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アデリア戦
2話 出会い(2)
しおりを挟む扉を開ける音がしたため、行ってみる。
「はい。どこが痛みますか?」
その人の第一印象はイケメン。ネイビーブルー髪で目元を仮面で覆っているがそれがわかるほどのイケメンだ。とても軍人には見えない。
「あっいや、怪我人じゃないんです」
「レオ!!」
セリアさんがそのイケメンに抱きつく。羨ましいーー。
「おい!イチャつくなら誰もいないところでやれよ」
紅梅色の髪をして仮面を被った人が嫌そうな顔していう。
そしてラズリさんが入って来た。
「(ん?レオ?どこがで)ああああああぁぁぁ」
また自分は声をあげる。
「どうしたのトート君!」
「レオって、あのレオですか?ラズリさんの右腕」
「右腕?」
「似たようなものじゃない?」
セリアさんが面白そうに言う。
しかもレオさんだけじゃない、紅梅色の髪はフィールさん、翡翠色の髪はアイシャさん、全員がラズリさんの仲間だ。ちなみにレオさんはセリアさんの旦那さんだ。
自分はハッとし、姿勢を正し敬礼をする。
「トートと言います。『英雄の帰還ーパイロン』に会えたこと光栄に思います」
『英雄の帰還』パイロンはラズリを筆頭とし、氷の使い手レオ、火の使い手フィール、風の使い手アイシャのたった4人で結集された独立軍隊、どこの国にも属さず、誰の上にも下にも立つことのないこの世界で唯一の存在。そして、全員が仮面を被っているため誰も素顔を知らない。
「ですよね!」
自分は嬉しそうに語る。
「(詳しい・・・)」
自分以外の全員がドン引きした。
「ぷはは、こいつ面白れ」
フィールさんはお腹を抱えて笑う。
「笑いすぎよフィール」
フィールさんをアイシャさんが叱る。
「そう固くならなくていい。楽にしろ」
ラズリさんが手を軽く下げる。
「それよりどうしてみんなここに?怪我したわけでもないだろうに」
「逃げてきた」
「え?」
「さっきの戦闘が終わってすぐ、食堂に行ったら群がってきちゃって」
アイシャさんは苦笑いしながら言う。
「あー、なるほど。お疲れ様です。すぐにお茶を淹れますね。立っているのもなんだし座ってください」
「あっ。自分が・・・」
言いかけた時、パチンとセリアさんが手を叩く。
「そーだ。せっかくだから、質問があったら答えてもらえば?トート君」
そう言い早足に去っていった。
「えっ!?質問ですか?」
恐る恐る彼らを見る。
「そんな怖がらないでください。暇ですし答えられる範囲でお答えします」
そう言ってレオさんはみんなを見るとそれに応えるように全員が頷く。
「あ、ありがとうございます」
全員が座る。ラズリは壁に寄りかかる。パイロンの雰囲気は今までに感じたことがないほどの迫力のあるオーラだった(いい意味)。
緊張しながらも好奇心が抑えらせず聞く。
「では・・・皆さんはどれくらいのお付き合いになるんですか?」
「そうですね。ラズリとの付き合いは皆んな同じです。かれこれ12年くらいです」
「長いんですね。ラズリさんとの出会いをお聞きしてもいいでしょうか?」
「皆んな俺の父の紹介です」
「お父さんの・・・」
ラズリさんの方を向くが、ラズリさんは壁に腰掛け俯いたまま微動にしなかった。
「ねぇ、君そういえば君、何の魔法使うの?」
アイシャさんが興味津々で聞く。
「自分ですか・・・」
自分は下を向く。アイシャさんはマジいっと思い。
「なんかごめんね。悪意はないんだ。許して!」
アイシャさんは慌てて手と手を合わせる。
「あっいえ、えーとフィジ・・・フィジカルです」
いじめのことを思いだした。
「(あーまた、いじめられる)」
「へーすごい!」
アイシャさんは目をキラキラさせて言う。
「カッコいいな」
フィールさんからも言われる。
トートは理解が追いつかなかった。この魔法のせいでいじめられていたのに、いい魔法?カッコいい?どういうことだろうか。
「いい魔法だですね。大切にしてください」
みなさん(ラズリ以外)が顔見合わせて笑う。
「はい」
自分は拳を握った。
悲しかったからじゃない嬉しいかったからだ。誰かに褒められたことがなかったから、まさか憧れの人たちから言われるとは思っていなかったから。少しだけこの魔法に誇りが持てた。
「よかったわね。トート君」
びっくりして後ろを見ると。
「セ、セリアさんいつからそこに!?」
自分は飛び跳ねる。
「トート君が泣きそうになった辺りかなぁ」
意地悪そうに言う。
トートは目を擦る。
「ふふ。冗談よ」
セリアさんに揶揄われる。
「か、からかわないでください!」
自分は顔を赤くする。
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