【完結 R18追放物】勇者パーティーの荷物持ち~お忍び王女とダンジョン攻略。あれ? 王女のダンジョンも攻略しちゃいました~

いな@

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第一章

第43話 夜の森で

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 ん? 魔物か······数は少ないが、仕方ないな、まだ誰も動きがないという事は気付いてないんだな。

 俺は引っ付いているエイアとセレーナ、セレーナの向こうのリーンを起こさないように枕にされている腕を抜き、毛布から抜け出て装備を整える。

「アイテール様、どうかしましたか?」

「起きていたのか、ああ、十数匹だがたぶんゴブリンかな魔狼ならもう少し動きが早いからな、ちょっと行って倒してくるよ、俺がいない間は任せた」

「兵には知らせないので? 十数匹でしたらアイテール様が出るほどではないかと思いますが」

「いや、兵士達はまだ王都まで気の休まる事がないだろ? この程度なら俺が行って何事もなかったようにしておけば良いさ。それに一キロほど離れているからな、夜の森では兵士達には見付けられないだろ? 俺は夜目の魔法があるから」

「そ、そのような遠いところの気配を!?」

「だが、確実に近付いてきてる。今夜は人が多いから余計だろうな、まあ、まだ余裕があるが、痛っ、ん? すまない、ちょっと引っかけてしまったようだ、たぶん留め具なんだが見てくれないか?」

 らしくない、髪の毛ががっつり鎧下に引っかけてしまったようだ。

「くふふ。私も良くやります、少々お待ちを。あらやっぱり、これなら······はい」

 引っ張られていた髪の毛が外れた。

「ありがとう。よし、後は胸当てを······」

 胸当ての角が鎧下に当たるように調整しながら固定して、ベルトにダガーを取り付け完了だ。

「じゃあみんなをよろしくな」

「はい。行ってらっしゃいませ。ご武運を」

 俺は見送られ、テントを出て森に向かう。

 森に入り、真っ暗闇になる前に夜目の魔法をかけて、昼間と同等に景色が見えたところで俺は五百メートルほどまで近付いてきた魔物に気配を消しながら駆け足で向かう。

 これはゴブリンでもないな、魔狼が歩いていたのか、それも一匹気配を消しているが、ガルム? こんな森の浅い場所にいるとはな······くくっ、胸当ての補強と、冬用の鎧下にさせてもらおう。

 俺は少し下草が少なく、木の間隔が広い場所で待ち伏せすることにした。

 残り五十メートル。

 三十メートル。

 十五メートル。

 カサ······カサと下草の揺れる音が近付き――。

 先頭がガルムだな、おっとこいつは大物だ。俺は魔力を高め、ガルムに向けて左手を伸ばし無詠唱で――ウインドアロー!

 体高が魔狼より一回り大きいガルムは一メートルほどの高さの下草から完全に体が見えている。

 毛皮に無駄な傷が付かないよう狙うのは眉間だ。目に見えないウインドアローは狙い通りに目と目の間にブシュッと音を立て穴を開けた。

 ガルムは死んだ事にも気付かず、数歩進み、カサッと音を立てその場で伏せるように崩れ落ちた。

 それを俺は収納。そして魔狼達はいきなり伏せて、姿を消したガルムを探すように、茂みで見えなかった首を伸ばすように下草から出し、キョロキョロとボスを探しているところを――ウインドアロー!

 ブシュッ、ブシュッ······。

 残さず十五匹の魔狼を撃ち抜き、ガルムと魔狼の群れを倒しきった。

「ふう。上手く行ったな、魔狼も収納! よし帰るか」

 途中、珍しいキノコが群生している倒木を発見し。

「おお! 良い物があったな、これをスープに入れるか、焼くと美味いんだよな」

 キノコを根こそぎ採取して、夜営地に戻ってきたのだが、出掛けた時と同じで平和そのものだ。

 そしてテントに戻ると。

「お帰りなさいませ。魔物はいかがでしたか?」

「問題ない。魔狼とガルムだったが、全部倒してきたぞ」

「おお! それは良いものを狩れましたね。ではまだ夜も半ばですから休んで下さいアイテール様」

「ああ、そうさせてもらうよ」

 俺はダガーを外し、胸当て鎧下を脱ぎ、今さら真ん中には入れないため、木箱の寝台の端に寝転ぶと目を閉じ、すぐに眠気が来て、寝てしまった。


 ん、動き始めたか、朝だな。

 外が少し慌ただしくなったのを感じ、目が覚めた。よし、朝ごはんでも作るか。

 そっと身を起こすと。

「おはようございます。昨夜はガルムを倒したと聞きました。お陰で何事もなく皆疲れを取る事ができました」

「おはよう。いや、アレくらいならいつもやっていた事だからな、それにガルム達が来るまでは俺も寝ていたし、その後も寝てるだろ? んっと、じゃあ朝ごはんでも作るよ」

 起き上がり、装備を······よし、今朝は引っ掛からずに装備も完了。テントを出て火を起こし、湯を沸かしていく。

「アイテール様おはようございます。昨夜はありがとうございました」

「流石ですねアイテール様」

「おはようございます、ガルムを倒したと聞きました――」

 火の番をしている俺に、近くにいた兵士達が次々と朝の挨拶と、お礼を言ってくるが、参ったな、俺としては、ガルムなんて良い素材が手に入った幸運な魔物襲来だったのだが。

「アイテール。朝から報告来たぞ、また活躍だそうだな。助かる」

「公爵様、奥様。おはようございます。いえ、胸当ての補強素材を狩りに行っただけでしたし、こうもみんなに褒められると」

 沸きだした鍋に干し肉に野菜、そしてキノコを投入する手を止め、苦笑いをしながら返事をする。

「くくっ、まあお前なら余裕だろうな。食事の後出立だ。今日も頼む。それから美味そうだな」

「ああ、このキノコですか、討伐の帰りに見付けてきたんです。倒木一本で大量に生えていたから根こそぎ採取ですね、公爵達も食べていきますか? 多めに作っているから二人分は余裕があるし」

「くくっ、中々公爵を食事に誘う奴などおらんからな、まあ良い私達は簡単な物を食べてしまったのだ······だが美味そうだな、少し分けてもらうとするか」

「はい。煮えるまで、もう少しかかるので、エイア達もまだ寝てますか――」

 そこへテントが開き、護衛とエイア、リーン、セレーナが続いて出てきました。

「おはようアイテール、それからおじさんとおばさんも。アイテールったらガルムを倒したんだって、見させてもらおうよ!」

「おはようエイア」

「おはよう。私も見てみたいな、鍋が煮えるのを待つ間に見せてもらえるか?」

「ん? 良いぞ、と言っても収納はできるだけ隠していたんだがまあ良いか、テントの影にだすぞ、ほいっと!」

 ズン。
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