上 下
15 / 48
第1章

第15話 幼馴染みとの再会と奴隷の腕輪 ②

しおりを挟む
 俺の疑問をよそに委員長はさらに話を続けるから耳を傾けながらまわりのみんなの様子も見ておく。

「その為に僕達召喚者は強力な精神耐性の魔道具を嵌めておかないとやっていけないそうですよ、僕達は神様から『精神耐性弱』をもらってはいるけれど、やはり沢山の血なんかを見るとね」

「そ、そう言うことか」

「それに神様に言ってもらえなかったアイテムボックスも付いてるようです、まあ、それほど大きな容量ではないみたいですけどね」

「おお! それは欲しいよな、鑑定も必要だったけど、鑑定は付いてないのか?」

 委員長は首を振り、無いんだと分かった。

 森辻と国分が話している間も、みんなは次々と腕輪の魔道具を受け取り、ついに俺の手にも渡され、嵌め方の説明をしてくれるそうだ。

 ふと、握った魔道具から顔を上げると、テーブルの対面にいた幼馴染みの西風にし あかねの姿に目がいった。

 他のみんなは受け取った腕輪を『かっけー』とか『可愛い~』などと、一つひとつ形やガラの違いをキラキラした目で見ているのではなく、青ざめた顔で手に持つ腕輪の魔道具を見つめている。

 なぜすぐに茜ちゃんと気が付かなかったんだろうと思ったら、あるべき物がなかった……。

 産まれてから毛先を整えるだけで、バッサリと切ったことがないと言ってた真っ黒で艶々で、触ると凄く手触りが良かった腰まで伸ばしていた髪の毛が、無理矢理切ったばかりと思える段違いの髪型だったからだ。

 その小顔で色白な肌にうっすら桜色の小さな唇に、真っ黒な大きい瞳がわなわなと震えている。

 そんな姿で青白い顔色をして何を見ているんだろうと思ったら何か口を動かしたのと同時に茜ちゃんの頭の上にあの文字が浮かび上がった。

 ――――――――――――――――――――

 うそ……これって精神耐性とアイテムボックスはついてるけど、奴隷の魔道具じゃない……。

 こんなの嵌めちゃったら……ど、どうしよう、みんなに教え……駄目ね、友里ゆうりくんが学校に来なくなってからいじめられていたのは私だもん、誰も話なんて聞いてくれないよね。

 ――――――――――――――――――――

 くそ、髪の毛はそのせいか……茜ちゃんが……俺の代わりにだなんて森辻の奴……そ、それもだけど、奴隷の魔道具なのかこれ……。

 まずいぞ、やっぱり召喚の部屋で騎士達が言ってた通り、奴隷にするつもりだ。

 俺が受け取った腕輪を鑑定したが、やはり奴隷の魔道具のようだ。

 ――――――――――――――――――――

 奴隷の腕輪 精神耐性(中)、アイテムボックス(小)付き、取り外し不可
 ※奴隷主 ビスマス王

 ――――――――――――――――――――

 国分が言ってた精神耐性とアイテムボックスの機能は付いてるけれど、取り外し不可で奴隷主が王様だ。

 茜ちゃんを鑑定すると、やっぱり看破のスキルを持っている。

 鑑定じゃないけど、俺も持っていた看破のスキルを使うと奴隷の魔道具ということだけが分かった。

「茜ちゃん、これ」

「ゆ、友里くん。さっきは見当たらなかったけど友里くんも召喚されちゃったんだ」

 うんと頷き今度は念話を飛ばしてみる。

『茜ちゃん、返事は頭で考えてね、声に出さなくても通じるはずだから』

「へ?」

『あっ、こ、こうかな? もしもし茜です、友里くん聞こえますか?』

 一瞬声を出しかけたけど、すぐに念話で話しかけてくれた。

『聞こえているよ、今は時間がないからその腕輪を違う物に交換しちゃうね』

 それだけを念話で飛ばし、自分用の王冠と、茜ちゃんが持っている腕輪を一瞬で取り替えておいた。

 もちろんイルが持っていた腕輪もだ。

『うそ! 腕輪が変わったよ! それに身体強化の腕輪だよ!』

『うん、みんなの分は手持ちがないから無理だけど、俺と茜ちゃんの分だけは交換しておこう』

 まわりは一番後ろの席の俺達には見向きもしてないから、気付かれてはいないだろう。

 みんなは次々と魔法使いの格好をした爺さんに言われるがまま腕輪を嵌めてしまっている。
 俺が持つ腕輪の数も足りないが、半分以上が既に嵌めてしまっているから今さら交換も間に合わない。

『茜ちゃん、なんとかここから抜け出すことを考えないとまずいんだ』

『で、でもみんなは――ああ、もう嵌めちゃってます』

 俺から視線をはずして、奴隷の腕輪をなにも考えずに嵌めてしまったみんなの事を見て、オロオロしだした。

 このままではまずいな……考えろ俺……。

 ――――っ! そうだ!

『茜ちゃん、とりあえず嵌めて、その腕輪なら問題ないから。後、ステータスは誰にも言ってない? 知ってる人がいたらこれも難しいんだけど』

 俺は茜ちゃんの返事を待たずにイルのステータスを擬装しておく事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...