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第一章

第46話 来やがった奴ら

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「アンラ、相手が敵かどうか分かんねえからよ、暴れるんは敵って分かってからだぞ」

「ん~、敵だと思うよ~、だってレイスをあんなに引き連れてるし、ほらほら森の木より上に盛り上がって見えてるんだよ?」

 どこかに行って、帰ってきたアンラの言う通りだ。

 モヤモヤがちょっと前から木より高いところに浮かび、こっちに近付いてきてるんだからよ。

「それでもだ、一応俺が良いって言うまでは大人しくしてろよ……まあモヤモヤは捕まえて遊んでても良いけどよ」

 俺はアンラを連れて、少し離れて焚き火を囲むギルマスのところに向かった。

「ギルマス、来たみてえだぞ」

「ああ、だがなぜあれほどの人数で、光の魔法を使っているにもかかわらず魔物がよってこない? 魔物避けの魔道具か?」

 その通りだ、夜の森をあんな賑やかにしているだけで、魔物は気付いて集まってきているはずだ。

(ん? 魔物避けの魔道具持ってたよ? 後、眠りヒュプノスの耐性のもね~、そっちはもらってきたけどさ)

 おい! 敵じゃなかったらどうすんだよ! その時はちゃんと返せよ!

(きゃはは♪ 大丈夫だって、森で落としたって思うんじゃない?)

 全員が全員そうだと思うわけねえだろ!

 だが、そのお陰で、敵だった時の制圧は簡単そうだな。

(でしょ♪)

 アンラはベルトに引っかける形をした物を、人差し指に引っかけてくるくる回している。

 眠りヒュプノスを防ぐ魔道具か、俺も一つ持っておいた方が良いんかな。

(そだね~、私、いっぱい持ってるし、一つあげよっか? んとね~、一番良いやつは……、あっ、これこれ)

 一つひとつの形が微妙に違う魔道具を、取り出して『これは弱めだなぁ』とか言ってはしまい、いくつも出し入れした後、その中の一つを俺のベルトに付けてくれた。

 ありがとうな。

 思わず俺の腰に魔道具を付けるため、前屈みになっていたアンラの頭を撫でてしまった。

 あっ、ギルマスからは見えねえんだった!

 これって、俺がなにもないところに手を伸ばし、ふるふると揺らしているようにしか見えねえよな……変な顔されちまったし。

「そ、そうだな、魔物避けは持ってそうだ、なあギルマス、敵だった場合は眠らせても良いか?」

 なんとか誤魔化すように、森を見ながらギルマスに言ったんだが、一緒にいる副隊長だったかが話を挟む。

「少年、確か五十人ほどいると言っていたが、それを一度に眠らせることなど、宮廷魔道師でもできる方がいるかどうか」

(へぇ~、簡単な魔法なのにね~、ある程度まとまってくれてるなら、まとめてやるのは余裕だよ~)

 なるほどな。アンラ、今度教えてくれよ。魔法は使いてえからよ。

(うんうん、師匠と呼ぶ事を許そうではないか、くははははは♪)

 おっと、返事しねえとな。

「ある程度まとまってくれてるなら簡単だぞ? その宮廷魔道師はやり方間違ってるんかもな、それより最初は様子見で良いんだよな」

 驚いた顔の副隊長に、笑いだすギルマス、残り三人の兵士も驚きの顔で俺を見てくる。

「くくくっ、宮廷魔道師が魔法の使い方を間違えているか、そうなのかもな、だが、あの魔法はプリムが使ってたのではないのか?」

 あっ、やべえ……そういやプリムが使ってると勘違いしてたんだったな。

 ギルマスは首をひねり、俺を見てくる。

「そ、そうだぞ、馬車の影からかけてもらうように言ってある、ギルマスの言う通り使えるのはプリムだ、俺はまだ使えねえよ」

 大丈夫だよな、ちと怪しんでる目だが誤魔化せたよな?

『誤魔化せてないと思いますが、出てきますよ』

(誤魔化せてないだろうね~、ほら、あいつらこっちが普通に夜営をしてるの驚いてるみたいだし、悪者確定で良い?)

 二人が言うように、森から出てきて俺達を見ているようだが……、俺には表情までは分かんねえよ!

『眼に集中すれば見えるようになりますよ、覚醒していますから、身体強化の眼仕様です』

 お、おう。やってみっか……。

 ぐっと力を入れるつもりで眼に集中してみる。

 おお! 見えるぞ! マジかよ!

 暗さも関係ない、まるで目の前にいるんじゃねえかと思えるくらいにはっきりと見える。

「ギルマス、奴ら俺達が普通に夜営をしてるのを驚いてるぜ」

「チッ、やはり何か魔物を操る方法があり、けしかけたって事か……だがまだ証拠はない」

 顎に手をやり、ゆっくりと近付いてくる奴らを品定めするように見ている。

「こちらに来そうだ、すぐ動けるようにしておけ、ギリギリまで動くなよ」

「「はっ!はっ!」」

 副隊長達は小さく返事をして、沸かしていたお湯で茶を入れだした。

「おう、ヤバそうだったら寝てもらうからよ、安心しとけよな。あっ、俺にもお茶くれるか?」

 茶をもらい、森を出たところで集まり、何かを話している奴らを見ている。

 ん? 眼がいけんなら、耳もいけんのかな?

 俺は眼だけじゃなく、耳にも集中してみる。



「――倒されたとみて間違いなさそうです」

 おお! 聞こえるじゃねえか!

「レッドボアだけではないのだぞ! キングボアが数十人の兵士だけで倒せるものか! 召喚士殿、ボアはどこに消えた!」

 召喚士か、確か魔物だけじゃなく、遠くにいる人も一瞬で呼び寄せたり出きるんだよな。

『ケント……まだ教えていない耳の強化を眼の強化と同時にしてしまうとは』

 頑張ったらできたぞ、それよりやっぱり悪者で良いみたいだな。

 俺は会話に耳を傾けながら、遠くの話し声を聞ける俺に驚くギルマス達。

 今はそれより内容を話していくことにする。

「可能性としては、あの者達がここで夜営をする前に通り過ぎたと考えます」

「チッ、夜営地への到着が遅れたという事か……それしか考えられないな」

 俺の話を聞き立ち上がりかけた副隊長の肩を押さえ変な動きをしないように言っておく。

「よし、仕方がない、起きている見張りの奴らは油断させ殺し、後は寝ている奴らを殺る、リチウム街の暗殺ギルドのギルマスとサブマスは奪い返さねばならないからな、行くぞ」

 止まっていた奴らは動きだし、こちらに向かってきた。

 そして俺はその様子を見ながら、ギルマス達に、今分かったことを伝えておく。

「ギルマス、奴らは暗殺ギルドでリチウム達を助けに来たみたいだ」
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