43 / 149
第一章
第43話 ボアの襲来
しおりを挟む
「デケえな! 木を吹き飛ばして出てきたぞ! うっし、一番乗りぃぃー!?」
「撃て!」
飛び出そうとしたんだが、横から聞こえた号令の後、公爵様の兵士達が魔法と矢を撃ち出した。
先頭を走るボアにほぼ全ての魔法と矢が命中し、火や石の魔法は弾け飛び、矢は何事もなかったかのように跳ね返され地面に落ちていく。
あの中に飛び込むのは俺がやられちまうぞ……やべえな、ってか全然効いてねえように見えるし、速度も遅くならねえ。
森を出たデカいボア達は、街道にまで続く広い草原をドドドと土煙を上げ、一番前のデカい奴が魔法も矢も全て顔に受けながら傷も負う事なく一列で突き進んで来る。
(ねえねえ、あんなの全然効いてないね~、止めないと踏み潰されるよ?)
「くそ、一番前の奴を転がすぞ! しっ!」
雨あられのように降り注ぐ中、俺は膝を曲げ姿勢を低くして――って、おい!
ドン! と地面を爆発させるように蹴り、加速して飛び出した俺の横をアンラ
も一緒に飛び出している。
「潰れっぞクローセ!」
そう、なんとクローセも同じように飛び出していた。
(くははは! お肉いただくよー!)
横で手をぐるぐる振り回しながらついてくるアンラを横目に、俺はさらに身をかがめクローセの腹に手を入れ掬い上げるように持ち上げ――だがスルリと交わして。
「おい! クローセ避けんな! 怪我すんぞ!」
「シャー!」
(ケント、クローセは大丈夫だよ~、エンペラーキャットはボアの天敵だもん。それより一番前の奴を最初に後ろへぶっ飛ばすよー、合わせてね!)
「そうなんか! 分かんねえが任せろ! うおりゃぁぁぁぁー!」
アンラは俺の真横に来て、爪を出すんだと思ったが、ぐぐっと拳を握りしめ、合わせろと言う。
俺もクロセルを左手に持ち変えて『ぶっ飛べー!』の声に合わせ、馬車の二倍くらいある一番デカいボアの鼻先を右手でおもいっきり殴る。
ドゴン!
「プギャ!」
巨体が一瞬止まるがさすがに重い、押されそうになる――が、踏ん張って負けねえように腕を振り抜く!
「おらっ!」
俺達は拳を振り抜いたまま、左右に分かれ次のボアに向かうつもりが――っ!
森に向かって叩き飛ばされたボアは、後ろについてきていた半分ほどのボアを薙ぎ倒しながら森近くまで吹っ飛んだ。
それを見た激突を逃れたボア達も、驚いたのか地面を足でえぐりながら止まった。
「よし! 突進が止まった! アンラ! 半分任せた!」
(な~に言ってんの、ここからはクローセがやっちゃうわよ? ほら)
「え?」
足元を見ると、ムクムクとデカくなっていくクローセ。
「おまっ!」
すぐに俺の身長を抜き、さらに馬車の大きさにまで大きくなったクローセは、音もなく走り出し、転がっていないボアに向かって飛びかかった。
「フゥーニャッ!」
普通の大きさのボアと変わらない大きさになったクローセ、それを見た五匹いる内の三匹は動く間もなく、上に伸び上がり、二本足の状態から下に向かって振下ろされたクローセの前足でパンッ! パパンッと一撃ずつ入れられた。
「すげえな……ってかアンラ! 俺らも手前の奴らにトドメだ!」
(あ~い。血抜きしやすいように首を切っておけば良いよね~、デカい子は任せるよん)
俺は力が抜けそうになるのを我慢して、ぷるぷると震えながらも立ち上がり、フラフラしてる一番デカいボアの下にもぐり込んで、真下から頭に向かってクロセルを突き上げた。
喉の柔らかい部分にズブブと刺さりこんで、そのまま首の下を横に抜けるように移動しながら、振り下ろすようにクロセルを強く握り直して切り裂いた。
ブシャッと血を撒き散らした奴は放っておき、倒れてまだ起き上がっていないボアに向かうが、アンラによって首筋を切り裂かれた後だった。
クローセの方もちょうど終わったようで、最後に倒した奴の首を咥えてこちらに向かって帰ってきた。
「お前デカくなれたんだな、それに強いじゃねえかよ」
「んにゃ」
と返事をしながらドスンと俺の前にボアを下ろすとスルスルと元の大きさに戻って足元にすり寄ってきた。
そういや村の時も、たまに角ウサギとか持って帰ってきてたな……。
俺はしゃがみこみ、クローセをねぎらうつもりで撫でて、一応気配を探ってみる。
なんだ? クロセル、こいつらが来た方向なんだがよ、人がいねえか?
『はい。そのようですね……それに、こちらに向かっているようです』
「おい、勝手な行動は全体の危険を呼ぶ行為だ、今回は上手く退けられたが気を付ける事だな、それにその姿はなんだ?」
俺達が森の奥を見ながら話をしていると、兵士の一人、隊長と一緒にいた兄ちゃんが話しかけてきた。
「兵士の兄ちゃんよ、まだ終わってねえみたいだぞ、ボアが来た方向に人がいてこっちに向かってる……それも五十人はいそうだ」
俺はクローセを持ち上げながら立ち上がり、クロセルにボアを収納してもらう。
「なっ、ボアが消えた……小僧は収納が使えるのか? ……おい! 聞いてるのか! さっきの質問にも答えんか!」
「兄ちゃんも聞いてんのか? ボアが来た方向から人が五十人ほど来るって言ってんのに、知らせに行くぞ」
「何? そんな事はあるはずがない! 夜の森など魔物の巣窟と言って過言ではない、そこに五十人もの人がいれば、魔物が集まってきてもおかしくない、って、待て!」
なんだか語りだしたが俺は夜営地に戻るため、さっさと歩き始めた。
(ふ~ん、その人達がボアをこっちに追いたてたのかな? 最初にぶっ飛ばした子は明らかに大きさが違ったし、何かおかしいのよね)
アンラは俺の横を歩き、クローセの顎に手をやってコショコショと撫でてそんな事を言う。
「そうなんか? そういや馬車の二倍くらいあったよな?」
『レッドボアなのですが、あの一匹以外は大きさもその通り、ですがあの大きさはキングボアかも知れません、レッドボアの上位種、このような浅いところにいる魔物では無いのですが……』
「撃て!」
飛び出そうとしたんだが、横から聞こえた号令の後、公爵様の兵士達が魔法と矢を撃ち出した。
先頭を走るボアにほぼ全ての魔法と矢が命中し、火や石の魔法は弾け飛び、矢は何事もなかったかのように跳ね返され地面に落ちていく。
あの中に飛び込むのは俺がやられちまうぞ……やべえな、ってか全然効いてねえように見えるし、速度も遅くならねえ。
森を出たデカいボア達は、街道にまで続く広い草原をドドドと土煙を上げ、一番前のデカい奴が魔法も矢も全て顔に受けながら傷も負う事なく一列で突き進んで来る。
(ねえねえ、あんなの全然効いてないね~、止めないと踏み潰されるよ?)
「くそ、一番前の奴を転がすぞ! しっ!」
雨あられのように降り注ぐ中、俺は膝を曲げ姿勢を低くして――って、おい!
ドン! と地面を爆発させるように蹴り、加速して飛び出した俺の横をアンラ
も一緒に飛び出している。
「潰れっぞクローセ!」
そう、なんとクローセも同じように飛び出していた。
(くははは! お肉いただくよー!)
横で手をぐるぐる振り回しながらついてくるアンラを横目に、俺はさらに身をかがめクローセの腹に手を入れ掬い上げるように持ち上げ――だがスルリと交わして。
「おい! クローセ避けんな! 怪我すんぞ!」
「シャー!」
(ケント、クローセは大丈夫だよ~、エンペラーキャットはボアの天敵だもん。それより一番前の奴を最初に後ろへぶっ飛ばすよー、合わせてね!)
「そうなんか! 分かんねえが任せろ! うおりゃぁぁぁぁー!」
アンラは俺の真横に来て、爪を出すんだと思ったが、ぐぐっと拳を握りしめ、合わせろと言う。
俺もクロセルを左手に持ち変えて『ぶっ飛べー!』の声に合わせ、馬車の二倍くらいある一番デカいボアの鼻先を右手でおもいっきり殴る。
ドゴン!
「プギャ!」
巨体が一瞬止まるがさすがに重い、押されそうになる――が、踏ん張って負けねえように腕を振り抜く!
「おらっ!」
俺達は拳を振り抜いたまま、左右に分かれ次のボアに向かうつもりが――っ!
森に向かって叩き飛ばされたボアは、後ろについてきていた半分ほどのボアを薙ぎ倒しながら森近くまで吹っ飛んだ。
それを見た激突を逃れたボア達も、驚いたのか地面を足でえぐりながら止まった。
「よし! 突進が止まった! アンラ! 半分任せた!」
(な~に言ってんの、ここからはクローセがやっちゃうわよ? ほら)
「え?」
足元を見ると、ムクムクとデカくなっていくクローセ。
「おまっ!」
すぐに俺の身長を抜き、さらに馬車の大きさにまで大きくなったクローセは、音もなく走り出し、転がっていないボアに向かって飛びかかった。
「フゥーニャッ!」
普通の大きさのボアと変わらない大きさになったクローセ、それを見た五匹いる内の三匹は動く間もなく、上に伸び上がり、二本足の状態から下に向かって振下ろされたクローセの前足でパンッ! パパンッと一撃ずつ入れられた。
「すげえな……ってかアンラ! 俺らも手前の奴らにトドメだ!」
(あ~い。血抜きしやすいように首を切っておけば良いよね~、デカい子は任せるよん)
俺は力が抜けそうになるのを我慢して、ぷるぷると震えながらも立ち上がり、フラフラしてる一番デカいボアの下にもぐり込んで、真下から頭に向かってクロセルを突き上げた。
喉の柔らかい部分にズブブと刺さりこんで、そのまま首の下を横に抜けるように移動しながら、振り下ろすようにクロセルを強く握り直して切り裂いた。
ブシャッと血を撒き散らした奴は放っておき、倒れてまだ起き上がっていないボアに向かうが、アンラによって首筋を切り裂かれた後だった。
クローセの方もちょうど終わったようで、最後に倒した奴の首を咥えてこちらに向かって帰ってきた。
「お前デカくなれたんだな、それに強いじゃねえかよ」
「んにゃ」
と返事をしながらドスンと俺の前にボアを下ろすとスルスルと元の大きさに戻って足元にすり寄ってきた。
そういや村の時も、たまに角ウサギとか持って帰ってきてたな……。
俺はしゃがみこみ、クローセをねぎらうつもりで撫でて、一応気配を探ってみる。
なんだ? クロセル、こいつらが来た方向なんだがよ、人がいねえか?
『はい。そのようですね……それに、こちらに向かっているようです』
「おい、勝手な行動は全体の危険を呼ぶ行為だ、今回は上手く退けられたが気を付ける事だな、それにその姿はなんだ?」
俺達が森の奥を見ながら話をしていると、兵士の一人、隊長と一緒にいた兄ちゃんが話しかけてきた。
「兵士の兄ちゃんよ、まだ終わってねえみたいだぞ、ボアが来た方向に人がいてこっちに向かってる……それも五十人はいそうだ」
俺はクローセを持ち上げながら立ち上がり、クロセルにボアを収納してもらう。
「なっ、ボアが消えた……小僧は収納が使えるのか? ……おい! 聞いてるのか! さっきの質問にも答えんか!」
「兄ちゃんも聞いてんのか? ボアが来た方向から人が五十人ほど来るって言ってんのに、知らせに行くぞ」
「何? そんな事はあるはずがない! 夜の森など魔物の巣窟と言って過言ではない、そこに五十人もの人がいれば、魔物が集まってきてもおかしくない、って、待て!」
なんだか語りだしたが俺は夜営地に戻るため、さっさと歩き始めた。
(ふ~ん、その人達がボアをこっちに追いたてたのかな? 最初にぶっ飛ばした子は明らかに大きさが違ったし、何かおかしいのよね)
アンラは俺の横を歩き、クローセの顎に手をやってコショコショと撫でてそんな事を言う。
「そうなんか? そういや馬車の二倍くらいあったよな?」
『レッドボアなのですが、あの一匹以外は大きさもその通り、ですがあの大きさはキングボアかも知れません、レッドボアの上位種、このような浅いところにいる魔物では無いのですが……』
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる