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エウダイモニア
83話 心(2)
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「なら必要ありませんね」
ラズリの言葉にホルスが首を振るう。
「ふむ、ラズリ、君にとって人の温もりは苦痛かもしれない。だが今だけだ。いつか分かる。人の温もりがどれ程、尊いのかを」
「ですが、全て話します」
3人は驚いた様な顔する。ラズリは分かっていた。彼らはあの日のことを聞きにきたっと。
ラズリは先程の会話から目を背ける様に話し始める。そこで何が行われていたのか。白衣の後ろに星、星の真ん中に三角形が描かれていたこと。
話し終えるとレアが泣いていた。
「ごめん、ごめんね。もっと早く見つけてあげられれば、ごめん・・・」
ラズリは何故レアの顔が濡れているのか分からなかった。
そこ後レアは自身を落ち着かせるため席を外す。
「ラズリ」
今まで黙っていたパーチミが口を開く。
「悪かった。何も知らないくせにお前を疑った。すまなかった」
恥ずかしいがっているのかこちらを見ない。
「いえ・・・」
ホルスはその沈黙が耐えられず口を開く。
「そう・・・」
「保護したという奴は何処だ?」
ラズリは初めて聞いた声だった。しかしホルス、パーチミは馴染みのある声だった様で脊髄反射の様に後ろを向き、敬礼する。
「大佐!」
「よい、構わん楽にしろ」
ガタイがよく、腕章をジャラジャラと付けた中年男性が近づいてくる。その後ろでレアが心配そうにしている。
「こいつが保護したという?」
「はい。先程、調書しましたので、まとめ次第報告されていただきます」
大佐は頷く。そしてベッドで上半身だけ起こしているラズリを見る。
「お前、軍に入らないか?」
3人に衝撃が走る。
「大佐、お言葉ですが・・・」
「お前に意見を求めた覚えはない!」
大佐はホルスを睨みつける。
「申し訳ございません」
「贖罪にはうってつけの場所だ」
「贖罪?」
「お前は大勢の人間を殺した。そんな人間は償わなければならない。だが償うのはとても大変なことだ。多くのものが贖罪できずに死ぬ」
ホルスは今にでも曹長に襲いかかりそうな程、殺意ある目で睨めつける。何とか理性を保っていたのはパーチミが腕を掴んでくれていたからだろう。
「しかし、お前は運がいい。ここは合理的かつ効率的に償うことが出来る。大勢のものを救い守ることが出来るのだからな。どうだ?」
教祖の様に教えを説く様に話すが顔には欲まみれな不敵な笑みが浮かぶ。
「入ります」
「分かった。ホルス、お前が面倒を見ろ」
ホルスは手を強く握る。逆らうことは許されない。
「・・・了解しました」
ホルスの返答を聞くと大佐はその場を後にする。
その後、ホルスはレア、パーチミを廊下へと連れていく。
「ホルス、パーチミお願い止めて!」
血の気が引いたのかいつもより白い顔でレアが懇願する。
「あの子はまだ子供よ。命の重さも分からない子に・・・間違ってる!」
パーチミは確かに、っと思いため息を静かにつく。
「レア、それは違う。あの子は誰よりも命の価値を分かっているよ」
レア、パーチミは首を傾げる。
「ふむ、初めて会った時の話しをしたろ?あの子は死を望んだと。それは自分に価値が無くなったからではなく命を奪った償いをしようとしたんじゃないかって思うんだ」
扉が閉まったラズリのいる部屋を見る。
「心さえ生きていればどうにでもなる。心が死んでしまった時、人は命の価値が分からなくなり、死んでしまう。あの子が今こうして生きているのは命の価値分かっている。あるいは理解しようとしているんだよ」
再びレアに視線を戻す。
「ふむ、確かに選択した結果は余り喜ぶべきものではない。だが今はそれでいい。分からないのなら学べばいい。それだけのことだ」
ホルスはパーチミを見る。
「パーチミ、学ぶ為には生きなければならない。生かす為に協力してくれないか?」
「あんなこと聞いて見て見ぬフリなんて出来ねぇよ。協力するよ」
ありがとう、っと感謝を述べる。
「で、これからどうするんだ?」
「ふむ、やっぱり歳の近い子の方が心を開けやすいと思うから、あの子達に合わせて見よう」
レア、パーチミはなるほど、っと笑う。
後日、ラズリを車椅子で何処かで連れてがれる。本当は歩けるもののレア希望もあり車椅子で移動。ホルスが押し、レア、パーチミが後をついて行く。
「もう少しだからね~」
ホルスは何処か浮かれている。ホルスだけではないレアもパーチミも楽しみを隠せないでいる。
「さあ、ここだ」
扉を開けるとそこは広い空間で下には砂がひかれている。おそらく訓練所だろう。奥に4人、遊んでいた。
「おいで」
ホルスが呼びかけると4人は早足で近づいてくる。
「昨日話したでしょう?自己紹介しなさい」
レアに促され順番に自己紹介する。
ラズリの言葉にホルスが首を振るう。
「ふむ、ラズリ、君にとって人の温もりは苦痛かもしれない。だが今だけだ。いつか分かる。人の温もりがどれ程、尊いのかを」
「ですが、全て話します」
3人は驚いた様な顔する。ラズリは分かっていた。彼らはあの日のことを聞きにきたっと。
ラズリは先程の会話から目を背ける様に話し始める。そこで何が行われていたのか。白衣の後ろに星、星の真ん中に三角形が描かれていたこと。
話し終えるとレアが泣いていた。
「ごめん、ごめんね。もっと早く見つけてあげられれば、ごめん・・・」
ラズリは何故レアの顔が濡れているのか分からなかった。
そこ後レアは自身を落ち着かせるため席を外す。
「ラズリ」
今まで黙っていたパーチミが口を開く。
「悪かった。何も知らないくせにお前を疑った。すまなかった」
恥ずかしいがっているのかこちらを見ない。
「いえ・・・」
ホルスはその沈黙が耐えられず口を開く。
「そう・・・」
「保護したという奴は何処だ?」
ラズリは初めて聞いた声だった。しかしホルス、パーチミは馴染みのある声だった様で脊髄反射の様に後ろを向き、敬礼する。
「大佐!」
「よい、構わん楽にしろ」
ガタイがよく、腕章をジャラジャラと付けた中年男性が近づいてくる。その後ろでレアが心配そうにしている。
「こいつが保護したという?」
「はい。先程、調書しましたので、まとめ次第報告されていただきます」
大佐は頷く。そしてベッドで上半身だけ起こしているラズリを見る。
「お前、軍に入らないか?」
3人に衝撃が走る。
「大佐、お言葉ですが・・・」
「お前に意見を求めた覚えはない!」
大佐はホルスを睨みつける。
「申し訳ございません」
「贖罪にはうってつけの場所だ」
「贖罪?」
「お前は大勢の人間を殺した。そんな人間は償わなければならない。だが償うのはとても大変なことだ。多くのものが贖罪できずに死ぬ」
ホルスは今にでも曹長に襲いかかりそうな程、殺意ある目で睨めつける。何とか理性を保っていたのはパーチミが腕を掴んでくれていたからだろう。
「しかし、お前は運がいい。ここは合理的かつ効率的に償うことが出来る。大勢のものを救い守ることが出来るのだからな。どうだ?」
教祖の様に教えを説く様に話すが顔には欲まみれな不敵な笑みが浮かぶ。
「入ります」
「分かった。ホルス、お前が面倒を見ろ」
ホルスは手を強く握る。逆らうことは許されない。
「・・・了解しました」
ホルスの返答を聞くと大佐はその場を後にする。
その後、ホルスはレア、パーチミを廊下へと連れていく。
「ホルス、パーチミお願い止めて!」
血の気が引いたのかいつもより白い顔でレアが懇願する。
「あの子はまだ子供よ。命の重さも分からない子に・・・間違ってる!」
パーチミは確かに、っと思いため息を静かにつく。
「レア、それは違う。あの子は誰よりも命の価値を分かっているよ」
レア、パーチミは首を傾げる。
「ふむ、初めて会った時の話しをしたろ?あの子は死を望んだと。それは自分に価値が無くなったからではなく命を奪った償いをしようとしたんじゃないかって思うんだ」
扉が閉まったラズリのいる部屋を見る。
「心さえ生きていればどうにでもなる。心が死んでしまった時、人は命の価値が分からなくなり、死んでしまう。あの子が今こうして生きているのは命の価値分かっている。あるいは理解しようとしているんだよ」
再びレアに視線を戻す。
「ふむ、確かに選択した結果は余り喜ぶべきものではない。だが今はそれでいい。分からないのなら学べばいい。それだけのことだ」
ホルスはパーチミを見る。
「パーチミ、学ぶ為には生きなければならない。生かす為に協力してくれないか?」
「あんなこと聞いて見て見ぬフリなんて出来ねぇよ。協力するよ」
ありがとう、っと感謝を述べる。
「で、これからどうするんだ?」
「ふむ、やっぱり歳の近い子の方が心を開けやすいと思うから、あの子達に合わせて見よう」
レア、パーチミはなるほど、っと笑う。
後日、ラズリを車椅子で何処かで連れてがれる。本当は歩けるもののレア希望もあり車椅子で移動。ホルスが押し、レア、パーチミが後をついて行く。
「もう少しだからね~」
ホルスは何処か浮かれている。ホルスだけではないレアもパーチミも楽しみを隠せないでいる。
「さあ、ここだ」
扉を開けるとそこは広い空間で下には砂がひかれている。おそらく訓練所だろう。奥に4人、遊んでいた。
「おいで」
ホルスが呼びかけると4人は早足で近づいてくる。
「昨日話したでしょう?自己紹介しなさい」
レアに促され順番に自己紹介する。
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