最愛の敵

ルテラ

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エウダイモニア

59話 替え玉

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ー約1週間前ー
 自分らがビーチバレーをしている頃。
「ラズリ様には早めにお伝えすべきかと思い」
 『影』はストゥルティが作物を収穫した所ばかりを狙っていることを報告した。
「『影』」
「はい」
「ワープ装置を使い急ぎ、ライも来させろ」
「御意」
 トート達が訓練をしているとき、
「着いたよ。どうしたの?」
 ライが到着した。
「替え玉作戦を行う」
 作戦前にそれをレオ、フィール、アイシャ、セリアに伝えた。

「っと言う訳です」
「えと・・・、つまりライがラズリさんでラズリさんがライだったん・・・ですか?」
「そう言うこと。お前が遅れてきた時にはすでに2人は入れ替わってたんだ」
「それにラズリは村の人達を見捨てる気は毛頭なかったのよ」
「隠す必要あります?」
「まっ修行の一環だと思え」
 雑だ。
「敵はどうなりましたか?」
 話しを切り上げるようにレオさんが問う。
「全員確保した」
 そう言ってラズリさんは後ろを向く歩き出す。
 村の中央にストゥルティが縛りあげられていた。
「彼らがストゥルティ?」
 どんな荒れ狂う集団かと思ったが、かなり落ち着いている。
「お疲れ様です。皆様」
 『影』さんが現れる。
「警察が時期、来るかと」
「分かった」
「じゃあ俺らは失礼するよ」
 ライと『影』さんはここを去っていった。
 間もなくして警備隊が来てストゥルティを引き渡す。もう抵抗することはないだろう。
「あの村の人達は?」
 トートが不安そうに聞く。
「近くの村々に分散しています」
「一旦帰るか」
 フィールさんが伸びをしながら言う。
「ああ」
 自分らは宿に戻る。 
「皆んな!お帰りなさい」
 セリアさんが食堂から迎える。どうやら自分らが帰ってくるのを待っていてくれたようだ。
『ただいま』
 皆んなが言う(ラズリは頷く)。
 皆さん軽く話したらそれぞれの部屋に戻り寝る。
 再び目が覚めたのはお昼を過ぎた頃だった。
 
 その後再び村に戻り各地に避難していた村人を呼び戻し後のことは警察に任せるため、情報のき引き継ぎなどを行った。自分らはストゥルティと領主を皇帝の元へ連れて行く為、ついでに帰還することとなった。
 自分らは宿を引き払い、ワープ装置の所に向かっていた。ラズリさんは一足速くワープ装置の元へ向かった。
「すっかりお昼だね」
「帰るにはちょうどいいでしょう」
「トートどうしたの?」
 上の空だった自分にセリアさんが声をかける。
「え?あっはい・・・」
「なんか気になることでもあるんか?」
「いや、そのラズリさん凄いなって」

 ラズリさんは村の住民が揃うとすぐに謝罪をした。
「申し訳ありませんでした。あなた達の家や村を守れず」
「よしてくだされ、パイロンさん。命があっての今じゃ。生きているだけで儲けもんじゃよ。助けてくれて守ってくれてありがとうございます。この命大切にします」
 村長がラズリさんに頭を下げる。それに続くように村人達も謝る。

「あの村はどうなるんでしょうか?」
「捕まった領主からたんまり賠償金が支払われるだろうし、皇帝が支援するだろうよ。俺らが心配することじゃねぇよ」
「そうですね」
 全員が集まる。
「行くぞ」
『了解』
 自分らはカエレスへ帰還した。
 ワープ装置は皇城の敷地内にあるため、ストゥルティと領主は皇城の地下へと幽閉され裁判の時を待つ。

 その後、記事では『パイロン死者一名も出さずにストゥルティ全員逮捕!』という見出しで持ちきりとなった。
 
 皇帝への報告が終わり屋敷へと帰る。
「いやー、ストゥルティあれ本物か?」
「どんな荒れ狂う集団かと思ったけど拍子向けね」
「誰かの説教が聞いたのかもね」
 セリアさんがラズリさんの方を見る。
「・・・」
「どうい・・・」
「トート」
 自分は硬直する。
「ん?」
 自分以外の全員が後ろを振り向いた後、自分の方を見る。
「(嘘だ・・・違う・・・)」
 冷や汗が出る。忘れる訳がない。

パチン バタン
「い・・・て・・・」
 自分は頬を叩かれ尻もちをつく。
「恥晒しが!!なぜ反撃をしない。なぜヤラっれぱなしなんだ!」
高級なスーツに身を包みんだ人が怒鳴る。その後ろに高級なドレスに身を包んだ人が自分を軽蔑した目で見る。
「お前がフィジカルなんかに生まれたせいで!」
「(違う自分は望んだわけじゃない)」
「一族の恥晒しが!」

 その声を忘れる訳なかった。自分がこの世で最も恐れる人、決して逆らってはならない人。しかし自分は願った自分の勘違いであって欲しいと。ゆっくりと振り返る。だがその願いは叶うことはなかった。
「・・・父さん」
 自分は絶望する。
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