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アデリア戦
31話 フィール
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指揮官達がいるテントへと向かう。
「お越し頂き感謝します」
「いいえ、どうしました?」
「これからのことについてなのですが」
「何か問題でも?」
「いえいえ、むしろ予定より速く進んでいるため嬉しい限りです。2ヶ月以上かかると思いましたがこれなら1ヶ月程度で制覇できるかもしれません」
「海の所まではでしょう?」
「ええ、まぁ」
仕方のない事だ。アデリア帝国の首都は海の向こうにありそこまで行くのにも船で行かなければならない。飛行機なら速いがフィール達の部隊も含めると不可能だ。いくら向こうに約3万の兵がいるからといって油断は禁物。なるべく大勢で一気に行き敵を倒す。ので船という選択肢をとりざるを追えない。
テントを出て再び月を見る。
「(2ヶ月に比べたら短いけど・・・)
静かにため息を吐く。
そんなアイシャを眺める様に月は美しく光続ける。
2週間という長い月日は流れた。自分らはフィールさんに会っていない。敗残兵の後を追いかけたきり会っていない。生きている事はわかっていた。
自分らは敵も何もいない荒れ果てた地を歩き続けた。
そんなある日、自分らは久しぶりに大きな爆発音を聞く。
「先に行きます!」
自分は兵達よりも先に爆発があった場所へと赴く。誰かが言い争っている。何処かで聞いた懐かしい声。そうだこれは。
「(フィールさん!アイシャさん!よかった無事なんだ)」
だが安心は束の間驚きへと変わる。
「フィールやめなさい!」
「こいつ!離せアイシャ!」
2人の兵にフィールさんは腕をロックされ、アイシャさんがフィールの前に行き両肩を掴み必死に抑えていた。
「(何が?)」
自分はアイシャさんの後ろに縮こまっている兵に気付く。しゃがんでいる兵の地面は赤く染まっている。
「フィールさん!アイシャさん!」
自分は状況を整理するため駆け寄る。
「トート!」
フィールさんを止めながらこちらを見る。
「何があったんですか?」
「そこを退け俺の邪魔をするなら殺すぞ」
仮面の中から殺気に満ちた赤い目がギラつく。
「フィールさん周りを見てください。みんなが怯えてます」
「黙・・・」
フィールさんは火を出すがハッとする様に辺りを見渡す。そこにはここに住んでいると思われる人達も兵達もこちらを怯えながら見ていた。フィールさんは力を抜く。そのまま後ろを向き歩き出す。
「フィ・・・」
言いかけるとアイシャさんに腕を掴まれる。自分は振り返るとアイシャさんは何も言わずに首を振るう。
その後、自分が後に残した兵達が到着しセリアさんにアイシャさんの後ろで蹲っていた兵の治療をしてもらった。蹲っていたから、わからなかったが顔は原形を留めないほど腫れ、血塗れのようだった。
アイシャさんはセリアさんに何か耳打ちをする。するとセリアさんは全てを察した様に額に手を添える。
自分は聞ける雰囲気ではなかったので野宿の準備を手伝った。
夕食が始まる。
「トート、隣いい?」
「アイシャさん!セリアさん!もちろんです」
「今更だけど久しぶり。どうだった?」
「フィールさんのおかげで楽に進めました・・・」
自分は先程の情景を思い浮かべる。
「そう」
しばらく沈黙が流れる。
「あの・・・」
「ん?どうしたの?」
「先程の兵は?」
セリアさんの方を見る。
「無事よ。その辺で他の兵達とご飯食べてるんじゃないかしら」
「そうですか。よかったです」
自分は下を向く。
「聞きたいなら聞いていいのよ」
「あ、いや・・・」
自分は黙り込む。
「お姉さんが強姦されて自殺しちゃったの」
「お姉さん?」
「フィールには腹違いの姉がいたの。とっても優しい人だった。私も大好きだった。だから自殺した時はたくさん泣いたわ。「さっきの兵もこの町の女性に強姦しようとしていたの。それをフィールがたまたま見つけてそれで・・・」
自分は何と言っていいのか分からず、黙り込む。
「きっと屋根の上にいるわ」
アイシャさんが斜め上を見て言う。
「えっ?」
「嫌ことがあると屋根の上でやけ酒するの」
そう言うとことらを見るアイシャさん。
「自分探してきます」
自分は立ち上がりその場を後にする。
「いいの?」
「男同士だから話せることもあるかも?」
微笑むアイシャ。
「ふふ、それもそうね」
セリアも微笑む。
自分は屋根から屋根へと行きフィールさんを探す。
「(なかなかいないな)」
辺りを見渡すと人影を発見し気配を消して近づく。
「フィールさん」
自分はなるべく静かに言う。
フィールさんはこちらを完全には振り返らず「なんだ」と言う。
「お越し頂き感謝します」
「いいえ、どうしました?」
「これからのことについてなのですが」
「何か問題でも?」
「いえいえ、むしろ予定より速く進んでいるため嬉しい限りです。2ヶ月以上かかると思いましたがこれなら1ヶ月程度で制覇できるかもしれません」
「海の所まではでしょう?」
「ええ、まぁ」
仕方のない事だ。アデリア帝国の首都は海の向こうにありそこまで行くのにも船で行かなければならない。飛行機なら速いがフィール達の部隊も含めると不可能だ。いくら向こうに約3万の兵がいるからといって油断は禁物。なるべく大勢で一気に行き敵を倒す。ので船という選択肢をとりざるを追えない。
テントを出て再び月を見る。
「(2ヶ月に比べたら短いけど・・・)
静かにため息を吐く。
そんなアイシャを眺める様に月は美しく光続ける。
2週間という長い月日は流れた。自分らはフィールさんに会っていない。敗残兵の後を追いかけたきり会っていない。生きている事はわかっていた。
自分らは敵も何もいない荒れ果てた地を歩き続けた。
そんなある日、自分らは久しぶりに大きな爆発音を聞く。
「先に行きます!」
自分は兵達よりも先に爆発があった場所へと赴く。誰かが言い争っている。何処かで聞いた懐かしい声。そうだこれは。
「(フィールさん!アイシャさん!よかった無事なんだ)」
だが安心は束の間驚きへと変わる。
「フィールやめなさい!」
「こいつ!離せアイシャ!」
2人の兵にフィールさんは腕をロックされ、アイシャさんがフィールの前に行き両肩を掴み必死に抑えていた。
「(何が?)」
自分はアイシャさんの後ろに縮こまっている兵に気付く。しゃがんでいる兵の地面は赤く染まっている。
「フィールさん!アイシャさん!」
自分は状況を整理するため駆け寄る。
「トート!」
フィールさんを止めながらこちらを見る。
「何があったんですか?」
「そこを退け俺の邪魔をするなら殺すぞ」
仮面の中から殺気に満ちた赤い目がギラつく。
「フィールさん周りを見てください。みんなが怯えてます」
「黙・・・」
フィールさんは火を出すがハッとする様に辺りを見渡す。そこにはここに住んでいると思われる人達も兵達もこちらを怯えながら見ていた。フィールさんは力を抜く。そのまま後ろを向き歩き出す。
「フィ・・・」
言いかけるとアイシャさんに腕を掴まれる。自分は振り返るとアイシャさんは何も言わずに首を振るう。
その後、自分が後に残した兵達が到着しセリアさんにアイシャさんの後ろで蹲っていた兵の治療をしてもらった。蹲っていたから、わからなかったが顔は原形を留めないほど腫れ、血塗れのようだった。
アイシャさんはセリアさんに何か耳打ちをする。するとセリアさんは全てを察した様に額に手を添える。
自分は聞ける雰囲気ではなかったので野宿の準備を手伝った。
夕食が始まる。
「トート、隣いい?」
「アイシャさん!セリアさん!もちろんです」
「今更だけど久しぶり。どうだった?」
「フィールさんのおかげで楽に進めました・・・」
自分は先程の情景を思い浮かべる。
「そう」
しばらく沈黙が流れる。
「あの・・・」
「ん?どうしたの?」
「先程の兵は?」
セリアさんの方を見る。
「無事よ。その辺で他の兵達とご飯食べてるんじゃないかしら」
「そうですか。よかったです」
自分は下を向く。
「聞きたいなら聞いていいのよ」
「あ、いや・・・」
自分は黙り込む。
「お姉さんが強姦されて自殺しちゃったの」
「お姉さん?」
「フィールには腹違いの姉がいたの。とっても優しい人だった。私も大好きだった。だから自殺した時はたくさん泣いたわ。「さっきの兵もこの町の女性に強姦しようとしていたの。それをフィールがたまたま見つけてそれで・・・」
自分は何と言っていいのか分からず、黙り込む。
「きっと屋根の上にいるわ」
アイシャさんが斜め上を見て言う。
「えっ?」
「嫌ことがあると屋根の上でやけ酒するの」
そう言うとことらを見るアイシャさん。
「自分探してきます」
自分は立ち上がりその場を後にする。
「いいの?」
「男同士だから話せることもあるかも?」
微笑むアイシャ。
「ふふ、それもそうね」
セリアも微笑む。
自分は屋根から屋根へと行きフィールさんを探す。
「(なかなかいないな)」
辺りを見渡すと人影を発見し気配を消して近づく。
「フィールさん」
自分はなるべく静かに言う。
フィールさんはこちらを完全には振り返らず「なんだ」と言う。
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