最愛の敵

ルテラ

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エウダイモニア

54話 懐かしい思い出(2)

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「ご馳走様でした。食べれたかな?」
 アイシャの方を見て言う。
「はい」
「よかった」
「あの!ありがとうございました。こんな俺達を助けてくれ・・・」
 パン
 ホルスが手を叩く。
「そんなこと言っちゃいけない。君達は人だ。誰がなんと言おうと、盗むのは悪いことだ。だが、そこには生きたいっという強い意志があったからだ。惨めでいい、後ろ指を指されてもいいじゃないか。少なくとも僕は必死に生きている人間を馬鹿にはしない」
 2人は思わず笑みをこぼす。男は優しく頭を撫でる。
「そういえば、叔父さん名前は?」
「そういえば名乗ってなかったね。僕は『ホルス』だ。よろしくね。トート君、アイシャちゃん」
「あれ?名乗ったけ?」
「2人が名前で呼んでたから」
 そういえば、っと2人は顔見合わせる。
「君達が良ければ、僕の所に来ないかい?」
 2人はキョトンっとする。
「僕は軍人でね。妻と息子2人と仲間達で暮らしているんだ。そこで一緒に暮らさないかい?」
「でも・・・俺達、スラムの子供だよ?」
「関係ないよ。いったろ?僕は必死に生きている人間を馬鹿にはしない。むしろ助けられるなら助けたい。僕達の所で勉強して、なりたいものを目指そう。なりたいものがなければ探そう。人は生きている限り夢を追う生き物だから。夢は人が生きるために必要な原動力だから」
 だが余りにも突然なことで困惑する。
「もし無理そうな。すぐにここに帰って来れる様にしておこう。もちろん一度手を伸ばしたからには、君達が大人になるまで援助するつもりだから、君達自身がどうしたいか決めるといい」
 ホルスは2人が話しやすい様に席を外す。
「どうする?」
「俺は・・・」
 軍人に強姦されている姉の姿が脳裏によぎる。それでもホルスの温かさを手放せる程、強くはなかった。
「行きたい」
「でも・・・」
 アイシャは驚く。アイシャにとっても軍人はいいイメージではない。
「分かってる。今でも軍人は嫌いだ。でも、ホルス見てたら、なんか拍子抜けっていうか・・・全部が全部そうじゃない気がしてきて・・・許す訳じゃない。でも初めて与えられた、このチャンスを無駄にしたら一生後悔しそうだから、俺は行きたい」
 フィールの目は希望に満ちていた。
「それにホルスは軍人になれなんて一言も言っていない、なりたい者になるための手助けをしたいって言ってたんだ。悪い話じゃないはずだ」
「わ、私も行く!私も夢を見つけたい」
 2人は頷き合い、ホルスを呼びに行く。

「そこで俺らはホルスの所で世話になったんだ」
「でも、驚いたよね。まさか基地での生活だなんて」
 ホルスはチャムクではお尋ね者だ。それゆえに家族も身を隠す必要があった。妻は軍の医師だったため派遣という形でそちらに匿い。昔は保育制度がなかった為、子供達は特別処置として軍人と共に基地で暮らしていた。
「それにその日に行ったはいいも、まだ話しが何にもしていなかったしな」
「なんとか、なる成るって言ってたけど、まさか本当になんとか成るなんてびっくりだよね」
「分かります」
 正面を向くと汗だくとレオさんがいた。どうやら終わった様だ。
「俺も驚きました。今日から家族が増える。なんて言われても着替えの服とかありませんでしたから」
「論点がそこな時点でお前もお前だ」
 フィールさんが呆れ顔で突っ込む。確かに、っとアイシャさんが笑う。
「そろそろ再開だ」
 ラズリさんが息一つ切れていない状態でこちらに来る。
「トートには何を教えていた?」
「魔法がフィジカルなので体術がメインでした」
「魔法の発展をそろそろ教えろ」
 魔法は3つの区分に分けられる。一つ目は下級魔法。私生活が困らない程度のレベル。多くの人達がそこまで。2つ目は中級魔法、人を殺せる程の威力がある。軍に入ると徹底的に訓練する。3つ目は上級魔法、魔力を大量に消費すると同時に魔力だけでなく、集中力など扱うために多くの条件が必要な為、多くの者が挫折する。
「皆さん、上級魔法は全員扱えるんですか?」
「はい。少なくとも2つ扱えますよ」
「2つも・・・」
「一つ覚えちまえば皆んな同じだ」
「だね」
「魔力暴走もあるので土台はしっかり固めてからやりましょう」
「ラズリ、今から教える感じでいいですか?」
「ああ。出来なかったらそれはそれでいい、元々、出来なくて当然だからな。出来ずともやったことに意味がなくなる訳ではない。魔力向上、集中力のアップなど色々ある。損はない」
「はい、よろしくお願いします」
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