8 / 149
第一章
第8話 神剣
しおりを挟む
司教のおっさんの言葉を聞いたアシアとエリスは心配そうな顔で俺を見てくる。
いや、考えようによっちゃこれ、冗談抜きに司教のおっさんの言う通りじゃないのか?
努力すりゃあ良いだけじゃん! どうせ俺は冒険者になるつもりだったんだからな。剣もまだまだこれからだし、努力すりゃ魔法も使えるんだろ? なら問題ねえ!
「おいおい聞いたか? 孤児の野郎は『努力』だってよ、アシア、エリスもそんな奴の事はもう放って、俺達とパーティー組もうぜ。二人ともこの俺様、聖騎士のカズリーの従者にしてやる」
「そうだそうだ! ガズリーが聖騎士で俺が魔法騎士、ダムドも重騎士だ。それに魔法使いのエリスと韋駄天は素早さだよな? 斥候とかできるんじゃね? どうだ? 最高のパーティーが組めるだろ?」
「い、良い、考えだな。も、もう一人、お、女の子、い、入れたら、オラ達と、数があうだ」
なんだよそれ、馬鹿げた事を言うじゃねえか。
「お断りね。私は冒険者パーティー組むならケントと組むわ。あなたの従者? そんな物お金をもらっても嫌だわ」
「私もそうですよ。組むならケント君と組みますからあなた達のパーティーには入りません」
おっと、俺は一人で冒険者をするつもりだぞ? アシアは店を継ぐから冒険者はできねえし、エリスん家も機織りの仕事があるだろうが。
(ケント。まずい事になってるよ~。洗礼してスキルが発現した途端、あいつらにとりついてるレイスの力が膨れ上がったわよ~)
アンラの言った通り、三人に引っ付いていたモヤモヤが形を取り出して、二体は目玉にコウモリみたいな羽が付いている。
ガズリーの野郎についてるやつはちっせえ人の形なんだが、肌の色が紫の気持ち悪いバケモンになりやがった。
「「な、なんだコイツは!」」
とりつかれていた三人も気が付いたのか、腰を抜かしたようにその場に尻餅をつき――。
「きゃー! ケント!」
――ちっ! アシアとエリスも気が付いたようだ。二人は抱き合いすくんでしまったのかその場から動けないでいる。俺は自然に体が動き、バケモンと二人の間に立って背中から剣を抜いて構えた。
「ま、魔物ですと! 護衛の皆さんお願いします!」
「「はっ!」」
司教のおっさんと一緒に来ていて、洗礼の時は後ろにいた白いローブを羽織った護衛の四人が、前に素早く出ると剣を抜いて一気にバケモンに向けて走り出した。
「魔物め立ち去れ! はっ!」
白銀の剣を横薙ぎに振るい三匹のバケモンをやっつけ――避けやがった!
「ギャー!」
四人の内一人が、目玉の奴に噛みつかれた。
一メートル近い大きさの目玉の真ん中から、パカッと裂けて、ギザギザの歯が何本も生えた口が開いて護衛の肩にガブリと――そのまま噛み千切りやがったぞ!
床にのたうちまわる護衛を見て怯んだ残りの三人は腰が引け、どんどん後退していきやがる。
「くそっ! 護衛のおっさんが死んじまうぞ! お前ら仲間を助けろよ!」
俺は背中の剣を抜き、のたうたまわる護衛に、さらに噛みつこうとしている目玉に向かって渾身の力を込め、おもいっきり上段から剣を振り落とした――!
――ザシュ!
ゲギャァァァァァー!
「なんだこの力は! どんどん溢れてくるぞ! ならこのまま全部やっつけてやるぜ! おりゃ! おーらおらおらおらっ!」
真っ二つになった一匹目の目玉を蹴飛ばし、床に座り込んでいる三人、ガズリー達の上に浮かんでいる目玉と紫の奴に連続で切りつけてやった。
ザシュ! ザシュ!
ゲギャァァァァァー!
グボォォォォォォー!
「うわぁぁぁぁー!」
(はぁ、それじゃあ死なないわよ、神剣を解放しなきゃ。今度は二回目なんだからしっかりしなさいよ)
アンラの言った通り、最初に切り裂いた目玉がくっつき、今度は護衛じゃなく俺の方へ飛んできやがった。
「くそっ! うがっ!」
横っ飛びに避け、床をゴロゴロと転がり、その勢いのまま立ち上がると、昨日切って、エリスに巻いてもらったハンカチから包帯に巻き直した物を乱暴にほどいて剣を握りしめる。
「······呪文なんだった! 忘れちまった!」
(あのね『契約は永遠。代償は我が血と命。我に従え』だけど――)
「そうだった! 契約は永遠。代償は我が血と命。我に従え! うおぉぉぉぉー!」
(――まあ良いけどさ、契約は永遠なんだから何度もって、あれ? まだ神剣に名前つけてないじゃない? ケント~神剣に名前つけなさ~い。じゃないと力が使えないよ~)
「何っ! んなの先に言っとけ! な、名前――って急に思いつくかぁー!」
(あはは······完全に忘れてたわ~。呼びやすい名前で良いんじゃない?)
「く、くそっ! おりゃ! ちょっと待ってろ! ってか教会に住み着いてる猫の名前しか出てこねえ! 仕方ねえ! アイツはクローセだから――せい! 神剣の名前はクロセルだ! 神剣クロセル! うおぉぉぉぉー!」
慌ててつけた名前だが上手く行ったようだぜ! おっしゃー! 神剣からまた昨日みたいに力が流れ込んできたぞ! 今度は身構えていたから体も動く!
「うおぉぉぉりゃぉぁぁー! 今度こそくたばりやがれ!」
ザシュ! ザシュ! ザシュ!
一匹に一撃ずつ叩き込み、真っ二つに切り裂いてやった――なにっ!
いや、考えようによっちゃこれ、冗談抜きに司教のおっさんの言う通りじゃないのか?
努力すりゃあ良いだけじゃん! どうせ俺は冒険者になるつもりだったんだからな。剣もまだまだこれからだし、努力すりゃ魔法も使えるんだろ? なら問題ねえ!
「おいおい聞いたか? 孤児の野郎は『努力』だってよ、アシア、エリスもそんな奴の事はもう放って、俺達とパーティー組もうぜ。二人ともこの俺様、聖騎士のカズリーの従者にしてやる」
「そうだそうだ! ガズリーが聖騎士で俺が魔法騎士、ダムドも重騎士だ。それに魔法使いのエリスと韋駄天は素早さだよな? 斥候とかできるんじゃね? どうだ? 最高のパーティーが組めるだろ?」
「い、良い、考えだな。も、もう一人、お、女の子、い、入れたら、オラ達と、数があうだ」
なんだよそれ、馬鹿げた事を言うじゃねえか。
「お断りね。私は冒険者パーティー組むならケントと組むわ。あなたの従者? そんな物お金をもらっても嫌だわ」
「私もそうですよ。組むならケント君と組みますからあなた達のパーティーには入りません」
おっと、俺は一人で冒険者をするつもりだぞ? アシアは店を継ぐから冒険者はできねえし、エリスん家も機織りの仕事があるだろうが。
(ケント。まずい事になってるよ~。洗礼してスキルが発現した途端、あいつらにとりついてるレイスの力が膨れ上がったわよ~)
アンラの言った通り、三人に引っ付いていたモヤモヤが形を取り出して、二体は目玉にコウモリみたいな羽が付いている。
ガズリーの野郎についてるやつはちっせえ人の形なんだが、肌の色が紫の気持ち悪いバケモンになりやがった。
「「な、なんだコイツは!」」
とりつかれていた三人も気が付いたのか、腰を抜かしたようにその場に尻餅をつき――。
「きゃー! ケント!」
――ちっ! アシアとエリスも気が付いたようだ。二人は抱き合いすくんでしまったのかその場から動けないでいる。俺は自然に体が動き、バケモンと二人の間に立って背中から剣を抜いて構えた。
「ま、魔物ですと! 護衛の皆さんお願いします!」
「「はっ!」」
司教のおっさんと一緒に来ていて、洗礼の時は後ろにいた白いローブを羽織った護衛の四人が、前に素早く出ると剣を抜いて一気にバケモンに向けて走り出した。
「魔物め立ち去れ! はっ!」
白銀の剣を横薙ぎに振るい三匹のバケモンをやっつけ――避けやがった!
「ギャー!」
四人の内一人が、目玉の奴に噛みつかれた。
一メートル近い大きさの目玉の真ん中から、パカッと裂けて、ギザギザの歯が何本も生えた口が開いて護衛の肩にガブリと――そのまま噛み千切りやがったぞ!
床にのたうちまわる護衛を見て怯んだ残りの三人は腰が引け、どんどん後退していきやがる。
「くそっ! 護衛のおっさんが死んじまうぞ! お前ら仲間を助けろよ!」
俺は背中の剣を抜き、のたうたまわる護衛に、さらに噛みつこうとしている目玉に向かって渾身の力を込め、おもいっきり上段から剣を振り落とした――!
――ザシュ!
ゲギャァァァァァー!
「なんだこの力は! どんどん溢れてくるぞ! ならこのまま全部やっつけてやるぜ! おりゃ! おーらおらおらおらっ!」
真っ二つになった一匹目の目玉を蹴飛ばし、床に座り込んでいる三人、ガズリー達の上に浮かんでいる目玉と紫の奴に連続で切りつけてやった。
ザシュ! ザシュ!
ゲギャァァァァァー!
グボォォォォォォー!
「うわぁぁぁぁー!」
(はぁ、それじゃあ死なないわよ、神剣を解放しなきゃ。今度は二回目なんだからしっかりしなさいよ)
アンラの言った通り、最初に切り裂いた目玉がくっつき、今度は護衛じゃなく俺の方へ飛んできやがった。
「くそっ! うがっ!」
横っ飛びに避け、床をゴロゴロと転がり、その勢いのまま立ち上がると、昨日切って、エリスに巻いてもらったハンカチから包帯に巻き直した物を乱暴にほどいて剣を握りしめる。
「······呪文なんだった! 忘れちまった!」
(あのね『契約は永遠。代償は我が血と命。我に従え』だけど――)
「そうだった! 契約は永遠。代償は我が血と命。我に従え! うおぉぉぉぉー!」
(――まあ良いけどさ、契約は永遠なんだから何度もって、あれ? まだ神剣に名前つけてないじゃない? ケント~神剣に名前つけなさ~い。じゃないと力が使えないよ~)
「何っ! んなの先に言っとけ! な、名前――って急に思いつくかぁー!」
(あはは······完全に忘れてたわ~。呼びやすい名前で良いんじゃない?)
「く、くそっ! おりゃ! ちょっと待ってろ! ってか教会に住み着いてる猫の名前しか出てこねえ! 仕方ねえ! アイツはクローセだから――せい! 神剣の名前はクロセルだ! 神剣クロセル! うおぉぉぉぉー!」
慌ててつけた名前だが上手く行ったようだぜ! おっしゃー! 神剣からまた昨日みたいに力が流れ込んできたぞ! 今度は身構えていたから体も動く!
「うおぉぉぉりゃぉぁぁー! 今度こそくたばりやがれ!」
ザシュ! ザシュ! ザシュ!
一匹に一撃ずつ叩き込み、真っ二つに切り裂いてやった――なにっ!
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果
kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。
自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。
魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる