいたからな、良い挨拶だ。
アシアとエリスはいきなりで驚いてるようだがな。
「ア、アシアです!」
「エリスだよ、よろしくねプリムちゃん」
「おう、二人とも仲良くしてやってくれよ、それからソラーレだ」
「「へ? スライム?」」
俺の肩に乗っていたソラーレを手のひらに乗せて前に突き出して二人に紹介しておく。
ソラーレは手のひらの上でぷるぷる震え、にょきっと突起を突き出して揺らしている。
「おっ、ソラーレ、そんな事できるんだな」
「ちょ、ちょっと……ねえエリス」
「そうだねアシア」
二人は顔を見合わせ頷き合い、キッと俺を見る。
ん? なんだ? スライム……そっか、珍しいグラトニースライムだったしな。この辺りじゃ見た事ねえし。
だが、俺の予想とは違い、二人が伸ばした手が掴んだものは、ソラーレじゃなく、プリムの手だった。
「ほへ?」
いきなり掴まれたプリムはビクッとし
てる。
そして二人の顔を見て、俺の顔を見るが、俺も何がどうしてなんか分からない。
「ケント、私達は少しプリムちゃんに話があるから借りてくね、後からついて来なさい、分かったわね」
「そういう事だからプリムちゃん、ほらほら行きますよ」
そう言った二人に両手を掴まれ、連れ去られるプリムを、唖然としながら見送ってしまった。
(修羅場ね! ぬふふふ♪ ほらほらケント、追いかけないの? まだお土産渡してないんだから)
あんっ? よく分かんねえが、追いかけっぞ、まああの二人なら悪さはしねえと思うがな。
ソラーレを肩に戻して三人を追い始める。
「アシアにエリス! おい待てよ! 俺を置いてくなよ!」
中央広場の人垣から抜け出し、村外れの教会に向けて、プリムの両脇から腕を取り遠ざかっていく。
俺もそれを追いかけるため早足で人垣をすり抜けた。
後ろでギルマスっぽい声が聞こえたが、まあ良いだろ、先に土産を渡しちまいたいしな。
追い付いたが、小さい声で話ながら、真剣な顔になったり赤くなったりしている三人。
アシアが『少し離れておいてね! 聞いちゃ駄目だからね!』と言われ、仕方なく数メートル後ろを行く。
まだ一か月ぶりくらいだが、妙に懐かしさを感じながら歩きなれた道を進み教会が見えてきた。
「お帰りケント」
馬車のまま村に入り、中央広場に馬車を止めた時、商人の馬車を待っていた村人の中にいたアシアとエリスが手を振りながら声をかけてきた。
「おう、ただいま! ちと待っててくれよ、」
二人に手を振り替えして馬車の荷台から飛び下り、馬車の車輪を止める手伝いをした後、カルパのおっさんに依頼完了のサインをもらいに行く。
一緒に請けた兄ちゃんパーティーも集まっていて、サインをもらっている。
兄ちゃん達は帰りも護衛をするようだが俺はここまでの依頼だ。
「おお、ケント君、無事到着しましたね、片道でしたから……よしっと、これで完了です」
俺から依頼書を受け取ってすぐにサインをしてくれた。
まあ、これの依頼の報酬をもらうのは冒険者ギルドがある街に行かねえともらえないからなぁ、またリチウムなり別の街に行かねえと駄目なんだが、どうすっかな。
そんな事を考えてると、笑顔のカルパからサイン入りの依頼書を渡される。
手に取った依頼書を見ると、護衛依頼の達成感がじわじわと胸に込み上げてきた。
「へへっ、初の護衛依頼達成だぜ」
隣から俺の袖を掴みながら覗き込んできたプリムも依頼書を見る。
「おお~達成ですね、色々とありましたが……あまり役に立ってない?」
「んなことねえぞ、それにあれもあるだろ?」
依頼書をくるくると巻いて広がらないように紐で結びクロセルに収納しておいてもらう。
少し考えてから、俺の言った意味に気付いたようで『むむむむ、あれだ!』とか言いながら袖を引っ張ってきた。
「途中の夜営地にあった薬草残してありましたよね! ……ケントさん、あれはどうするのですか?」
それだ。色々な薬草や依頼に出るような果物、きのこなんかを採取してクロセルに収納してもらってたもんな。
「ん? プリムちゃん、そう言えば採取していましたね、よろしければ買い取りますが」
カルパのおっさんは、プリムの言葉に反応して俺からプリムに視線を移し『ギルドより高く買い取っても良いですよ』と小声で。
「だがよ、それだと依頼達成にならねえだろ?」
薬草なら依頼を請けておかなくても、買い取で、数があれば依頼達成になるからな。
「それもそうですね、Eランクから上がろうとすれば、私に売ってしまうと無駄骨になってしまいますね」
「そうでした、残念ですけど冒険者ギルドに持っていきますね」
カルパはすんなりと諦め『ではまた機会があれば』と露店を開く準備に取り掛かった。
俺達はカルパのおっさんと兄ちゃん達に別れを告げて、アシア達のところに向かう。
「そうだプリムに俺の友達を紹介するぜ」
「言ってましたアシアちゃんにエリスちゃんですね、あの手を振ってた子達ですよね」
「おう、そうだぜ」
見慣れた村人達は、商隊が荷を広げるのを少し遠巻きに待っている中、俺達の方しか見てねえ二人に近付く。
「アシア、エリス、ただいま、元気そうで何よりだ」
目の前で止まり……。
ん? 二人とも笑顔なんだが、なんかおかしいな……引きってるんか?
それに俺じゃなくてプリムの方を見てるような気もするし――っ!
「プ、プリムでふっ! あわわ! 噛んじゃいました! プリムです!」
プリムは元気いっぱい二人に挨拶をすると、ブオンと音が聞こえそうな勢いで頭を下げる。
「ケントさんと冒険者のパーティーを組ませてもらっています」
「「っ!」」
くくくっ、村へ入る前に言っておいたからな、良い挨拶だ。
アシアとエリスはいきなりで驚いてるようだがな。
「ア、アシアです!」
「エリスだよ、よろしくねプリムちゃん」
「おう、二人とも仲良くしてやってくれよ、それからソラーレだ」
「「へ? スライム?」」
俺の肩に乗っていたソラーレを手のひらに乗せて前に突き出して二人に紹介しておく。
ソラーレは手のひらの上でぷるぷる震え、にょきっと突起を突き出して揺らしている。
「おっ、ソラーレ、そんな事できるんだな」
「ちょ、ちょっと……ねえエリス」
「そうだねアシア」
二人は顔を見合わせ頷き合い、キッと俺を見る。
ん? なんだ? スライム……そっか、珍しいグラトニースライムだったしな。この辺りじゃ見た事ねえし。
だが、俺の予想とは違い、二人が伸ばした手が掴んだものは、ソラーレじゃなく、プリムの手だった。
「ほへ?」
いきなり掴まれたプリムはビクッとし
てる。
そして二人の顔を見て、俺の顔を見るが、俺も何がどうしてなんか分からない。
「ケント、私達は少しプリムちゃんに話があるから借りてくね、後からついて来なさい、分かったわね」
「そういう事だからプリムちゃん、ほらほら行きますよ」
そう言った二人に両手を掴まれ、連れ去られるプリムを、唖然としながら見送ってしまった。
(修羅場ね! ぬふふふ♪ ほらほらケント、追いかけないの? まだお土産渡してないんだから)
あんっ? よく分かんねえが、追いかけっぞ、まああの二人なら悪さはしねえと思うがな。
ソラーレを肩に戻して三人を追い始める。
「アシアにエリス! おい待てよ! 俺を置いてくなよ!」
中央広場の人垣から抜け出し、村外れの教会に向けて、プリムの両脇から腕を取り遠ざかっていく。
俺もそれを追いかけるため早足で人垣をすり抜けた。
後ろでギルマスっぽい声が聞こえたが、まあ良いだろ、先に土産を渡しちまいたいしな。
追い付いたが、小さい声で話ながら、真剣な顔になったり赤くなったりしている三人。
アシアが『少し離れておいてね! 聞いちゃ駄目だからね!』と言われ、仕方なく数メートル後ろを行く。
まだ一か月ぶりくらいだが、妙に懐かしさを感じながら歩きなれた道を進み教会が見えてきた。
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