最愛の敵

ルテラ

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アデリア戦

30話 優しさ

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 彼らは国から見放され、行く所がなかったため、残るしかなかったようだ。
 自分は人々に囲めれているフィールさんを見ていた。
「ふふ。フィールらしい」
 自分はセリアさんを見る。
「自分もフィールさんの様な人になりたいです」
「目指すのは勝手だけど悪い所は見習わない様に」
 そう言い立ち上がる。
「お皿人数分持ってこなきゃ」
「手伝います」
 最初はぎこちなかったもののすっかり打ち解けた、歌って踊りお祭り騒ぎとなっていた。
「どうして仮面を外したんですか?仮面越しでもよかった様な気がしますが」
「んー、確かにな」
 フィールさんは仮面を見る。
「プライドも問題かな」
「プライド?」
「トートはさ、どっち信用する?初対面で仮面被っている奴と被っていない奴」
「えっ?被っていない・・・方ですかね」
 フィールさんの方をチラッと見るとフィールさんは真顔でこちらを見ていた。やばいっと思ったが、
「俺も」そう言いニカッと笑う。
 自分はホッとする。
「だから外した。争いは避けられるなら避けたいからな」
 そう言い笑い合う人々を見る。
「戦闘好きなのに意外だ。って思ったろ」
「へ?あっ、いや」
 答えに躊躇う。
「いいよ、別に。確かに俺は戦いが好きだ。でもなトートー、戦いが好きだからって弱い者をいじめちゃダメだ。もちろん、かかってくる相手には全力でやる。だが無抵抗なあいつらみたいな奴らとは戦ちゃだめだ。もはやそれは戦いじゃなく暴力だ。人であるためにはそこの分別はしっかり持たなくちゃな」
「あら、いい事言うじゃない」
 セリアさんが自分達の間から顔出す。
「男同士の話し合いに水さすな!」
 フィールが膨れる。
「男女差別はいけませんよフィール。ねっトート」
「えっあーそうですね・・・」
「トートお前!」
「あっいや、えっと・・・」
「プッハハハハハ」
 フィールさん、セリアさんが笑い出しじもつられて笑う。
 ここをしばらくの拠点とさせてもらうこととなりテントで寝るはずだったが怪我人を優先的に寝床を提供してくれる事になった。
 自分達は夕食の後片付けをした。
「楽しかったな」
「はい」
 自分らは眠りに着く。

ー翌日ー
 自分らは朝食を簡単に済ませると戦闘態勢に着く。
「お、お兄ちゃん!」
「おっ!昨日の!」
 男の子の目線に合わせるためしゃがむ。
「どうした?」
「が、頑張って!」
 男の子は両手を胸の前で握る。
 フィールさんは一瞬ポカーンとしたがその子の頭を撫で「ありがとう」と笑う。
 自分らは進軍のため前を向く。
 1週間が過ぎた頃、異変を感じる。
「これは・・・(おかしい)」
 自分らは敵が撤廃したため後を追ってきた。最初こそ自分ら軍が打ち込んだ魔法やらであっちこちが戦火だったが、ここまで攻撃が届くはずがないのに町は無惨に焼かれていた。
「敗残兵だな」
 フィールさんは深刻そうにに言う。
 敗残兵とは敵国に奪われるくらいなら全てを無にと愛国心が強い兵達のことを指すのではなく。実際は負けた恨みの捌け口を探し、本来守るべき民や町を破壊する者達のことを指す。
「おい、生存者を探せ」
 しかし、数時間に及ぶ捜索をしたが生存者は一人も見つからなかった。
「チッ。トート、俺は先に一人で行く」
「なら自分も」
「お前はこいつらを先導しろ何かあったら知らせるから頼んだ」
 フィールさんは先へと行く。
「パイロンどうしますか?」
 本来なら指揮官の指示を仰ぐが彼らはパイロンという盾を立ててまともに機能しない。そのため自然と作戦の指示はパイロンのメンバーである自分達がしなければならない。
「自分達も生存者を探しながら進みましょう」
 再び進み出す。
「(どうして収まらないんだ)」
 自分は胸を抑えるその得体の知れない何かがでない様に。
 その気持ちを抑えるように腰にある銃に触れる。

ー約10日前ー
 アイシャはパルデーニャ王国に訪れていた。
「お久しぶりです。パイロン」
「お久しぶりです。アイシャとお呼びください。準備は整いましたか?」
「はい、滞りなく。後は仲間割れをしなければ良いのですが・・・」
 今は味方同士とはいえ約1年前は敵同士。不安がるのも無理はない。
「問題ありません。彼らには仲良くする様に言い聞かせてあります」
「感謝します」
「では、作戦の概要をお話します」

ー現在ー
 最初はいざこざはあったものの今ではすっかり打ち解けた。
「(みんなに会いたいな)」
 アイシャは月を見ていた。
「パイロン」
 呼ばれ振り返る。
「どうしたの?」
「作戦の最終確認をお願いたします」
「分かったわ」
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