最愛の敵

ルテラ

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チャムク帝国

89話 真実(1)

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 チャムク帝国の中流貴族に生まれた私は忌み子だった。この魔法のせいでね。未来を見通す力『ビジョン』。
 素晴らしい魔法だって?それは違う。
 これは帝国をも揺るがす力だ。未来が分かると言うことは今後の帝国の行方も分かる。私がこうだっと言えば国はそうなる。つまりは嘘をついて国を自由自在に操れる。この独裁帝国では脅威となる。親はそれが分かっていた。だから私の魔法を徹底的に隠した。
 私が殺されないように?それは違う。親がいつだって心配するのは家のことだけだ。だから私の魔法を徹底的に隠したいのにも関わらず、軍人貴族だったため私はまもなく軍に入った。
 楽しかったか?冗談はよしてくれ。最悪だったよ。魔法が全ての国で魔力のみの私は異端だった。そんな時、ある昔話を読んだ。遠い昔の話。お前には読んだことがあるだろう?『世界の英雄』、思わず自身と重ねてしまったよ。世界を平和にしようと1人で頑張る英雄と全ての罪を1人で背負わされた悪魔。私は魅力させられ、同時にこの2つの魔法を手に入れることで世界を手に入れられると。
 そんなに世界が欲しいか?誤解しないで欲しい。世界を手に入れるなんて興味はない。あるのは私を見下した者達を見下しただけさ。
 心が小さい。何とでもいえばいい。私は憎んでいるからそうしたいのではなく。ただ滑稽なだけさ。
 何故滑稽か?それはね。私の魔法を周りが思う以上に万能ではないっと言うことさ。私の魔法は私が望んでみたい未来はせいぜい30分程が限界さ。
 それ以上は見えないのか?いや、見れるよ。ただ神託の様に突然、見えるのさ。いつ起こるか分からない未来。不確定な未来。確実な未来。未来とは0さ。それだけ可能性がある。私の魔法はその程度しか見えない。
 何故言わなかったのか?言ったろ滑稽だったからさ。びっくり箱と同じさ。中身が分かっていれば怖くはないが分かっていなければ人は怖がる。私の魔法を何も知らない親も私のことを知ったように嘲笑う奴らもまさにそれさ。笑わない様にするのに苦労したよ。
 っと前置きが長くなったね。どうやって“あれ”を作ったかだね。苦労したさ。そうと決まれば行動あるのみ軍人から、研究員に転身した。親は弟に後を継がせるつもりらしく、関心はなかった。おかげですぐに研究にとりかかれた。もちろんこれは禁忌の実験さ。だから表向きは兵器魔道具の開発と称した。そして家には金がたんまりあった。それを使って、迫害された研究員を密かに救い。『オムニブス』を結成した。
 何故、オムニブスにしたか?みんなの為になるからさ。人は光を求める生き物。だから作ってやるのさ不滅の光、絶対的な力の存在をね。そしてそれを手にした瞬間、人々は私に平伏す。それからは本当に長かった。まずは光や闇、云々の前にそれに足りうる器を造らなければならなかった。もちろん光と闇持ちの者達も並行して探したさ。多くの者が最終段階までいかず壊れていった。そしてやっと最終段階までいった者に先に見つけた闇持ちの魔法を移植したが結果は散々だった。拒絶反応を起こして壊れた。全く世の中上手くいかないことばかりだね。
 そこである考えに至った。どちらかを持っている者にどちらかを移植すればいいのではないかっと。でも2つともそう簡単に見つかるもんじゃあない。だから可能性があることは何でもやったさ。例えば、結婚とかね。
 何故結婚か?結婚が目的ではなくあくまで、子さ。
 魔法は遺伝しないからね。当然こんな複雑なものが遺伝するわけがない。遺伝することもある様だけどね。自身と同じまたは系統が同じとか。それはどうでもよかった。本題はもしかしたらどちらかが産まれてきてくれるのではないかという可能性を信じたかった。それに幼い頃から洗脳しておけば噛みつくこともないだろうし、一石二鳥だ。だが失望したよ。2人も受けたがどれも検討違いもいいところさ、殺してしまおうとも思ったが、世間の目を欺くにはいい父親を演じることも必要だと思い生かしておいた。そして再び模索した結果、閃いた。何故今まで思いつかなかったのか、何故見落としていたのか、自身に嫌気がさすほど単純明解なやり方さ、光と闇持ちを男女にすればいい。ただそれだけのことだったのさ。
 魔法は遺伝しないっと私がさっきいった?そうだね。言ったね。でもね。この世に当たり前が存在するなら“例外”も存在するんだよ。この2つは私をどこまでも虜にさせるんだろうね。この2つは遺伝する。
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